【キャラ設定】
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シエル:バッカス家の主人。性別変更可。38歳。一人称は男女どちらも「私(わたし)」。女性の場合は、口調を女性らしく変換してください。山中(さんちゅう)の豪邸に住み、アンティークやジュエリー等の商品を扱う。正体は、ヴァンパイアで、食事は人の血液という特殊な能力を持っている。
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アリシア:性別変換不可。デュエルと双子の20歳の娘。シエルが男性なら「お父様」、女性なら「お母様」と呼ぶ。ジュエリーとワインの目利き。正体は鬼で、食べるのはワインに満たされた心臓(ハート)という能力を持っている。また、鬼の特性で、勘が鋭く、先読みができる。
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デュエル:性別変換不可。アリシアと双子の20歳。シエルが男性なら「父上」、女性なら「母上」と呼ぶ。アンティークと新鮮な食材の目利き。正体はキメラで、食事は人の亡骸で作るという特殊な能力を持っている。家事が得意で世話好き。
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カイン:ワイン農家を営み、毎年、町にワインを卸(おろし)に行く。妻はマリー。一緒にワイン造りをおこなっている。30代半ば。少し臆病で、なかなか本心を出せない。妻のマリーを心から愛している。
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マリー:カインの妻。子供の頃からワイン造りに関わり、カインと一緒にワイン造りをしている。20代後半。身体が弱く、体調を崩しやすい。カインを愛している。
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0:【本編】
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シエル:(N)『私の名は、シエル・バッカス。双子の娘 アリシアと、息子のデュエルと共に山中で暮している。成人したふたりは、私の仕事の手伝いをする。アンティークやジュエリー、絵画等を取り扱うのが仕事だ。子供の頃から本物を見てきているからか、20歳にしては商品の目利きが良い。そんな私たち家族は、世界的にも名の通った貴族だ。また、私たち3人は、それぞれ特殊な能力を持っている。そして、なぜかこの邸(やしき)には、ときどきかわった客も迷い込んでくる…そう。今日もまた…』
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アリシア:「お父様。今日はこれから天気が悪くなりそうよ。木々がざわめいて、鳥たちが騒いでる。その嵐のせいで、お客様もいらっしゃるみたいだわ」
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シエル:「そうか」
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デュエル:「へぇ〜。どんなヤツが来るんだ?明日の赤き月の夜まで、邸(やしき)にいるのかなぁ。おっと、こうしちゃいられない。そのお客が来る前に、こっちも嵐の準備だ。野菜をちょっと摘んで、馬を馬房(ばぼう)に連れていかなきゃ。ちょっと行ってくる」
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シエル:「ああ。頼む。アリシア、客は何人(なんにん)だ?」
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アリシア:「えっと…(瞳を閉じて念じるアリシア)男女ふたりよ。夫婦かしら…何かの配達で馬車に乗っているみたい」
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シエル:「そうか。明日の月…夜まで、足止めできそうか?」
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アリシア:「山道(さんどう)が雨でぬかるんでいるから、明日の昼間に出発することは難しいと思うけど…」
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デュエル:「ふぅ〜。そろそろ雨が降り始めたよ。まだポツポツだけど。ロディ号もジャック号も、大人しく馬房(ばぼう)に入ってくれて、助かったよ。ジャック号は臆病だから、ちょっと不安になってたみたいだけど」
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シエル:「しかし、夫婦ふたりが来るという所までアリシアに見えたのなら、もうこの邸(やしき)に近づいているのだろう」
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デュエル:「え、もう着きそうなの?やば。準備しなきゃ。天気が悪いし、その人たち、ずぶ濡れになってないかな。冷えてたら、マズイ(不味い)からな。ボクは大丈夫だけど、父上とアリシアはそうもいかない」【注釈】※マズイ(=不味い。料理の味が落ちると感じたデュエル)
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アリシア:「そうね。ふたり分の着替えとシャワーの準備をしなくちゃ。そして、ワインも…体調を崩されたら、元も子もない」
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シエル:「客が来たら部屋まで呼びに来てくれ。邸(やしき)の主人が1番に出迎えというのは、みっともない。頼むぞ、アリシア、デュエル」
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アリシア:「はい。赤き月の夜まで帰さないおもてなし、用意します。デュエル、スイーツを作るのに、キッチンを借りてもいいかしら?」
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デュエル:「もちろん!ボクにもおすそ分け、よろしく!」
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シエル:(N)『…だいぶ天気が悪くなってきたようだ。雨は木々を打ち付け、風も強い。足場も悪く、ぬかるんでいることだろう』
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0:カインとマリーの走る馬車が雨にうたれながら走る
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カイン:(N)『突然天気が変わり、豪雨の中を私たちの馬車が走っていく。ワインを市場(いちば)に卸(おろし)に行くためだ。馬車の中に妻のマリーを乗せ、大粒の雨に容赦なく打たれる。体が冷える。マリーも、限界そうだ…』
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マリー:「…はぁ…はぁ……」
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カイン:「マリー。大丈夫か?」
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マリー:「寒いわ。冷えて、指先の感覚が…ないの」
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カイン:「くそっ。目的地の半分も走ってない。何かいい方法が…あ、寝たらダメだ、マリー!」
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マリー:「あ…うん…雨、やみそうもないわね…」
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カイン:「そうだな…何かいい方法は…ないのか……」
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マリー:「確か、この先に、あの有名なシエル様のお屋敷があったはず…。天気も酷くなるばかりだし、事情をお話して、助けていただきましょう…」
0:(話している途中も、息は途切れ途切れで)
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カイン:「あぁ、そうだな。シエル様なら、助けてくださる。道もだいぶぬかるんできた。頼むよー、私の可愛いお馬さんたち。しばらくの辛抱だ。もうすぐお邸(やしき)に着く。マリー、がんばってくれよ」
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マリー:「えぇ。それにしても、今日はなぜこんなに冷たい雨が降るのかしら…木々がざわめいてる…。寒い…」
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シエル:(N)『カインたちが邸(やしき)に到着する頃、すでに夕暮れを迎え、山中(さんちゅう)は暗くなり始めていた。ここまでひどい天気であれば、客人はずぶ濡れであることは明確。アリシアもデュエルも、出迎えの準備を整えていた』
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シエル:(N)『カインとマリーが邸に到着。カインが扉をノックした。アリシアが出迎える』
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0:コンコンコン(ノック)
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アリシア:「はい。このような天気の中、どうされました?」
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カイン:「お嬢様、突然の訪問をお許しください。仕事でワインを配達しているのですが、途中でこの嵐に合いました。妻が馬車に残り、寒さに震えています。どうか、お邸(やしき)に入れてはくださいませんか?」
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アリシア:「それは大変ですわ。さあ、奥様もお邸(やしき)にご案内いたします。この雨ですから、寒い中、お体も冷えたことでしょう。温かいシャワーで体を癒してください。ちょうど、お食事の用意もできる頃ですわ」
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カイン:「ありがとうございます。それでは、馬車はどこに置いておけばよろしいですか?」
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アリシア:「空いている馬房がありますから、愛馬たちも温かい場所で休ませてあげましょう」
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カイン:「恐れ入ります。それでは、馬車をこちらに動かします。妻も呼んできますので、よろしくお願いします」
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アリシア:「どうぞ、お気になさらず。シャワーを浴びたら食事をいただきましょう。お腹がすいたでしょう。温かいスープは、うちの料理自慢、デュエルの逸品です。私は、お迎えのスイーツをご用意しています。今夜は、自分の邸(やしき)だと思っておくつろぎください」
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カイン:「何から何まで、ありがとうございます。それにしても、大きなお屋敷に、素敵な調度品の数々。さすが、バッカス家…」
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アリシア:「お気に召す商品がありましたら、お買い上げも承りますわ。アンティークやジュエリー、奥様にお似合いな物がありそうですね」
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カイン:「いえいえ、とんでもない。私の家は、小さなワイン農場。妻のマリーとふたりで切り盛りしてます。贅沢はできません…」
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アリシア:「そうですか…。それで馬車でワインを運んでいらっしゃったのですね。もし、差し支えがないようでしたら、ワインを1本、売っていただけますか?」
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カイン:「えぇ、もちろん!私たちの作ったワインでよければ、差し上げます。美味しいポートワインですよ。ブルーチーズもありますし、どうぞ召し上がってください」
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アリシア:「ありがとうございます。じゃあ、そろそろシャワーですね。ゆっくり温まってください。また、のちほど」
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カイン:「ありがとうございます」
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シエル:(N)『マリーがシャワーからあがる。カインは、シャワーの前に、馬車に積んであったワインを1本持って、戻ってきた。交代でカインがシャワーへ』
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アリシア:「温まりましたか?マリーさん」
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マリー:「あ、はい。ありがとうございます。先ほど、カインからワインを1本 ご所望と聞きました。馬車に積んでいるワインを取ってきてくれました。こちら、どうぞお召し上がりください」
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アリシア:「まぁ。ありがとうございます」
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デュエル:「おーい、アリシア。食事の支度、終わってるぞー。父上にも、ふたりを紹介しなくちゃな」
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アリシア:「そうね。チーズによく合うワインをいただいたわ。今日の食卓でいただきましょう。ありがとうございます、マリーさん」
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マリー:「とんでもございません。こちらこそ、ありがとうございます」
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デュエル:「いいねぇ〜。じゃあ、カインさんがシャワーから戻ったら、父上に挨拶だな。おっと。うひゃ〜。雨の打ち付ける音が大きくなってきた。やべ〜」
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マリー:「明日には晴れますかね…」
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デュエル:「雨が止んでも、道は泥だらけだと思うぞ。馬の足並みが、そろわないんじゃないか?2頭引きだろ?」
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マリー:「そうですね…」
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カイン:「ふ〜。いいお湯だった〜。ん?何の話ですか?」
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マリー:「明日の出発の話よ。天気が回復しても、泥のぬかるみで馬の足に負担がかかりそうなの」
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カイン:「あ、そっか…どうしよう」
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デュエル:「とりあえず、父上を呼んでこなきゃ。さあ、食事を運びますよ」
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アリシア:「そうね。さぁ、おふたりとも、食堂にご案内しますね」
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デュエル:「食前酒は、ふたりから貰ったワインだな」
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0:アリシアがシエルを呼び、5人で食卓を囲む。
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アリシア:「お父様。こちらのおふたり、お仕事で配達の途中なんですけれど、この悪天候で前に進めないんですって。カインさん、マリーさん、こちらが私たちのお父様、シエルです」
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カイン:「あ、はい。この度は、お世話になります。突然の訪問、大変失礼いたしました」
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シエル:「いやいや。こちらこそ、我が家へようこそ。それにしても、嵐が本番になる前に、邸に到着できて本当に良かった。ふたりの寝室はすでにセットしてある。食事を終えたら、疲れた体を休めるがいい。配達の仕事も大切だが、何よりも大切なのは、命だからな」
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カイン:「えぇ、そうですね」
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デュエル:「さぁ、食べて食べて!今日のスープも自信作だよ!カインさんとマリーさんはこちらのお皿。父上は、極上のワイン。アリシアは、いつもの特製ソースをかけた逸品だ。おふたりの作ったワインをいただきながら、乾杯!」
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カイン:「ありがとうございます。いただきます」
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マリー:「いただきます」
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カイン:「ん…(もぐもぐ)。おぉ。初めて食べる肉だ。これは美味い!特に、空腹の胃が満たされる!」
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マリー:「ふふっ。カインったら。そんなに急いで食べなくても、誰も取り上げませんよ?」
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カイン:「わかってるよ。デュエル様、
これは、私たちのワインの味にあわせてくださったんですか?」
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デュエル:「ん〜…それは、企業秘密で!」
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シエル:「それにしても、このワインはとても美味い。特に、この香りがいいね。これは、来年から邸にも卸(おろ)して欲しいくらいのワインだ」
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カイン:「本当ですか!?そのお言葉だけで、これまで頑張ってきた甲斐があります。シエル様には、ヴィンテージもお届けしますよ!」
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シエル:「それはありがたい。この赤き輝きは、私の気持ちを穏やかにする。素晴らしい」
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シエル:(N)『カイン夫妻は、ふたりきりで小さなワイン農場を持ち、丁寧なワイン造りで彼のファンも多いらしい』
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カイン:「いや〜、本当に助かりました、シエル様。こんな嵐、ここ何年もなかった。商売あがったりですよ。でも、そのお陰で、私たちのワインをシエル様に飲んでいただけた。光栄です。アリシア様とデュエル様も、お酒は嗜(たしな)むんですか?」
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デュエル:「ボクは飲みますよ。アリシアと一緒に、20歳の誕生日にワインを開けました。その時にチーズも食べたんですけど、料理って面白いですよね。同じ材料を使っても、同じ味にするには、腕がいる。うちは使用人も執事もいないんで、ボクがやっているんですよ」
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アリシア:「私も、ワインは好きよ。ワインって言葉でひとくくりにされてるけど、味も香りもまったく違うんですもの。さぁ、お食事はお気に召しました?」
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マリー:「えぇ、それはとても。お野菜がとても美味しいですわ。そして、なんてコクのあるスープ。お肉は、柔らかくて美味しいわ。レシピを教えていただきたいくらい」
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デュエル:「もちろん、いいですよ。ただ、野菜は自家農園ですけれど、ともかく、肉を手に入れるのが難しいんですけどね…」
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マリー:「そうですか…残念ですわ」
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デュエル:「いい物をつくるには、材料もいい物を選ぶのがイチバンですからね。まぁ、なんだかんだ言っても、ボクはジャンクフードも食べますけどね」
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アリシア:「私は、新鮮なモノが良いわ。飛び切りレアな物だから、選ぶ時は厳選しているの。たぶん、好き嫌いが別れる食材かもしれないわ」
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マリー:「あら、何でしょう。気になりますわ」
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アリシア:「簡単に言えば…ハートよ」
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マリー:「ハート?」
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アリシア:「わからない方がいいわ。マリーさんが、びっくりしてしまいそうだから」
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シエル:「私たちは、好きな食べ物が3人とも違うのだよ。単純な事だ。ご夫婦は、同じ食べ物が合いそうだがね」
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アリシア:「じゃあ、お食事も終わったし、休みましょうか。この嵐で、カインさんもマリーさんもお疲れでしょう。ゲストルームはクイーンですけど、大丈夫ですよね?」
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カイン:「そうですね。ありがとうございます。あとは、天気の回復を祈るのみですね」
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シエル:「ワインの配達は急いでいるのか?」
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カイン:「納品日は融通(ゆうずう)がきくんですけど、やっぱりここは商売人として、早くお客様にお届けしたい」
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シエル:「なるほど。素晴らしい。しかし、もし道の状態が悪いようだったら、明日の夜も泊まっていかれるがいい。最近、私は町に出ていないからそんな話もしたい。特に、明日の夜は、私が心待ちにしている日なんだ」
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カイン:「何かいい事があるんですか?」
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シエル:「いいこと…そうだな。明日の天候次第だ。おふたりも、悪路(あくろ)を無理して進むと、大変なことになる。馬の足元はなかなか見づらいからな。無理はせず、天気の回復を待つといい」
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カイン:「そうですね。ありがとうございます。ところで、シエル様は、乗馬をなされるんですか?」
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シエル:「私の愛馬はロディと言う名だ。賢くて、なかなかの名馬だよ。自慢の牝馬だ。あの芦毛(あしげ)が美しい」
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シエル:(N)『突然の雷雨に、馬房(ばぼう)にいた馬が驚いて脱走。異常に気づいたデュエルが慌てて外へ出ていこうとする』
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シエル:(淡々と話すシエル)「デュエル、無理はするんじゃないぞ」
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デュエル:「わかってる!真っ暗だから、あの神木(しんぼく)まで走っていったと思う!」
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シエル:「そうか。あの神木なら大丈夫だな。とにかく、深追いはするな。明るくなってからでも探すのは構わない」
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デュエル:「とりあえず、行ってくる!」
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アリシア:「私は馬房(ばぼう)に行って、他の子たちを落ち着かせてくるわ」
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カイン:「…こんな嵐、明日には出発ができるのか…なんて言ってる場合じゃないな…」
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マリー:「あなた…。明日が赤き月の日なことに関係があるのかしら…」
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カイン:「関係ないだろう。偶然だ」
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シエル:「…赤き月の日…」
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マリー:「…不躾な発言、申し訳ありません。何の根拠もないんです。ただ、赤き月の夜は、その月を見ることによって、人によっては ただならぬ事が身にふりかかるという伝説があって…」
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カイン:「…やめるんだ、マリー…」
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マリー:「はい…」
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シエル:(N)『降っていた雨がやみ、月が見えた。少し濡れたデュエルとアリシアが邸に帰ってくる』
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デュエル:「ふぅ〜。急に雨があがってびっくりした。あれはゲリラ豪雨だね。もう月が見えたよ。脱走した臆病者のジャック号も、大丈夫だった」
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シエル:「そうか。よかった。もう雨もやんで、月がでたか…。さあ、デュエルもアリシアも、体を温めてもう寝なさい。明日の天気は、明日にならなきゃわからない。怯(おび)えていても仕方ない。カインさん、マリーさんも、お休みください。また明日、話しましょう」
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デュエル:「そうだね。お休みなさい、父上。カインさんも、マリーさんも、また明日」
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アリシア:「お休みなさい、お父様。カインさんもマリーさんも、また明日」
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カイン:「はい。ありがとうございます。お休みなさい」
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マリー:「……あなた。変なことを言って、ごめんなさい」
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カイン:「いいよ。とにかく、今夜はゆっくり休もう。シエル様の言う通り、明日の天気は明日にならなければわからない。怯(おび)えていても、仕方ない。とにかく、明日の朝を待とう」
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マリー:「はい…。どうか、通れる道になっておりますように…(祈り捧げ)」
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シエル:(N)『一晩明け、見上げるとそこには曇天の空模様。また雨が降るかもしれない不安が、カインとマリーの心に走る』
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マリー:「どうしましょう…」
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カイン:「道のぬかるみが、まだ酷いな…」
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デュエル:「まだ、馬車には乗れないね。詰んでるワインに影響がでちゃうよ。足元が滑ってしまう。午前中の出発は無理だね」
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アリシア:(小声で)「今夜は赤き月の夜…。このまま雨があがっていたら、何か起きるのかしら…。ふふっ…」
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マリー:「アリシア様…そのお話は…」
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アリシア:「あら。このお話は、有名だわ。誰が赤き月を見るのかしらね?」
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マリー:「嫌だわ。怖い。あなた、どうしましょう…」
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カイン:「これまでだって赤き月は昇っていた。でも、何も無かったじゃないか。今回だって関係ない。見なきゃ良いだけだ。それと、暗くなってからの泥だらけの道を馬車で走るのは無理だ。雨が降りそうな今、馬車に乗るのも危険だ…」
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アリシア:「どうしました?」
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カイン:「………申し訳ないのですが、今夜も泊めさせてもらうことはできませんか…?」
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マリー:「あなた…」
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シエル:「話しは聞いたよ。今夜も泊まって行くがいい。赤き月の伝説、嘘だと証明できるといいな。それと、この邸(やしき)に来て、やることが何もなくて退屈していただろう。今日は、邸の探検でもして、楽しんでくれ。カギの掛かっている部屋以外は、入ってもかまわん」
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シエル:「ただし。うちはアンティークやジュエリーを扱う仕事をしている。貴重品、貴金属には指紋つけたりしないよう、手を触れないで欲しい。触りたい時は、手袋をしてくれ」
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カイン:「わかりました。せっかくだから、探検させてもらいます。じゃあ、行こう。マリー」
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マリー:「えぇ」
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デュエル:「いってらっしゃい」
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0:邸の中を、順に見て回るふたり。その広さに驚いていた。
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カイン:「それにしても、本当に広いなぁ。3階建てに地下室。ゲストルームもたくさんあって、ダンスホールがあって…。これでメイドも執事もいないのが不思議だ…」
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カイン:「(少し落ち込みながら)…どうして、こんなにもレベルの違う生活をしているのだろう…。高価な物がこんなにたくさんあるのに、手も出せないなんて…」
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マリー:「こんなに素敵なジュエリー、身につけたことないわ…。手も届かない…。ねぇ、あなた。シエル様の年齢を知ってる?38歳よ。お若いのに、仕事のできるお子さんを、おふたりももって…」
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カイン:「その子らも、20歳で父親の仕事のサポートをこなしていく。恵まれた家族だ。悔しいし、情けない…」
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マリー:「情けなくなんかないわ。あなたのワインは、みなさんが認めている。自慢していいのよ」
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カイン:「ありがとう、マリー。毎年、私たちのワインを待ってくださる方がいる。嬉しいことだ。しかし…シエル様は、なぜ急に部屋を自由に見ていいなんて言ったのだろう…」
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マリー:「不思議ね」
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カイン:「とりあえず、邸内(やしきない)も見て回ったし、息抜きに庭園に行ってみるか?」
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マリー:「そうね。そう言えば、地下室もあったみたいだったわ。ワインセラーとかあるのかしら。外国産のワイン、見てみたいわ」
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カイン:「よし。じゃあ、気を取り直して庭園でお日様にあたろう。そのあとは地下室だ」
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0:庭園から戻ってきたカインとマリーに、アリシアが声を掛ける。
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アリシア:「あ、カインさんとマリーさん。お邸(やしき)探検、いかがです?」
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カイン:「アンティークもジュエリーも素晴らしいですね。絵画も圧倒されましたよ。私たちには手が出せない物ばかりで…まぁ、私たちは指輪やネックレスは安物買いですよ…」
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アリシア:「そうですか…。じゃあ、鍵を掛けているんですけど、地下室のワインセラーはご興味ありますか?」
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カイン:「はい!やっぱり、ワインセラーもあったんですね。どんなお酒があるのか楽しみです」
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アリシア:「あ、地下室の扉はちょっと鍵をかけていて…ごめんなさいね。ちょっとマリーさんに個人的にお話をしたいことがあって…マリーさん、お時間、大丈夫ですか?」
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マリー:「あ、はい。じゃあ、またあとでね、あなた」
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カイン:「あぁ。じゃあ、よろしくお願いします…って言ったけど、どうしようかな…どこか見るところ、あったかなぁ」
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シエル:(N)『邸(やしき)探検で時間を使ったカインとマリー。別行動していたら、すでに日は暮れ、夜食の時間になった。食堂にいたのは、デュエルとカインだけ。マリーはアリシアと一緒のはずなのに、帰ってこない。また、シエルも食堂に現われず、カインひとりでデュエルの運ぶ料理を食べていた』
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カイン:「あの…デュエル様、マリーはどこに?シエル様やアリシア様も…」
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デュエル:「あぁ、マリーさんは、ワインの話でアリシアとワインセラーに籠って(こもって)いますよ。さっき、ワインを取りに地下室に行ったら、ふたりともワインの話で盛り上がってました。だいぶお好きなんですね、マリーさん。しかもとびきりお詳しい。食事より夢中になってますよ」
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カイン:「え、マリーがアリシア様とふたりで?早く教えていただければ良いのに…私も話に混ざりたかった…」
0:
デュエル:「マリーさんは、アリシアに任せておけば大丈夫ですよ。それと、父上は、今日は食事の時間が少し遅くなるだけです。ご心配なく。カインさんひとりの食事は寂しいと思いますが、ワインも食事もゆっくり食べてください。食事の後は、シャワーをどうぞ」
0:
カイン:「あ、ありがとうございます。…大丈夫かなぁ、マリー…。とりあえず、シャワーを浴びてくるか。お食事、ご馳走様でした」
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シエル:(N)『ひとりシャワーに向かうカイン。マリーはワインセラーでアリシアとワインの話で盛り上がっている…』
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0:
シエル:(N)『今日は赤き月の日…。獲物はかかった…しかも、ワインを嗜む(たしなむ)、とびきりのふたり…』
0:
アリシア:(N)『ふふふっ…私の大好きなとびきりのハート…ワインに満たされて、活き活きしているわ…』
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デュエル:(N)『父上とアリシアの残り物…ボクが綺麗に片付けなくちゃ…美味しいスープになるだろうね…』
0:
一夜明けて
0:
シエル:(N)『昨日の夜の悪天候のことで、今日も豪雨が心配されたが、今夜は、赤き月が綺麗に見えた。私たちバッカス家は、赤き月を見ることで、正体を現す、人ならざる魔物だ。ちょうど良いタイミングで、獲物が邸(やしき)に現れた。カインとマリー夫妻。マリーは赤き月の噂に恐怖を覚えていたが、カインが取り合わなかった』
0:
シエル:(N)『赤き月に怯えるマリー。取り合わないカイン。赤き月は、月に1度見られる現象。我々3人を本当の姿にしてくれる。私の正体はヴァンパイア。そしてアリシアは鬼。デュエルはキメラ…私たちの食事は、邸に訪れた人間…富豪のバッカス家と名乗っているが、私たち3人は家族関係はない。この魔物の住処が、バッカス一家だ』
0:
シエル:「マリーさんのことはご心配なく。今晩もお泊まりいただくのも、構いませんよ。アリシアがマリーさんのお世話をしますから安心して」
0:
カイン:「……でも、赤き月の夜…なんですよね…」
0:
デュエル:「あぁ。もう、雨はやんだね。赤き月が見える」
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カイン:「そんな…マリー…どこにいるんだ…邸から出られないはずなのに…」
0:
デュエル:「馬もいるし、独りでどこかに行くとは思えない…」
0:
カイン:「マリーは馬には乗れません…。しかし、外はこんなに暗いのに…マリー…どこにいるんだ…」
0:
デュエル:「結局、おふたりは、屋敷探検終わったのですか?マリーさんは食事に来られませんでしたけど…まだアリシアと一緒かな?」
0:
カイン:「そうなんです!地下室に興味を持ったときに、アリシア様に呼ばれてマリーと私は別行動になりました。マリーがアリシア様と一緒なら、ワインセラーにいると言われましたが…そこから姿を見ていない…体調を崩していても、アリシア様と話しが弾んでいたとしても、食事の席に来ると思うんですけど…」
0:
マリー:「い、嫌ァ!」
0:
カイン:「え、かすがだが、マリーの声!どこから…!?まさか、まだアリシア様と一緒にワインセラーにいるのか…!すみません!地下室の入口はどこですか?」
0:
シエル:(N)『デュエルのあとに続き、カインは焦ったように地下室に向かって走り出した』
0:
カイン:「マリー!無事でいてくれ!」
0:
シエル:(N)『全力で走り、地下室へ着く』
0:
カイン:「はぁ、はぁ…。あ、扉が開かない…!お願いします!鍵を開けてください!」
0:
シエル:「いいですよ。扉に鍵をかけていた地下室への入口です。さぁ、どうぞ、お入りください…」
0:
デュエル:「カインさん。大丈夫ですか?カインさんにとって、辛い光景になっていても…」
0:
カイン:「かまいません。マリーの身に何があったのか…それが知りたい。もし何かあったら、私も…あとを追って……」
0:
デュエル:「なるほど。一心同体ですね」
0:
シエル:(N)『中に入り、先を進むカイン。地下室内に広がるのは、ワインの香り。階段を降りきると、そこにはナイフを持ったアリシアと、傷をおったマリーがいた』
0:
カイン:「アリシア様!なにをされているのですか!」
0:
アリシア:「あら。いらっしゃい…」
0:
マリー:「あ、あなた…」
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カイン:「マリー!大丈夫か!?」
0:
シエル:(N)『とっさにアリシアの肩をつかみ、引き離すようにマリーの前に立ちはだかるカイン』
0:
マリー:「あなた…(泣きながらカインに寄り添い)」
0:
カイン:「どういうことですか…説明していただきたい…」
0:
アリシア:「私は、赤き月の日にだけ味わえる大切なハートをいただこうとしただけよ。芳醇なワインで満たされた、極上のハートを…」
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カイン:「ハートをいただく?…意味がわからない。そんなことで、マリーをアリシア様に渡せない…。幼い頃、私たちは近所に住んでいたんだ。いつも一緒に遊んで、勉強を教えて…大人になっていくうちにマリーは、どんどん綺麗になって…いつの間にか、マリーを愛していた。うちのワイン造りも、子供の頃から手伝ってくれて…」
0:
アリシア:「混乱しているのね。思い出も能書きも、どうでもいいのよ!さぁ、私にハートをちょうだい、ふたりとも……っ!」
0:
シエル:(N)『大きく振りかぶり、マリーの心臓を目掛けてナイフを振りかざすアリシア』
0:
マリー:「きゃあっ!あ、あぁ…あなた、助けて…あっああ!あなた…」
0:
カイン:「アリシア様!やめてください!」
0:
アリシア:「ボーッとしてると、あなたのハートもいただくわよ!」
0:
カイン:「そうはさせない!」
0:
アリシア:「今更 足掻い(あがい)ても、逃がさないわ!」
0:
マリー:「あなた、お願い…危ないことはしないで…!」
0:
シエル:(N)『怯えるマリー。先に赤き月に照らされていたアリシアの本性が飛び出す。角が生え、歯は牙になり、爪は鋭く固く伸び、2人を攻撃する』
0:
カイン:「あ、あぁ…その姿は何だ…!恐ろしい魔物だ!まさか、アリシア様…!」
0:
アリシア:「ナイフなんてまどろっこしいわ。このまま2人を切り裂いてあげる!」
0:
シエル:「アリシア。加減はしてくれよ。私に必要な血液が流れていってしまう」
0:
アリシア:「いいわ、お父様。先にマリーさんを差し上げる」
0:
カイン:「何っ!?やめろ!マリーが何かしたと言うのかっ!なぜマリーを狙う!」
0:
アリシア:「狙ってるのは、あなたも一緒よ?ワインに満たされた、そのハートをいただくの!まずは、マリーさん…その次はあなたよ!」
0:
マリー:「きゃあっ!いやっ!来ないで!!助けて!あなたっ!」
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アリシア:「さぁ、お父様。マリーさんの生き血をどうぞ…ふふっ」
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カイン:「やめてくれ!もうこれ以上マリーを傷つけないでくれ!マリーーー!!」
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カイン:(N)『私はアリシア様に身動きが取れないように押さえつけられる。その力は、とても女性のものではない』
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カイン:「ぅっ、くそっ!離せ!なんでビクともしないんだ…!」
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シエル:(N)『私は生気(せいき)を失ったマリーの首筋に、容赦なく牙を立てる…満足するまで生き血を啜る(すする)…』
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シエル:「ふぅ…さすが、いいワインを飲んだだけのことはある。素晴らしい味だった。ありがとう、マリー嬢」
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シエル:(N)『マリーの生き血を飲み、満足そうな笑みを浮かべる…そして、息絶えたマリーをドサリと床に投げた』
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カイン:「あぁっ、マリー!」
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0:肩を落とすカイン。生き甲斐を亡くし、呆然としている。
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カイン:「……アリシア様…これは、どういうことですか…なぜ、マリーを…子供に恵まれなかった分、私とマリーのふたりで幸せに過ごしていたのに…」
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アリシア:「簡単なことよ。マリーさんは、どこか澄んだワインの香りがしたの。とても芳醇(ほうじゅん)で、爽やかな舌触り。だから、そのハートをいただこうとした…まだ口にしていないけれど、きっとマリーさんのハートはおいしいのでしょうね…ふふっ」
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カイン:「そんな…そんな身勝手な理由で、マリーを!!」
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アリシア:「あら、あなたも美味しそうな香りがするわ。どうする?愛するマリーさんと一緒に、私に食べてもらう?そうすれば、私の中で、ふたりは生き続けるわ」
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カイン:「っくぅ…」
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アリシア:「ちなみに言っておくけど、私たちは人間じゃないの。私たちの体の中には心臓がないから、心臓を狙っての敵討ちはできないわ」
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デュエル:「ねぇ、アリシア。まだ話すの?ボク、食事抜きなんだけど。父上、マリーさんをもらうよ。さぁ、こっちに…」
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アリシア:「デュエル、ハートはとっておいてね?さぁ、カインさん。私たちが怖くない?この赤き月の力に呼ばれ、私たちは自分を取り戻す」
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カイン:「…何の話だ…人間じゃないなら、何者だ。そして、アリシア様のその姿…バッカス家は、狂った家族なのか…赤き月が何を呼ぶ…」
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デュエル:「そうだね。カインさんともこれでお別れだから、教えてあげるよ。ボクたち3人は人間でも家族でも無い。父上はヴァンパイア。人の血を飲んで生きてる。マリーさんみたいに豪快にね。そして、アリシアは鬼。健康で芳醇なハートが源。父上もアリシアも、血液やハートがワインに満たされていれば、最高なのさ。そしてボクはキメラ。柔らかで新鮮な人の肉をこよなく愛しているんだ…」
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カイン:「…意味がわからない。ヴァンパイア…鬼…キメラ…」
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アリシア:「わからなくてもいいのよ。あなたがこの記憶を持つのも、もうすぐ終わるから。さぁ、お父様とデュエルの為にあなたの命をちょうだい…そして、私にも…」
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カイン:「(少し狂気じみて)渡さない!私の大切なマリーは誰にも渡さない!マリーを連れて出ていくだけだ!」
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アリシア:「バカね。そんなことして、マリーさんは喜ぶ?どんどん醜くなっていく姿を、愛してるカインさんに見せたくないんじゃないかしら?既に死んでいるのだから」
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カイン:「っ…くぅ」
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アリシア:「マリーさんのワインに対する愛情、とても素敵だったわ。あなたと一緒にワイン造りしていて、本当に幸せですって言っていたわよ。子供の頃から、おままごとをするみたいにブドウを楽しく踏み潰していたみたいね」
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カイン:「マリーが話したのか…」
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アリシア:「えぇ。それはもう、幸せそうに。子供の頃から一緒にいて、カインさんにプロポーズされて、ワインをもっともっと好きになっていたんですって。このワインセラーも、あなたと一緒に見たかったって言っていたわ」
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カイン:「私だってそうだ…毎年、マリーと一緒にブドウを選んで摘んで、とびきりのワインにして、お客様に喜んでもらえるようにって…」
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アリシア:「それもマリーさんから聞いたわ。他の外国産のワインも試飲してみたいって言うから、樽のワインを勧めたの。喜んで飲んでいたわ。ワインに満たされたマリーさんは、それはとても美味しいでしょうね…」
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カイン:「…それでマリーとあなたは食堂に来なかったんだな…」
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アリシア:「正解。大丈夫よ。マリーさんの血液はこのままお父様が飲み干し、亡骸はデュエルが美味しいスープにしてくれるわ」
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カイン:「……殺せ」
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アリシア:「なぁに?どうしたの?」
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カイン:「…私のことも、マリーと一緒に殺してくれ。マリーのいないこの世界には、私は要らない…」
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アリシア:「あら。諦めたの?寂しいの?あなたのワインを待っているファンをおいてまで、マリーさんを追いかけるの?」
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カイン:「あれは、私とマリーの畑だ。ひとりじゃ仕事にならない。殺してもらえないなら、馬車で事故を起こす」
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シエル:「私の邸に近いところで事故を起こすのは非常に遺憾(いかん)だ。迷惑をかけるようなことは、やめてもらおう。私がお前の血液をストックして、気が向いたら飲んでやろうか?」
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カイン:「それで構わない。…赤き月の伝説は、本当にあったんだな。で。私の体はどうなる?」
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デュエル:「言っただろ。ボクの作るスープの具になるよ。出汁にもなる」
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アリシア:「“昨日のあのスープの肉は人間の物…最悪だ”って顔してる。あはははっ。さっき、ひとりで食事していたとき、ワインを飲んだわよね?そろそろあなたのハートをもらってもいい?あ、そうそう。配達してたワインは、すべて貰っておくわね」
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カイン:「勝手にしろ……。やっぱり、赤き月の夜はついてない…マリー。なぜ私はマリーの言葉を信じなかった……肌が冷たいな…こんなに冷えきって…愛しいマリー…私もそっちに行きたいよ……何も喋らない唇…マリー…(泣)」
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アリシア:「もう、まどろっこしいのよ。いい加減、死になさい!」
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シエル:(N)『再び鋼鉄の爪先を背中から心臓に目掛けて突き刺すアリシア』
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カイン:「う…がはっ。なぜ、バッカス家は滅びない…なぜ、こうして…社会の日常に、栄光の貴族だと…認められる…」
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アリシア:「さて。なぜかしら…どう思う? デュエル…」
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デュエル:「それは、ボクたちが優秀だからさ。朽ち果てることの無い永遠の命は、みんな、この邸で護られている。わかるかい?ボクたちは3人は、人間の何よりも劣っていない。そう、何ひとつ。バッカス家は勝者なんだよ…あははは」
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シエル:「それにしても、往生際が悪いね。マリーが待っているよ。早く逝っておやり、カイン…」
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アリシア:「さあ、もういいでしょ?マリーのところにいきなさい」
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シエル:(N)『カインの背中に突き刺した爪は、カインの心臓を取り出して鮮血が飛び散る』
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カイン:(N)『あ…アリシア様の欲しがっていたハート…心臓の…このことなのか……今行くよ、マリー…またふたりで……一緒に…』
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デュエル:「今月も、新しい肉を手に入れた。父上も、これだけの生き血を手に入れて…。次の赤き月の夜も楽しみだ」
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シエル:「さぁ。明日になったら、不要な物は神木(しんぼく)の祠(ほこら)に捨ててこよう。あの神木は神聖で、何もかも残さず綺麗に燃える」
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デュエル:「さあ、とびきりのスープを作ろう。今回は、ワインだけじゃなくて、とびきりのスパイス、愛情がこもってる…」
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シエル:「マリーの生き血は、とても素晴らしかった。ワインだけではなく、若さが心地よかったな」
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アリシア:「そうね。じゃあね、カインさん、マリーさん。おふたりとも、ご馳走をありがとう…お幸せにね。ふふふ」
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