シナリオセンター基礎科第7回課題 ボンクラ・ヴォヤージュ ドラマ

生まれて間もない娘と妻を置き去りに蒸発した男が、職を失い、生活苦に耐えかねて妻の家に身を寄せている。妻の態度は最悪だが、娘はなにくれと世話を焼いてくれる。その甲斐あってか、男は職にありつき、妻の家を出ていくこととなる。
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第一稿

○千代田家・台所(夕)
千代田智香(20)と千代田道子(46)が食事の準備をしている。
智香「遅いね、お父さん」
道子は応えず作業を続ける。
智香「いい大人なんだからさあ… ...続きを読む
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○千代田家・台所(夕)
千代田智香(20)と千代田道子(46)が食事の準備をしている。
智香「遅いね、お父さん」
道子は応えず作業を続ける。
智香「いい大人なんだからさあ……」
道子「お黙り」
と智香の唇をつまむ。
智香は頭をのけぞらせて道子の指を引き離し、手で口元を隠す。
智香「許したげなよ。頑張ってんじゃん」
道子「ズレた方にね」
智香「あは!否めない!」
玄関のドアが開く音。
小山の声「ただいま!」
大きな足音が近づいてきて、小山力(47)が台所に入って来る。
小山「決まった!」
智香「顔赤っ!飲んできたの!」
小山「職!」
智香「えっ」
と驚いている。
× × ×
智香が食器をトレーに載せていく。
小山「ごちそうさま」
智香「美味しかった?」
小山「おいしゅうございました」
智香「(道子に)だってよ」
とトレーを持って立ち去る。途中振り向き、小山に向けてウインクする。
小山「母さん、ありがとう」
道子は黙って茶を飲んでいる。
小山「智香をいい子に育ててくれて。智香のおかけで頑張れた。娘に励まされるなんて情けないけど……。明日出ていきます。母さん、本当にありがとう」
と深々と頭を下げる。

○同・前(朝)
小山がスーツケースを引いて玄関から出てくる。
小山の後から智香も出てくる。
智香「もうちょっとゆっくりしてけば」
小山「これ以上迷惑は」
智香「(笑って)今更すぎー!」
苦笑する小山。
小山「じゃあ、智香、世話になった」
と歩き出す。
智香「……ねえ、お母さんも喜んでるよ」
小山「そうかな」
智香「うん、ごめん、やっぱ分かんない」
小山、苦笑しつつ手を振り、再び歩き出す。
2階の窓から道子が顔を出す。
小山が道子を見上げる。
道子「いってらっしゃい」
小山、満面の笑みで大きく手を振りつつ歩き、縁石に蹴躓く。
吹き出す道子。
智香の笑い声。

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