かたづける技術 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 11 0 0 02/13
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HF=ホストファーザー
HS=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HF=ホストファーザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 16歳


○ホストハウスの前

地球家族6人が立っている。
母「今日泊まるのは、この家ね」
父「(手元の書類を見ながら)ここのホストファーザーは有名なテレビ番組の司会者らしい」
ジュン「へえ」
ドアが開き、HMが顔を出す。
HM「あ、いらっしゃい。どうぞおはいりください」
リコ「おじゃまします」
地球家族6人が玄関から中に入ろうとすると、廊下には、いろいろな物が散らかっている。
母「あ、まだお掃除中でしたか?」
HM「いえ、いつもこんな感じです」

○ダイニング
HMと地球家族6人が入ると、HSが立っている。
HS「お待ちしていました」
やはり床の上は足の踏み場もない散らかり具合。机や収納などもいっさい置かれていない。
父「(小声で)足の踏み場もないとは、このことだな・・・」
HS「歩くところはありますよ。ここと、ここを通ってください」
HS、散らかっている中で足を置けそうな場所を指さす。
地球家族6人、苦笑い。
HM「ちょうどよかった。みなさん、主人が司会をしているテレビのトークショーが始まりますから、見てください」
父「え、この家の中でやっているんですか?」
HM「出演者は全員自宅から、オンラインで撮影しているんですよ」

○居間

やはり、部屋中に物が大きく散らかっている。
部屋の真ん中にテレビカメラが立っており、正面の壁にはテレビの画面。
HFがマイクを持ってテレビカメラに映るように立っている。
HMがドアを開けて部屋に入り、地球家族6人が後に続いて入る。
HF「(カメラに向かって)今晩もみなさんのお相手をさせていただく、私、ミスターさらけ出しです。いつものように、学者や弁護士、社長の皆さんと一緒に番組をお送りします!」
テレビ画面に映る映像は6分割されており、1つはHF、他の5つにはニュースキャスター、学者などが、1人ずつそれぞれの自宅の部屋を背景にして座っている。どの部屋も、床が散らかっている。
ミサ「(小声で)うわ、みんな部屋をかたづけていない・・・」
HF「(カメラに向かって)さて、今晩はどんな話をしようかな・・・」
HF、振り返り、地球家族のほうを見る。
HF「あ、地球のみなさん。もう到着されていたんですか!」
地球家族6人、会釈をする。
HF「じゃあ、今日の話題はもうこれしかありません。私の家に、今日は地球からの旅行者をお招きしているんですよ。(地球家族に向かって)みなさん、もっと前のほうにどうぞ」
地球家族6人、とまどいながら前に進む。
HF「(地球家族に向かって)この星に来た感想でも教えてもらえますか?」
ミサが手を挙げる。
ミサ「じゃあ、私から質問いいですか?」
HF「どうぞ」
ミサ「今晩はどんな話をしようかな、って最初におっしゃいましたけど、テーマは前もって決まっていないんですか?」
HF「決めていないんですよ。まず私がその時に思いついたことをしゃべって、それに対して学者の先生たちがコメントしてくれて、視聴者からも意見が届くんですよ」
ミサ「へえ、すごい。じゃ、続けて質問ですけど・・・」

○しばらくして、居間

トークショーが続いている。
後ろで地球家族6人とHM、HSが見ている。
HMが小声で地球家族に説明している。
HM「この番組の面白いところは、やっぱり、視聴者のみんなからすぐに反応が届くところなんですよ」
正面のテレビ画面の映像に重なるように、顔マークが手を挙げたポーズの黄色い絵文字がポン、ポン、ポン、と10個くらい並ぶ。
HM「あの絵文字は、視聴者から届いた『私も同じです』とか『私も同じ体験をしました』というメッセージを表しているんですよ」
次に、テレビ画面に桃色の笑顔の絵文字がいくつも並ぶ。
HM「あれは、視聴者から届いた喜びのメッセージです」
次に、テレビ画面に赤色の大きな笑顔の絵文字がいくつも並ぶ。
HM「あれは、最高に幸せという意味です」
次に、テレビ画面に水色のしょんぼりした絵文字がいくつも並ぶ。
HM「あれは、逆に残念な気持ちを表したメッセージです」
次に、テレビ画面に青色の泣き顔の絵文字がいくつも並ぶ。
HM「もっと悲しくなると、こうなります」
ジュン「なるほど、とてもわかりやすいですね」

○しばらくして、廊下

HMと地球家族6人、廊下に出る。
HM「こちらがみなさんに泊まっていただく部屋です」
HM、居間と反対側にある客間を開ける。
この部屋だけは、何も散らかっていないきれいな部屋。

○客間

HMと地球家族、客間に入る。
そこへ、HFが入ってくる。
HF「地球のみなさん、あらためまして、ようこそわが家へ」
ミサ「トークショー、お疲れ様でした。えーと、『ミスターさらけ出し』って自己紹介していましたね」
HF「そうです。自分の毎日の出来事をいつもさらけ出すので、そう呼ばれるようになりました」
HM「昨日なんか、背中におできができました、って話だったものね」
HF「あれは視聴者の反応も良かったぞ。『私も同じです』という反応がたくさん来たから、国民を勇気づけられたと思うよ」
HFの想像の中に、手を挙げたポーズの黄色い絵文字が並ぶテレビ画面。
HF「それにしても、今日はみなさんのおかげで番組が盛り上がりましたよ。特に、ミサさんは素晴らしかった!」
ミサ「え、私?」
HF「まったく物おじせずに良い聞き役になってくれました。ぜひ明日も出てくださいよ」
ミサ「え、明日も?」
HF「明日の朝8時。今度はモーニングショーの司会をやるんですよ」
ミサ「私でよければぜひ・・・」

その時、部屋の外でHSの声が聞こえる。
HS「お父さん。お届け物が届いたわよ。また視聴者からの贈り物だと思う」
HF「今、行くよ」

HF、客間を出ていく。HMと地球家族6人が残る。
ジュン「さっきテレビに映っていましたけど、どの家もすごく散らかっていましたね」
HM「この星では、すべての家がこんな感じですよ。それから、みんな自分の部屋というものがありません。自分の物を置いた所がすなわち自分の領域なんです」
ジュン「地球では、散らかしっぱなしの子どもは叱られます。もしかすると、ここではその逆で、かたづけないほうが偉いんですか?」
HM「いえいえ。私たちはただ、かたづける必要がないだけなんです。何をどこに置いたか全部記憶していますから」
タク「全部記憶?」
ミサ「でも、それだけで大丈夫ですか? 全員で使うものの置き場所を決めておかないと、ほかの人が使って動かしたときに、探さなければいけないじゃないですか?」
HM「みんなで使うものというのがないのよ。機械も、文房具も、洗面用具も、全部ひとりひとりが自分の物を使います」
ジュン「なるほど」
HM「私たちは物を探すという習慣がありません。そこで、お願いがあります。床に散らかっている物をけっして動かさないでくださいね。そのために、このお客様用の部屋を用意しました。」
父「気を付けます」

その時、部屋の外でパーンという鈍い爆発音が聞こえる。
母「何ですか、今の音?」
HM「何かが破裂したのかしら?」
HMと地球家族が部屋を出ると、ちょうどHSが走っている。
HS「お父さんのほうで何かが爆発した!」

○居間

HFが箱を持って座っている。HM、HS,地球家族が入ってくる。
HS「大丈夫?」
HF「贈り物の包みを開けたら、急にパーンという音がして、目の前が真っ暗に・・・」
母「え、まさか危険物?」
HFが箱を開けると、液体の入ったびんが出てくる。
HF「ただのワインか?」
HF、ふたを開けてそのままラッパ飲みをする。
HF「頭がフラフラしてきた。ちょっと薬を飲もう」
HF、立ち上がるが、すぐにキョトンとした表情。
HF「あれ、薬ってどこに置いたっけ?」
HM「あら、思い出せないなんて珍しい。いや、初めてだわ」
HS「もう残ってないんじゃない? 薬局に買いに行ったら?」
HF「そうだな。あれ、財布はどこだ?」
HMとHS、驚いてのけぞる。
HS「えー、財布も思い出せないの?」
HF「まさか・・・」
HM、HS「・・・」
HF「さっきの爆発みたいなの、俺の頭の中がパンクしたんじゃ・・・」
HS「それよ! 噂にきいていたけど、容量オーバーってやつ」
タク「容量オーバー?」
HS「最近、お父さん、もらい物が多いし、持ち物が増えすぎて、頭の中で置き場所を検索できなくなってしまったのよ」
HF「うわー、どうすりゃいいんだ。俺は生まれてこのかた、探し物なんてしたことないんだぞ・・・」
HM、HFに大きなかごを2つ差し出す。
HM「まず、この散らかっている物の中から、お父さんの物を分けて一か所にまとめましょう。どれが自分の物かくらいわかるでしょ」
HF「そうだな。でも、どこに置こうか」
HM「みなさん、申し訳ありません。客間を使わせてください」
父「えー、どうぞ」

○客間

多くの物が床に散らかっている。その前に座るHF。それを取り囲む地球家族。
HF「自分の物をまとめたのはいいけど、これじゃまだ何がどこにあるかわからない・・・」
父「じゃあ、私たちにまかせてください。(地球家族5人に向かって)いいな。みんなでやれば、5分でできる!」
地球家族5人「はい!」
地球家族6人、整理を始める。HFは何もせずにそれを眺めている。

○しばらくして、客間

整理されたいろいろな物が、床に並んでいる。
父「かたづきました。机とか収納がないので床に置きっぱなしですけど、これであちこち探さずに済みますよ」
HF「ありがとうございます!」
その時、HMが入ってくる。
HM「すごい。かたづいたわね! でも、物が多すぎて、みなさんの寝る場所がなくなってしまったわ」
地球家族、床を見渡す。
HM「すみませんが、みなさんには他の家に泊まっていただきましょう」

○近所の家の玄関の前

HMと地球家族6人が立っている。HMがチャイムを押すと、やや暗い表情の女性が家から出てくる。
HM「突然すみません、今夜6人泊まれる部屋を探しているのですが・・・」
近所の女性「あー、じゃ、よろしければ、どうぞ」
HM「本当ですか? 助かります!」
近所の女性「ただし、お願いがあります。家の中がとても恥ずかしいんです。目隠ししてもらえますか?」

地球家族6人が目隠ししている。
リコの目隠しがゆるく、鼻までずれ落ちる。その背後から女性がもう1枚目隠しをする。
近所の女性「もっときつく!」
リコ「ムンギュ!」

○部屋

地球家族6人、目隠しをしたまま寝ている。

○翌朝、部屋

ミサが目隠しをせずにドアを開ける。
ミサ「みんな、起きて、見て」
地球家族5人が目隠しをしたまま起き上がる。

○家の廊下

ミサを先頭に、地球家族が目隠しをはずして廊下を歩く。
ミサ「ほら、どの部屋も、かたづいていてとてもきれい!」
その後ろから、女性が近づく。
近所の女性「恥ずかしいから見ないでほしかったのに」
ジュン「どうして恥ずかしがるんですか? こんなにかたづいているのに」
近所の女性「だって・・・」
女性、窓にかかっているカーテンに目をやる。
近所の女性「視線を感じる!」
女性がカーテンを少し開けると、外にHFが立っている。
近所の女性「わ! びっくり!」
HF、窓を開けて身を乗り出す。
HF「ミサさん、迎えに来ました。もうすぐモーニングショーの時間です」
ミサ「いけない。そんな時間なのね」
HF「(窓から部屋の中を見渡しながら)すごい! この部屋! (窓から入ってきてしまい、となりの部屋も見に行く)この部屋も! どうしてこんなにかたづいているんですか?」
近所の女性「・・・」
HF「おっと、時間がない! ミサさん、行きましょう」
HFとミサが出ていく。
近所の女性「今の男性、どこかで見たことあるような・・・」
ジュン「テレビの司会者ですよ」
近所の女性「そうか、ミスターさらけ出しだ!」
女性、リモコンでテレビをつける。
ちょうどモーニングショーが始まる。
テレビの画面が分割されて、HFとその他3人が映る。HFのとなりにミサが映る。
HF「みなさん、おはようございます。ミスターさらけ出しです。さて、今朝はどんな話をしようかな・・・」
女性と地球家族、テレビを見入っている。
HF「そうそう、私、昨日、いわゆる容量オーバーになってしまいました。何をどこに置いたのか、まるで思い出せないのです。同じ悩みをもつ方、いらっしゃいますか?」
テレビ画面一面に、手を挙げたポーズの顔の黄色い絵文字が並ぶ。
ジュン「こんなにおおぜい・・・」
HF「でも生まれてから一度もかたづけなんてしたことないので、急にかたづけなんてできません。みなさんどうしますか?」
全員「・・・」
HF「そうだ。さっき偶然、とてもかたづいている家を見ました。今から中継に行ってみましょう!」
HF、走り出し、テレビ画面から消える。
ミサ、あわててついて行き、テレビ画面から消える。
母「この家に来るわよ!」
近所の女性「(驚いて)なんですって! 早く散らかさなきゃ! 手伝って!」
女性、床に整理して置いてあったものを散らかし始める。
ジュン「散らかすって・・・」
近所の女性「(大声で)みんなでやれば1分でできる!」
地球家族5人「は、はい!」

部屋じゅうに物が散らかる。
そこへ、ドアが開き、HFとミサが入ってくる。二人ともマイクを持っている。
HF「ごめんください。突然すみません」
HF、部屋の中を見回す。
HF「あれ、なんでこんなに散らかっているの?」
近所の女性「・・・」
HF「かたづけ名人として全国に紹介しようと思っていたのに。ねえ、ミサさん」
ミサ「そ、そうですよ。かたづける方法を本にすれば、ベストセラーになって億万長者になれるかもしれませんよ」
近所の女性「億万長者? 本当?」
出版社の社長「(テレビ画面の中で)私は出版社の社長です。私も、間違いなく本は売れると思います」
近所の女性「・・・じゃ、私、やります。見てて」
女性、ものすごいスピードで部屋をかたづける。
みんな驚いた表情で見ている。
HF「すごい、やっぱりかたづけの天才だ。でも、どうやったらかたづけができるようになるんですか? その方法を教えてもらえないと・・・」
近所の女性「・・・じゃ、お話します。実は私、生まれつき容量が小さいんです」
HF「容量が? 小さい?」
近所の女性「はい。容量オーバーになったとかではなくて、もともとすごく小さいんです。なので、かたづけないと、何がどこにあるかわかりません」
HF「・・・」
近所の女性「こんなこと恥ずかしくて誰にも言えないし、こんなんじゃ誰も一緒に暮らしてくれないから結婚もできない。でも、億万長者になれるならと思い、お話しました」
そのとき、テレビ画面一面に、手を挙げたポーズの顔の黄色い絵文字が並ぶ。
HF「おー、すごい。あなたと同じように、容量が小さくて悩んでいる人が全国にこんなにいますよ」
近所の女性「うそでしょ。信じられない・・・」
ミサ「よく話してくださいました。でも、こんなに大勢いたら、みんなが同じような本を書きますから、億万長者じゃなくて、その何百分の一かもしれませんね」
テレビ画面一面に、がっかりした顔の水色の絵文字が並ぶ。
出版社の社長「いや、残念ですが、努力してかたづけられるようになった経験がないのでは、かたづけられなくて困っている人の助けにはならないでしょうから、本はそもそも出版できないでしょうね」
ミサ「えー。あ、そうか・・・」
テレビ画面一面に、悲しい表情の青色の絵文字が並ぶ。
ミサが女性の表情が固まっていることに気づく。
ミサ「億万長者どころか、ゼロになってしまいましたね。そんなに落ち込まないでください」
近所の女性「いいえ、お金なんてどうでもいいです。それより、仲間がこんなにおおぜいいることがわかって、最高にうれしいんです。マイクを貸してください」
女性、ミサからマイクを奪う。
近所の女性「(テレビカメラに向かって)みなさん、もう恥ずかしがる必要はありません。私たちは堂々と生きていけます。結婚もできます。さあ、踊りましょう!」
女性、最高の笑顔になり、踊りだす。
HFとミサも合わせて踊る。
テレビ画面一面に、大笑いの表情の赤色の絵文字が並ぶ。

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