その戦隊、全員赤 アクション

203X年。「自分達こそ、真の『地球に生きる者』だ」と主張する海底生物群リヴァース(=Live Earth)の地上侵攻に立ち向かっていた伝獣戦隊セイレイジャーは、レッドフェニックス=小藤朱鷺(22)を除いて全滅してしまう……。
マヤマ 山本 5 0 0 09/29
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第一稿

<登場人物>
小藤 朱鷺/レッドフェニックス(22)戦隊のリーダー
丹波 拳一郎(26)格闘家
紅林 倫吾/Mr.ストロベリー(15)高校生、紅林の息子
緋山 誠也/サンタ ...続きを読む
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<登場人物>
小藤 朱鷺/レッドフェニックス(22)戦隊のリーダー
丹波 拳一郎(26)格闘家
紅林 倫吾/Mr.ストロベリー(15)高校生、紅林の息子
緋山 誠也/サンタクロース/先代レッド(31)元リーダー
ロブ         敵組織の幹部
A兵/黒虎      敵組織の戦士

紅林 壱吾(47)司令官、倫吾の父
轟 晶/ブルーケルベロス(31)戦隊のサブリーダー
漢田(68)丹波の師匠
男A
男B

イエロースフィンクス
グリーンタウロス
ピンクペガサス
A兵
B兵



<本編>
○地球・外観
   T「203X年」。
轟N「たとえ一人一人の力は小さく弱くとも」

○市街地
   戦火に見舞われた街。破壊される高層ビル。逃げ惑う人々。
轟N「ともに力を合わせ、悪と戦ってきた戦隊ヒーロー達」
   虎のような黒い戦闘スーツの戦士=黒虎の攻撃を受け、倒れる青い戦闘スーツの戦士=ブルーケルベロス他、黄色、緑色、桃色の戦士達。
轟N「彼らは今まさに、敗北の時を迎えようとしていた……」
   少し離れた場所で、両腕に大きなハサミを携えた赤いザリガニ型の怪人=ロブと対峙する赤い戦闘スーツの戦士=レッドフェニックス。
レッド「(ブルー達の方を見て)ブルー! イエロー! グリーン! ピンク!」
ロブ「貴様、よそ見をしてる場合か?」
   ロブの攻撃を受け、倒れるレッド。
レッド「ぐあっ」
   顔を上げるレッド。視線の先、黒虎が両腕の脇に付いた銃口をブルー達に向け、エネルギーをチャージしている。
黒虎「さて、こちらはとどめと行こうか」
レッド「させるか!」
   低空飛行をして黒虎とブルー達の間に入るレッド。黒虎が向けた銃口から放たれた光線を背中に受ける。
レッド「ぐあああっ!」
   変身が解け、レッドから小藤朱鷺(22)の姿になる。一見、女性とは思えない程ボーイッシュな外見の朱鷺。着ているジャケットは赤基調。
黒虎「おやおや、この僕の必殺技を自分から受けにくるとは、命知らずだね。レッドフェニックス」
朱鷺「僕はヒーローとして、世界を守る為に戦っているんだ。当然の事をしたまでさ」
黒虎「そうか。では、そんな愚かな君に敬意を表し、仲間や世界より先に、君を消してあげよう」
   再びエネルギーをチャージする黒虎。
ロブ「黒虎、止めとけ。帰るぞ」
黒虎「何故ですか、ロブ隊長? あと少しで邪魔者を完全に殲滅できるのですよ?」
ロブ「奴らはもう虫の息じゃねぇか。俺様達がわざわざとどめをさすまでもねぇ」
黒虎「お気遣いをどうも。確かに、ロブ隊長のお手を煩わせる事ではないでしょう。どうぞ、お先にお帰りになって下さい。残処理はこの僕がやっておきますので」
ロブ「けっ、抵抗できない奴らを相手にするとは、虫の好かない野郎だ」
   瞬間移動するようにその場から消え去るロブ。
黒虎「(ため息まじりに)バカな上司の下に付くとロクな事がない。君もそう思うだろう? レッドフェニックス」
朱鷺「残念な部下を持つよりはマシさ」
黒虎「言ってくれるね」
   三たびエネルギーをチャージする黒虎。
黒虎「この僕に言わせれば、『世界を守るヒーロー』などと自称する君の方がよほど残念な存在に見えるけどね」
朱鷺「どこが、だい?」
黒虎「理由は二つ。まず、君は先ほど仲間の盾となった。しかし、本来なら身内というのは一番後回しにすべきだ。違うかい?」
朱鷺「それは……」
黒虎「『世界を守るヒーロー』ならば、仲間を見捨ててでも、悪を倒す為に邁進すべきなのだよ。この僕のようにね」
   黒虎達の周囲。剣型の武器を持つ戦闘員(=A兵)と、銃型の武器を持つ戦闘員(=B兵)、それぞれの屍が百体近くある。
黒虎「君は所詮、自分の周囲の世界だけを守ろうとしている、そんなローカルヒーローに過ぎないのだよ」
朱鷺「で、もう一つの理由は?」
黒虎「わかるだろう? 君が弱いからさ」
朱鷺「……」
黒虎「さようなら、レッドフェニックス。この僕のブラックリストに載ったのが、君の運の尽きだったのさ」
   目を伏せる朱鷺。
丹波の声「コラ、弱い者イジメは止めんか!」
   顔を上げる朱鷺と黒虎。
   そこにやってくる真っ赤な道着姿の男丹波拳一郎(26)。
丹波「まったく、そんな危なっかしい武器まで使って。そんな事して勝った負けたと言っても、何の意味もないだろうに」
黒虎「武器なら互いに使っていたさ。それでも、この僕だけが悪いと言うのかい?」
丹波「何? だからか。二人して武器使って喧嘩なんてするから、見てみろ、街がメチャクチャじゃないか」
   笑い出す黒虎。
黒虎「面白い人間が居たものだな。この状況が喧嘩、か。理由はさしずめ、痴情のもつれ、といった所かな?」
丹波「理由なんて興味がない。どうせ、くだらない理由なんだろ?」
朱鷺「くだらない、だと?」
黒虎「レッドフェニックスに同感だね。特別に、君を先に始末してあげよう」
   丹波に向けて光線を放つ黒虎。
朱鷺「危ない、避けろ!」
丹波「むっ?」
   向かってくる光線に対し、構えをとる丹波。
丹波「せい!」
   右の拳で光線を打ち返す丹波。打ち返した光線は黒虎の頭部を直撃する。
黒虎「ぐあああ!」
朱鷺「ウソ……」
丹波「漢なら(拳を示して)コレだろ?」
黒虎「まさか、まだ仲間が居たとはね。これだから人間は油断ならないのだよ」
丹波「何の話だ?」
黒虎「とぼけるのかい? まぁ、いい。深手を負ってしまった以上、この場は一旦引かせてもらうよ」
   地面に向けて光線を放つ黒虎。煙が晴れると黒虎の姿は消えている。
朱鷺「助かった、のか……?」
   力が抜け、気を失う朱鷺。

○(回想)採石場
   白黒の映像。
   攻撃してくる魚介類風の怪人A。
   変身解除し、倒れる朱鷺(20)。
先代レッド「危ない!」
   朱鷺を庇い、怪人Aの攻撃を受け続ける先代レッド。やがて倒れる。「緋山さん」と叫ぶ朱鷺。この時点では音声は無く、口の動きのみ。

○基地・医務室
   五、六台ほどのベッドが並んでいる部屋。その中の一つに横になる朱鷺。目を覚ます。
朱鷺「またあの夢……あれ、ここは?」
   周囲を見回す朱鷺。他のベッドは空。
朱鷺「(徐々に思い出してきて)そうだ」
   体を引きずるように立ち上がる朱鷺。

○同・司令室
   自動ドアが開き、入ってくる朱鷺。口論している紅林壱吾(47)と紅林倫吾(15)。
倫吾「だから、俺も戦隊に入りたいんだよ」
紅林「子供の出る幕じゃない」
倫吾「もう高校生じゃん。子供扱いすんな」
紅林「まだ高校生だ。いくらレッド以外が全滅したとはいえ、そんな子供を戦場に立たせる訳にはいかない」
朱鷺「全滅?」
   朱鷺に気付く紅林と倫吾。
倫吾「お〜、朱鷺」
紅林「こら、呼び捨てするな。(朱鷺に)レッド、身体は大丈夫なのか?」
朱鷺「ご心配をおかけしました」
倫吾「そうだ、確か朱鷺も俺の歳くらいで戦隊入ったじゃん。朱鷺からも親父を説得してくれよ」
朱鷺「倫吾君。残念だけど、子供扱いされて怒ってる内は、まだまだ子供だよ」
倫吾「んだよ。朱鷺も反対派かよ」
紅林「そういう事だ。どうしてもヒーローになりたいなら、サンタさんに変身アイテムでもお願いするんだな」
倫吾「俺はマジメに話してんのに、バカにしやがって。ふざけんな、クソ親父!」
   部屋から出て行く倫吾。
紅林「見苦しい所を見せてしまったね」
朱鷺「いえ。わざと怒らせて、倫吾君を部屋から出て行かせたのはわかってますから」
紅林「さすがにお見通しか」
朱鷺「それで、司令官。その……『全滅』というのは……」
紅林「……イエロー、グリーン、ピンクの三人は、一命は取り留めたものの未だに意識不明。病院で治療を受けている。そしてブルーは救出もできていない。生死不明だ」
朱鷺「僕は、皆を守れなかったんですね……残念、いや、無念です」
紅林「厳しい事を言うが、落ち込んでいる時間は無い。敵の侵攻を阻止する為にも、我々は一刻も早く新たな戦隊を編成しなければならない。レッドには引き続きリーダーを任せる。いいな?」
朱鷺「お断りします」
紅林「うん、ではレッドにはまず……って、え? 断る!?」
朱鷺「はい、僕は一人で戦います」
紅林「どういうつもりだ?」
朱鷺「戦況は日々悪化しています。そんな時期に新人を入れるのは危険ですし、即戦力にしてもブルー達並み、いやそれ以上の戦力が四人も都合良く見つかるとは思えません。だから、僕一人で戦います」
紅林「いや……でも既に一人は決まっているんだよ」
朱鷺「え? もう?」
   司令官席に座り、VTR再生の準備をする紅林。
紅林「(得意げに)元々、六人目の戦士として戦隊に加入予定だったんだけどね。その右腕に宿りし力で、敵をバッタバッタとなぎ倒して行く超戦士」
朱鷺「右腕……まさか……?」

○(フラッシュ)市街地
   右の拳で光線を打ち返す丹波。

○基地・司令室
   司令官席を挟んで対峙する朱鷺と紅林。
紅林「彼こそ、まさに人類の切り札」
   モニターに表示される紅色の甲冑の戦士=Mr.ストロベリーの映像。右拳の部分が大砲の砲口部のようになっており、そこから光弾を放っている。また、甲冑には苺のようなツブツブ模様(型の小型ミサイル)がある。
紅林「Mr.ストロベリーだ」
朱鷺「(安堵し)なんだ」
紅林「な、『なんだ』って何?」
朱鷺「いえ。Mr.ストロベリー……イチゴさん、ねぇ……」
   朱鷺の視線の先、司令官席に置かれた「司令官 紅林壱吾」の札。
紅林「とにかく、残りの三人も早急に探し出す。レッドはレッドの役割を頼むぞ」
   無言で背を向け歩き出す朱鷺。
紅林「どこへ行く?」
朱鷺「病院に。僕の目で、イエロー達の様子を見ておきたいので」
   自動ドアの前に立つ朱鷺。ドアが開くと、そこに丹波が立っている。
朱鷺「え?」
紅林「あ〜、そうだった。もう一人、候補生を紹介しておくよ。丹波拳一郎君だ」
丹波「ん? おっ、誰かと思えば、さっき喧嘩してた奴じゃないか。偶然だな。こんな所で何してるんだ?」
朱鷺「それはコッチの台詞だ」
丹波「俺は師匠の遺言でな。『自分が死んだらココで世話になれ』と」
紅林「彼の師匠には生前、お世話になった事があってね」
丹波「しかし、ココは一体何なんだ? 『リヴァース』やら『セイレイジャー』やら、話がさっぱりだ。説明してもらおうか」
朱鷺「説明って……」
轟N「説明しよう」

○(VTR)市街地
   破壊される高層ビル。
轟N「時は今から十年前の二〇二X年」
   闊歩する魚介類風の怪人Bと多数のA兵、B兵。逃げ惑う人々。「『LIVE EARTH』=『リヴァース』」の文字が背景に浮かぶ。
轟N「自分達こそ、真の『地球に生きる者』だと主張し、地上侵略に現れた海底生物群リヴァース」

○(VTR)基地・司令室
   サイレンが鳴る。
   司令官席からマイクで指示を出す紅林。
轟N「その侵略を阻止すべく、我が街に戦隊チームが誕生した」
紅林「(棒読みで)リヴァース出現(カメラ目線で)セイレイジャー出動!」

○(VTR)市街地
   怪人BやA兵、B兵らの前に並び立つレッド、ブルーら五人の戦士。
ブルー「お前達の好きにはさせないぞ」
レッド「僕達、伝獣戦隊」
五人「セイレイジャー!」
   「伝獣戦隊セイレイジャー」というデカデカとしたロゴが表示される。
丹波の声「ちょっと止めてくれ」
   一時停止される。

○基地・司令室
   作戦机を囲む朱鷺、丹波、紅林。三人の視線の先にはモニターがあり、前述のVTRが映されている。
紅林「質問かな?」
丹波「コレは、子供向けのテレビ番組か?」
紅林「いいや、現実だ。私達の所属するこの組織の紹介VTR、といった所だな」
丹波「信じられんな……で、お前がそのレッドなのか?」
朱鷺「レッドフェニックスの小藤朱鷺だ。僕の方が信じられないよ。今時、リヴァースの存在すら知らない人間が居たなんて」
紅林「無理もないだろう? 十年以上も前から山に籠って修行をしていたんだからね」
朱鷺「その、先日亡くなったという師匠さんの元で? 何の?」
紅林「レッドもさっきの現場で見ただろう? 彼が受け継いだ、漢田流拳法」
朱鷺「漢田流拳法?」
轟N「説明しよう」

○(VTR)浜辺
   道着姿の男・漢田(68)に向かって押し寄せる大波。
轟N「漢田流拳法とは、身体から特殊な波動を出す事で、あらゆる攻撃を打ち返す事が出来る武術なのだ」
漢田「せい!」
   大波に向けて拳を突き出す漢田。波が打ち返される。

○海底基地・暗室
   パソコンで上記VTRを観ている黒虎。暗くて顔はわからないが、脇に黒虎のマスクが外されて置いてある。
黒虎「先ほどの技……コレか?」
   そこにやってくるロブ。
ロブ「おう、黒虎。貴様、あいかわらず勉強の虫だな」
黒虎「隊長が現場を立ち去らなければ、他にやりようがあったんですがね」
ロブ「俺様に八つ当たりするとは、貴様、随分虫の居所が悪ぃみたいだな」
   その場を立ち去るロブ。
黒虎「さて、と。相手の技の正体がわかれば対策も立てられる。次の戦いで、この僕が同じ轍を踏むと思うなよ」
丹波の声「俺は戦わん」

○基地・司令室
   作戦机を囲む朱鷺、丹波、紅林。
紅林「『戦わん』か……。しかし、君の強さは手放すには惜しい。リヴァースの侵攻を食い止める為に、力を貸してくれないか?」
丹波「断る。そもそも、もし仮にその戦いに勝ったとして、どうなる? また新手が襲ってきて、次の戦いが始まるだけだろ? そんなものに、何の意味がある?」
朱鷺「そんなもの、だと?」
丹波「それに、変身して武器まで使って、お前達は恥ずかしくないのか? 漢なら(拳を示して)コレだろ?」
紅林「そうか。では、レッドから反論は?」
朱鷺「反論も何もない。残念だけど、僕も君を仲間にするつもりはないからね」
紅林「あ、そっち?」
丹波「気が合うな」
朱鷺「残念だけど、気が合わないんだよ。僕は仲間と認めた相手の事は、全力で守る。だが、君の事をそうは思えないだろう」
   笑いを堪える紅林。
朱鷺「司令官、何か?」
紅林「失礼。ただの思い出し笑いだ」
朱鷺「とにかく、君の強さは認めるが、戦う気のない人間を仲間にするのはごめんだ。失礼する」
   立ち上がり、部屋から出て行く朱鷺。
丹波「まったく、師匠は何だってこんな所に世話になれと言ってきたんだか」
   立ち上がる丹波。
紅林「出て行くのかい?」
丹波「止めても無駄だ」
紅林「もちろん、無理に引き止めるつもりはない。ただ、今日はもう遅い」
   作戦机に日本酒の一升瓶を置く紅林。
紅林「一晩、付き合わないか?」
丹波「まったく……そういう事なら、仕方ない」

○病院・外観(夜)

○同・集中治療室・前(夜)
   ガラス越しに中を見ている朱鷺。
   三台のベッドそれぞれに、全身に包帯を巻き、体に機械がつなげられた患者が横になっている。その脇に黄色、緑色、桃色基調(朱鷺と色違い)のジャケットがかけられている。
緋山の声「いいか、朱鷺」

○(回想)基地・司令室
   対峙する朱鷺(17)と緋山誠也(26)。朱鷺は後ろ姿のみだが、髪は長い。
緋山「俺が仲間と認めた以上、俺はお前の事を全力で守る」

○病院・集中治療室・前(夜)
   ガラス越しに中を見ている朱鷺。
緋山の声「約束する」
朱鷺「僕には、仲間と戦う資格なんて……」

○同・外観(朝)

○繁華街
   クリスマスムードが漂っている。
   その中を歩く丹波。
丹波「そうか、もうすぐクリスマスか」
   遠くで悲鳴が聞こえる。
丹波「ん?」
   視線の先、何か(A兵、B兵の大群だが、この時点ではまだわからない)を見つける丹波。

○病院・集中治療室・前
   ベンチで座りながら寝ている朱鷺。スマホが鳴動し目を覚ます。紅林からのテレビ電話。
朱鷺「こちら、レッド」
紅林「今どこに居る? リヴァース出現だ」

○基地・司令室
   司令官席に座る紅林、顔色は悪い。室内ではサイレンが鳴っており、モニターには朱鷺とのテレビ電話の映像。以下、適宜カットバックで。
紅林「場所は繁華街。今の所確認できているのは戦闘員のみだ」
朱鷺「了解。すぐに現場に向かいます(と言って切ろうとする)」
紅林「あ〜、それからもう一つ」
朱鷺「何ですか?」
紅林「丹波君は帰ったよ。まぁ、元々居た道場は立ち退いているらしいから『帰った』という表現も正確じゃないんだけど」
朱鷺「それが、何か?」
紅林「いや、もしかしたらだけど……時間や距離から考えると、ちょうど丹波君があの辺を通ってるかもな、ってね」
朱鷺「……留意しておきます」
紅林「頼んだよ(と言って切ろうとする)」
朱鷺「あ、司令官」
紅林「何だ?」
朱鷺「二日酔いに効く薬、買って帰りますか?」
紅林「……宜しく頼む」
朱鷺「了解。お酒は適量をオススメします」
   通話が終了する。
   頭を押さえる紅林。
紅林「あ〜、丹波君は強かったな〜。やはりあの強さを手放すのは惜しい……」
   散乱する大量の空き瓶。

○病院・集中治療室・前
   立ち上がり、ベッドで横になる三人を一瞥する朱鷺。
朱鷺「残念だけど、招集がかかった。行ってくるよ」
   スマホのアプリを起動する朱鷺。
朱鷺「変身アプリ、起動!」

○繁華街
   多数のA兵、B兵に囲まれる丹波。
丹波「まったく、そろいも揃って武器ばかり持ちよって」
   一斉に丹波に襲いかかるA兵、B兵だが、丹波の拳一振りで吹き飛ぶ。
丹波「漢なら(拳を示して)コレだろ?」

○高台
   繁華街を見下ろせる場所。
   周囲を数名のB兵が警備する中、丹波とA兵、B兵の戦いをモニターを観ている黒虎。傍らには指示用のマイク。
黒虎「なるほど。(マイクに)じゃあ次は距離をとって攻撃してみろ」
   そこにやってくるロブ。
ロブ「おい、黒虎。貴様、こんな所で勝手に何してる?」
黒虎「おや、どうしてココが?」
ロブ「虫の知らせ、って奴だ。いいから、俺様の質問に答えろ」
黒虎「情報収集ですよ。今度あの格闘家と会った時に、この僕が確実に勝てるように」
ロブ「そんな作戦、俺様は許可した覚えが無ぇぞ?」
黒虎「君の許可など必要ない」
ロブ「あ? 『君』だ?」
黒虎「まだ聞いていないのかい? 先日、君が現場を放棄したせいでレッドフェニックスらを取り逃がす結果となった。この事実を重く受け止めた我らがボスは、君の代わりにこの僕を隊長に任命する決断をされたのだ」
ロブ「そんな虫のいい話がある訳……」
   黒虎に詰め寄ろうとするロブに銃口を向けるB兵達。
黒虎「帰りたまえ、ロブ」
ロブ「俺様を敵に回すとは、いい度胸だ」
   その場を立ち去るロブ。
黒虎「(向き直り)さて、と。ん?」
   空を舞う赤い影。
黒虎「来たか……場所を変えるぞ」

○繁華街
   A兵、B兵に包囲された丹波。
丹波「俺は無用な争いは好まん。黙って道を開けてくれ」
   一斉に丹波に襲いかかるA兵、B兵。
丹波「まったく……」
レッドの声「掴まれ」
丹波「ん?」
   空を飛んでやってくるレッド。丹波を掴み、再び空を舞う。その時、レッドの胸が丹波の背中に触れている。
丹波「お前、飛べるのか」
レッド「飛べないフェニックスは、ただのフェニックスだ」
丹波「お前、ジブリ好きだったのか」
レッド「いや。残念ながら、違うな」

○高台
   着地するレッドと丹波。
丹波「まったく、変身して武器を使って空まで飛んで。漢なら……あっ」
レッド「漢なら、何だ?」
丹波「いや、何でもない」
レッド「なら、いい。僕の邪魔はするなよ」
   再び飛んで行くレッド。

○繁華街
   A兵、B兵の元に飛んでやってくるレッド。着地し、剣を手に駆け出し、次々とA兵、B兵を倒して行く。
レッド「さぁ、僕が相手だ。残念だけど、覚悟してもらうよ」

○高台
   繁華街の様子を見ている丹波。レッドがA兵、B兵と戦っている。

○同(夕)
   繁華街の様子を見ている丹波。A兵、B兵の多数の屍。
   丹波の背後に空から降り立つレッド。
   変身を解除する朱鷺。傷だらけ。
丹波「何か用か?」
朱鷺「いや、もし高所恐怖症か何かでこの場から動けないのなら……と思って来たまでだ。要らぬ心配だったようだね」
丹波「……お前は、何故戦う?」
朱鷺「何だ、いきなり」
丹波「ここから観ていて思った。ハッキリ言って、お前は弱い。ましてや……」
朱鷺「ましてや?」
丹波「……昨日、あのお偉いさんから話を聞いた。お前、女なんだろ?」
朱鷺「戦隊のレッドは、男だと思ったか?」
丹波「何故お前がそこまでして戦うのか、俺には理解できん」
朱鷺「……昔、同じ事を聞かれた事がある」
丹波「あのお偉いさんにか?」
朱鷺「いや。レッドフェニックスにだ」
丹波「ん? どういう事だ?」
朱鷺「アレは五年前だったかな」

○(回想)繁華街
   A兵、B兵らが人々を襲っている。
朱鷺の声「リヴァースの侵攻が始まってから僕の父が、三人の兄が、残念ながら次々と命を落とした」
   A兵、B兵と戦う自警団。ヘルメットやこん棒など、装備は貧相。その中に一七歳の朱鷺がいる。
朱鷺の声「守ってくれる人の居なくなった僕は、自分自身を守る力を手に入れるため、そして同じような境遇の子供達を守るために、高校に通いながら、地元の自警団の一員としてリヴァースと戦っていたんだ」
   ピンチに陥る朱鷺。そこに現れ、素早い動きで敵を倒して行く先代レッド。
朱鷺の声「その時、僕を助けてくれたのが、当時のレッドフェニックス」
   変身を解除する先代レッド。緋山の姿。
朱鷺の声「緋山誠也さんだ」
緋山「大丈夫か?」
    ×     ×     ×
   落ち込む朱鷺を励ます緋山。
朱鷺「やっぱり、プロの方は強いですね」
緋山「まぁ、場数も鍛え方も責任も違うからな。けど、結局は仕事だ。ボランティアでやっているお前達の方がよっぽど凄いさ」
朱鷺「でも、残念ですけど、私みたいな弱い人間がいくら頑張っても、世界を守れる訳じゃなさそうですし」
緋山「そんな事はない。きっと、守れる。それに、自分の弱さと向き合うのもまた強さだ。お前は、十分に強い」
   朱鷺の頭をなでる緋山。
緋山「信じるか信じないかは、お前次第だ」
   顔が明るくなる朱鷺。
朱鷺の声「その時に思ったんだ。この人と一緒に戦えたら、僕はきっと『世界を守るヒーロー』になれる、って」

○(回想)各所
   雨の日も風の日も、緋山(あるいは先代レッド)に頭を下げる朱鷺。その度に断り続ける緋山。
朱鷺の声「それで、高校も辞めて『戦隊メンバーに入れて欲しい』って、しつこく頼んで回ったよ」

○(回想)基地・司令室
   緋山、紅林(42)と向かい合って立つ朱鷺。
朱鷺の声「そして、初めて基地の中に入れてもらえた日に、聞かれたんだ」
緋山「お前は、何で戦うんだ?」
朱鷺「何で、って……?」
緋山「俺は仲間と認めた相手の事は、全力で守る。だからこそ、本当に信用できる相手しか仲間とは認めない」
朱鷺「『戦う理由』が、信用出来るか出来ないかの判断材料って事ですか?」
緋山「戦隊メンバーになるという事は、強大な力を手にするという事だ。間違った考えを持った人間には、託せないだろ?」
紅林「だからって、嘘はダメだからね」
朱鷺「……弱いから、ですかね」
丹波の声「弱いから?」

○高台(夕)
   向かい合う朱鷺と丹波。
朱鷺「残念ながら、僕みたいな弱い人間は、戦わなければ何も手に入れられないし、何も守れない。弱いからこそ、戦わなきゃいけないんだ。強い君には、わかってもらえないだろうけどね」
丹波「あぁ、わからん」
朱鷺「それでも、僕は合格した」

○(回想)基地・司令室
   緋山、紅林と向かい合う朱鷺。
朱鷺の声「僕は、世界を守る為に戦う、その権利を勝ち取ったんだ」
紅林「小藤朱鷺君。君をセイレイジャーの一員として迎えよう。おめでとう」
朱鷺「ありがとうございます!」
   握手の手を差し出す緋山。
緋山「繰り返しになるが、俺が仲間と認めた以上、俺はお前の事を全力で守る。信じるか信じないかは、お前次第だ」

○高台(夕)
   向かい合う朱鷺と丹波。
朱鷺「もっとも、最初はピンクだったがね」
丹波「もしかして、その時のレッドが、あのお偉いさんの言ってた、お前の先輩か? 一身上の都合で退職したとか言う」
朱鷺「(小声で)一身上の都合、か……」
丹波「ん? どうかしたか?」
朱鷺「いや、残念だけど、そろそろ時間だ。君が自力で帰れるというのなら、僕はお先に失礼するよ」
丹波「構わん」
   レッドに変身し、飛び立つ朱鷺。

○飛んでいるレッド(夕)

○(回想)採石場
   序盤で白黒だったシーンを、今度はフルカラーで。
   攻撃してくる怪人A。
   変身解除し、倒れる朱鷺。
先代レッド「危ない!」
   朱鷺を庇い、怪人Aの攻撃を受け続ける先代レッド。やがて倒れる。
朱鷺「緋山さん!」

○基地・廊下
   歩いている朱鷺。涙を拭う。
朱鷺「緋山さん……」
   角を曲がる朱鷺。走ってきた倫吾とぶつかる。倫吾が背負っているリュックは少し膨らんでいる。
朱鷺「あっ、ごめんなさい……倫吾君か」
倫吾「なんだ、朱鷺か。悪ぃ悪ぃ」
朱鷺「早く家に帰らないと、夜道は危険だ。送って行こうか?」
倫吾「え? いや、いい、いい、いいって。っていうか、子供扱いすんなって」
   走り去って行く倫吾。
朱鷺「何慌ててるんだか……」
   歩き出す朱鷺。前方、扉の開いている小部屋がある。
朱鷺「あれ?」

○同・小部屋
   入ってくる朱鷺。
朱鷺「誰もいない……不用心だな。あっ」
   朱鷺の視線の先、Mr.ストロベリーの鎧がある。ただし右拳の砲口パーツのみが無い。

○同・司令室
   入ってくる朱鷺。司令官席に座る紅林の元に歩いてくる。
朱鷺「ただいま戻りました、司令官」
紅林「お疲れ。今回は戦闘員だけだったみたいだね。しかし、あの数だ。敵にも何かしら目的があったんだろう」
朱鷺「僕もそう思います。……ところで、例のMr.ストロベリーは、いつ頃コチラに合流できそうなんですか?」
紅林「え? あ、そうだな〜。年明けくらいを予定しているけど」
朱鷺「あれ? 今さっき、奥の部屋にMr.ストロベリーの鎧、ありましたけど?」
紅林「え? 見ちゃった? それはね……」
朱鷺「いいですよ、もう。残念ながら、わかってましたから。Mr.ストロベリーの正体が司令官だって事くらい」
紅林「何、そうなの? どこで?」
朱鷺「だって、直訳したら『イチゴさん』。司令官の事じゃないですか」
   司令官席の札の「壱吾」の部分を指差す朱鷺。
紅林「ちぇっ、驚かそうと思ったのに。あの右手のバスターパーツ、あったでしょ? アレが変身アイテムにもなってて、トリガーを引くとアーマーが転送される仕組みになっているんだよ」
朱鷺「あ〜、だからあの部屋には右手部分だけが無かったんですね」
紅林「え? いやいや、あったでしょ?」
朱鷺「? あ~、さすがに奥の方までは見てないので……」
紅林「いやいやいやいや、一緒に並びで置いてあったから。止めてよ、もう。心配になるじゃないか」
   と言って部屋から出て行く紅林。しばらくすると「あ〜! 無〜い!」という紅林の叫び声が聞こえてくる。
朱鷺「まさか、ね……」
男Aの声「オメェが盗ったんだろ!」

○繁華街(夜)
   昼間に戦いが行われていた場所。瓦礫も多く残っている。
   無事だった場所には、多くのホームレスが集まっている。その中で口論する男Aと男B。
男A「ココに置いといたオラの晩飯、返せよこの野郎!」
男B「俺は盗ってねぇし。そもそもこの場所だって、俺が先に寝てた場所なんだよ。文句言うなら出てけ!」
男A「んだと?」
男B「やんのか?」
   そこに割って入る丹波。
丹波「こら、喧嘩は止めんか!」
   丹波の睨みに怯み、すごすごと元の場所に戻る男Aと男B。
   それを見て、丹波もある店の屋根の下に戻る。隣には轟晶(31)が居る。
丹波「まったく、どいつもこいつも」
轟「今時、良くある事」
丹波「そうなのか?」
轟「かもしれない」
丹波「何だ」
轟「でも、気持ちはわかる。リヴァースに家を焼かれて、せっかく屋根のある場所見つけたのに、今日またソコも壊されて」
丹波「お前、家を焼かれたのか?」
轟「かもしれない」
   カバンからパンを取り出し、半分を丹波に渡す轟。
丹波「いいのか?」
轟「世の中、助け合いさ」
丹波「かたじけない」
   パンを口にする丹波と轟。
轟「平和だった時代が、懐かしいよね」
丹波「まったくだ。(一口食べたパンを指し)ところで、コレはどこで?」
轟「さっき、(男Aと男Bが口論をしていた辺りを指し)ソコで拾った」
丹波「ん? それはもしや……」
轟「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
丹波「妙なヤツだ」
   パンを口にする丹波。空を見上げると、星が輝いている。

○同
   青空が広がっている。
   クリスマスムード一色。
   ダダダと走る足音。

○基地・司令室
   駆け込んでくる朱鷺。紅林の隣、モニターの前にやってくる。
朱鷺「黒虎からメッセージですって?」
紅林「あぁ、見てくれ」
   モニターに表示される黒虎の映像。
黒虎「やぁ。今日は人間達の世界では『クリスマスイヴ』という特別な日だそうだね。そこでセイレイジャー諸君にも、この僕からプレゼントをしようと思い至ったのだ。それが、コレだ」
   朱鷺と色違いの青いジャケットを手にする黒虎。
朱鷺「!? アレは、ブルーの!?」
黒虎「コレを今日の正午、場所は採石場でプレゼントしよう。くれぐれも時間厳守で。それじゃあ」
   映像が終了する。
   出て行こうとする朱鷺。
紅林「待つんだ、レッド。コレは、間違いなく罠だ」
朱鷺「僕もそう思います。でも、もしソコにブルーが、仲間が居るかもしれないなら、選択肢なんて要りません」
   出て行く朱鷺。
紅林「まったく……」
   電話を手にする紅林。
紅林「私だ」

○道
   走っている朱鷺。その進行方向に立っている丹波。
朱鷺「これは、偶然なのかな?」
丹波「あのお偉いさんから連絡を貰ってな。『今日だけ一緒に戦って欲しい』と」
朱鷺「へぇ。君みたいな人間でも、携帯電話の類は持っているんだね」
丹波「いや、狼煙だ」
朱鷺「(呆れて)……で、戦うというのかい?」
丹波「俺だって、一宿一飯の恩義くらいは感 じているからな」
朱鷺「……残念だけど、ありがた迷惑だ」
丹波「お仲間を助ける為、でもか?」
朱鷺「なら、聞こう。君は、何故戦う?」
丹波「戦う理由、か」
朱鷺「前にも言ったが、戦う気のない人間を仲間にするのはごめんだ。『一宿一飯の恩義』程度の理由でも困る」
丹波「『戦う理由』が、信用出来るか出来ないかの判断材料、とか言ってたな」
朱鷺「そういう事だ」
丹波「そうだな……。俺は、争いは好まん。いわゆる、平和主義者だ」
朱鷺「よく知っている」
丹波「だが、今この世界は平和からかけ離れている。リヴァースとやらのせいでな」
朱鷺「それも、よく知っている」
丹波「だから、俺は戦う。お前が戦う権利を勝ち取ったように、俺もこの戦いで『平和に暮らす』権利を勝ち取ってみせる」
朱鷺「平和に暮らす権利、か……」
丹波「ただし、俺は変身はせん。武器も使わん。漢なら(拳を示して)コレだろ?」
   互いの目を見る朱鷺と丹波。やがて歩き出す朱鷺。丹波の横を通り過ぎた所で立ち止まる。
朱鷺「一つだけ伝えておく」
丹波「ん?」
朱鷺「僕が仲間と認めた以上、僕は君の事を全力で守る」
丹波「それだけでいいのか?」
朱鷺「あぁ」
丹波「そうか……」
   再び歩き出す朱鷺と、その後ろを付いて歩き出す丹波。

○採石場
   並んでやってくる朱鷺と丹波。
   待ち構えている黒虎。
黒虎「この僕から逃げずにやってくるとは、大したものだね」
朱鷺「ブルーはどこだ?」
黒虎「まったく、せっかちだね、レッドフェニックス。仕方あるまい」
   黒虎が合図をすると、背後から出てくるロブ。青いジャケットを持っている。
黒虎「あいにく、このジャケットは拾ったものでね。持ち主の行方は知らないよ」
朱鷺「そうか」
黒虎「残念だったね、レッドフェニックス」
朱鷺「あいにく、想定内だ」
黒虎「強がるね」
丹波「しかし、拾ったものを持ち主に返す事を『プレゼント』とは呼ばんと思うぞ?」
朱鷺「……まぁ、確かに」
   しばしの沈黙。やがて笑い出す黒虎。
黒虎「良く気付いたね。君の名前を聞いておこうか」
丹波「漢田流拳法師範代、丹波拳一郎だ」
黒虎「なるほど。君の言う通りだ、丹波拳一郎。コレはプレゼントではない。元々、こうするつもりだったのだよ。やれ」
ロブ「けっ」
   ジャケットを切り刻むロブ。
朱鷺「なっ」
丹波「もったいない」
黒虎「この僕からの本当のプレゼントは、コレさ」
   指を鳴らす黒虎。周囲に続々と現れるA兵とB兵。その数、千体。
丹波「ざっと数えて、千か」
黒虎「人間達にとって特別な日だという今日を、この僕が惨劇の記念日として塗り替えてやろう。さぁ、行け!」
   一斉に銃撃するB兵達。爆炎に包まれる朱鷺と丹波。その煙の中から飛び出してくるレッド。
レッド「そんな事、僕がさせない!」
   A兵、B兵と戦い始めるレッド。次々と相手を倒して行く。
   煙が晴れ、その様子に目をやる丹波。
丹波「さて、と。こうも相手が多いと、どこから手をつければ良いものか、さっぱりわからんな」
黒虎「こちらに来たまえ、丹波拳一郎。この僕が相手をしよう」
丹波「なるほど、わかりやすくて良い」
   黒虎の元へ行き、対峙する丹波。
丹波「さて、始めるか」
黒虎「あぁ。始めるとしよう」
   丹波の足下から海藻が出現し、丹波を何重にも縛り上げる。
丹波「ん? 何だ、コレは?」
黒虎「君の戦いを観察した結果、君はその拳さえ使用不能にしてしまえば恐れるに足らない、という結論が出たのだよ」
丹波「卑怯な。漢なら(拳を示そうとしながら)コレだろ?」
黒虎「あ、そうそう。力づくで引きちぎろうとしても無駄だよ? 人間ごときの力ではどうにも出来やしない」
丹波「ならば、試してやろう」
   力を込める丹波。ちぎれない海藻。
黒虎「どうだい? 君は先ほど『卑怯』と言ったが、これはこの僕の立てた作戦が完璧だったにすぎないのだよ。もっとも(拳を示して)コチラでも負けはしないけどね」
   丹波を殴る黒虎。
黒虎「さぁ、どう出る? 丹波拳一郎」
   何発も丹波を殴り続ける黒虎。やがて倒れる丹波。
黒虎「無抵抗か。思ったより呆気ないが、この僕が相手では諦めるのも無理はない」
   両腕脇の銃口を丹波に向ける黒虎。
黒虎「この技が、この僕から君への、最期のプレゼントだよ、丹波拳一郎」
   エネルギーをチャージする黒虎。
   A兵、B兵と戦いながら、その様子を目にするレッド。
レッド「くそっ、させるか」
   黒虎に向かって滑空するレッド。黒虎の目前まで迫った時、照準をレッドに向ける黒虎。
レッド「なっ!?」
   黒虎の光線を受け、吹き飛ばされるレッド。朱鷺の姿に戻り、勢いでスマホも弾き飛ばされる。
朱鷺「ぐっ……」
黒虎「成長しないね、レッドフェニックス。仲間がピンチに陥れば、助けに飛んでくると思っていたよ」
朱鷺「まさか、狙いは初めから丹波じゃなくて、僕……?」
黒虎「君の飛行能力は厄介だからね。この僕の作戦、見事だろう?」
   朱鷺の周囲に歩み寄るA兵、B兵達。
黒虎「後は、この僕が手を下すまでもない。さぁ、やれ」
   朱鷺に襲いかかるA兵、B兵達。
   思わず目を伏せる朱鷺。
   突如銃撃音が響き倒れる一体のB兵。
黒虎「何だ?」
   連続して響く銃撃音。半分近くはA兵やB兵に当たるも、それ以外は的外れな場所に当たる。
朱鷺「この音、まさか……」
   音の方を振り返る朱鷺。Mr.ストロベリーの砲口パーツを右手に装着した倫吾がA兵、B兵達を撃っている。ただし、反動の大きさに悪戦苦闘中。
朱鷺「倫吾君!?」
倫吾「どけどけどけ! 俺がヒーローだ!」
黒虎「また新手の仲間か。これだから人間は油断ならないのだよ。ひとまず、レッドフェニックスだけでも先に始末しておかなくてはね」
   朱鷺に向けて光線を放つ黒虎。倫吾に気を取られ反応が遅れる朱鷺。
朱鷺「しまっ……」
緋山の声「危ない!」
   朱鷺を抱え、横っ飛びで黒虎の攻撃をかわす緋山(31)。この時点ではまだ顔はわからない。
緋山「大丈夫か、朱鷺?」
朱鷺「ありがとうございま……あれ、何で僕の名前を?」
緋山「こうやってお前を助けるのも、久しぶりだな」
   振り返り朱鷺に笑いかける緋山。
朱鷺「緋山さん!?」
黒虎「くっ、次から次へと。こうなったら、まずは丹波拳一郎を……」
   倒れている丹波に銃口を向ける黒虎。その黒虎を殴り飛ばすロブ。
ロブ「あ〜、もう我慢ならねぇな」
黒虎「この僕に何をするんだ、ロブ」
ロブ「戦えねぇ状態にして一方的に嬲って、貴様のそんなやり方が、虫が好かねぇって言ってんだよ」
黒虎「まさか、だからって人間の味方をするというのか?」
ロブ「あ? 『人間の味方』なんて止めてくれ。虫酸が走る」
黒虎「なら、何故?」
ロブ「抵抗しない者には手を出さねぇ。それが俺様の正義だ。部下の頃なら黙認してやってたが、上司となれば付いていけねぇ」
黒虎「こんな事をして、ボスに許してもらえるとでも思っているのか?」
ロブ「さぁな。ただ、これが許されねぇならボスの正義も俺様と違ぇ事になる。もしそうなら、俺様はリヴァースの味方は出来ねぇ。俺様は、俺様の正義を貫くだけだ」
黒虎「ならば、仕方あるまい」
   戦い始めるロブと黒虎。
   その近くを通った弾丸を避けるロブ。
ロブ「おっと、危ねぇな。虫も殺せねぇ面して、随分な武器使ってんじゃねぇか」
   ロブの視線の先、A兵やB兵を相手に銃撃戦を続ける倫吾。
倫吾「くらえ! くらえ! くらえ〜!」
紅林の声「倫吾!」
   右手のパーツから映像が表示される。それは基地の司令室にいる紅林。
紅林「何してるんだ、そんな所で」
倫吾「親父……」

○基地・司令室
   司令官席に座る紅林、モニターには倫吾との通信の映像。以下、適宜カットバックで。
紅林「勝手に武器まで持ち出して。そこは子供の出て行く場所じゃないんだ」
倫吾「勝手なのは大人じゃん。勝手にアンタらだけが戦って、勝手に負けて」
紅林「それは、未来ある子供達を戦いに巻き込まない為に……」
倫吾「けどソッチが、大人が『今』負けちまったら、俺らが生きていく『未来』はどうなっちまうんだよ。俺らの未来は、親父達の尻拭いをする時間じゃない。賭かってんのが俺らの未来なら、俺だって戦いに参加する権利はあるハズじゃん」
紅林「……倫吾の言い分はわかる。だが、何も現場で実際にやり合うだけが戦いじゃない。他のやり方も含めて、じっくり考えるのが、今の倫吾の時間なんじゃないか?」
倫吾「いいや、俺はヒーローとして戦う」
紅林「何でヒーローにこだわる?」
倫吾「だって……ガキの頃から、俺の周りにはずっとヒーローとか司令官が居たんだ。憧れんのは当たり前じゃん」
紅林「倫吾……」
倫吾「だから、俺はやる。誰が何と言おうと俺は戦う。例え世界を敵に回しても、俺はヒーローになる!」
紅林「……世界を敵に回すような奴が、ヒーローになれるものか」
倫吾「いや、今のは……」
紅林「そんな危うい男、放っておいたらロクな人間にはならないだろうな」
倫吾「んだと?」
紅林「だから、ヒーローをやるなら、私の見ている前でやれ。それ以外は許さん。いいな?」
倫吾「親父……。あぁ。わかったよ」
   パソコンを操作する紅林。
紅林「プロテクトを解除した。バスターパーツをチェンジモードにし、トリガーを引くんだ」
倫吾「了解。行くぜ。3」
紅林「2」
倫吾&紅林「1、GO!」

○採石場
   トリガーを引く倫吾。

○基地・小部屋
   転送されていく甲冑。

○採石場
   転送されてきた甲冑が自動的に装着され、倫吾がMr.ストロベリーに変身。
ストロベリー「行くぜ〜!」
   ストロベリーの銃撃は反動が少なく、命中率は格段に向上している。
ストロベリー「よっしゃ、全然反動がないじゃん。コレなら、当たる当たる」
   その様子を見ている緋山と朱鷺。
緋山「倫吾も大きくなって……。こりゃ、俺も戦いに参加させて貰わないとな」
朱鷺「……お気持ちは嬉しいです。けど、残念ながらダメです」
緋山「何でだよ」
朱鷺「だって、私を……僕を庇って、戦隊を辞める程の大ケガをされたのに……」
緋山「え? ……あ〜、まさか勘違いしてるのか? 俺はケガしたから辞めた訳じゃないぞ?」
朱鷺「え? じゃあ、何で……?」
緋山「初めて会った時にも話したろ? 俺は仕事でヒーローやってただけだって。でも朱鷺を見て、やりたい事を、昔からの夢を目指す事にした。だから、戦隊を辞める事にした。その最後の仕事で、ちょっとケガをしただけだ」
朱鷺「『一身上の都合』っていうのは、本当だったんですね……」
緋山「もちろん、信じるか信じないかは、お前次第だ」
朱鷺「でも、じゃあ何で今日は……?」
緋山「その新しい仕事でも、子供達と色々約束しててな。今日のこの戦い、長引かせる訳にはいかない。約束を守る為に、今日俺は戦う。行くぜ。変身!」
   白い大きな布袋を放り投げる緋山。一瞬、布袋が視界を覆い、視界が晴れるとサンタクロースに変身している緋山。
朱鷺「サ、サンタクロース!?」
サンタ「この姿が、俺の戦う理由だ」
   素早い動きでA兵の一体を倒し、持っていた剣を奪うサンタ。その剣を朱鷺に放って寄越す。
サンタ「持っていきな」
朱鷺「え?」
サンタ「お前の事だ、『仲間は守る』って約束したんだろ? 進路は作ってやるから行ってこい、二代目!」
朱鷺「了解」
   剣を持って駆け出す朱鷺。進路上に居るA兵、B兵はサンタが倒して行く。
    ×     ×     ×
   黒虎の元にたどり着く朱鷺。入れ違いで、ロブが黒虎の技を受け吹き飛ばされて行く。
ロブ「ぐあっ!」
朱鷺「ロブ!」
黒虎「今度は君か、レッドフェニックス。まったく、入れ替わり立ち替わり」
   未だ縛られ倒れたままの丹波に目をやる朱鷺。
朱鷺「大丈夫か、丹波?」
丹波「……」
黒虎「ただでさえ弱い君が、変身も出来ない状態で、この僕に挑むというのかい? そこまでして仲間を守って、一体何になるというんだ?」
朱鷺「さぁな。だが、倫吾君が敵を引き付けてくれた。緋山さんが道を造ってくれた。ロブが時間を稼いでくれた。そのおかげで今、僕がここに居る。それが答えだ!」
   黒虎に切り掛かる朱鷺。
    ×     ×     ×
   多数のB兵と対峙するサンタ。布袋から棒状の武器を取り出すサンタ。
サンタ「まずはコイツだ。サンタクロッド」
   ロッドを振り回しながら銃弾を弾き、B兵を倒して行くサンタ。B兵を全て倒すと、今度はA兵の集団がやってくる。布袋からボクシンググローブのようなものを取り出し装着するサンタ。
サンタ「接近戦なら、コイツだ。サンタグローブ」
   A兵を殴り倒して行くサンタ。A兵を全て倒すと、今度はA兵とB兵の集団がやってくる。
サンタ「最後はまとめて行くぜ。サンタクロスチョップ!」
   腕を×の字にしてA兵、B兵の集団にダイブするサンタ。攻撃を受け、爆発四散するA兵、B兵の集団。
サンタ「メリークリスマス」
    ×     ×     ×
   多数のB兵と戦うストロベリー。一体ずつだが、次々と倒して行く。
ストロベリー「このままじゃキリがないよ、親父、アレ、いい?」
紅林の声「いいだろう」
ストロベリー「よっしゃ。全弾解放!」
   甲冑に描かれたツブツブのような小型ミサイルが一斉に発射され、全方位のB兵に命中する。
ストロベリー「どんなもんだい。おっ?」
   新たなB兵の集団が前方から迫る。
ストロベリー「よっしゃ、エネルギー充填。フルーッパワーアタック!」
   ストロベリーが大きな光弾が発射し、B兵の集団を一網打尽にする。
ストロベリー「快、感」
    ×     ×     ×
   起き上がるロブ。
ロブ「痛たた……(周囲に気付いて)あ?」
   多数のA兵に囲まれているロブ。
ロブ「何だ、貴様ら。隊長の俺様に対して……いや、隊長じゃねぇんだったな。っていうか、俺様は今、何様なんだ?」
   考え中のロブの隙をつき、背後から数体のA兵が攻撃するも、意に介さないロブ。
ロブ「新しい肩書きは、後で考えるとして、だ。ふんっ」
   背後の数体のA兵を腕のハサミで薙ぎ払うロブ。それを見て腰が抜ける他のA兵達。
ロブ「俺様の強さと性格、知らねぇ訳じゃねぇだろ? 戦う気のねぇ奴は見逃してやるが、戦おうって言うなら、飛んで火にいる夏の虫だぞ? さぁ、どうする」
   一目散に逃げ出すA兵達。
ロブ「凄ぇな、俺様の存在感。何か、そんな感じの肩書き無ぇか?」
    ×     ×     ×
   黒虎の銃撃を剣で懸命に弾く朱鷺。
黒虎「粘るね。ならば」
   丹波に向けて銃撃する黒虎。丹波の前に移動し、それを弾く朱鷺。疲労困憊な様子。
黒虎「さすがだね。レッドフェニックス」
朱鷺「どうも」
黒虎「だが、コレならどうだい?」
   エネルギーをチャージし始める黒虎。
黒虎「消耗したその剣では、もはやこの僕の攻撃は防げまい。仲間を庇って死ぬか、仲間を見捨てて避けるか。好きな方を選びたまえ。はっ」
   朱鷺に向けて光線を放つ黒虎。避けるそぶりも見せない朱鷺。
丹波「どけっ!」
   慌てて避ける朱鷺と立ち上がる丹波。海藻を引きちぎる。
黒虎「何!?」
丹波「せい!」
   光線を拳で打ち返す丹波。返された光線は黒虎の方へ飛んで行き、爆発を起こす。
   そこにやってくるロブ。
ロブ「あ? 貴様、まさか自力でアレを引きちぎっちまったのか?」
丹波「繊維を一本一本ちぎっていたから、時間がかかってしまったが、どうだ? 人間の力で引きちぎれたぞ?」
朱鷺「まさか、黒虎を相手に抵抗もしないでひたすらソレを試していたのか……? まったく」
   そこにやってくるサンタ。
サンタ「いいじゃないか。朱鷺が最後まで仲間を守ったからこそ、彼は今こうして立っている。それで十分だろ。ほら」
   朱鷺のスマホを手渡すサンタ。
サンタ「俺からのクリスマスプレゼントだ」
朱鷺「ありがとうございます」
丹波「だから、拾ったものを持ち主に返す事を『プレゼント』とは呼ばんだろうが」
   そこにやってくるストロベリー。
ストロベリー「あれ、まさか終わっちゃったの? おいおい、Mr.ストロベリーの見せ場はここからじゃん」
朱鷺「こら、倫吾君。調子に乗るな」
丹波「それにしてもお前、『リンゴ』なのに何故『ストロベリー』なんだ?」
ストロベリー「しょうがないじゃん。親父が自分の名前付けちゃったんだから。それに『Mr.アップル』だってダサいじゃん」
サンタ「じゃあ、リンゴ・スターとか」
ロブ「おぉ。格好いいじゃねぇか」
ストロベリー「そうか? 超変じゃん」
サンタ「……もしかして、元ネタわかってないのか?」
ストロベリー「全然」
朱鷺「残念ながら、僕も」
丹波「お前ら、ビートルズも知らんのか? まったく、けしからん」
ストロベリー「何だ、パクリなんじゃん。もういいよ、ストロベリーで」
ロブ「よくわからねぇが、だったらその肩書き、俺様が貰ってもいいのか?」
朱鷺「肩書き? 別に好きにすれば……(何かに気付いて)危ない!」
   飛んでくる光線を避ける朱鷺ら五人。ゆっくり歩いてくる黒虎。傷一つ付いていない。
ストロベリー「何だ、全然元気そうじゃん」
ロブ「正直、あの野郎は強ぇぞ?」
サンタ「これから本番って事だろ? むしろイヴより盛り上がってくれないと困る」
朱鷺「みんな。今更だが、僕の仲間になってくれるのか?」
ストロベリー「当たり前じゃん」
   通信で表示される紅林の映像。
紅林「レッド。すまないが息子の事を頼む」
サンタ「まぁ俺はあの日から、ずっと仲間のままのつもりだけどな」
ロブ「虫のいい話だろうが、敵の敵は味方、という訳だ」
朱鷺「わかった。僕が仲間と認めた以上、僕は君達の事を全力で守る。だが……」
   四人の前に出る朱鷺。
朱鷺「残念ながら、僕は弱い。だから、君達も僕の事を守って欲しい。構わないか?」
ストロベリー「当たり前じゃん」
サンタ「もとより」
ロブ「それでイーブンだな」
丹波「むしろ、そうでないと割に合わん」
   フッと笑う朱鷺を中心に、黒虎に対して並び立つ五人。
黒虎「一気に三人も仲間が増えたか。この僕の予想を上回るとは、大したものだね、レッドフェニックス。そんな君を称えて、この場は一旦引いてあげよう」
   地面に向けて光線を放つ黒虎。煙が晴れても、黒虎はその場に居る。
黒虎「む? 何故だ?」
サンタ「多分(ロブを指して)裏切ったコイツが基地に戻ってこないように、転送装置にロックがかけられたんだろうな」
ロブ「獅子身中の虫、って奴か。貴様、悪く思うなよ」
ストロベリー「って事は、アンタ逃げられないって事じゃん」
丹波「逃げる? まったく、けしからん」
朱鷺「それは残念だったな」
黒虎「勝手な事を言うな。この僕が、君達から逃げるだと? あり得ない話だ」
朱鷺「なら、決着をつけようか」
黒虎「一日でも早く死にたいのだね。ならば墓標に刻む君達の名を今一度、改めて聞いておくとしよう」
朱鷺「いいだろう。(スマホを取り出し)変身アプリ、起動」
   LINEのような画面に、不死鳥柄のスタンプを押す朱鷺。
朱鷺「セイレイチェンジ!」
スマホの電子音(紅林の声)「フェニックスタ〜ンプ」
   朱鷺がレッドに変身する。
レッド「紅の不死鳥、レッドフェニックス」
丹波「漢田流拳法師範代、丹波拳一郎」
ストロベリー「アイアム、ベリーストロング。Mr.ストロベリー」
サンタ「俺の名前はサンタクロース。信じるか信じないかは、お前次第だ」
ロブ「決めたぜ、新しい肩書き。俺様はスターだ。ロブ・スターと呼べ」
黒虎「なるほど。さぁ来い、新戦隊。この僕がまとめて相手をしてやろう」
レッド「みんな、行くぞ!」
一同「おう!」
   黒虎に向かって一斉に駆け出す五人。その中、レッドを引き止める丹波。
丹波「お前、やっぱりジブリ好きだろ?」
レッド「今聞く事じゃないだろ。行くぞ」
   再び駆け出すレッドと丹波。
   レッドとサンタが先陣を切り、丹波とロブが追随し、ストロベリーが砲弾を放つ、といったコンビネーション攻撃を受けても尚、ノーダメージの黒虎。
ストロベリー「やっぱ効いてねぇじゃん」
サンタ「闇雲に攻撃しても無駄かもな。何か策を立てた方がいい」
丹波「と言っても、俺には(拳を示して)コレしか無いぞ?」
ロブ「なら一旦、貴様と俺様だけで行くぞ。このままじゃ、腹の虫が収まらねぇ」
レッド「頼む。残りの三人で、何か策を練ろう」
   再び黒虎と戦い始める丹波とロブ。その様子を見ているレッド、ストロベリー、サンタ。
サンタ「(布袋の中を漁りながら)何か、強力な武器無かったかな〜?」
レッド「その袋って、子供達へのプレゼントが入ってるんじゃないんですか?」
サンタ「あ〜、企業秘密だから詳しくは言えないんだけど、この袋の中にはポケットが付いててな。子供達が欲しがっている物がソコから出てくる、って仕組みなんだよ」
ストロベリー「何そのチート機能」
サンタ「信じるか信じないかはお前次第だ」
レッド「って事は私が……僕が『黒虎を倒せる強力な武器が欲しい』って願えば……」
サンタ「無理だな。あくまでも『子供』の願いを叶えるシステムだから」
レッド「そうですか、残念です」
ストロベリー「なら、俺は?」
サンタ「え?」
ストロベリー「子供扱いされて怒っている内は、まだまだ子供なんだろ?」
レッド「倫吾君……」
    ×     ×     ×
   黒虎と戦う丹波とロブ。一見、丹波達が押しているようにも見えるが、黒虎には攻撃が効いている様子は無い。
黒虎「パワーはあるが、この僕を相手にどうにかなる程ではないようだね」
丹波「なに、これからだ」
ロブ「一寸の虫にも五分の魂、って奴だ」
   振り返るロブ。
   見張りのように立つレッドの後ろでサンタがストロベリーに何か説明している様子が見える。
    ×     ×     ×
   強く願うストロベリーと布袋の中に手を入れているサンタ。見張りのように立ちつつ、その様子を見守るレッド。
ストロベリー「サンタさん。あの黒いのを倒せる強い武器、俺にくれ!」
サンタ「よし、来た」
   布袋から鳳凰砲(不死鳥を模した弓矢のような武器。ただし、矢の部分は砲口になっている)を取り出すサンタ。
ストロベリー「お〜、コレが」
レッド「黒虎を倒せる武器?」
   続いて取扱説明書を取り出すサンタ。
サンタ「(説明書を読みながら)『コレは鳳凰砲。弓矢の要領で、弓の部分を引く事でエネルギーをチャージし、矢の部分にある砲口からビームを発射します』だとさ」
   既に駆け出しているストロベリー。
ストロベリー「よっしゃ、コレで俺もヒーローじゃん。選手交代だ」
サンタ「おい、倫吾。一人で行くな」
レッド「僕も行きます」
サンタ「いや、ちょっと気になる事がある。朱鷺は待機しててくれ」
レッド「? 了解……」
   ストロベリーを追って駆け出して行くサンタ。
    ×     ×     ×
   素早い動きで黒虎を翻弄するサンタ。
黒虎「スピードだけなら、この僕より上かもしれないね」
サンタ「そりゃそうだ。一晩で何軒回ると思ってんだ?」
   その後方で鳳凰砲を構えるストロベリー。
ストロベリー「行くぜ。避けろよ、誠也!」
   鳳凰砲からビームを発射するストロベリー。強大なビームが黒虎を直撃、爆炎に包まれる。
ストロベリー「よっしゃ。やったぜ」
   煙が晴れると、無傷の黒虎の姿。
黒虎「確かに、今までの武器の中では一番威力があったと言えるね」
ストロベリー「全然効いてねぇじゃん」
サンタ「やっぱり、か」
   時間稼ぎの為に黒虎と戦い始めるサンタ。
サンタ「倫吾。その鳳凰砲、朱鷺に渡せ」
ストロベリー「は? 何で?」
サンタ「見た目も名前も、どう考えたってレッドフェニックス用の武器だろ? きっと朱鷺が使った方がいい」
ストロベリー「……ちぇっ」
   レッド達の元まで戻ってきて、鳳凰砲を渡すストロベリー。
ストロベリー「だとさ」
レッド「しかし、僕が使ったからと言って特別に威力が変わるとは、残念ながら思えないけどな」
ロブ「案外、わかんねぇぞ? 相性ってのがあんのかもしれねぇからな」
ストロベリー「相性?」
ロブ「黒虎の野郎、貴様(=レッド)と戦う事だけは避けてたからな」
レッド「……言われてみれば」

○(フラッシュ)市街地
   ロブと相対するレッド。
   ブルー達と戦う黒虎。
レッドの声「あの時も」

○(フラッシュ)繁華街
   A兵、B兵と戦うレッド。
レッドの声「あの時も」

○(フラッシュ)採石場
   A兵、B兵と戦うレッド。
   丹波と対峙する黒虎。
レッドの声「今日も」
    ×     ×     ×
   地面に向けて光線を放つ黒虎。
レッドの声「さっきも」

○採石場
   鳳凰砲を持ったレッドを中心に集まるロブ、ストロベリー、丹波。少し離れた場所ではサンタが黒虎と戦闘中。
レッド「奴は僕と直接戦おうとしてないな」
丹波「理由は?」
ロブ「知らねぇよ。相性じゃねぇのか?」
ストロベリー「別に俺だって、空飛べる所以外、朱鷺に負けてないけどな」
レッド「空……?」
   丹波を見つめるレッド。
丹波「ん? どうかしたか?」
レッド「この間の事、覚えているか?」
丹波「……この間って、いつだ?」
レッド「君が僕と奴に初めて会った日だ。あの時、奴は相当なダメージを受けていただろ?」
丹波「あ〜、そんな事もあったな。確か、そのまま逃げて行ったな。まったく、けしからん」
レッド「あの時は『奴自身の攻撃を返されたから』だと思っていたんだが……」

○(フラッシュ)市街地
   丹波が打ち返した光線が黒虎の頭部に直撃する。
レッドの声「もしかしたら、攻撃を受けた箇所が問題だったのかもしれない」
    ×     ×     ×
   破壊される高層ビル。
レッドの声「今思えば、奴はいつも高い建物を優先的に破壊していた」

○採石場
   鳳凰砲を持ったレッドを中心に集まる丹波、ストロベリー、ロブ。少し離れた場所ではサンタが黒虎と戦闘中。
レッド「つまり、奴は」
ロブ「頭上からの攻撃に弱ぇ」
ストロベリー「ってことは、朱鷺が空から鳳凰砲で撃ち抜けば」
丹波「勝てるかもしれん、という事か」
レッド「よし。丹波とロブは奴を引き付けてくれ。倫吾君は、この事を緋山さんに」
一同「おう」
   駆け出して行く丹波、ストロベリー、ロブ。空に飛び立つレッド。
    ×     ×     ×
   黒虎と戦う丹波、ストロベリー、サンタ、ロブ。黒虎にいいようにあしらわれている四人。
黒虎「何だ? 先ほどまでと何かが違う」
   その様子を空中で見ながら、鳳凰砲の照準を黒虎に向けるレッド。
レッド「今だ」
   一斉に退避する丹波達四人。鳳凰砲から黒虎に向けてビームが発射される。
黒虎「何!?」
   必死に攻撃を避ける黒虎。
黒虎「レッドフェニックス……」
   空中を旋回しながら、鳳凰砲を撃ち続けるレッドと、避け続ける黒虎。
丹波「当たらんものだな」
ストロベリー「けど、俺らの想像が当たってるのは間違いなさそうじゃん」
ロブ「貴様の、苦虫をかみつぶしたような顔が目に浮かぶぜ」
黒虎「どうかな? この程度であれば、この僕が避けるには容易い」
サンタ「なら、お前の動きを封じるまでだ。朱鷺、一撃でしとめる準備しとけよ」
レッド「了解」
   丹波達四人に囲まれる黒虎。しかし余裕のあるそぶり。
ストロベリー「この状況で、何でそんなに余裕なんだよ」
黒虎「この僕には、既に対処法があるのだよMr.ストロベリー。さぁ、来たまえ」
   黒虎へ一斉に飛びかかる丹波達四人。四人の攻撃をあしらう黒虎。その様子を空中で見ながら、鳳凰砲を構えるレッド。
レッド「今だ」
   一斉に退避する丹波、ストロベリー、サンタ。しかしロブは黒虎に腕を掴まれている。そのままロブにハンマーロックを決める黒虎。
ロブ「しまっ……」
黒虎「さぁ、コレでも撃てるかな? レッドフェニックス」
ロブ「俺様に構うな。撃て」
レッド「くっ……」
   鳳凰砲を下ろし、着地するレッド。
ロブ「貴様、何してる? 小の虫を殺して大の虫を助けんじゃねぇのか?」
黒虎「無駄だよ、ロブ・スター。レッドフェニックスは、世界よりも仲間を助けてしまう、ローカルヒーローなのだからね」
レッド「……残念ながら、僕はかつて仲間を失った。だからこそ、もうあんな思いはしたくない。たとえ『ローカルヒーロー』と揶揄されても仲間は守ってみせる」
黒虎「随分と素直になったものだね」
レッド「僕は弱いからね。残念ながら、いきなり世界は守れないさ。……けどね」
   再び飛び立つレッド。
レッド「仲間は増やせる」
   戦闘態勢に入るストロベリー。
レッド「この世界では、同じ志を持った者が新たに続々と産まれてきてくれる」
   戦闘態勢に入るサンタ。
レッド「かつて同じ志を持った者が、時を経て戻ってきてくれる事もある」
   黒虎の腕を振りほどき、戦闘態勢に入 るロブ。
レッド「種族の違う者とだって、わかりあう事が出来る」
   戦闘態勢に入る丹波。
レッド「そうやって、僕はまた仲間を増やしてきた。これからもそうやって、仲間を増やして行く」
   鳳凰砲を構えるレッド。
レッド「そうやって、どんどん仲間を増やして行って、いつか世界のすべてと仲間になった時、僕はなれる。世界のすべてを守る為に戦う、ヒーローに」
黒虎「君らしい、非現実的な絵空事だね。レッドフェニックス」
   レッドに銃口を向ける黒虎。
丹波「おっと」
   そこに割って入る丹波。慌てて銃口を下げる黒虎。
丹波「絵空事でも構わん。世界のすべてと仲間になれば、それは平和な世界のハズだ。俺も乗った。せい!」
   丹波の一撃で吹っ飛ぶ黒虎。
黒虎「現実を見たまえ。世界のすべてと仲間など、寿命が何年あっても足りないのではないかい?」
   黒虎へ一斉に飛びかかるストロベリー、サンタ、ロブ。
ストロベリー「だったら、俺ら下の世代がソレを受け継げばいいだけじゃん」
ロブ「タデ食う虫も好き好き。そういうリヴァースが居てもいいだろ?」
サンタ「信じるか信じないかはお前次第だ」
   布袋からかぎ爪のような武器を取り出し両手に装着するサンタ。
サンタ「サンタクロー」
   スピードを行かした戦法で、黒虎をその場に釘付けにするサンタ。
黒虎「こしゃくな」
   その隙に黒虎の背後に忍び寄り、ハンマーロックを決めるロブ。
ロブ「さっきのお返しだ」
   その隙に黒虎の懐に入ってくるストロベリー。
ストロベリー「フルーッパワーアタック」
   光弾が発射される直前、ロブの腕を振りほどき、光弾を避ける黒虎。
丹波「まだまだ」
   丹波も加わり、四人で黒虎と戦う。四人の攻撃をあしらってはいるが、先ほどまでの余裕はない黒虎。
黒虎「なかなかやるね。しかし、君達がいくら頑張ろうとも、レッドフェニックスはこの僕に攻撃を当てる事はできないのだよ」
ロブ「どうだかな」
サンタ「策はある」
ストロベリー「やっちゃう?」
丹波「構え」
   大技を繰り出す体勢の四人。全員が黒虎の足下の地面を攻撃する。
黒虎「なっ!?」
   足場が崩れ、バランスを崩す黒虎。その隙に一斉に退避する丹波達四人。その様子を空中から見ているレッド。鳳凰砲の照準の先には黒虎。
レッド「今だ。鳳凰砲、発射!」
   鳳凰砲からビームが放たれる。その瞬間、仰向けに寝転がる黒虎。
黒虎「どうだい? コレで、正面から攻撃を受けたのと同じ状態に……」
レッド「残念だったね」
   ビームの軌道が黒虎の手前で変わり、黒虎の顔をかすめてその先へ飛んで行く。
黒虎「?」
   ビームの行き先、倒れたままの黒虎の頭の先に立っている丹波。
黒虎「しまっ……」
丹波「漢なら(拳を示して)コレだろ?」
   ビームを拳で打ち返す丹波。黒虎の頭部に直撃する。大爆発が起きる。
   着陸するレッドと、その周囲に集まる丹波、ストロベリー、サンタ、ロブ。
丹波「決まったか?」
   煙が晴れると、立っている黒虎。しかしそのスーツには全身にヒビが入っている。
黒虎「まだだ、まだ……」
   スーツが砕け散り、A兵の姿になる黒虎。
A兵「そんな……この僕のスーツが……」
   剣を手に、A兵の元へ歩みを進めるレッド。
レッド「残念だけど、僕達のレッドリストに載ったのが、君の運の尽きだったのさ」
A兵「くっ……」
レッド「最後に聞こう。僕達の仲間になる気は、あるかい?」
A兵「この僕が、人間の味方だと? 死んでもゴメンだね」
レッド「……そうか。残念だ」
   剣を振り下ろすレッド。
轟N「こうして」
    ×     ×     ×
   一人で歩いている朱鷺
轟N「新たな仲間の活躍もあり、黒虎を倒した新戦隊」
   朱鷺の歩く先、待っている丹波、倫吾、緋山、ロブ。
轟N「しかし、これで全ての脅威が去った訳ではない」
   丹波達四人と合流し、歩き出す朱鷺。
轟N「この先も様々な困難が待ち構えている事だろう」
   その様子を遠くから見ている人影。
轟N「それでも世界を守るために、戦え、戦隊。新たなる敵は、もうすぐそこまで来ている……」
   人影の正体が轟だとわかる。
轟「かもしれない」
   スマホを操作する轟。変身アプリが起動されており、ケルベロス柄のスタンプが押されている。
スマホの電子音(紅林の声)「ケルベロスタ〜ンプ」
   ブルーに変身する轟。その周囲にはエイリアンやロボット等、青い戦士が計五人いる。
                  (完)

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