日中そっくり姉妹 コメディ

父の葬式に行くと、自分そっくりの中国人女性がいた。話を聴いてみると、父が中国で作った愛人の子供であったらしい。父の中国人の愛人の子供と、恋愛や遺産などで争い、そっくりな故に起こる、はちゃめちゃコメディ。
水原原吉 37 1 0 10/09
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第一稿

○葬儀場
   新垣幸男(60)の遺影が飾られている。大きな葬儀場で、数百人が出席している。喪服姿の新垣栗子(32)は、喪服姿の王夢柔(25)を見て、驚く。栗子の身長が約170セ ...続きを読む
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○葬儀場
   新垣幸男(60)の遺影が飾られている。大きな葬儀場で、数百人が出席している。喪服姿の新垣栗子(32)は、喪服姿の王夢柔(25)を見て、驚く。栗子の身長が約170センチ、夢柔の身長が約160センチと身長は違うが、顔はかなり似ている。
栗子・M「あの人、私に超似てる。双子って言われても、違和感ないわ」
   栗子は、じっと夢柔を見つめる。夢柔が、栗子に近づく。
夢柔「初めまして」
   夢柔は中国訛りの発音で話す。本作では夢柔はずっと中国訛りの発音。
栗子「初めまして。どちらの国の方ですか?」
夢柔「中国の上海から来ました」
栗子「上海から? ありがとうございます。私は新垣幸男の娘の栗子です。父の会社は上海にも支社があったから、仕事関係の方かしら?」
夢柔「私は、新垣幸男の娘です」
栗子「娘? 何の冗談を」
   栗子が眉間に皺を寄せる。新垣結衣子(60)がやってくる。
結衣子「栗子ごめんね。今まで、貴女には話さなきゃっとは思っていたけど、話せてなくい事があって。この子、王夢柔って子なんだけど、実はお父さんが上海で作った愛人の子なの。つまり、貴女とは異母姉妹なのよ」
栗子「え? うそ? そんなの聞いてないわ」
   栗子は、目を丸くする。
夢柔「自己紹介、遅れてごめんなさい。私、王夢柔と言います。貴女の妹です」
栗子「はっ? 貴女の姉になった覚えなんか、ないわ。ありえないわ」
   栗子は不機嫌になる。
夢柔「今まで、日本のお姉さんに逢いたかったんですが、ずっと逢う勇気がなくて、ごめんなさい。とりあえず、日本の事が知りたくて、日本の大学に留学して、勉強しています」
栗子「そんなの、知らないわ」
結衣子「私も、お父さんに、中国に愛人の子がいるって知った時は、ビックリしたし、怒ったりもしたわ。でも、この子には何の罪もないし、それにあなたと一応、姉妹だわ。仲良くしてあげて」
栗子「ちなみに、競馬だったら、お父さんが一緒でも、お母さんが違うと兄弟や姉妹じゃないよ。お父さんが同じディープインパクトでも、お母さんが違うと姉妹でも何でもないわ。同じお腹から産まれてない人を姉妹だなんて。しかも、30越えて、初めて逢った中国人を、姉妹と思えなんて言われても、有り得ないわ」
夢柔「ちなみに私、日本に帰化するための手続きしてるから、もうすぐ日本人。お父さんが日本人だから、簡単に帰化できます」
栗子「そんなの、聞いてないわ」
夢柔「ごめんなさい」
結衣子「とりあえずこの子、うちにしばらく泊まってもらうわ。貴女は受け入れられないかもしれないけど、曲がりなりにも姉妹なんだから、一緒に過ごして、仲良くしてもらいましょ」
栗子「勝手にして」
   栗子は、呆れ顔である。

○栗子宅・リビング
   栗子が部屋にいる。インターホンの音がなる。栗子が受話器を取る。幸男の遺影がある。
夢柔の声「夢柔です」
栗子「入って」
   栗子がぶっきらぼうに言う。夢柔が入ってくる。
夢柔「こんにちは」
栗子「ニーハオ」
 栗子は、小バカにしたような口調。
夢柔「それにしても、栗子姉さん、とっても美人ですね」
栗子「どうも。よく言われるわ」
夢柔「って事は、私も美人ね。姉さんに、顔そっくりだから」
栗子「自分で言うかよ」
夢柔「お姉さん、ごめーん」
栗子「お姉さんって、呼ばないでくれる?」
夢柔「わかりました。栗子姉さん」
栗子「もう、勝手にしな」
夢柔「ところで、私の彼を今から、ここに呼んでもいいかしら? 日本人よ」
栗子「好きにして」
夢柔「シェイシェイ。中国語で、ありがとう」
栗子「それくらい、わかるわ」
   夢柔は携帯電話を取り出し、電話する。
夢柔「今から、こっち来て」  
   × × ×
   星野源太(32)が入ってくる。星野は、眼鏡をかけていて、知的な雰囲気がある。
栗子「え? 久しぶり」

○(回想)公園
   栗子と星野は、ベンチに座っている。
   二人は、肉まんを食べている。
栗子「源太、あなたはいつも素敵ね」
星野「ありがとう」
栗子「あなたといると、心が暖まるわ」
   星野は、浮かない顔をしている。
星野「君と別れたいんだ」
栗子「え? どういう事?」
星野「実は、他に好きな女が出来たんだ」
栗子「え?」
星野「中国人留学生なんだ」
栗子「うそでしょ?」
星野「ウソじゃない。ごめん」

○栗子宅・リビング
   星野は、そわそわしている。
星野「夢柔から案内された住所が、君の家でビックリしたよ」
栗子「まさか、あなたは今、この夢柔とつきあってるわけ?」
星野「そうだよ」

○(回想)駅・ホーム(夜)
   人が疎ら。ベンチに座って、夢柔が泣いている。星野が、夢柔の姿を見る。
星野「栗子。こんな所で、なぜ泣いてる? どうしたんだ?」
夢柔「私、栗子じゃないわ。中国から来た夢柔よ」
星野「ごめんなさい。僕の彼女とそっくりだから、ついつい間違えちゃいました。それにしても、こんなところでずっと泣いてて、何か辛い事とかあったのかな?」
夢柔「あなた、優しいね。これから一緒に、飲みにいきませんか? 私の話を聞いてください」
星野「わかった」

○栗子宅・リビング
   星野が気まずそうな顔で、栗子を見つめる。
星野「最初は、栗子とそっくりな人で、栗子と間違えたけど。ゆっくりと話を聞くと、中国から日本に来て一人で頑張っていて、明るくて優しくて健気な女の子で」
栗子「あっそう。それで?」
星野「いつの間にか、好きになってたんだ」
栗子「へえ」
星野「顔がそっくりでも、性格って、全然違うんだなあって、思った」
栗子「何? 私の性格が悪いって、言いたいわけ?」
星野「そんなわけはないけどさ。何ていえば、いいんだろ?」
栗子「要するに、私から逃げて、他の女の元に行ったというわけね」
星野・夢柔同時に「逃げるは恥だが役にたつ」
栗子「うわあ、超ムカつく」
   栗子は、もだえる。
夢柔「ちなみに私たち、カラオケに一緒に行った時、恋ダンスを一緒に踊ったりもした」
栗子「そんな事、聞いてないから」
   栗子は、ふくれっつら。
栗子「それにしても私、百歩譲って、他の女と付き合うのは、許すわ。でも、よりによって、この女に取られるなんて。あー」
   栗子は、頭を抱える。
夢柔「ごめんなさい」
栗子「別に、貴女が謝る事じゃないわ。今更、謝られたって、惨めなだけだし」
   栗子、夢柔、星野は数秒間沈黙。
星野「悪いのは、僕なんだ。ごめん。夢柔は、1ミリも悪くないんだ。むしろ、気を使わせて申し訳ない。本当に、夢柔、ごめん」
夢柔「いえいえ、別に謝らなくても」
栗子「あなた、とことん、夢柔ちゃんをかばうのね。本当に、彼女の事を愛してるのね」
星野「そうさ。申し訳ないけど、本当に愛してるんだ」
栗子「ああ、ここまできっぱりと新しい女に夢中なら、清々しちゃうわ。振られた女として、何の未練もないわ。二人で、お幸せにね」
夢柔「ちなみに私たち、結婚しちゃうんです」
   夢柔と星野は見つめあい、ニッコリ。
栗子「あら、おめでとう」
   栗子は、ぶっきらぼうに言う。
夢柔「ちなみに私、お父さんが正式に認知しているし、非嫡出子だけど、あなたと同じ金額を相続できるそうなの。弁護士さんに確認した。結婚式や新婚旅行に行っても、お釣りがくるわ」
栗子「くっそー。何よ。二度と、中華料理を食べたくないわ」
   栗子は、ふくれ面になる。

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