ゆうれい屋敷の連鎖 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 26 0 0 02/20
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー


○道 ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー


○道

地球家族が道を歩いている。父が地図を見ている。
父「この町の家の並び方は面白いなあ。ほら、見てごらん」
父、地球家族5人に地図を見せる。
地図には1981番から2019番までの番号がふられた四角形が描かれており、ヘビのように番号順に数珠つなぎになっている。さらに2019番と隣り合うのは、大きな2020番の四角形。その横はすぐ海になっている。
父「この四角形は、全部、家だよ。向こうまでずっと1軒ずつつながっているんだ」
地球家族、周りを見渡す。地図通りに家が並んでいるのが確認できる。
ミサ「面白いわね。どの家も、両隣りに隣の家が隣接しているわけね」
ジュン「ミサ、両隣りに隣の家があるのは当たり前だ」
ミサ「そうね。家どうしが一本の線のようにつながっていると言えばいいのかしら。でも、どうしてだろう?」
母「そして、一番端の大きい2020番は、誰の家かしら」
その時、突然、男性の声がする。
HF「2020番は、ホテルですよ」
地球家族、驚いてHFを見る。
HF「あ、驚かせてしまってすみません。地球のみなさんですね。初めまして。本日はわが家にお泊まりいただくことになっています」
父「あー、そうでしたか。どうぞよろしくお願いします」
HF「わが家は2000番の家ですから、もうすぐそこですよ」
ジュン「家は1番から順番に番号があるんですか?」
HF「そうですよ。この地図にはのっていませんが、ずっと北の端に1番の家があります」
ミサ「どうしてこんなふうに、家がつながって建てられているんですか?」
HF「これは昔からの言い伝えなのですが、このようにしておけば、幸福の神様が、家から家へと渡ってやって来るらしいんです」
母「へえ」
HF「この辺りでも、空き地が1つあったらしくて、幸福はそこで止まってしまいました。そこで、空き地に家を建てたところ、その家を経由して、その隣の家、その隣というように、幸福が訪れました」
ジュン「その話をみなさん、信じていらっしゃるんですね」
HF「そうです。だから、われわれの家に対する愛着は、ものすごいです。みんな、家を大切にして、家を取り壊した人など誰もいません」
地球家族、近くの家を見渡す。
父「庭も、どこもきれいですね。家への愛情が伝わってきますよ」
2000番の家の前に着く。
HF「さあ、着きましたよ。ここから、2020ホテルも見えます」
HF、遠くに見える大きな建物を指さす。
ジュン「あー、例の2020番ですね」
HF「わが町の町営ホテルです。海沿いにあるので、いつも宿泊客でいっぱいで、町の貴重な収益源ですよ」
玄関が開く。HMが出迎える。
HM「みなさん、お待ちしていました。中へどうぞ」

○ホストハウスの居間

HF、HM、地球家族6人が座っている。
母「なんだか、とても居心地がいいわ。家がきれいで、とても暖かみを感じます」
HM「気に入っていただけて、何よりです。うちには子供がいないので、家が傷ついていないというのはあるんですけど、暖かい感じがするのは、どの家も同じですよ」
HF、窓の外を指さす。家が何軒か見える。
HF「海が見えると完璧なんですけどね。残念ながら、家でふさがれてしまって見えません」
地球家族6人、ほほえむ。

○客間

地球家族6人がくつろいでいる。
母「この部屋も、とってもいい気持ち。不思議だわ」
ジュン「僕は神様なんて非科学的なものは信じないけど、幸福の神様の話は信じたくなるくらい、家の中が快適だね」
ミサ「気持ち良すぎて、眠くなってきたわ」
父「早めに寝るとするか。久しぶりにいい夢がみられそうだ」

○その日の夜、客間

電気が消えて真っ暗な中、女性がすすり泣く声がする。
父「ん、何か声が聞こえてこないか」
母「女の人の声ね」
ジュン「僕も聞こえる」
ミサ「なんか、この部屋から聞こえてない?」
タク「そんな馬鹿な・・・」
父「なんだ、みんな起きてるのか。リコは寝てるのかな」
女性の細い声がまた聞こえる。
母「電気をつけてみましょう」
母、壁のスイッチを押す。薄い明かりしかつかない。
母「おかしいわね。これじゃ、まだちょっと暗いわ」
ミサ「見て! カーテンが動いてる!」
カーテンが少し動く。
タク「風かな」
ミサ「窓は閉まってるわよ」
リコは眠っている。
その時、カーテンがまた動く。
ジュン「動いた。後ろに何かいる」
カーテンの後ろから女性の細い声。
カーテンが大きく動き、青白い女性の顔が現れる。上半身のみで、宙に浮いている。
父、目を見開いて驚く。
父「幽霊! 幽霊!」
父、大声で叫ぼうとするが、声にならない。
その時、父が夢から覚めて、ベッドの上で上半身を起こす。
父「はっ、夢か・・・」
父が部屋を見渡すと、母、ジュン、ミサ、タクも同じような恰好で、ベッドの上に座っている。
外は明るくなっている。
母「夢か・・・」
ジュン「え?」
ミサ「もしかして・・・」
タク「幽霊の夢・・・」
ミサ「うそ、タクも?」
ジュン「ミサも?」
母「ジュンも?」
父「お母さんもか。全員、幽霊の夢を見たのか」
ミサ「上半身だけの女の人・・・」
ジュン「同じだ」
父、母、タク、うなずく。
ジュン「本当に夢だったのかな」
ミサ「待って。リコがまだ眠ってる」
みんなの視線がリコに向けられる。
リコの寝顔がしだいに険しい表情にあり、突然、叫び声をあげる。
リコ「キャー!」
リコ、飛び起きる。
リコ「幽霊! 幽霊!」
部屋のドアが開き、HFとHMが入ってくる。
HF「大丈夫ですか?」
HM「リコちゃん、大丈夫?」
ジュン「全員、幽霊を見たんです。本当に夢だったのかな」
HM「はい、夢です」
ジュン「え?」
HF「安心してください。幽霊なんて、この世にいませんから。間違いなく、夢ですよ。私たちも、たった今、幽霊の夢を見て目覚めたところです」
父「え、お二人も?」

○居間

HF、HM、地球家族6人が座っている。
父「この不可解な夢について、事情をご存知のようですね」
HF「この家で眠る人の夢には、毎日幽霊が出るんです。正確に言えば、昨日の朝までは出ませんでした。今朝から出るようになりました」
HM「もっと正確に言えば、隣の家では、昨日の朝から幽霊が夢に出るようになりました。明日の朝からは、こっちの隣の家で出るようになるでしょう」
ミサ「それって、つまり・・・」
HF「夢の中の幽霊が、家から家へと伝染しているんです。もっとも、どうしてこんなことが始まってしまったのか、それはわかりません。まさに伝染病のようなものです」
ジュン「家から家に伝わるのは、幸福の神様だけじゃなかったのか・・・」
母「今日この家に伝染することはわかっていたんですね」
HF「数え上げていたので、わかっていましたよ。もともと、みなさんがお泊りになるのは今夜の予定だったんです。ところが、みなさんの日程が1日変更になって、図らずも幽霊と会っていただくことになってしまいました」
父「昨日のうちにおっしゃってくださればよかったのに」
HM「それはそれで、怖くて眠れなかったでしょう。それに、地球のみなさんの夢には幽霊が出ないかもしれないという期待もあったのですが、われわれと一緒でしたね」
母「これから毎日、みなさんは幽霊の夢を見ることになるんですか?」
HF「そうです。毎日です」
地球家族「・・・」
HF「まあ、しょせん、夢ですからね。でも、この町の問題が一つあります。20日後に、幽霊はいよいよ2020ホテルに伝染することになるのです」
父「それは困りましたね。夢に幽霊が必ず出るホテルなんて、泊まってもらえないでしょう」
HF「そうなんですよ。観光の目玉であるあのホテルがそんなことになったら・・・」
ミサ「ホテルにまで幽霊が移ってしまうのを防ぐ方法って、何かないのかしら」
「・・・」
ジュン「途中で家を1軒、壊してしまったらいいのでは・・・」
母「ちょっと、なんてことを・・・」
HF「そう、ジュンさん、理屈上はその通りなんです。家を壊せば、幽霊は確実にそこで止まり、ホテルは助かります。でも、壊していいと言ってくれる人などいないでしょう。みんな家を愛しているんです。取り壊すくらいなら、幽霊屋敷になることなど大した問題ではありません」
ジュン「お気持ちはよくわかりますよ」
全員「・・・」
ジュン「でも、この話を聞いて、破壊消防という消防の手段を思い出しました。ご存知ですか?」
HF「いえ、知りません。でも、おっしゃりたいことがなんとなくわかりました。さっそく、町長さんに提案してみましょう。町長は、2020ホテルの支配人なんです」
HF、部屋を出る。

○しばらくして、居間

HMと地球家族6人が座っている。HFが部屋に入る。
HF「(地球家族6人に)今、町長さんに電話で話したところ、今から緊急で、2020ホテルの大広間で住民集会を始めるそうです。みなさんにも出席していただきたいのですが・・・」
母「私たちもですか?」

〇ホテルの大広間

60人くらいの住民が着席している。前方のホワイトボードには、2000番から2020番までの家の図面が張り出されている。
前で町長があいさつを始める。
町長「おはようございます。休日の朝早くからお集まりいただき、しかも突然お呼びだてして、すみません。さて、ご存知のとおり、昨晩から今朝にかけて、2000番の家が幽霊屋敷となりました。このままでは、20日後にはいよいよ、この2020ホテルの宿泊者の夢に幽霊が現れることになってしまいます。そこで、解決策を話し合っていただくために、今日は2001番から2019番のすべての方々にお集まりいただきました。みなさん、おそろいですね?」
住民「うちは、主人が疲れていてまだ家で寝ていますけど、いいですよね」
住民「うちは、おじいちゃんが留守番しています」
町長「あ、だめです、だめです。大事な話し合いですから、今すぐ家族全員ここに集めてください。全員ですよ。これは町長命令です」
何人かの住民が、ぶつぶつ不平を言いながら立ち上がる。

〇ホテルの大広間

町長が話し続ける。
町長「今度こそ、みなさんおそろいですね。さて、この幽霊問題の解決案として、2000番のご家族から提案が出ていますので、お話をみんなで伺うことにしましょう」
HF「(ジュンに)さあ、ジュンさん、さっきの話をここでみなさんに説明してください」
ジュン「は、はい」
HFとジュンが前に立つ。
ジュン「僕たちの住む地球では、火災を防ぐために、破壊消防という方法があって、今でこそ大きな火事が減ってその方法はあまり使われていませんが、昔は当たり前に行われていました。どのような方法かというと、火災の時に、隣の家に次々に延焼して大災害になることを防ぐために、いくつかの家を先に破壊して取り払っておくんです。この町の今回の問題は、その考え方を使うことで解決できると思うんです。一軒でも家を壊すのは抵抗があるかもしれませんが、幽霊が伝染するのはその手前の家まででストップするので、その先の多くの家が伝染せずに済みます。前向きに考えたらいいのではないかと・・・」
町長「ありがとうございます。家を壊すという発想は今まで私にはありませんでしたが、先ほど2000番さんから電話でこの話を聞いて、ぜひ前向きに検討しようと思いました。このホテルの今後の利益は、まさにこの町の発展に直結します。みんなでこのホテルを守るためにも犠牲が出るのはやむをえません」
全員「・・・」
町長「では、どの家を壊すことにするか、みなさんで今から話し合って、意見をまとめてください」
どよめきが起きる。
住民「うちは、壊すのは絶対に嫌です。家族はみな、家に愛着があります」
住民「うちも同じです。壊すくらいなら、幽霊屋敷になるほうがまだましです」
住民「壊してもいいという人などいないでしょう? いますか?」
全員「・・・」
住民「ほら、手があがるはずがない」
2001番の住民「では、ここは公平に、くじ引きで決めましょうか」
2019番の住民「普通にくじ引きをしても、公平にはなりませんよ。だって、うちが壊されることになった場合、ホテルだけは守れるけれど、みなさん全部幽霊屋敷になるんですよ。逆に、2001番さんの家を壊せば、ホテルだけでなく、ほかの全部の家を幽霊から守れるんですから」
住民「おっしゃるとおりだ。2001番さんを壊すのが、最も被害を少なくする方法だ」
住民「そうだ、そうだ」
2001番の住民「いや、そりゃそうですけど、だからって、うちを壊すことに即決するのでは、あまりにも私たちは不運すぎます。たまたま今日決めるからそうなるのではありませんか! 確率的にうちが一番不利になるような配分のくじでも仕方がありませんが、それでも少なくとも、くじ引きにはすべきです」
住民「じゃあ、どんなくじ引きならば理想的なのか、作ってみてくださいよ。みんなが納得のいく方法で」
2001番の住民「いや、そう言われても、私、あまり頭が良くなくて・・・ どなたか、作れませんか?」
全員「・・・」
ミサ「(ジュンに)ジュン、作ってあげられる?」
ジュン「いや、ちょっと難しいな、これは」
ジュンの頭の中が計算式でぐちゃぐちゃしている。

〇しばらくして、ホテルの大広間

町長「どうやら、意見がまとまらないようですな」
全員「・・・」
町長「仕方がありません。今日はこれで解散にしましょう」
住民「いいんですか、壊す家を決めなくて?」
町長「もう手は打ってあります。こうなることは、あらかじめ予想していましたので」
住民「手は打ってあるって・・・?」
住民「ちょっと待て。なんだ、この音は?」
ホテルの外で大きな工事のような音が聞こえる。
全員、静まり返る。
町長「あ・・・ この部屋の防音設備も、さすがに隣の家の音は消せないか・・・」
2019番の住民「隣の家って、まさか・・・」
住民全員、あわてて部屋を走り出る。

〇ホテルの入り口

住民全員が外に走って出る。
外を見て、みんな驚く。
ホテルから見えるはずの家がすべて解体されており、大量のガレキが残されている。
近くをブルドーザーが動いている。
住民「そんな・・・」
住民「家が、もうない・・・」
町長がスピーカーで話し始める。
町長「2001番から2019番までの19軒、すべて取り壊しさせていただきました」
住民「なんてことを・・・」
ジュン「あのー、破壊する家は、1軒だけでよかったんですよ。全部壊さなくても・・・」
町長「それくらい、私にもわかっていました。私も馬鹿ではありません」
住民「じゃあ、どうして?」
町長「だから、壊す家を話し合いで決めるようにお願いしたのです。でも、現に決まらなかったじゃありませんか。私には予想できていました」
住民「・・・」
町長「悪く思わないでください。全住民がホテルに避難している今がチャンスでした。今しかないと思いました。全部壊したので、公平で恨みっこなしです」
住民「いや、私は町長を恨みますよ。思い出の家が・・・」
住民「私たちの大切な家が・・・」

HF「(地球家族6人に)さあ、行きましょう。われわれは部外者です」
ジュン「僕たち、余計なことを・・・」
HF「うちは大丈夫です。ぎりぎり壊されずに済んだんです。みなさんのおかげです」
ジュン「いや、僕たちは何も・・・。むしろ、ほかの19個の家族に申し訳なくて・・・」
母「幽霊のほうは、大丈夫ですか?」
HF「それは心配いりません。実は、幽霊屋敷になった家族たちで、幽霊とどうやって仲良くつきあうかを話し合う会ができているんです。うちも今日から仲間入りで、さっそく今日の午後、会合に行きます。楽しみだな」
HFとHM、顔を見合わせてほほえむ。
地球家族、それを見てほほえむ。
全員、振り返る。海が見える。
HF「ほら、わが家から海がよく見えるようになりましたよ」

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