Color 舞台

「文化祭、来週!」 そう、私たちが演劇をやらねばならない文化祭は来週なのだ。 進まない準備。過ぎてゆく時間。 交わされる怒号。交わらない心。 散りじりのバラバラになりかけたその時、そいつは現れた。 そいつは唇の端を歪めて笑い、そして、言う。 「……お困りのようですね?」 それぞれの心には、それぞれの色がある。 ただ、それをさらけ出すのは、ほんの少し勇気がいる。 これは、そんなそれぞれの色を持った、勇気の出ないどうしようもない8人の物語。
櫻井 26 0 0 09/07
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第一稿

Color       作・櫻井  

     登場人物                                          
         
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Color       作・櫻井  

     登場人物                                          
         
          白石 ゆり しらいし ゆり♀           
          
          黒崎 義也 くろさき よしや♂    
          
          赤井 太陽 あかい たいよう♂      
          
          緑川 聡  みどりかわ さとし♂          
          
          山吹 茜  やまぶき あかね♀     
          
          桃乃 叶  ももの かなえ♀     
          
          青柳 翔太 あおやぎ しょうた♂  
          
          桜木 流兎 さくらぎ りゅうと♂   
          
          生徒1~6 



     











         暗い空間。舞台中央に黒崎義也が力なく座っている。
         闇の中から罵倒と嘲りが這いよってくる。


























生徒1   ほんと気持ち悪いよな。なんで生きてんだ?あいつ?

生徒2   うわっ。目ぇ合っちまった。気持ちわりー。

生徒3   やめなよー(笑)。黒崎くん、本しか友達いないんだからー。

   
     生徒達、笑う。
     


生徒4   あぁ、そうそうあいつ小学校の卒業文集で、将来の夢、なんて書いたか知ってる?

生徒5   え、なになに?魔法使いとか?(笑)

生徒4   ばか、ちげーよ(笑)あ、でもそんな変わんねーわ。
      帽子屋になりたいですー!だってよー!


    生徒達笑う。
    黒崎、ポケットからナイフを取り出し、荒い息で暗闇にナイフを振りかざす。


生徒6   あー、マジで目障りだわ。ほんと死ねばいいのにな。

生徒1   でもあいついいよなー。親いねーんだろ?

生徒6   マジで?羨ましいわー。最近うちの親マジウザくてさー。

生徒3   ああうちもうちも。ほんと、死ねばいいのにって思うー。

生徒4   ていうか黒崎ってなんで親いねーの?

生徒5   交通事故だってー。一緒に(死ねばよかったのにねー。)

生徒6   ホントだよなー。(生きてても意味無いだろ。)

生徒1   (死んだら楽になれるぜきっと。)

生徒2   (お前に居場所なんてねーよ。)

生徒3   (ねぇ。死んでよ。死んで?)

生徒4   (生きてて何が楽しいんだ?)



     



生徒1~6、嘲笑と共に、()内の台詞を繰り返す。

     疲れ果てた黒崎、座り込み、絶叫と共にナイフをその喉目掛けてー・・・





     


     
   

     






     暗転。
     




     舞台はとある高校の教室。
     
     所々に「衣装」や、「小道具」等と書かれた大小のダンボールが積まれている。
     
     三年生の最後の文化祭で演劇を上演することになったクラスが放課後に練習を

     している。
 

    
     

桃乃   あなたはー・・・ひとりじゃーありませーん・・・。

緑川   不安で、苦しくて、潰れてしまいそうな時・・・。

山吹   誰かを傷つけて、傷ついてしまった時・・・。

赤井   押忍!勇気を出して、心の扉をひらくのだぁぁぁぁ!

青柳   ハハハハ・・・。その時・・・そこには・・・ハハハハハハハ駄目だー!

ゆり   はいストップ、ストップ、ストップー!
     青柳君!いい加減台詞覚えて!ていうか笑わないで!
  
青柳   ごめんごめん!でもこの台詞、なんかクサ過ぎて・・・
     ハハハハハハハハ!
  
ゆり   今さら脚本にケチつけんな!
     あと緑川君、単語帳やめて!       
  
緑川   センター試験までもう時間が無い。
  
ゆり   それはわかるけど今はやめて!それと茜、下向かない!

山吹   ご、ごめんなさい、緊張しちゃって・・・        

ゆり   そして赤井君、お客さんを睨まない!あと台詞の頭にいちいち押忍はいらない   
     から!

赤井   黙れ!男が格闘家として口を開くとき、押忍!と気合を口にせんでどうする!

ゆり   あんた空手部春に引退したでしょ!
     もー何なの?私難しいこと言ってる?
     最低限、普通に、前向いてしっかり台詞を言ってってだけじゃないのよ・・・。
     あっ、ほら、桃乃さん見を見て!ずっとしっかり前向いてるよ!

桃乃   ・・・天井のしみがあべのハルカスみたいな形だー・・・。

青柳   ぶふっ!
  
ゆり   見てるの前じゃなかったー!じゃなくて桃乃さん!今天井はいいからしっかり  
     前見て!

桃乃   えへへー。ごめんー。

青柳   ていうか天井にしみなんかあるか?どこ?

桃乃   キミタチ凡人には見えんのだよー。

緑川   ふん。僕は天井のシミになんか興味は無い。

  
赤井   空手で鍛えられた俺の心眼を持ってすれば見えぬものなど・・・。
     はぁーーーっ!・・・押忍!(開眼)

青柳   見えた?

赤井   見えん。
  
青柳   ハハハハハ!

緑川   馬鹿め。心眼なんていう非科学的なもの眉唾もいいとこだ。

桃乃   だからー。皆には見えないってー。

赤井   何故だ・・・。何故見えん!修行をやり直せということか!

緑川   修行よりも人生をやり直したらどうだ赤井。

山吹   ちょっと・・・みんな・・・、あの・・・

桃乃   うーん・・・カナはー、修行なんかしなくても最初から見えたよー。色々。   

青柳   色々って何?

桃乃   色々はー色々だよー。

赤井   俺は天井のしみに負けたのかっ・・・!
     うっ・・・うっ・・・うおぉぉー!

ゆり   今そんなことはどーでもいーでしょー!
     みんなこの状況わかってるの?もう本当に時間が無いのよ!
        
山吹   ゆ、ゆり、落着いて・・・

ゆり   これが落着いていられるかー! 本番はもう来週なのよ?
     文化祭!来週!
     もう時間を無駄にはできないの!皆ちょっとは危機感ってものを、 

          
     桜木、登場


桜木   ちょりーっす。つって。遅れてめんごめんご。

ゆり   桜木!あんた今何時だと思ってんの!
     すぐ練習って言ったでしょ!今までどこ行ってたの!

桜木   トイレ?つーかトイレ?マジ1キロぐらい出たわー。マジ死闘。2時間。  
 
青柳   ハハハハハハ!もーダメだ!最高だー!

ゆり   最低だー!

赤井   ふん。軟派男が!
  
桜木   めんごめんご。つって。マジみんな怒んなよー。つーか何?あんま練習進んで    
     ない感じ?

桃乃   ずーっとおんなじとこやってるよー。2時間!

緑川   午前中で授業が終わるせっかくの土曜日なのに、時間の無駄もいいとこだ。

ゆり   なんですって?

青柳   いやほんと全然進まなくてさー。あーウケた。

ゆり   ウケた?
  
桃乃   あー、あっちのシミはサクラダファミリアだー。

ゆり   またシミっ?
  
桜木   えーじゃあ何?俺がトイレで2時間バトってる間、みんなずっーと同じこと繰
     り返してた系?

赤井   その通りだ。

桜木   マジでー。やべぇじゃーん。来週文化祭っしょ?もう一週間切ってんのにマジ
     やべぇ!え、どうする系?超絶やべーじゃん。ぱねぇ。マジやべー。

赤井   やべぇ以外のことが言えんのか貴様はぁぁぁ!

青柳   はいはい。んで、ほんとどうする?
     恥はかきたくないよなぁ。

山吹   今からでも模擬店の方に入れてもらえないかな…。

緑川   無理だろ。そもそも、俺達が何故演劇なんかやる羽目になってるのか思い出せ
     よ。

青柳   えーっと・・・クラスの人数が多すぎて、模擬店やるだけだったら人が余りす
     ぎるから・・・

赤井   クラス内でチームを分けて、もうひとつなにか出し物をやろうという話になり、

桃乃   じゃんけんで負けたもの同士が集まってー、ここにいるチームが出来てー、

山吹   さぁなにをやろうかなって迷ってたら・・・

ゆり   担任の御子柴先生が勝手に演劇で申請出してたのよ・・・。

桜木   マジやべー。

ゆり   そう!マジでやばいの!大体何!御子柴先生何なの!
     大丈夫大丈夫!ぜーんぶ俺にまかせておけい!
     とか言ってた次の日に交通事故に遭うってどういうことよ・・・。
       
山吹   お見舞い行ったけど、お尻の骨が割れちゃって全治3ヶ月だって…。
     お尻の骨以外は無傷だったんだけど・・・。

ゆり   どんな事故だったのよ・・・。 
  
赤井   軟弱だな。俺のように体を鍛えていれば、
     たとえ事故に遭っても尻の骨もビクともしなかっただろう。     

緑川   お前はもう少し頭を鍛えろ。

赤井   ふっ・・・。言われるまでも無く鍛えているとも。俺の頭突きは熊をも倒す。

桃乃   倒したことあるのー?

赤井   実際に試したことは無いが、多分いけるだろう。

ゆり   いや無理でしょ。

桜木   つーか頭鍛えろってそういう意味じゃなくね?

青柳   しかし困ったよなー。御子柴先生、演劇部の顧問だから結構当てにしてた
       のにな。

緑川   毎年部員がどんどん減っていって、とうとう去年廃部になった演劇部の元
       顧問、だろ?
       当てに出来たかどうかは怪しいな。

  山吹   ・・・あ、だから去年の演劇部、文化祭であんなことやってたんだ。

  青柳   あんなことって?

  山吹   ・・・ひとり芝居。1年生の子が。…泣きながら。

  青柳   ぶふっっっ!

  ゆり   え、うそ、そんなことやってたの? 

  桃乃   あー。カナも観たよー。声色変えてー、ひとりで何役も演じてー。
       すごくがんばってたんだけど途中で泣いちゃってー。
       最後までやれなかったんだよねー。
  
  桜木   あー。つーか俺も観たし。
       もう廃部でいいじゃないですかー!何で僕がこんなことをー!
       さびしいぃぃぃぃ!とか言っていきなりガン泣きしたやつっしょ?     

  青柳   くくくくく・・・。(ヒキ笑い) 

  山吹   よっぽど寂しくて辛かったんだろうね・・・。いきなり子供みたいにわん
       わんわん泣き出したから、舞台袖から御子柴先生がダッシュで出てきて、

  緑川   その1年の腕を引っ張って退場させた。・・・なぜか御子柴先生も泣いて
       いたな。
        
  桃乃   大勢のお客さんの前で・・・

  山吹   子供みたいにわんわん泣きながら・・・

  赤井   先生に腕を引っ張られて退場・・・

  ゆり   ・・・最悪ね。

  青柳   ハハハハハ・・・

  ゆり   何がおかしいの。

  桜木   おこんなよーゆりっぺ。

  ゆり   ゆりっぺ言うな。あたしたちはそうならないようにしないとね。

  緑川   去年の演劇部の話はいいんだ。僕が言いたいのは、   

  ゆり   御子柴先生がいたら逆にやばかったって?
 
  
  緑川   それもそうだが、違う。
       ・・・もう諦めないか、と言いたいんだ。  
  
  ゆり   え?

  緑川   潮時だと思わないか?本番は来週なのに、
       満足な指導が出来る人間もいないから演技はこのザマだ。
  
  ゆり   いや、でも、

  緑川   この雑多なダンボールの群れを見ろ。
       まだ準備が出来ていない、材料だけの衣装や小道具、
       音響や照明に至ってはまだ計画すら立っていない。
  
  青柳   そういえば、他のクラスは宣伝のチラシやらポスターやら
       いっぱい作ってばら撒いてるけど、俺達なんもやってないよな。

  赤井   ふん、そんなものいらん。男なら己の声で伝えるのだ。
       芝居をやるぅ!体育館だぁ!観に来いぃぃぃ!
       これでよかろう。

  ゆり   よくねーよ。

  山吹   えっ・・・私達、体育館でお芝居やるの?

  赤井   何?体育館ではないのか?

  青柳   あれ?俺は視聴覚室って聞いたけど?

  桃乃   えー?踊り場じゃないのー?

  山吹   中庭だと思ってた・・・。

  桜木   うぇーい。全部やっちゃえばよくねー?

  ゆり   出来るか!体育館よ体育館!
       ていうか桜木!生徒会に提出しておいてって、
       申請書あんたに渡したでしょーが。まったく・・・


     桜木、ポケットから体育館の使用許可申請書を取り出す。


  桜木   あ、コレ?ゆりっぺが絶対無くすなっつったからもってっし。
       マジ大事にもってっしー。えらくね?
  
  ゆり   うわぁぁぁぁぁーー!

  
  緑川   はー・・・。(ため息)
       準備が出来ていないどころか、最低限の共通認識すらない。
       わかったか白石?状況は絶望的なんだ。
       もう諦めるべきだろう。

  

  ゆり   そこまでわかってるなら・・・どうして何もしてくれないの?
       緑川くん頭がいいんだから、どうすれば上手くいくか、ほんとはわ
       かってるんじゃないの?
 
  緑川  ・・・だから今、諦めればいいと言っただろう。

  ゆり  ・・・悔しくないの?

  緑川  は?

  ゆり  やるって決めたことを途中で投げ出すの、悔しくないの?私は絶対にいや!

  緑川  ・・・お前の都合を僕たちに押し付けるな・・・。

  ゆり  違う!私は!

  緑川   僕には時間が無いんだ!

  ゆり   え?

  緑川   ・・・こんなところで使う時間も、体力も・・・僕には・・・!

  ゆり   ・・・緑川君?

  緑川   ・・・なんでもない。忠告はしたぞ。…少し外の空気を吸ってくる。


     緑川、退場。


  ゆり   なんだってのよ・・・。

  山吹   ゆり・・・?

  ゆり   絶望的な状況がなんだってのよ・・・。
       一度やるって決めたことなんだから、絶望的でも何でもやるしかないじゃ  
       ない!

  山吹   ゆり。落ち着いて・・・。      

  ゆり   出来る、出来ないじゃなくて、やる、やらない、でしょ?それなのに、

  青柳   ハハハハハ!

  ゆり   ・・・青柳君?

  青柳   いやゴメン。白石は熱いなー。そんなに演劇がしたいの?

  ゆり   ・・・違うわよ。自分が一度やるって決めたことだから、
        やり遂げないと自分に嘘をついたことになるじゃない。そんなの悔しいから、だから、

  青柳   はははははは・・・。ふー・・・。そっか。
       ・・・俺、ちょっと緑川の様子見てくるわ。

  ゆり   え?

  青柳   一人にしとく訳にもいかないだろ?それに・・・なんか俺も外の空気が吸いたくなった。

  ゆり   ・・・わたし、なんか間違ったこと言った?

  青柳   ハハハ!いーや、別に。すぐ戻るわ。
       青柳、退場。


  ゆり   別にってなによ・・・。
  
  桜木   あー、なんつーか、このまま休憩な感じ?休憩系?
 
  赤井   ふむ。だったら俺は、グラウンドでひとつ汗でも流してくるとしよう。

  ゆり   え?赤井君、練習!

  赤井   全員がそろわんと出来るものも出来んだろう。それに、このジメジメした空気も気に入らん。
       男は外でさわやかに汗を流すに限る!


     ゆり、呆れて座り込み、うつむく。

 
  桜木   赤井っち、さわやか系っつーかテカテカ系じゃーん。

  赤井   構わんな?白石?

  ゆり   ・・・勝手にすれば。

  赤井   ・・・うむ。では行くとしよう。桜木、貴様も一緒にどうだ?その軟派な性根を叩きなおし   
       てやるぞ?

  桜木   うぇいうぇーい。いっとくー?赤井っちいっとく系ー?
       ・・・うっ!


     桜木、腹を押さえて体を折る。


  赤井   何だ?どうした?

  桜木   やべぇ。まじやべぇ。ぱねぇ。超ぱねぇ。第二ラウンドの予感?つーか死闘終わってなかっ
       たし。

  桃乃   1キロも出してまだ出るんだー。

  桜木   うっ!・・・ありえなくね?マジありえなくね?つって。つーか、いー度胸だし・・・。
       マジ返り討ちにしてやんよクソがぁぁーーー!


   桜木、体を折りながら走って退場。
       
       間。  
     
       
  
  桃乃   「くっそがぁー」って、かけてるのかなー?
  
  赤井   ふん、女子供じゃあるまいし、騒がしいやつめ。
       ・・・白石、落ち込むのは勝手だが、いつまでも女々しく下を向くな。この俺のように男ら
       しく、
 
  桃乃   ゆりちゃんは女の子だよー。 

  赤井   うむ。そうだったな。だが、
・・・まぁいい。少し汗をかいたら戻ってくる。
        

   赤井、退場。  
  
   桃乃、見えない何かを目線だけで追い始める。
  

  ゆり   なによみんな、次から次へと・・・。
        何考えてんのか全然わかんない・・・。

  山吹   ゆり・・・。

  ゆり   言いたいことがあるなら言いなさいよ・・・。 

  山吹   ゆり、元気出して・・・。

  桃乃   えー?なーにー? 

  ゆり   本気で喋ってた私が馬鹿みたいじゃない・・・。

  山吹   そんなこと無いよ。いっつも本気で全力なゆりのこと、
       私いつもすごいって思ってるよ。
       ほら、桃乃さんもまだいてくれてるし、私達だけでもがんばろ? 

  桃乃   あー・・・待ってー・・・。


     桃乃、見えない何かを追って退場。

     ゆり、顔を上げる。


  ゆり   ・・・どこに桃乃さんがいるのよ。

  山吹   えっ?あれっ?    

  ゆり   ・・・本当に、みんながなに考えてるのかわからない・・・。

  山吹   ゆり・・。

  ゆり   ・・ごめん茜。ちょっとだけ一人にして。

  山吹   ・・うん、わかった。私でよかったらなんでも聞くから、言ってね?

  ゆり   ・・・。

  山吹   ・・じゃあ・・。


     山吹、退場。


  ゆり   ・・・ほんとにみんな、なに考えてんのよ。もうわけわかんない…。
      

     ゆり、膝を抱えてうずくまる。
     ダンボールの中から、黒崎、登場。気づかないゆりの真後ろに立ち、
     手に持っているステッキで思い切り床を打つ。
 
  ゆり   ふわっっっ!

  黒崎   はははははは・・・・ふへっへっへっへっへっへっへ・・・。
       お困りのようですねー!
 
  ゆり   何!誰?

  黒崎   今あなた思ったでしょう?みんなの考えてることがわかればいいのにって。
        ははははは・・・。

  ゆり   何?なんなの?

  黒崎   ふっへっへっへっへっへっへ・・・みんなの、考えてることが、わかればいいのに…
       はっはっはっはっは・・・。あーおなか痛い。

  ゆり   なにがおかしいのよ!

  黒崎   ブァーカ!エスパーじゃないんだからわかるわけ無いだろ。
       何?何ですか?その年でSFとか超能力とか信じてたりします?
       いたいたしー。
 
  ゆり   何よ・・・ていうかあんた本当に誰なのよ?

  黒崎   あー申し遅れました。私の名は黒崎!       
       
  ゆり   ・・・。
  
  黒崎   自分の名前を言うときは大きな声で、っておばあちゃんに教わりませんでした?まぁいいん  
       ですけど。あ、でもね、この名前あんまり好きじゃないんで、
       帽子屋って呼んでくれますぅ? 

  ゆり   帽子屋?

  黒崎   あっ、いいですねー。大きな声でもう一度?

  ゆり   警察呼ぶ。

  黒崎   呼んでもいいけどあなた以外に私のこと見えませんよ?

  ゆり   は?

  黒崎   ほらほらほらほらあなたの好きなSFとか超能力とかの話ですよ。
       私そういう存在なんで。

  ゆり   何言ってんの?あんた大丈夫?

  黒崎   あー信じてくれませんかー・・・。困りましたねー・・・お?


    山吹、登場


  山吹   ゆり!なんか大きな声したけど、大丈夫?あれ、誰の声?

  ゆり   茜!・・・え?
 
  山吹   誰もいないわね・・・。私の聞き間違いかしら・・・?
  
ゆり   茜?

  山吹   確かに男の人の声がしたんだけど・・・。

  ゆり   茜!何言ってんの?
       目の前にいるじゃない!あいつよあいつ!あいつの声!

  山吹   え?

  ゆり   いや、だから!そこ!その変な格好した帽子かぶってるやつ!

  山吹   ・・・ゆり?

  ゆり   変質者よ!警察呼ばないと!

  山吹   ・・・ゆり、ごめん!

  ゆり   え?

  山吹   ゆりが幻覚見えるくらい追いこまれてるなんて私、知らなくて・・・。

  ゆり   はい?

  山吹   気づかなくてごめんねっ。
       どうしよう…幻覚症状ってどうやったら直るのかしら・・・。
       ゆり、とりあえず横になって、ゆっくり深呼吸を、

  ゆり   茜、本気でいってるの?

  山吹   ・・・どういう意味?

  ゆり   ・・・。

  山吹   ・・・とりあえず、保健室行こう?ベッドで休めば少しは楽に、

  ゆり   ・・・大丈夫。
       
  山吹   え?

  ゆり   ありがと茜。私、大丈夫。
       うん、いや・・・大丈夫じゃないかもしれないけど大丈夫だから。

  山吹   ほんとに?

  ゆり   うん、全然、全然・・・大丈夫、だと、思う、ことにする。

  山吹   でも、

  ゆり   大丈夫だからー・・・。もうひとりにしてぇ・・・。

  
  山吹   ・・・うん、わかった。
        でも・・・ほんとに大丈夫?
       
  ゆり   大丈夫だっつってんでしょ!
 
  山吹   !・・・ごめんなさい・・・。じゃあ・・・。

 
     山吹、退場。


  黒崎   へっへっへっへっへ・・・「何言ってんの?あんた大丈夫?」
       とか言っときながら、「でも、ほんとに大丈夫?」
       とか心配されてやんの。人の心配より自分の心配しろよ。

  ゆり   うるさいわね!あんたほんとに何なの、

  黒崎   ていうか!八つ当たりしてんじゃないですよー。
       いいコじゃないですかー。山吹さん、でしたっけー?
       あなたの事心配してきてくれたのに、
       「大丈夫っつってんでしょ!」なんつって追い返しちゃって。かわいそー。
       ・・・そんなだからみんなが何考えてるかわからないんですよ。

  ゆり   え?

  黒崎   あなたねー。本当は自分のことしか考えてないでしょう?
       あなたが知りたいのはみんながなに考えてるか、とかじゃなくて、
       どうしたら自分の思う通りに動いてくれるか、じゃないんですか?

  ゆり   ・・・何言ってんの?

  黒崎   自分がやるって決めたことだから、やり通さないと自分に嘘をついたことになる。
       ・・・でしたっけ?かっこいいですねー。
  
  ゆり   ・・・。

  黒崎   でもですねー、それって巻き込まれた人の気持ちはどうなるんですかー?
  
  ゆり   ・・・巻き込まれた人の、気持ち?
   
  黒崎   エゴなんですよ。あなたのやってることは。

  ゆり   エゴ?

  黒崎   傍から見れば確かにあなたは正しくて健気だ。
       不真面目な同級生を必死にまとめようとしている一生懸命な優等生だ! 
       だが!その!心の奥は!
       自分の下らないポリシーを曲げたくないから、
       我侭を言って他人に同調を強要しているエゴイストに他ならない!

  ゆり   ・・・違う、
  
  

  黒崎   そんなエゴイストに人がついてくるわけがありませんねー。
       同級生がまとまるわけがありませんねー。
       して今この状況です!みんなあなたのやり方にうんざりして、
        一人また一人と散りじりのバラバラになってしまいました!
  
  ゆり   だって、それは、
       
  黒崎   しかしここまで来てあなたはまだ自分が何をしているか気づいていない!
       あまつさえ、みんなの考えてることがわかればいいのに、
       なんていってまだ悲劇のヒロインでいようとする!ははははは・・・

  ゆり   違う!わたしは、   
  
  黒崎   虫唾が走るんだよ!
  
  ゆり   ・・・。

  黒崎   お前みたいなやつが一番嫌いだよ。吐き気がする。

  ゆり   ・・・。
       
  黒崎   ・・・言い返すことも出来ませんか。まぁ結局私が言いたいのはですね、
       あなたはその青臭いポリシーで馬鹿みたいに突っ走ればいいかもしれませんけど、
       あなたみたいに馬鹿一直線で突っ走れない人も世の中にはいるじゃないですか。
       ですから、馬鹿は馬鹿なりにもこう、考えて動かなければいけませんよ、とね?
       確かに、馬鹿の星の元に生まれた以上は仕方ない部分も、

  ゆり   ・・・仕方ないじゃない・・・。

  黒崎   あい?

  ゆり   仕方ないだろうがぁーーーーー!
       馬鹿なんだから!

  黒崎   ・・・え?

  ゆり   そうよ!私は馬鹿よ!馬鹿の星の元に生まれましたけど何か?悪い?
       なんかあんたに迷惑かけた?

  黒崎   もしもし?

  ゆり   あんたに言われたこともわかってんのよ!
       全部わかってんのよ!ぜーーーんぶっ!わかってんのよぉーー!
       でもどうにもならないのよ!いままでそうやって生きてきたんだもん!
       これしか私は知らないんだもん!この生き方しか私は知らないの!
       わかってるの!全部、全部、全部!全部!全部!わかってるのよぉーー!
       ・・・でも、どうにも、ならないのよ・・・。
       
  黒崎   ・・・。
  
  ゆり   ・・わたしが、どうしようもなく、馬鹿だから・・・。
  
  黒崎   ・・・馬鹿だって自覚はあるんですね。

  ゆり   あるに決まってんじゃない・・。自分で声に出したら、余計はっきりと自覚したわよ・・・。

  黒崎   ・・・ついでに不器用と、頑固って言葉知ってます?
 
  ゆり   知ってるわよ!それもわかってるわよ!

  黒崎   ・・・。

  ゆり   ・・・。

  黒崎   ・・・たかだか十数年の人生で、この生き方しか知らない、なんて言ってたら
       先人たちに笑われますよ。

  ゆり   ・・・え?

  黒崎   まぁ私が言えた事ではありませんが・・ね。
       うーむ・・・。まぁ自分の性格に自覚があるなら良しとしましょう。
       白石ゆりさん。合格です!
      
  ゆり   合格?

  黒崎   はいそーです!合格です!・・・ギリギリですよ?
       ていうかもっと喜んでくださいよー。

  ゆり   いや、合格って。何に?

  黒崎   この私が力を貸すに値する人間かどうかの試験です!
       ありがたく思ってくださいよー。
        

  ゆり   いつそんな試験始まってたのよ・・・。ていうか、あんたに何が出来るって、
  

      黒崎、帽子をゆりにかぶせる。


  ゆり   やばいやばいやばいやばい雰囲気に流されて今まで気づかなかったけど、
       変質者と二人きりだったぁ!
       どうしよう、こいつ力貸すとかいってるけどなんか気持ち悪いし、
       茜にはこいつ見えてないっぽかったし、なんか変な力もってるっぽいし、
       まさかほんとにSF的な存在?いやいやいやいやありえない!
       とにかく警察!どうにかこいつに気づかれないように警察に連絡を、


    黒崎、ゆりにかぶせた帽子をとる。 


  ゆり   はっ・・・?

  黒崎   失礼な人ですねー・・・。変質者だの気持ち悪いだの。

  ゆり   ちょっと、今何したの!思ってることが全部口から、

  黒崎   これが、私があなたに貸す力ですよ。

  ゆり   ・・帽子?
   
  黒崎   そう。帽子。
       このコには、かぶった者の心の内を暴露させる力がありましてね。
       
  ゆり   心の内を、暴露させる力・・・?

  黒崎   そうです。今のあなたにぴったりだと思いませんか?

  ゆり   ・・・。
  


  黒崎   みんなが何を考えているのか、知りたいんでしょう?
        
  ゆり   ・・・どうして?
   
  黒崎   あい?
  
  ゆり   あんた、私みたいなのが嫌いなんでしょう?
       なんでそんな私に力を貸してくれるの?
       私、その帽子を悪用するかもしれないのよ?
        

  黒崎   あなたは馬鹿ですが悪人ではありません。
       ていうか悪用なんてそんな賢い使い方馬鹿だから出来ないでしょう?

  ゆり   いちいち馬鹿馬鹿言わないで。

  黒崎   これは失敬。
       力を貸す理由ですが・・・これはまぁ、気まぐれと思っていただいて結構です。
       歩道にいる団子虫を茂みの中に投げ込んでやるのとおんなじ感覚ですよ。

  ゆり   私は団子虫じゃないわよ!

  黒崎   深い意味はない、ということですよー。
       ではこの帽子、確かにお貸ししましたよ。
       せいぜい文化祭でいい結果を出すために使ってください。
       自分の下らないポリシーを守るためではなく、ね。

  ゆり   ・・・ちょっと、私はまだ、
 
  黒崎   いやぁ!楽しみですねー!
       自分がどうしようもなく馬鹿であると自覚しそれを嘆いた少女が、
       まるで天使のように慈愛に満ちた帽子屋と出会い、
       その手から不思議な帽子を受け取り未来を変えるために奮闘する・・・。
       ・・・ちょっとした美談の香りがしません?

  ゆり   ・・・あんたのどこが天使よ。私には悪魔に見えるけど。

  黒崎   つれないですねー。・・・お?誰か来ますね?
       まぁそういうわけで、私は影から見守らせていただくことにしますよー。
       ご武運を。

  ゆり   ・・・ねぇ?
 
  黒崎   何です?

  ゆり   あんたの目的は何?

  黒崎   ・・・この状況を変えることが出来たら教えてやるよ。
       では!ごきげんよう! 


     黒崎、退場。

     ゆり、手に持った帽子をじっくり眺める。

    
  ゆり   心の内を、暴露させる帽子・・・。
       確かにこれがあれば、便利かもしれないけど・・・でも、いいのかなー・・・。
       人の頭の中を覗くようなもんよね?
       ・・・でも!まだ本物かどうかわかったわけじゃない、し、・・・

  
     ゆり、ゆっくりと帽子をかぶる


  ゆり   すごく使ってみたい!

     
     ゆり、帽子を脱ぐ。


  ゆり   はい本物だわどうしよう本物だわ。
       うーん・・・でも・・・。
       

     赤井、登場。


  赤井   ふーーっ・・・。なんだ、白石一人か。

  ゆり   うわっ!お、おかえり赤井君。


     ゆり、帽子を後ろ手に隠す。


  赤井   ?なんだそれは?今何か隠したか?

  ゆり   んーん!なんでもない、なんでもないわよ!
       それにしても赤井君、汗!すごい汗ね!

  赤井   ああ!グラウンドを走っていたらなんだか俺の中の漢に火が着いてしまってな!
       少々ラグビー部のタックル練習に付き合っていた。
            
ゆり   そうなんだ・・・お疲れ様でした。

  赤井   ふっ・・・。疲れてなどいない!男の中の男、この赤井太陽!疲れなど知らぬわ!
       (前を向いて決めポーズ)  
       そもそも疲れた、などというのは軟弱者の戯言だ。


     ゆり、こそこそと後ろから赤井に帽子をかぶせようとする。


  赤井   この俺のように肉体と精神を鍛えていれば、大抵のことは乗り越えられるのだ。
       そうだ白石。(振り返る)
     
  ゆり   わっ!なにっ?(驚いて、座り込んで帽子を隠す)
  
   
  
  赤井   ・・・?さっき出て行くときに言いかけていたことだがな・・・。落ち込むのは勝手だ。
       だがおまえは仮にもこのチームをまとめる立場にある人間だろう?
       だったら、落ち込んでいてはいかん。
       チームの前でリーダーはそんな姿を見せてはいけないのだ。

  ゆり   う、うん・・・。

  赤井   お前の気持ちはわかる。俺にも経験がある。
       空手部の主将だった頃、幾多の試練が俺を襲った。
       主将であることの重圧に耐えかね、時には何かに縋りたくなることもあった。
       だが!男の中の男たる俺はその全てに耐えたのだ!
       
       
  ゆり   そう、なんだ・・・。
 
  赤井   ・・・まぁ、女のお前には少し難しい話かもしれん。だがな白石。
       俺はお前のその真っ直ぐな性格を、少しは買っているつもりだ。

  ゆり   え?
 
  赤井   まぁ、真っ直ぐすぎて前しか見えていないのが玉に傷だが。
       格闘家は視野を広く持たねばならん。

  ゆり   いや私格闘家じゃないし・・・。

  赤井   おまえが真っ直ぐなのは結構だ。
       だが皆それぞれの考え方や事情がある。
       それを理解せぬまま、その真っ直ぐさをぶつけても、相手には届かんだろう。
       敵の防御を見極めねば、正拳突きは届かんからな。

  ゆり   正拳突きって・・・。うん・・・でも、そうだね。
       ・・・さっきも同じこと、言われちゃったし・・・。

  赤井   ・・・?まぁとにかく、敵は手強い、ということだ。
       なぜかこのチーム、クラスの中でも一癖ある連中が集まってしまったからな。

  ゆり   そうね・・・メンバーが決まった時ぞっとしたわよ。

  赤井   山吹は少し大人しいだけの優等生って感じだが・・・、問題は他だな。

  ゆり   学年1の秀才だけど、どこか人を寄せ付けない緑川くん・・・。

  赤井   いつも笑っていて、何を考えてるかわからない青柳・・・。

  ゆり   ふわふわしてて、地に足がついてない感じの桃乃さん・・・。

  赤井   そして・・・。
       
  二人   バカの桜木。

  赤井   うむ。

  ゆり   うん。・・・って、一人忘れてるわよ。

  赤井   ん?誰のことだ?自分自身か? 

  ゆり   私はまだ普通・・・よね?ちょっと今自信無いけど。じゃなくて、
       赤井君。あなたでしょ。
       自分を格闘家だなんて本気で言い張ってる高校生なんてそういないわよ。

  赤井   ふっ・・・そんなに褒めるな。
  
  ゆり   褒めてないわよ!

  赤井   はっはっはっはっはっ・・・。少し元気になったな。

  ゆり   え?・・・あっ。・・・ありがとう。

  赤井   ふん。礼を言われる筋合いは無い。
       俺はただ、このままジメジメした空気が続くのが気に入らんだけだ。
       
  ゆり   赤井君・・・なんか、印象変わったわ。

  赤井   どういう意味だ?

  ゆり   いや、なんかいつも男!男!って言ってて暑苦しい人だなーって思ってたの。

  赤井   ふん、悪かったな。
  
  ゆり   でもそれだけじゃなくて、ちゃんと人のことが見えてて、
       私のことを気遣ってくれる優しさもあって、なんか、本当に男らしいのね。

  赤井   そ、そうか?お、男らしいか?

  ゆり   うん、今話してて、男らしいなって、ちょっと思ったよ。
       元気付けてくれてありがとう。私、がんばるね!

  赤井   そうかそうか。いやいや、しかし、少し褒めすぎだろう。
       確かに俺ほど男らしい男もおらんだろうから、そう言いたくなる気持ちもわかるが、
       それに人のことが見えてると言っても、
       俺の場合秘密を守るために常に周囲に気を配る必要があるだけで、
       
  ゆり   秘密?

  赤井   あっ・・・いや!なんでもない!

  ゆり   赤井くん・・・何か人に言えない秘密があるの?

  赤井   いや、ない!何も無い!
 
  ゆり   本当に?もしあるんなら、私に打ち明けてくれない?
       赤井君には借りが出来ちゃったし、私で力になれるなら、

  赤井   何も無いっていってるでしょーーーーっ!

  ゆり   ・・・え?
 
  
  赤井   ・・・はっ?い、いや、本当に、なんでも、ないんだ!
       ・・・ちょっと、その、便所に行って来る!
  
  ゆり   あっ!待って!   
 

     赤井、退場しようとする。
     が、ゆり、意を決して去ろうとする赤井に帽子をかぶせる。


  赤井   危なかったわぁーーっ!もうほんと、どんだけよどんだけ!
       バレちゃうトコだったじゃない!ふざけんじゃないわよ!
       もーほんとアタシがカマやってること知られたら今までの努力が水の泡だわよー・・・。
       何のためにわざわざ空手部入ってアタシ男です!
       ってアピールして3年間カモフラってきたのよー。
       もー、うかつだぞ、太陽っ!(自分をこつん。って)

  ゆり   赤井君・・・?

  赤井   隠れてカマやるのも楽じゃないのよねー。
      でもさっきのラグビー部のコ達の胸板最高だったわー。
      こう、胸に飛び込んでくる時の肉感がもうジーンと来ちゃうのよねー。
      ていうか、またお願いします!とか言われちゃったわキャーどうしましょう!
      ホントどんだ、


     ゆり、無言で赤井の帽子を取る。
        
        
  赤井   ・・・。(ゆりを見る)

  ゆり   ・・・。(赤井を見る)

  赤井   ・・・。 (無言で退場しようとする)

  ゆり   オカマかよぉぉぉぉーー!

  赤井   知られてしまったぁぁぁぁぁーー!(崩れ落ちる)

  ゆり   知りたくなかったわぁぁぁぁーー!

  赤井   言い訳はしないぃぃぃぃーーー!

  ゆり   そこは男らしいのかよぉぉぉぉー!


     間。息切れ。
       

  赤井   もう殺してくれぇ・・・。

  ゆり   え?


  赤井   ・・・ずっと隠して生きてきたんだ。きっと周りは受け入れてくれないから・・・。

  ゆり   ・・・いつ、覚醒したの?

  赤井   幼稚園の、・・・年長。

  

  

  ゆり   早過ぎじゃない?・・・あの、えーと・・・

  赤井   ・・・気持ち悪いだろ?
 
  ゆり   え? 
 
  赤井   でもな、本当に怖かったのは、気持ち悪いって言われることじゃない。
       周りが受け入れてくれないことでもない。
       自分が、自分を信じられなくなることなんだよ!

  ゆり   自分が、自分を信じられない?

  赤井   そうだ・・・。俺は自分がオカマなことを、今まで恥ずかしいと思ったことは無かった。
       何故だかわかるか?誰にもバレたことがなかったからだよ。
       自分がオカマだと知ってるのは自分だけ。誰かにそれで迷惑をかけたわけでもない。
       だから自分はオカマでいてもいいんだと思えた・・・。

  ゆり   赤井君・・・。

  赤井   でも、バレてしまった!気持ち悪いと思っただろう?
       なんだこいつって思っただろう?1度でも他人にそう思われてしまった時点で、
       自分はやっぱり異端なんだって、おかしいんだって、そう、思ってしまうじゃないか・・・。
       自分のことを、もう信じることなんて出来ないじゃないか・・・。

  ゆり   ・・・。

  赤井   でも・・・これしか知らないんだ・・・。俺は、この生き方しか知らないんだ・・・。
       それなのに、自分を信じられずに、俺はこの先、どうやって・・・

  ゆり   誰が気持ち悪いなんて言ったのよ。

  赤井   ・・・え?

  ゆり   私、気持ち悪いなんて言ってないわよ。

  赤井   ・・・言葉に出さなくても、心で思ってるんだろ・・・?

  ゆり   思ってないわよ。・・・ああ、もう。
       あのね、コレ、この帽子ね、さっき赤井君にかぶせた帽子。
       これ被るとね、心の中が口から出ちゃうの。

  赤井   何を言ってるんだ・・・?そんな都合のいい話があるわけ、

  ゆり   あんたがいきなりオカマをカミングアウトしたのが何よりの証拠よ。

  赤井   そうだ・・・何故俺はいきなり全てをぶちまけてしまったんだ?
   
  ゆり   だからこの帽子よ。
       ・・・しっかり聞いてなさいよ。


     

     ゆり、帽子をかぶる。


 


  



  ゆり   本当に思ってないわよ。気持ち悪いなんて。
       そりゃちょっと驚きはしたけど、世界にこんだけ人間がいて、
       ひとりひとり違うんだから、その中にちょっと趣向が違う人がいてもいいでしょ?
       世界がもし100人の村だったらオカマの一人や二人や三人や四人ぐらいいるでしょーが!
       いいじゃない!何が恥ずかしいの?胸張りなさいよ。
       あんたがオカマだろうがなんだろうが、
       私を気遣って元気づけてくれた優しさは本物じゃないのよ!  
       そんな優しさをくれた人を!気持ち悪いだなんて!
       思うかぁぁぁぁぁーーーーー!


  赤井   ・・・。

  
     ゆり、帽子をとる。


  赤井   ・・・白石。

  ゆり   なに?

  赤井   お前・・・バカだな。

  ゆり   知ってるわよ。お互い様でしょ。

  赤井   でも、・・・ありがとう。その・・・。すぐには無理だが・・・
       そう思えるように、なりたいと思う。

  ゆり   うん。借りは返したわよ?(手を差し出す)

  赤井   あぁ・・・返されたよ・・・。(手を握り、立ち上がる)

  ゆり   いたっ!(目を擦る)

  赤井   どうした?

  ゆり   なんか、目にごみが・・・

  赤井   大丈夫か?じっとしていろ。


     赤井、ゆりに近寄り、目のごみを取ろうとする。
     山吹、登場。


  山吹   ゆりー、また何か大きな声がしたけ、ど・・・


     山吹、距離の近い二人を見て固まる。

   


  赤井   山吹?

  ゆり   茜?

  山吹   ・・・ごっ、ごめんなさい!わたし二人がそういう関係って知らなくて!その、
        
  ゆり   いやいやいや茜、違うよ?
      
  赤井   誤解するなよ?山吹。  
   
 
     桜木、登場。 


  桜木   ちょりーす。つって。

  山吹   あの、その、まさか二人が付き合ってるなんてっ! 

  桜木   マジでーーーー!

ゆり・赤井  ちがーーーうっ!

  山吹   ゆり・・・彼氏が出来たら教え合おうねって言ってたのに・・ううん、いいの。
       おめでとう・・・。邪魔してごめんなさいっ!    


     山吹、走り去る。
       

  ゆり   茜!待って!

  桜木   ゆりっぺ、赤井っち、おめでとちゃーーーーーん!

  ゆり   やかましい!

  赤井   桜木、これは違うんだ。白石の目にごみが入ってだな…

  桜木   赤井っち言い訳古くね?

  赤井   本当だ!

  ゆり   ていうか何本気で言い訳してんのよ。・・・はっ!(桜木を見て)
       あんたまさか・・・。

  赤井   違うっ!断じて違うっ!

  桜木   何の話?何の話系?

  赤井   というか白石、不用意な発言はよせ!

  ゆり   あら?口の利き方が間違っててよ?

  赤井   秘密にしてていただきたく候。

  ゆり   よろしい。

  桜木   うぇーい。ゆりっぺ姉さん女房ー。

  ゆり   バカうるさい。赤井君、茜を追うわよ!誤解とかなきゃ!

  赤井   わかった。

  

  ゆり   桜木、誰か帰ってきたら、音響とか照明とか話し合っといて!
       あと私と赤井君は本当になんでもないから!余計なこと言ったら怒るわよ!

  桜木   ちょりーーすっ。了解。つって。

  ゆり   本当にわかってんの・・・?それと、あんたは話し合いに参加しなくていいから。
       逆にややこしくなるし。
 
  桜木   ひどくね?ゆりっぺひどくね?マジで。
       つーかじゃあ俺はなにしてりゃいい系?

  ゆり   あー、そうね・・・生徒会に体育館が使えないか交渉してきて!
       もともとあんたの責任なんだからね!

  桜木   かしこまりー。 

  ゆり   不安だわ・・・。
  
  赤井   桜木、もう一度言っておくが、本当に違うんだ。信じてくれ・・・。

  ゆり   あーもういいから!行くわよっ!


     ゆり、赤井、退場。

  
  桜木   つーか怪しくねー?マジ怪しくね?
       ゆりっぺと赤井っちかー・・・俺的にマジ意外すぎる組み合わせなんですけどー!
       うけるー。マジうけるわー。でもマジならマジでー、お祝い的な?
       サプライズ的な?しちゃう?とか思っちゃう系?うぇーい。(帽子を見つける)
       つーかこんな帽子衣装にあったっけ?ぱねぇ。マジデザインぱねぇ。


     緑川、青柳、登場。


  緑川   ・・なんだ。バカだけか。
 
  桜木   おかえりっちー。

  青柳   ハハハ。バカだけって言い方はないだろ。なぁ流兎?

  桜木   うぇーい。

  緑川   前々から聞こうと思っていたが、桜木流兎。
       毎年学年ワースト1位のお前がなぜ3年に進級出来ているんだ?
        
  青柳   あー。そういえばそうだな。
       いっつも全教科赤点なのに、なんで進級できてるんだろって俺も思ってた。

  
  桜木   いや俺学校ラヴだから。マジ学校ラヴだから。余裕で無遅刻無欠席だし。
       夏休みとかも毎日きてっし。やばくね?

  青柳   えっ?夏休みも?ハハハハ!何しに来てんだよ?

  


  緑川   成る程な。そういうことか。

  青柳   どういうこと?

  緑川   こいつはバカだが素行は悪くない。無遅刻無欠席の皆勤に加えて、
       何故か毎朝6時には必ず学校に来ている。

  青柳   ハハハハ!うそ!
  
  緑川   さすがに学校側も、皆勤で成績以外は問題のない生徒を留年には出来ないんだろう。
       評判に関わるからな。

  青柳   あー。なるほど。でもそれだけで?

  緑川   おそらく、何百時間も補習に来させて、
       足りない分の単位をカバーさせているんだろう。

  青柳   そうなのか?流兎?

  桜木   うぇーい。つーか土日もきてっし。

  青柳   ハハハハハ!お前ほんとバカだな。

  桜木   ちょ、青ちー言い過ぎじゃねー!マジでー。
       あ、そーだ、ゆりっぺがなんかー、今後について話しあっとけっつってた。
       音響とか?照明とか?
  
  緑川   今後、ね・・。まだやる気なのかあいつは・・・。

  桜木   んで俺、生徒会に凸してくっから、あとよろしくちゃーん。つって。

  青柳   ハハハハ。追い出されない程度になー。

  桜木   余裕っち。つって。いってきー。

 
     桜木、退場。  
       

  緑川   全く・・・いいな。バカは気楽で。

  青柳   おいおい。いつまでイライラしてんだよ。

  緑川   別にイライラなんかしていない。
       羨ましい話だ。悩みなんか何も無さそうで・・・。
  
  青柳   ・・・親父さん、相変わらず良くないのか?

  緑川   ・・・その話はよせ、不愉快だ。

  青柳   ハハハ・・・。わりーわりー。でもさ、お前の親父さんは俺も顔見知りなんだから。
       俺だって心配なんだよ。

  緑川   僕の家庭のことだ。お前に関係無いだろ?

 
  青柳   まぁ確かに関係は無いけどな。ハハハハ。
       ・・・ていうかお前、ちょっと焦りすぎじゃないのか?

  緑川   なんの話だ?

  青柳   いやまぁ、なんつーか・・・。
       ハハハハ・・・。わり。良くないのか?なんて聞いたけど、実は知ってんだ。
       ・・・親父さん、先週から寝たきりなんだろ?

  緑川   ・・・なんで知ってるんだ。

  青柳   ハハハハハ・・・。俺んちお前の三件隣だぞ?ご近所の噂ってやつだよ。
       それに・・・、今閉まってるだろ?おまえんちの病院。

  緑川   ・・・。

  青柳   お前がさ、親父さんになんかあったら病院継がなきゃって、
       だから今必死に勉強しようって気持ちはわかるよ。
       でも、今焦ったってしょうがないんじゃないか?

  緑川   別に・・・僕は焦ってなどいない。

  青柳   ハハ・・・まぁ聞けって。来年の春に大学入ったとして、医学部って6年だろ?
       それを終えても、医者になるためには、色んな研修とかあるんだよな?
  
  緑川   それが何だ。

  青柳   ハハハ・・・。だったら、お前が親父さんの病院継ぐまで、
       7、8年は絶対にかかるってことだろ?
       その時間はお前がどれだけがんばったって、そんなに縮まないんじゃないか?
 
  緑川   ・・・。

  青柳   だったらさ、そんなに自分を追い詰めてないで、
       今は少しだけ気楽になってもいいんじゃないかって、そう言いたいんだよ。
       ・・・おばさん、近頃のお前見て、無理して体壊さないか心配なんだとよ。
       うちのお袋、相談されたってさ。

  緑川   ・・・ふん。いらないお節介だ。僕は無理なんてしていない。

  青柳   ハハハハ。まぁ、だとしてもさ、・・・心配かけちゃだめだろ。

  緑川   ・・・なにが心配、だ。

 青柳   え?

 緑川   うちの母は結局、早く僕を医者にして、病院を継がせたいだけなんだよ。

 青柳   ・・・おいおいなに言ってんだ?お袋さんはほんとにお前のこと心配して、

 緑川  違うね。心配してるポーズだよ。
      お前の母にうちの母が相談を持ちかけたのは、どうせいずれお前を通して、
      僕の耳に入ると計算してのことだろう。
        



  

 青柳   そんなわけないだろ、

 緑川   父も父だ!もしやりたいことがあるなら、
       医学部じゃなくてそっちに進めばいい、なんて言ってくるんだぞ。
       ・・・二人して、言葉の裏で僕に重圧をかけているんだよ。

 青柳   おい、お前ちょっとおかしいぞ。

 緑川   うるさい!わかったような口で僕に説教をするな!
       ・・・ふん、お前もいつもヘラヘラ笑ってて悩みが無さそうでいいな。
       ・・・逃げたやつは気楽なもんだ。         

 青柳   ・・・なんだって?

 緑川   違うのか?じゃあ小学生の頃からあれだけ打ち込んでいたサッカーを、
        高校に入ってぱったりと辞めたのはどういうわけだ?
        
 青柳   ・・・なんで俺のサッカーの話になるんだよ。
  
 緑川   お前言ってたよな?俺は絶対にサッカー選手になるんだって。

 青柳   よく、憶えてるな・・・。
 
 緑川   あぁ憶えてるさ。・・・だが今のお前はなんだ?
      何事に対してもヘラヘラと笑ってるだけで、まるで地に足が着いていない。
      ・・・逃げたんだろ。サッカーから。

 青柳   ・・・何が言いたいんだよ。

 緑川   ふん・・・。ここからは僕の想像だがな。
      真剣に打ち込んでいるものほど、悩みや不安は尽きないものだ。
      ・・・お前は思ってしまったんじゃないか?
      自分は本当にサッカー選手になれるのか。
      なれなかったら、将来どうしたらいいのか。
      ・・・おおかた、辞めた理由はそんなところだろ?
         
 青柳   ・・・ハハハ・・・。

 緑川   ・・・何も言い返さない、ということは図星か?

 青柳   ・・・。
 
 
 緑川   ふん・・。いいよな、お前は。逃げるという選択肢があって。
      ・・・僕はそうは行かないんだよ・・・。
      お前のように投げ出して、ヘラヘラ笑って過ごすことは許されないんだ・・・。

 青柳   ・・・。

 緑川   ・・・。

 青柳   ハハハハハハ・・・。その通りだな・・・。悪かったな。いつもヘラヘラしてて。
      返す言葉が見つからないわ。

  緑川   ・・・。

  青柳   ハハハ・・。つーかお前、マジになり過ぎだって。
       ちょっとびびっちまったわ。でも俺もちょっと熱くなったかな・・・ハハハ。
       なんもわかってねーのに、好き勝手言って悪かったな。
       あーなんか・・、穴があったら入りたいって感じだ。


     青柳、落ちていた帽子を拾っておどけてかぶる。


  青柳   ・・ヘラヘラ、笑うしかねぇんだよ・・・。

  緑川   ・・え?

  青柳   逃げてねぇよ。やりたくてしょうがねぇよ。
       でも仕方ねえだろうが!俺はもうサッカーなんてできねぇんだよ!
         
  緑川   ・・どういうことだ?

  青柳   ・・高校にあがる時医者に言われたよ。
       俺、大腿骨の形が歪んじまってるんだとさ。
       このままサッカー続けてたら歩けなくなるかもしれないってよ。

  緑川   ・・・。

  青柳   ・・・笑えねぇよな。ほんとに俺、サッカーのことだけ考えて生きてたんだ。
       それがもう出来ないって言われたとたん、何にも考えられなくなっちまった。

  緑川   お前・・・。

  青柳   それからずっと・・・もう出来ないサッカーのことばっか頭にちらついて、
       何してても辛いんだよ。最悪だよ・・・。

  緑川   ・・・青柳、

  青柳   こんな思いするぐらいなら、サッカーなんてやらなきゃよかった!
       どうすりゃいいんだよ!俺はこれから、
       なにをしてもずっと満たされない気持ちで生きていくのか!
       そんな人生なんていらねぇよ!もう、だれか俺を殺してくれよ・・・。

  緑川   ・・・。

  

  青柳   だからさ・・・。もう、笑うしかねぇんだよ・・。
       顔だけでも笑っとかないと、態度だけでもヘラヘラしとかないと・・・。
       ・・・俺の心は潰れちまうんだよ・・・。


     青柳、うなだれる。その拍子に頭から帽子が落ちる。


  青柳   ・・・ハハハハ・・・。何で俺、こんなこと喋ってんだか・・・。
       ・・・忘れてくれ。ハハハハハハハ。

  緑川   もういい。・・・無理して笑うな。
       わかったような口で説教をしていたのは、僕の方だ・・・。

  青柳   ハハハハ・・・らしくないっての。・・・気にすんなよ。

  緑川   すまない・・・。
 
 
     間。


  青柳   ・・・無理してんのは、お互い様だろ?

  緑川   ・・・え?

  青柳   さっきのさ、どうしてもお前の本音には思えないんだよ。
        ・・・親父さん、お袋さんに対して、ほんとはどう思ってんだ?
   
  緑川   それを・・・。

  青柳   ん?

  緑川   それを・・・。父と母をどう思うかを、僕が口にする権利は無いんだ・・・。

  青柳   どういう意味だよ?

  緑川   それを口にしてしまったら、僕はただの卑怯者だ・・・。
        だから、僕は、僕は・・・。

   
  青柳   ハハハ・・・。
       なーに泣きそうな顔してんだよ。(帽子を拾って緑川の頭に押し付ける)
       なんとなくわかるよ。・・・色々考えてんだよな。ハハハ・・・。

  緑川   ・・・申し訳ないんだ。

  青柳   え?

  緑川   ・・・父さんも母さんも、なんであんなに僕に優しいんだよ・・・。
       不安なはずなのに、
       僕にはそれを隠して、やりたいことがあればやりなさい、なんて、本気で、
       本気で・・・僕に言うんだ。

  青柳   お前・・・やっぱり・・・。

  緑川   なんでだよ!自分たちが必死に努力して築き上げた病院だろ!
       ただ一言、継げって僕に言えばいいじゃないか!
       それなのにあの二人は・・・いつも僕のことばかり考えてくれて・・・。

  青柳   ・・・うん。
  
  緑川   悔しかったんだ・・・何も出来ない自分が・・・。
       だから!
       ・・・二人の優しさには裏があるって、無理やり思い込もうとしていた・・・。
  
  青柳   ・・・それは、違うだろ。

  緑川   わかってる!そんなことはわかってるんだよ!
       でもそうでもしないと・・・。
       自分が情けなくて・・・2人に申し訳なくて・・・
       心が、壊れてしまいそうだったんだよ・・・。 
      
  青柳   ・・・でも、結局思い込めてないから、そんな風になってんだよな・・・。

  緑川   ああ・・・その通りだ・・・。

  青柳   ・・・。

  緑川   最低だ、僕は・・・。弱い自分の心を守るために、
       二人の優しさに背を向けるような真似をして・・・。

  青柳   ・・・お前は本当に、親父さんとお袋さんのことが好きなんだな・・・。  

  緑川   当たり前じゃないか!
       でもだからこそ、僕はそれを口にしちゃいけないんだ・・・。
       二人の優しさに、甘えちゃいけないんだ・・・。(うなだれ、帽子で泣いてる顔を隠す。)


     間。
 

  青柳   ・・・不器用だから、感謝の気持ちも伝えられないって言ったよな。

  緑川   ・・・え?

  
  青柳   ・・・伝わってると思うぜ。親なんだから、
       自分の子どもが不器用だってことぐらいわかるだろ。

 
  緑川   ・・・でも、
  
  青柳   親ってすげーぜ。
       俺さ、何が理由でサッカー辞めたか、親父とお袋に言ってないんだ。
       ・・・でも二人とも何も言わない。
       なんで怒らないんだって、聞いてみたんだ。
        
  緑川   ・・・。

  青柳   あんたが考えて決めたことなんだから、何も言わないよって。
       でも、もしあんたが話したくなったら、辞めた理由も、辛かったことも、全部聞かせなさい。
       一緒に泣いてあげるから・・・ってよ。     
  
  緑川   ・・・。

  青柳   ありがとうって言いたくても、声にならなかった・・・。
       ・・・あの言葉のおかげで、どうにか俺は今、生きていられるんだ・・・。
        

  緑川   ・・・。
  
  青柳   ・・・お前はどうしたいんだ?

  緑川   ・・・僕は。僕は、立派な医者になって、父さんと母さんの病院を継ぎたい・・。

  青柳   ハハハハハ。それだけ定まってりゃ、充分なんじゃないか。
       よし!偉そうなこと言うぞ?
       とりあえず優しくされたら申し訳ないとかじゃなくて、ありがとう!
       って思って、それをそのまま伝えろ!

  緑川   でもそれじゃ、

  青柳   子どもは親に甘えるもんだ!

  緑川   ・・・。

  青柳   って、うちのお袋も言ってたぜ。ハハハハハ!
        
  緑川   ・・・それで僕は、許されるんだろうか・・・。

  青柳   ハハハハ!少なくとも、お袋さん達の心配はちょびっと減ると思うぜ?
       つーか、許すとか許されないとかじゃなくて、もっと簡単な話だよ。
        
  緑川   簡単な、話・・・?

  
青柳   そう。優しくされたら、ありがとう。
       それで世界はまわってるらしいぜ。うちのお袋が言うんだから間違いねーよ。
       ・・・俺もお前も、今はすんげー辛いかも知れないけどよ。
       ・・・一人じゃ、ないだろ。

  緑川   ・・・青柳。

  青柳   なんだよ?

  緑川   ・・・ありがとう。

  青柳   ・・・ハハハ!さすが学年1の秀才!飲み込みが早いな!・・・どんな気分だ?
 
  緑川   僕を誰だと思っているんだ?・・・悪くない。

  青柳   ハハハハ。そりゃ良かったよ。

  
  緑川   ・・・僕が治してやる。

  青柳   え?

  緑川   もしおまえが歩けなくなっても、僕が必ず治してやる。
       だから・・・。サッカー、また始めろよ。

  青柳   緑川・・・。
       ・・・ハハハハ。ありがとよ・・・。
       でも3年ブランクあるからなー。きっついぞー。

  緑川   逃げるのか?

  青柳   そんなわけねーだろ!
       もしそーなったら絶対治せよ!
          
  緑川   あぁ、約束する。

  青柳   ハハハハ!まず筋トレから始めないとな。大変だ・・・。

  緑川   僕だって、今まであまり力を入れていなかった骨学を
       勉強しなければならないんだぞ?うちは内科なのに・・・。
       あ、今度レントゲン撮らせろよ。

  青柳   ハハハハハ!マジでやる気だな。

  緑川   当たり前だ!僕は一度やると決めたら絶対にやる!
       覚悟しろよ?


     二人、笑いあう。


  青柳   今の台詞、白石みたいだ。

  緑川   そうか?意識したつもりはないが。

  青柳   ・・・あいつさ、なんかまぶしいよな。

  緑川   え?

  青柳   自分がやるって決めたことだから、やり通さないと自分に嘘をついたことになる・・・って。
       ・・・あれ、なんか効いたよ。こんな風に俺も真っ直ぐだったらなーって。

  緑川   あいつはただ馬鹿なだけだろ。いつも自分の都合を人に押し付けて。

  青柳   ハハハ。おいおい。
  
  緑川   だが・・・、今は息抜きのついでに、協力してやってもいい気分だ。
 
  青柳   素直じゃないなー。ま、今までサボってた分、ちょいと頑張りますか。
 
  緑川   あぁ。さて・・・。何から始めるか・・・
  

     桜木、登場


  桜木   ちょりーっす。つって。いまただー。

  青柳   おー、おかえり。どうだった?体育館、使わせてもらえそうか?

  桜木   いや無理っぽい感じー?つーかあの、生徒会長?
       なに言ってるかわかんね。

  青柳   生徒会長・・・ってどんなやつだっけ?
  
  緑川   金本トオル。成績はいいが万年学年2位の、
       くどくどした喋り方が鼻につくプライドの高い男だ。

  青柳   お前が万年1位だからだろ。ていうか喋り方をお前が言うか?

  桜木   万年・・・学年・・・?まんねん・・・がくね、まんね、・・うぇーーい!

  緑川   まずそこから攻めるか・・・。よし、僕が行って交渉してこよう。
       桜木では分が悪すぎる。

  桜木   あざーーーす!

  青柳   俺も行くよ。ついでに音響とか照明の機材見せてもらおう。

  緑川   おいおい。交渉に行くだけで、まだ体育館を使えると決まったわけじゃないぞ?

  青柳   お前が交渉するなら大丈夫だろ。・・・自信無いのか?

  緑川   馬鹿を言え。楽勝だ。行くぞ!

  桜木   うぇいうぇーーい!


     三人、退場しかける、が


  緑川   そういえば・・・あの帽子・・・なんか変だな。

  青柳   何が?

  緑川   いや・・・。気のせいか?僕もお前も、
       あの帽子をかぶった瞬間に感情のセーブが利かなくなったというか・・・。
  
  青柳   確かに・・・。なんつーか、なんかこれかぶった瞬間、一気に気持ちがあふれて・・・。
       全部ぶちまけちまったっていうか・・・。

  緑川   ふむ。・・・桜木。

  桜木   うぇーい。

  緑川   ちょっとこれかぶってみろ。

  桜木   かしこまりー。つって。


     桜木、帽子をかぶる。


  桜木  やばくね?つーか俺マジ似合ってんじゃね?
      ジョニデ超えたっぽくね?
      ぱねぇっしょ。マジぱねぇっしょーー!
  
  緑川  勘違いか。

  青柳  そうだな。まぁ、そんな都合のいいことあるわけ無いか。


     緑川、青柳、退場。

 
  桜木  やべーマジやべー。これ向井理が土下座して泣き出すレベルじゃね?
      イケメンっつったらキムタクじゃなくて桜木って感じじゃね?
      あ、つーかいねーし。おいちょ、待てよ。(帽子を脱ぎ捨てる)


     桜木、退場。


     黒崎、登場。



  黒崎   いるんですねぇ・・・。かぶっても変わらないひとって・・・。(帽子を拾い上げる)
       さて・・・残るは2人・・・。次はだーれっかなー・・・。
       ・・・それにしても・・ここはあの頃と何も変わっていませんねぇ・・・。
       

     桃乃、登場。


  桃乃   んー・・・どこいっちゃったんだろうー・・・。
       あ、義也くん。こんにちわー。
 
  黒崎   あのねー桃乃さん。あなた、そんな普通に話しかけないでくださいよー。
       私コレでもユーマとか貞子とかと同じカテゴリの存在なんですよー?
       あと、呼び方ねー。お願いしますよー。

  桃乃   あーごめんー。帽子屋のー、義也くーん。

  黒崎   んんーーー50点!

  桃乃   えへへー。せっかくいい名前なんだからー、呼ばないともったいないよー。

  黒崎   そういうものですかね。
       それより、誰か探していたんですか?


  桃乃   あ、そーだー義也くん、大変だよー!
       死神さんが来てた!

  黒崎   ・・・死神ですって?

  桃乃   うん。なんかー、なぜ人間に私が見える!っていってー、逃げたから追いかけてたのー。

  黒崎   まぁ普通人間に死神とか見えませんからね。ていうか私もね。

  桃乃   カナはみえるもーん。えへへー。すごいー?

  黒崎   ある意味すごい!

  桃乃   やったー!・・・ある意味ー?
 
  黒崎   まぁ、ごくたまにいるんですけどねー。
       あなたみたいに見えちゃいけないものが普通に見えちゃう人。
       ・・・大体みんな死にそうな顔して、なにも見えないフリして暮らしてますけど。
       あなたみたいなのは珍しいですよー。

  桃乃   そうなんだー・・・。なんでみんな見えないフリをするのかなー。

  黒崎   ・・・怖いんでしょう。人と違うことが。

  桃乃   えー?

  黒崎   あなたは怖くないんですか?
       普通は見えないものが見えてしまう自分が、この先どんな風に生きて行くのか…。
        害されないか不安じゃないですかー?誰も自分を理解してくれないとは思いませんかー?

  桃乃   うーん・・・。えへへ、考えたこともなかったなー。

  黒崎   ・・・そうですか。
       それにしても、死神ですか・・・。もしかして・・・。       

  桃乃   ねー義也くん、死神さんが現れる時って・・・。
     
  黒崎   ん?ええ。誰かが死ぬかもしれない、ということですねー。

  桃乃   やっぱり。ねー、義也くんの力でなんとかならないー?

  黒崎   なりませーん!わたしはただの帽子屋ですよー?
       死神なんてご免ですよー。くわばらくわばら。

  桃乃   そっかー・・・。だめかー・・・。

 ※黒崎   ・・・まぁ、死神が来たからといって、必ず誰かが死ぬわけではありません。
       何かの手違いってこともありますし、運命が変わることもあります。
       ・・・不吉なことに変わりはありませんがね。
  
  桃乃   そーなんだー。
  
  黒崎   ・・・まーでも死神が来たの私のせいかもしれないんですけどねー。
  
  
  桃乃   え?

  黒崎   あーなんでもありません。
       それより、次、どうやらあなたの番みたいですよ?(帽子を渡す)

  桃乃   えー?なにがー?

  黒崎   ・・・人と違うこと、考えたことも無かった。
       なら考えてみたらどうですか?
       もしかしたらあなたの今後の人生が変わるかもしれませんよ?
       ・・・では、ごきげんよう!


     黒崎、退場。

     
  桃乃   考える、かー・・・。
       ・・・うーん・・・。実は考えたこと、無いわけじゃないんだけどねー・・・。
       それにしてもこの帽子・・・。なんなんだろー?


     ゆり、赤井、息を切らしながら登場。


  ゆり   あー・・・桃乃さんだけか・・・。
       戻ってきてるかなーって思ったんだけど、やっぱりいない・・・。
       どこいったのよー!茜ー!
  
  桃乃   おかえりー。
  
  赤井   ふん、これしきのことで息をきらして・・・、情けないぞ白石。
       この俺のように体を、

  ゆり   うっさい。もうそういうのいいわよオカマ。

  赤井   お前ーっ!桃乃がいるんだからそういうこと言うのはよせ!

  ゆり   なら言葉遣い、ね?

  赤井   黙ってて下さい候。

  ゆり   よろしい。桃乃さん、茜を見なかった?

  桃乃   茜ちゃん?んー、さっきすれ違ったけど、どこいったかはわかんないよー。
  
  ゆり   そっかー・・・。もう待ってた方がいいのかなー。じき戻ってくるだろうし・・・。
       って、あ!桃乃さんその帽子・・・。

  桃乃   んー?これー?義也くんが置いていったのー。

  赤井   義也くん?・・・って誰だ?

  桃乃   黒崎義也くんだよー。

  ゆり   え?

  赤井   いや、名前とかじゃなくてだな・・・。
  
  桃乃   んー・・・なんていうか、この学校に強い思いがあって、
       ここに留まってる存在っていうかー・・・地縛霊さんっていうのかなー。

  
  赤井   地縛霊?おいおい・・・それはどこのホラー映画の話だ?
       そんな非常識な話があるわけ・・・

  ゆり   桃乃さん,、黒崎を知ってるの?ていうか、見えるの?
  
  赤井   白石?

  桃乃   え?ゆりちゃんも見えるのー!
       すごーい!カナ以外に見える人初めてー!
       じゃあじゃあ、死神さんも見えてたー?

  ゆり   死神?何の話?

  桃乃   ・・・そっちは見えないのかー・・・。せっかく仲間かと思ったんだけどなー。
       あー、そういえば義也くん、自由に姿現したりできるっていってたしー・・・。
       普通の人にも見えることがあるんだよねー・・・。あー・・・。

  ゆり   あのー・・・

  桃乃   やっぱそうそう見える人はいないかー・・・。残念ー・・・。

  ゆり   桃乃さん?

  桃乃   あ、ごめんね、ゆりちゃん。

  ゆり   ううん。・・その、桃乃さんは黒崎をよく知ってるの?

  赤井   ついていけん・・・。

  桃乃   よくは知らないけど・・・ただの自縛霊さんじゃなくて、強い力をもっているんだってー。

  ゆり   だってーって、だれが言ってたの?

  桃乃   えーっと・・・。


     桃乃、赤井の肩らへんを見る。


  赤井   何かいるのか!俺の肩に何かいるのか!

  桃乃   でも悪い人じゃないと思う、ってー。

  ゆり   わたしには悪魔かなんかにしか見えなかったけどね・・・。

  赤井   無視しないでくれー!

  ゆり   それにしても・・・あの、その、桃乃さんって、やっぱり・・・

  
  桃乃   んー?あー・・・。
       うん!色々見えちゃう人です!
       幽霊から妖怪から妖精まで、なんでもありだぜー。
       なんちゃってー。ふふふー。

  ゆり   そうだったんだ・・・うん、でもなんか、納得だわ。
       本当にそういう人っているのね・・・。

  桃乃   ありゃー。ゆりちゃん、信じてくれるのー?

  ゆり   え?どうして?

  桃乃   いやー、このこと言うと、
       みんな信じないか気持ち悪がるかどっちかだからー。
       初めて信じてもらえたー。嬉しいなー。えへへー。

  
  ゆり   桃乃さん・・・。その、なんていうか、私もそういうの、信じて無かったの。
       でもまぁ、あいつに会っちゃったから、信じざるを得なくなったというか・・・。
  
  桃乃   んー・・・。そうだよねー。カナだって、
       見えないものを信じろって言われても、きっと信じらんないよー。
       みんなが信じらんないのも、当たり前だよねー。

  ゆり   うん・・・。

  赤井   というか、まだ話が見えないんだが。
       本当なのか?見えるとか、見えないとか。

  ゆり   うん本当っぽい。私もその、なんていうか、桃乃さんが見えてる
       もののほんの一部だろうけど、見ちゃったから。
  
  赤井   にわかには信じがたい話だな・・・。
    
  ゆり   うんまぁ、そうなんだけど。
       ・・・すごいじゃない桃乃さん!人に見えないものが見えるなんて。
        
  桃乃   んー。ありがとー・・・。そーだねー・・・。
        
  ゆり   桃乃さん?

  桃乃   ・・・あ、ごめん!そういえば、義也くんがゆりちゃんの前に姿を現したってことは、
       きっとなにか意味があるんだよー。
        
  ゆり   意味?うーん・・・、なんかとんでもない帽子置いていったけど。

  桃乃   これのことー?

  
  ゆり   うん、それ。あー、あんまり触らないほうがいいよ。
       それかぶると口から本音が・・・あっ!

  
     桃乃、帽子をかぶる。
     

  桃乃   どうしたらいいのかなー。

  ゆり   え?

  

  桃乃   カナね、生まれた時からずっとこうだから。
       気持ち悪いって言われることも、嘘つきって言われることももう慣れっこなの。
       傷ついたこともあったけど、それはカナがみんなと違うんだから、
       仕方ないって思うようになったの。

  ゆり   ・・・。

  桃乃   カナとおんなじ力を持った人、今までいなかったから。
       だからさっき、ゆりちゃんが義也くんのこと見えるって聞いて、とっても嬉しかったんだ。
       一人じゃないんだって思えて・・・。

  ゆり   うん・・・。

  桃乃   でもゆりちゃんは義也くんが見えただけで、やっぱりカナとは違うんだよね。
       やっぱり、カナはひとりなんだー・・・。

  赤井   桃乃・・・。

  桃乃   やっぱりね、一人は寂しいんだー。
       たまに思うの。この力のこと忘れて、見えるものを全部無視して、
       みんなと同じように暮らしたら、寂しくなくなるかなーって。
  
  赤井   ・・・。

  桃乃   でもね、それはなんだか、人とは違うっていう自分自身も、
       無視して生きていくことなんじゃないかなーって思うの。
       自分のことを無視してなんて、生きていけないよね。
       本当に、どうしたらいいんだろう。
       でも、寂しいのはもう、やだな・・・。


     桃乃、帽子を脱ぐ。


  桃乃   ・・あはは。さすがは義也くん。
       いい仕事してますなー。ちょっぴり趣味悪いけどー。

  ゆり   桃乃さん・・・。

  桃乃   なんかごめんねー。忘れて下さいなー。
       これでもカナ、いまめっちゃ恥ずかしいんだよー。

  赤井   ・・・桃乃。その、うまく言えんが・・・、お前は一人じゃない、と思うぞ。

  桃乃   え?

  赤井   俺もそうなんだ。その、人と、少々違う所がある。
       お前に比べたら、些細なことかも知れんが・・・。

  ゆり   赤井くん・・・。

  赤井   自分は誰にも理解してもらえないんじゃないかって、
       孤独な気持ちになったこともある。
       本当の自分を殺して生きていくほうが、楽なんじゃないかって、
       思ったこともある・・・。
        
  桃乃   うん・・・。

  

  赤井   でもな、桃乃。俺は、この世界は、
       俺たちが思うほどそう悪くないんじゃないかって、今は思う。
       本当の自分をさらけ出しても、受け入れて、理解してくれる人もいるんだって、
       白石が、それを俺に教えてくれた。

  ゆり   私はなにもしてないわよ。

  赤井   だから、桃乃、俺はおまえのことを、受け入れるようと思う。
       その力も信じるし、気持ち悪いだなんて思わない。

  桃乃   赤井くん・・・。

  赤井   どうだ、まだ寂しい気持ちか?
       俺だけじゃないぞ。白石だって、お前のことをきっと理解してくれるさ。なぁ?

  ゆり   そうね。いったい桃乃さんにはこの世界がどういう風に見えてるのか、興味あるわね。
       あたし幽霊とかSFとか、なんだかんだいって結構好きなのよねー。
       今度お話聞かせてくれる?桃乃さん・・・じゃなくて。・・・叶ちゃん。
         
  桃乃   ゆりちゃん・・・。

  赤井   ゆっくり考えよう。
       今考えて答えが出ないなら、大人になってからも考えればいいじゃないか。
       そうやって、自分の納得のいく答えを探していこう。
       ・・・俺は、そうするつもりだ。

  桃乃   うん。・・・うん!ありがとう。

  赤井   いや。気にするな・・・。

  ゆり   やるじゃん。

  赤井   ほとんどは、誰かさんの受け売りだ。

  ゆり   照れるねぇー。

  桃乃   赤井くん、ゆりちゃん、ありがとう。
       カナ、一人じゃないねー。えへへー。

  赤井   あぁそうだ、お前は一人じゃない!

  桃乃   じゃあー、赤井くんも悩んだらー、カナに相談してねー?
       服とかならいつでも貸してあげるよー。あとお化粧道具も!

  

  赤井   はっはっはっはっは。残念ながらどちらも間に合っている。
       だが気持ちは頂いておこう。うむ。
       ってなんで知っているぅぅーーー!
       白石、お前言ったのか!

  ゆり   いやあたしじゃないわよ!桃乃さん、赤井君がオカマだって、なんで知ってるの?
        
  桃乃   えーっとー。。。。

 
     桃乃、赤井の肩らへんを見る。


  赤井   肩を見るなぁぁぁ!こいつか?こいつに聞いたのか!
       なんなんだ、こいつなんなんだ教えてくれ桃乃ぉぉぉ!

  桃乃   あ、そーだ!それよりねー、

  赤井   それよりで片付けないでくれぇぇぇ!

  ゆり   どうしたの?

  桃乃   大変なんだよー!死神さんが来てるの!どうしよー。

  ゆり   死神?どういうこと?

  桃乃   えーっとー簡単に言うとー、このままだと、誰かが死んじゃうかもしれない。
       いや、手違いかもしれないし死ぬってきまったわけでもないし、
       運命は変わるかもしれないんだけどー、その、危ない命があるかも知れない!
 
  ゆり   ごめん、ちょっとなに言ってるかわかんない。

  桃乃   あーどういったらいいのかなー・・・え?


     桃乃、赤井の肩にいる何かと会話。

  
  桃乃   ・・・うん、・・・うん、え。ほんとにー? 

  赤井   何を話してるんだ・・・。

  ゆり   何かわかったの?

  桃乃   うん、まだ死相が出てる人いないから、今のところは安心していいって。

  赤井   本当にこいつ何者なんだ・・・。

  ゆり   とりあえず、大丈夫ってこと?

  桃乃   うん。でも、なにかが起きる気がするから、注意はしておけって。
       せめて、誰が危ないかだけでもわかればいいんだけどー・・・。


     山吹、登場。

  
  ゆり   あっ、茜!

  山吹   ゆり・・・、さっきはごめんなさい。わたしったら取り乱しちゃって。

  
  ゆり   ううん、いいの。その、赤井君とのことなんだけど、誤解だから!
       本当になんでもないの。

  山吹   そうなの?なんか、すごくくっついてるように見えたから、
       私、てっきりそうなのかなって。

  ゆり   目に入ったゴミをとってもらってただけよ。まったく、茜は慌てものね。
       彼氏が出来たらちゃんと言うわよ。
       私たち、少、中、高、ずーっと一緒の親友でしょ?
        
  山吹   ・・・うん、そうね。ありがとう。


     桜木、緑川、青柳、登場。


  桜木   ちょりーーーすっ!つって。お、みんな揃ってんじゃーん!
       ナイスタイミングじゃね?マジで!
        大発表がありまーーっす!つって。

  ゆり   なになに、どうしたの?

  青柳   おう、聞いて驚くなよー?

  桜木   じーつーはー、なんとなんとなんとー!

  緑川   体育館、使わせてもらえるぞ。

  ゆり   ほんとに!
  
  桜木   ちょ、さとっちー!俺の台詞とんなよマジでー!

  緑川   交渉したのは僕だぞ?というかさとっちって何だ。

  桜木   緑川聡だからさとっち。マジおれのセンスやばくね?

  青柳   ハハハ。ついでに機材も見せてもらって、
       当日手伝ってくれる人員も確保できたぞ。生徒会から。

  ゆり   すごいじゃない!どうやったの?

  緑川   僕の交渉術にかかればこんなものだ。

  桜木   いやもうマジやべぇ。さとっちマジ神がかり的にすごかった的な?
       ほとんど何言ってっかわかんなかったけど。

  ゆり   緑川君・・・。ありがとう。でもいいの?
       さっき、もう諦めろって。

  緑川   ふん。僕が動かないと、もうどうしようもないだろう?
       しょうがないから付き合ってやる。

  青柳   ハハ。素直じゃないなー。

  
  緑川   うるさいぞ青柳。まぁ、少し僕は焦り過ぎていたんじゃないかと、
       そう、気付いたんだ・・・。だから、息抜きがてら協力してやるよ。
  
  ゆり   緑川くん・・・。息抜きなんてほど甘くないかもしれないわよ?
  
  緑川   僕を誰だと思ってるんだ?
  
  ゆり   これは失礼しました。学年1の秀才、緑川君。
  
  青柳   まぁそういうこった!こいつコレでもめっちゃやる気だぜー。ハハハハ。
  
  緑川   青柳、お前からも白石に言うことがあるんじゃないのか?   
  
  青柳   ・・・あーそうだな。ハハハ。白石、なんか悪かったな。今まで協力しないで。
       なんつーか俺さ、お前のことまぶしいなって、思ってたんだよ。
  
  ゆり   え?
  
  青柳   いや、お前のそのまっすぐな性格がさ、まぶしいなーって。
       俺は、そうなりたくても、そうなれなかったから、ちょっと悔しかったんだと思う。
  
  ゆり   いや、そんな。全然だめだよ、私なんて。いっつも勝手に突っ走ってばっかりで。
  
  青柳   ハハハハ・・・。それでいいと思うぜ。俺もいつまでもヘラヘラしてないで、
       ちょっとは前見て突っ走ってみるかなって。お手本が近くにあると、助かるしな!
  
  ゆり   なによそれ。二人、なにかあったの?
  
  青柳   ん?んー・・・それは、男同士の秘密ってやつだな。ハハハハ!
  ゆり   ふふっ。・・・あの、みんな、ごめんね。

  桜木   うぃ?
  
  ゆり   私、みんなの気持ち、ちっとも考えてなかった。自分のやり方を押し付けてばっかりで、
       みんなが何を思ってるのか、考えようともしてなかった。だから、ごめんなさい。
  
  緑川   ああ。その通りだな。
  
  青柳   おい緑川。            
  
  緑川   それだけか?
  
  ゆり   え?

  緑川   言う事はそれだけなのか?

  ゆり   ・・・。

  赤井   白石。  

  桃乃   ゆりちゃん。                                          

  ゆり   ・・・私、これからは、皆と一緒に頑張りたいの!だから・・・よろしく。

  緑川   ふっ。

  ゆり   笑わないでよ!

  桜木   照れてるゆりっぺきゃわうぃー!

  桃乃   きゃわうぃー!

  ゆり   やかましい!

  赤井   よく言ったぞ白石!
  
  緑川   さぁ、無駄話はこれくらいにして、始めよう。
       赤井、今の時点での小道具の制作状況を確認してくれ。
       後でリストを作成する。
  
  赤井   了解だ。  
  
  緑川   青柳は衣装で同じことを。
  
  青柳   了解。
       
  緑川   桜木は舞台装置に使う材料の確保を。
       踊り場に自由に使っていい廃材がある。

  桜木   かしこまりー。つって。
 
  緑川   桃乃はポスターとチラシを頼む。大まかなデザインを考えてくれ。
        
  桃乃   がってーん!

  緑川   音響と照明のプランは僕がやるとして・・・、白石、お前は台本を読み込め。

  ゆり   え、それだけでいいの?

  緑川   ああ。お前はとにかく台本を読み込んで、
       どういう指導をすればみんながいい演技を出来るか。それを考えてくれ。
  
  ゆり   なにか、仕事はしなくていいの?
  
  緑川   ああ。裏方は全てまかせろ。
       お前がリーダーだ。一人一人が最高の演技を出来るよう、知恵を搾り出せ。
       お前なら出来る。

  青柳   頼むぜ、白石。

  桜木   うぇーい!ゆりっぺうぇーい!

  赤井   任せたぞ。

  桃乃   がんばってー。ゆりちゃん!

  ゆり   うん、わかった!みんなもがんばって!

  山吹   ・・・私は、何をすればいいのかな?

  緑川   あぁ、すまない。 ・・そうだな、
       山吹は白石を手伝ってやってくれ。一人より二人の方がいい案も出るだろう。

  山吹   うん・・・わかった。

  ゆり   よろしくね、茜!
 
  山吹   ・・・うん、よろしく。

  緑川   以上だ。あまり時間が無い。各自、行動開始!
 
  全員   おー!


     全員、それぞれの作業を始める。
     桜木、廃材を取りに退場。


  ゆり   よし、がんばらなくっちゃね!まずどこから考えようかな・・・。
       茜は、どこか気になるとこある?

  山吹   ・・・。

  ゆり   茜?

  山吹   ゆりは、すごいね。

  ゆり   え?

  山吹   バラバラだったチームが、綺麗にまとまった。
       みんな、ゆりを信頼して、一生懸命に作業してる。
       ゆりは昔から、なんか人をひきつける力があるよね・・・。

  ゆり   そんなことないわよ。緑川君や皆が、やる気になってくれただけよ。
  
  

  山吹   でも、すごいよ。私にはできないから、憧れちゃうな。
       昔からずーっと一緒にいるのに、ゆりと私で、
       どうしてこんなに差があるんだろうなぁ。
       なんで私は、こんなにダメなんだろう・・・。

  ゆり   茜?

  山吹   あっ、ごめんなさい。
       ・・・その、ちょっと、始める前にトイレ行ってきていいかな?

  ゆり   うん、いいけど・・・。茜、大丈夫?

  山吹   うん。・・・大丈夫だよ。


     衣装チェックをしていた青柳。


  青柳   山吹ー、ちょっとこれかぶってみてくれ。

  ゆり   あっ!それは!


     青柳、山吹に帽子をかぶせる。


  山吹   大丈夫なわけ無いじゃない。

  ゆり   え?

  山吹   嫌がらせなの?いつもいつも私の前で、
       私が出来ないことを見せ付けるようにやって。  
       私が今までそれをどんな思いで見ていたかわかる?
       わからないわよね。あんたには。私の惨めな気持ちなんか・・・。

  ゆり   茜?

  山吹   なんで私とあんたにこんなにも差があるの?
       私は、暗くて、地味で、こんなにも惨めなのに、
       なんであんたは皆に信頼されて、キラキラした笑顔で笑ってるのよ!
  
  ゆり   茜・・・。

  
  山吹   チームがバラバラでいい気味だって思ってたのに、
       いつの間にかまとまってて、あんたはその中心で楽しそうにしてて。
       私はいっつもあんたのおまけで。不公平よ・・・わたしは一体何なのよ!
       私のことなんか何にも知らないくせに、親友ですって?
       そんなこと、わたしは一度も思ったことない!
       あんたに私の何がわかるのよ!勝手なこと言わないで!

  ゆり   茜!


     山吹、はっとして、帽子を脱ぐ。


  山吹   ・・・なに・・・これ・・・。

  ゆり   茜・・・ごめんね・・・?

  山吹   ゆり、違うの、私・・・違うの!


   桜木、登場。走り去る山吹とすれ違う。  
   

  
  桜木   さとっちー、廃材使うのなんか申請?いるっつてー・・・うおっ!
        …つーか今のぶっきー?なんかあった系?

  ゆり   ・・・追わなきゃ。

  桜木   うぃ?

  ゆり   ごめんみんな、作業続けてて!

   
     ゆり、帽子を掴んで走り去る。
  

  桃乃   ゆりちゃん!

  青柳   白石!


     桃乃、緑川、ゆりを追いかける。


  緑川   やはりあの帽子・・・なにか変だ。

  赤井   ああ。便利だがやっかいな帽子だ。

  緑川   何か知ってるのか?

  赤井   後で話す。とりあえず今は・・・。

  緑川   あぁ。俺たちも行こう。


     緑川、赤井、退場。


  桜木   うぃーー?マジでなんかあった系?
       とりあえず、ちょ待てよみんなっ!


     桜木、退場。
     暗転。

     舞台は屋上へ。
     風の音。山吹、登場。

 
  山吹   はぁ・・・はぁ・・・。どうしよう・・・私。
       とんでもないこと・・・取り返しのつかないことしちゃった。
       ゆり・・・ゆり・・・ごめんなさい。



     黒崎、登場。


  黒崎   お困りのようですねー。

  山吹   ひっ!誰?

  黒崎   今あなたにとって、私が誰かなんてどうでもいいでしょー?
       どうですかー?憎たらしい幼馴染に思いのたけを全てぶつけた感想は?
       へっへっへっへっへっへっへ・・・。胸がスーっとしたんじゃありません?

  山吹   そんなわけ、無いじゃない・・・。

  

  黒崎   あらそうですかー?それは残念ですねー。
       で、あなたこれからどうするつもりですかー?
       親友を口汚く罵ってしまったわけですから、当然あの場所には戻れないですよねー。

  山吹   ・・・。

  黒崎   しかも、衝動的に飛び出したのはいいとして、なんで屋上なんかに来ますかねー。
       逃げ場ないですよ?じきにみんなここに来ちゃいますよ?

  山吹   あっ!

  黒崎   気付いてなかったんですかー?あなたも大概抜けてますねー。
       どうするんですか?

  山吹   ・・・もう、消えてしまいたい。

  黒崎   あ?

  山吹   そこ、どいてください・・・。

  黒崎   飛ぶ気ですか?

  山吹   ・・・。

  黒崎   はっはっはっはっはっはっは・・・。いいですねぇ。
       でも残念でしたー!どきませーん。
        
  山吹   あなた、何なんですか?

  黒崎   まだそれ聞きますぅ?
       今のあなたにはそんなことどうでもいいでしょー?
        
  山吹   ・・・そうね。どうでもいい。
       もう、全部どうでもいい・・・。

  
  黒崎   ・・・あ、そーだ、消えたいんだったらねー、コレ貸してあげますよ。


     黒崎、ポケットから血の付いたナイフを取り出し、山吹の足元に投げる。


  山吹   きゃっ!

 
  黒崎   にっくき幼馴染の目の前で、そいつを使って首を掻っ切ってやればいいんですよー。
       一生トラウマになりますよー?今まで惨めな思いをさせられてきた復讐と思って、ね?

  山吹    ・・・。


     山吹、震える手でナイフを握る。


  黒崎   でもねぇー。あなた、本当に死ぬ覚悟あるんですか?
  
  山吹   え?
  
  黒崎   死ぬってことはですねぇー、あなたが思ってるほど楽なことじゃありませんよ?
       痛いですよー?苦しいですよー?

  山吹   ・・・。

  黒崎   死んだら無になるってよく言いますけどねー、あれ嘘ですから。
       無とか無いですからね。全然有ですからね。

  山吹   ・・・私を怖がらせたいだけなんでしょう?

  黒崎   あ?

  山吹   どうして、死んだ後のことなんてわかるのよ。
       適当なこと言わないで。

  黒崎   死んだことがあるからですよ。

  山吹   え?

  黒崎   死んだことがあるから言えるんですよ。
       あなたなにか勘違いしてますねー?
       あなたが今目の前のしてるのは、人間じゃ、ないんですよー?

  山吹   何を言って、

  黒崎   教えてあげますよ。死ぬってことがどういうことかを。
       まずは痛みです。気が狂うほどの痛みが長い時間続きます。
       苦しいのは一瞬なんて嘘ですよー。楽に死ねると思わないで下さい。
        
  山吹   ・・・。

  黒崎   そしてその痛みで精神がやられます。
       激痛と錯乱で目の奥が真赤になって、何も考えられなくなるんですよ。
       意識を手放したくても、人間の体はそう都合よく出来ていないんですよねーこれが。
        
  山吹   だから、適当なことを、
      
  黒崎   狂ったほうがマシなんじゃないかと思うほど混濁した意識の中で、
       生まれてきたことを後悔するような痛みを味わいながら。
       やがて、寒くなってくるんですよ。
       徐々に感覚が無くなって、自分の体が生きることをやめようとしてるのを感じるんです。
       その時に人間が何を思うかわかりますか?

  山吹   ・・・。

  黒崎   恐怖ですよ。
       自分がこの世界から切り離されて、果てのない永遠の暗闇が迫ってくるのを感じるんだ。
       その時になって、生きたいなんていう願望が出てくる。でも、もう遅いんだよ・・・。
       魂が肉体から剥がれていくんだ。痛くて・・・寒くて・・・暗くて・・・。

  山吹   やめて。

  黒崎   苦しくて・・・怖くて・・・孤独で・・・。

  山吹   やめて・・・!

  黒崎   聞けよ!死ぬっていうのはそういうことなんだよ!
       ・・・おまえには本当に、その覚悟があるのか。

  山吹   ・・・。


     舞台袖から、山吹を呼ぶ6人の声がする。


  黒崎   はははははははは。決断の時のようですね。
       ・・・死神も待ち構えていますよ。
       どうか、後悔の無いように。では、ごきげんよう。


     黒崎、退場。


  山吹   …。

   
     山吹、手に握ったナイフを見つめる。

     ゆり、青柳、桃乃、赤井、緑川、桜木、登場。


  ゆり   茜!

  山吹   ゆり・・・。

  ゆり   茜、ごめんね、私。

  赤井   山吹、その手に持ってるのはなんだ?
  
  山吹   ・・・来ないで!


     山吹、自分の喉にナイフを押し当てる。


  ゆり   茜!
   
  青柳   やめろ山吹!

  桃乃   茜ちゃんやめて!

  緑川   山吹、落ち着け!

  山吹   来ないでって言ってるでしょ!
         
  ゆり   茜、ごめんなさい。茜がそんな風に思ってるなんて、私知らなくて…。

  山吹   やめて、謝らないで・・・。

  ゆり   ごめんなさい、あっ。


  赤井   山吹、全部その帽子のせいだ。気にすることは無い!
   
  青柳   どういうことだ?

  赤井   あの帽子をかぶると、心の内を暴露してしまうんだ。

  緑川   じゃあさっきの山吹の言葉は全て本音ということか?

  赤井   ・・・そうなる。

  桃乃   どうしよー。

  青柳   山吹、誰にだって人を妬んだりすることは有るよ。その、大丈夫だ!

  山吹   何が大丈夫なのよ。

  青柳   あぁ、いや・・・。

  赤井   とりあえず落ち着け。まず、そのナイフを捨てないか?
 
  桃乃   うん!そうだよ茜ちゃん!危ないよー!
  
  山吹   来ないで!

  赤井   わかった!すまない!

  ゆり   茜、謝るなって言われちゃったけど、私、馬鹿だからどうしたらいいのか。
       ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。

  山吹   ・・・。

  
     山吹、ナイフを握る手に力を込める。

   
  桜木   つーかさー、ちょっと皆黙ってた方がよくね?

  緑川   え? 

  桜木   いや、ゆりっぺのことでー、ぶっきーはしんどいわけっしょ?
       だったらゆりっぺと話したらいいんじゃね?
         
  ゆり   ・・・。

  桜木   ゆりっぺもさー、ただ謝るんじゃなくて、ぶっきー全部ぶっちゃけたんだから、
       ゆりっぺも、ちゃんとぶっきーのことどう思ってんのか伝えたらいーんじゃね?
   
  ゆり   でも。

  桜木   あー、なんつーかさ。二人マブダチなんだろ?
       だったらさー。ちゃんと気持ち伝え合うべきなんじゃね?
       ・・・つって。

  山吹   ・・・。
   
  ゆり   ・・・うん。うん、そうね。・・・ありがと。桜木。
       ふーーーーっ・・・。茜。
   
  山吹   ・・・。
   
  ゆり   私、知らなかった。あんたが私のこと、そんな風に思ってたなんて。
       それなのに勝手に親友だなんて言って、馬鹿だよね、私。

  山吹   ・・・。

  ゆり   長い間一緒にいたのに、私は茜のこと、何も知らなかったんだね。
       ・・・でもさ、これから知っていきたいって、思っちゃ駄目かな?

  山吹   ・・・これから?

  ゆり   うん。近くにいても、見えなかった、わからなかった茜のこと。
       れから、もっと近くで見たいって、わかりたいって、思うの…。
       ・・・だから、茜…?
   
     
     ゆり、山吹に手を差し伸べる。


  山吹  ・・・私のこと、許してくれるの?

  ゆり   許すとか許さないじゃないよ。

  山吹   ・・・うそだ。

  ゆり   茜?

  山吹   うそだ!いい人ぶらないでよ!優しくしないでよ!
       そんなこと口で言われたって信じない!
       心の奥で、私のこと笑ってるんでしょ!

  ゆり   茜、


     ゆり、ゆっくりと山吹に近寄る。


  山吹   来ないで!

  赤井   白石!

  ゆり   茜。大丈夫。ここからやりなおそう?

  山吹   来ないで・・・来ないでーーーーっ!


     山吹、ゆりを刺す。


  桃乃   いやぁぁぁぁ!

  桜木   ゆりっぺ!
  
  青柳   うそだろ!?

  緑川   あっ・・・赤井!職員室に走れ!救急車を!

  赤井   わ、わかった! 

  ゆり   まって!  

  緑川   白石?

  ゆり   ごめんね、茜。こんな言葉じゃ、信じられないよね?

  山吹   ・・・あ、あ。

  ゆり   いま、ちゃんと、私の本当の心で・・・話すから。


     ゆり、帽子をかぶる。


  ゆり   あんたって、本当にどんくさいわよね・・・。
       子どもの時は、いっつも私の後追いかけて、走って転んで、泣いてたわよね・・・。


  山吹   ゆり・・・。


  ゆり   覚えてる?小学校の時、一緒に行った夏祭りの金魚すくいで、あんた真剣になりすぎて、
       顔から水槽に落ちたのよ・・・。浅い水槽なのに溺れちゃって・・・。
       私、必死になってあんたを引っ張りあげたわ・・・。

  山吹   ゆり、ごめんなさい、わたし・・・。

  ゆり   屋台のおじさんも大慌てだったわよ・・・その時わーわー泣くあんたを見て思ったわ。
       わたし、なんでこんなコと友達なんだろうって。
       ふふ・・・。子どもって時に残酷なこと考えるわよね。でも、ね?
   
  山吹   ゆり、お願い・・・、もう、喋らないで。

  ゆり   わたしたち、いつも一緒にいたじゃない?性格も、遊びの好みも合わないのに。
       いつも二人で、泣いたり、笑ったりしながら、
       色んな場所に行って、色んなものを見たよね。
       楽しかった時の思い出は、いつも、茜と一緒なのよ。
  
    
     ゆり、山吹を抱きしめる。

 
  ゆり   わたしね、やっぱり、茜と、一緒がいいの・・・。


     ゆり、崩れ落ちる。
  

  山吹   ゆり!ごめんなさい!ごめんなさい!

  ゆり   大丈夫だよ・・・。ここから・・・また、始め、よう・・・?


     ゆり、目を閉じる。


  山吹   ゆり!ゆり!いやぁぁぁぁぁぁ!

  赤井   白石!

  桃乃   ゆりちゃん!やだ!いやだよ!

  桜木   ゆりっぺ!嘘だろ!

  青柳   緑川!なんとか出来ないのか!

  緑川   ここには満足な道具も無い・・・それに、傷が深すぎる・・・。

  赤井   白石、しっかりしろ白石!

  山吹   ゆり!目を開けて!お願い!
       ゆりーーーーーーー!


     暗転。 黄泉路。   
     赤井、青柳、緑川、桃乃、山吹、桜木、退場。(素早く)
     黒崎、登場。


  黒崎   ・・・もしもーし。もしもーし。白石ゆりさーん。もしもーし!

  ゆり   はっ!

  黒崎   やっと起きましたか。寝顔、女子力皆無でしたよ。でろーんってしてて。

  ゆり   見てんじゃないわよ!・・・ていうか、ここ、どこ?
  
  黒崎   ・・・大体予想ついてるんじゃないですかー?

  ゆり   私・・・、死んだの?

  黒崎   えぇ。まぁ。

  ゆり   ・・・そっか。そうなんだ・・・。

  黒崎   落ち着いてますねー。どうゆう心境の変化です?
       てっきり私は馬鹿みたいにわめき散らすものかと!

  ゆり   そりゃ悔しいし、やり残したこともあるけど。死んじゃったんなら、仕方ないじゃない。

  黒崎   ・・・やり残したこと、ねぇ?
       一応聞いておきましょうか。死者への手向けではありませんが、
       あなたの最期の願いとして、私が代行してあげても構いません。

  ゆり   ホントに!    
  
  黒崎   うわ急に元気になりましたね。あーでも、内容によりけりですよー?
       一発殴らせろ!とか、生き返らせて欲しい!とかは無しの方向でお願いしますねー。      
  
  ゆり   そんなんじゃない!

  黒崎   そんなんて。・・・聞きましょう。

  ゆり   伝えて。

  黒崎   あい?

  ゆり   茜に伝えて!私を刺したこと気にしないでって!

  黒崎   は?

  ゆり   いや、その、あのコの性格的に、きっと気にすると思うのよねー・・・。
       ホント、一生気に病んで暮らすかも。

  黒崎   いやあのコの性格的にっていうか、大抵の人はそうだと思うんですけど。
       ・・・ていうか無理でしょぉ。人刺しといて気にすんなって!

  ゆり   じゃあ忘れて!

  黒崎   あまり意味が変わってませんね。

  ゆり   気楽に行こう!

  黒崎   あなたほんと死んでも馬鹿ですね。
       ・・・それだけですか?

  ゆり   うん。それだけ。

  黒崎   ・・・・はははははははは。あなた、本当に馬鹿ですね・・・。

  ゆり   頼めるの?
  
  黒崎   嫌です。
  
  ゆり   なによ。意地悪・・・。

  黒崎   私がそれを彼女に伝えたところで、どうにもならないでしょう?

  ゆり   は?


       


       暗転。 


 


  ゆり   うわ!まっくら!

  黒崎   ひとつ嘘をつきました。あなたはまだ死んでいません。
       ・・・この場で身勝手な願いを口にしたら、死んでもらうつもりでしたが。
  
  ゆり   え?
  
  黒崎   さぁ、帰ってください。あなたのいるべき場所へ。
       その思いは、あなたの口から伝えてください。

     
     明かり点く。
     ゆりを心配そうに取り囲む6人。


  赤井   白石!気がついたぞ!

  桃乃   ゆりちゃん・・・よかったぁぁー。

  ゆり   え?

  青柳   ハハハハハハ・・・焦ったぁぁー!

  緑川   信じられない。奇跡だ・・・。

  桜木   ゆりっぺおかえりっちー!うぇーい!

  ゆり   何!え、何で私生きてんの!

  桃乃   なんかねー!すごかったんだよー!

  赤井   うむ、まるでCGを見ているようだった…。

  ゆり   どういうこと?

  緑川   全くもって、医学への冒涜だが・・・ひとりでに傷が塞がった。そうとしか言い様が無い。

  桜木   ゆりっぺマジピッコロ大魔王じゃん!ゴイスー!つって!

  青柳   マジでヒヤヒヤしたぜ。

  ゆり   ひとりでに傷が?もしかして・・・。

  山吹   ・・・ゆり。

  ゆり   茜・・・。

  
     山吹、ゆりの胸に飛び込む。


   山吹   ごめんなさい!ごめんなさいゆり!
        わたし、ゆりがいなくなったらどうしようって。よかった、よかった・・・。

   ゆり   痛いわよ茜。大丈夫。わたしはここにいるから。

   山吹   うん・・・うん・・・。

   ゆり   ・・・また、始めようね。

   山吹   うん・・・!



     間。


   赤井   これにて、一件落着。って感じだな。

   桜木   ぷっ。赤井っち台詞ベタすぎじゃねマ?ジで。

   赤井   なんだと?

   桃乃   でもよかったー。

   青柳   ああ、ホントになー。どうなることかと思ったよ。
  
   緑川   全く、人騒がせな連中だ。

   青柳   ハハハ。一番焦ってたくせによ。

   緑川   うるさい!さぁ皆。まだやることは山ほどあるぞ!
        戻って作業の続きだ!

   桜木   えー、さとっちこの空気でそういうこと言っちゃうー?

   緑川   この空気もどの空気もあるか。僕たちには時間が無い!
        それに・・・。

   桃乃   それにー?

   緑川   ・・・せっかくみんなの心がひとつになったんだ。
        ・・・いいものにしたいじゃないか。
   
   ゆり   緑川くん・・・。
   
   赤井   お前、言っていて恥ずかしくないのか?

   緑川   うっ、うるさいっ!行くぞ青柳!

 青柳   俺かよ?仕方ねぇーなー。よーーっしっ。
        いっちょやるか!


    緑川、青柳、退場。
  

 赤井   俺たちも行くか。
  
 桃乃   うん!最高の文化祭にしよー!

 桜木   うぇいうえーい!マジテンション上がってきたー!

 ゆり   そうね。いまの私たちなら、やれる気がする。
       ・・・ね、茜?

 山吹   うん・・・!

 桜木   よっしゃマジ行こうぜー!


     桜木、赤井、桃乃、退場。
     続いて、山吹、ゆり、退場しかけるが、
     ゆり、立ち止まる。
    

 山吹   ゆり?どうしたの?

 ゆり   あー、ちょっと先行ってて。すぐ行くわ。

 山吹   ?うん、わかった。


     山吹、退場。


 ゆり   ・・・いるんでしょ?

  
     黒崎、登場。


 黒崎   バレてましたか。死神も帰ったみたいですし、うまくいってよかったですねぇー。
       (帽子とナイフを回収)・・・おかえり。
       何か用ですか?

 ゆり   別に用ってわけじゃないけど・・・。
      ねぇ、私の傷が塞がったのって、もしかして。

 黒崎   このコには私の血液が深く染み付いています。
      私が命令すれば、つけた傷を塞ぐことぐらい、容易いことですよ。
        
 ゆり   あんた本当に何者よ?
      でも、茜にナイフを渡したのもあんたよね?一体なにがしたかったの?

 黒崎   別に。ただの気まぐれですよ。

 ゆり   気まぐれって、あんたねぇ、

 黒崎   ひとつ理由があるとすれば。

 ゆり   え? 

 黒崎   気に入らなかったんですよ。軽々しく消えたいだなんて言うもんですから。
        
 ゆり   茜が、消えたいって言ったの?
  
 
黒崎   ええ。まぁどうせそんな度胸無いのはわかってましたから、
      人でも刺せば、そのショックで馬鹿なことも言わなくなるだろうとね。
      ナイス刺されっぷりー。(拍手)

ゆり   茜を助けてくれたの?

黒崎   ・・・そんなつもりはありませんよ。言ったでしょう。ただの気まぐれです。

ゆり   そう・・・。
        
黒崎   もういいですか?私これでも結構忙しいんですよー。

ゆり   ・・・約束。

黒崎   あい?

ゆり   あんた言ったでしょ。この状況をなんとかすることが出来たら、あんたの目的を教えてくれ   
      るって。

黒崎   あー・・・覚えてました?

ゆり   当たり前よ。何が目的で、そんな厄介な帽子を私に貸したのか、きっちり説明してもらうからね。

黒崎   あー・・・。

      
       間。


ゆり   無視!?いいわよ。当ててあげる。あんた、ほんとは最初から、


黒崎   昔ね、あるところに一人の少年がいたんですよ。

ゆり   え?   

黒崎   彼は幼い頃に、酒気帯び運転のトラックが起こした交通事故に巻き込まれて、
     大好きだった両親を亡くしましてね。それ以来、人間というものを嫌うようになりました。

ゆり   ・・・ちょっと、なんの話?

黒崎   人と関わることなんてわずらわしいと決めつけて、
     作家だった両親が残してくれた本を読んで日々を無味簡素に過ごしていました。
     ・・・いつ死んでも構わないと思いながら。
     そんな自分の生き方に疑問など持っていませんでした。
     同級生から壮絶ないじめを受けて、自らその命を絶つまでは・・・ね。

ゆり   え?

黒崎   このまま死にたくは無い。確かに彼は、死の間際にそう思っていた。
     何故だかは、今もわかりませんがね。
     いつ死んでも構わないと思っていたのに・・・。   
     気がつけば、この姿でこの場所にいました。
     まるであの世にも、この世にも、お前の居場所は無い、と言われている気分でしたよ。
     ・・・そして、私は今もここにいる。

ゆり   ・・・。

黒崎   まぁ、そんなことはいいんです。約束の答えですがね、ただ単に退屈だっただけですよ。
     消えることも出来ず、かといって生きているわけでもない。
     私の、この無意味な時間は、いささか娯楽にかけますのでね。
     暇つぶし?ってやつですよー。

ゆり   ・・・。

黒崎    あー・・・、怒らないんですか?

ゆり   ・・・あんたが、なんで死にたくないって思ったかわかる?

黒崎    あい?

ゆり    あんた、寂しかったのよ。誰とも心を繋ぐことが出来なかったから・・・、
      一人で消えていくのが寂しいって、そう思ったから、嫌だって、死にたくないって思ったのよ。

黒崎    ・・・はは、寂しい?この私が?そんなわけ、

ゆり    今だって!神様が、この時間をくれたんじゃない?ひどいことばかりの人生を送ったあんたに、
      この世界は、その、そんなに悪くないんだよって、知って欲しくて!

黒崎    神なんかいるかよ!

ゆり    !

黒崎    神がいるなら、どうしてこの世界はこんなにも理不尽なんだ!
      どうして人は汚くて、弱いんだ!神がいるなら、どうして・・・俺は・・・。

ゆり    ・・・。            

黒崎    心を繋ぐだって?・・・馬鹿馬鹿しい。
      俺はもう死んでるんだよ。今更そんなこと、なんになるんだよ!

ゆり    今更なんてこと無い!

黒崎    ・・・あ?
     

     ゆり、黒崎の手を握る。


ゆり    世界は理不尽かもしれないし、人は汚くて、弱いかもしれない。
      でも、私はあんたと、心を繋げるよ?
      生きているとか、死んでいるとか、関係ない!             

黒崎    ・・・なに言ってんだよ。

ゆり    暇つぶしとか、嘘でしょ。あんたは最初から、私たちを助けるために現れてくれた。
      みんなが一つになった。茜を助けてくれた。私を助けてくれた!

黒崎    っ、津勝手な思い込みだろ。            
        
ゆり    思い込みでもいい!私は、あんたに感謝してる!だから、あんたに教えてあげたいの!
      誰かと心を繋げれば、この世界はそんなに悪くないんだって!
      あんたのおかげで、わかったから!

黒崎    いい加減にしろよ!

ゆり    義也くん! 

黒崎    !

ゆり    ・・・ありがとう。

黒崎    ・・・。(うつむく)


     間。

     うつむいた黒崎を、不器用に抱きしめるゆり。


ゆり    ・・・ねぇ、その、今、心、繋がってる感じ、しない?

黒崎    ・・・・う、・・・。


     



     間。

     やがて子供のように涙を流し始める黒崎。
     まるでそれは、幼稚園でいじめられていた子供が、迎えの母親の胸に飛び込んだ瞬間の
     安堵の涙のようで。

     どうすればいいかわからずうろたえるゆり。


 
 ゆり    ・・・せっ、世界がもし、百人の村だったら!

 黒崎    ・・は?

 ゆり    一人、ぐらい、死人がいても・・・いいと思わない?


     間。


 黒崎   ・・・それは、なんかまずいだろ。

 ゆり   ・・・やっぱり?

 黒崎   ・・・ふっ。はははははは・・・。

 ゆり   ちょっと。笑わないでよ。

 黒崎   ははははは・・・、ほんと、馬鹿・・・ははははは・・・。

 ゆり   馬鹿っていうなー!

 黒崎   ははははは・・・。ふー・・・。 
      ・・・必ず、成功させろよ。

 ゆり   え?

 黒崎   ・・・文化祭。

 ゆり   ・・・、


     ゆり、何かを言いかけるが、   
     赤井、桃乃、桜木、青柳、山吹、緑川、バタバタと登場。


 赤井   白石ー!人手が足りないんだ!早く来てくれー!

 ゆり   あっ!ごめん赤井くん!

 桃乃   うわー!さっきはそれどころじゃなかったけど、夕焼け綺麗だねぇー!

 桜木   ひゅーーー。マジ絶景!ぱねぇ!

 青柳   ハハハ。こりゃすげーな。

 山吹   綺麗・・・。

 緑川   ふむ。白石。ついでだ。あのシーンを少し練習しておくか。

 青柳   あーそういえば、あそこ、夕焼けのシーンだったな。

 ゆり   そうね・・・やっちゃう?

   桜木   うぇいうぇーい!行っとくー?

   山吹   うん!やろう!

   赤井   おう!文句なしの照明だな!やるしかあるまい!

   桃乃   よーっしゃーー!

   ゆり   よーし!じゃあみんな立ち位置について!
        ・・・しっかり見てなさいよ。必ず成功させるから!

   黒崎   ・・・あぁ。

   ゆり   いくよー!よーいっ!スタート!(手を打つ)

   

   

   桃乃   あなたは、一人じゃありません。

   
   緑川   不安で、苦しくて、潰れてしまいそうな時。

   
   山吹   誰かを傷つけて、傷ついてしまった時。

   
   赤井   勇気を出して、心の扉を開いてください。
  
   
   青柳   その時、そこにはあなたを受け止めてくれる誰かがいます。

   
   桜木   ありのままのあなたを受け入れてくれる誰かが、きっとそこにいます。

   
   ゆり   新しい世界を、どうか恐れないで。

   
   黒崎   さぁ心の扉を開いて、その一歩を踏み出しましょう。

   
   
  

   全員   心と心を繋ぐ喜びをこの胸に抱きしめて、私たちは生きていく。


                                                    
                                                 

         

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