#15 ビタースイート ミステリー

刑事・稲森が挑む最強の敵は、国民的人気アイドル。
竹田行人 21 0 0 04/24
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第一稿

「ビタースイート」


登場人物
稲森浩輔(49)刑事   
前島由里(21)アイドル
葛原明(24)タクシー運転手


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「ビタースイート」


登場人物
稲森浩輔(49)刑事   
前島由里(21)アイドル
葛原明(24)タクシー運転手


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○府中芸術劇場・大ホール・ステージ(夜)
   大音量の流れる満席のホール。
   目まぐるしく照明が動いている。
   20人程の女の子たち、制服を模した衣装を着てステージ上で踊っている。
   前島由里(21)、女の子たちのセンターにいる。

○洋菓子店Cramoisi・外(夜)
   店の前にタクシーが止まっている。
   稲森浩輔(49)、大きな包を抱えて出てくる。
   葛原明(24)、タクシーに寄りかかっている。
葛原「また買いましたねぇ。稲森さん」
稲森「あちらは大所帯ですから。助かりました。葛原くんが場所を知っていてくれて」
葛原「一応情報屋ですから。どうぞ」
   葛原、後部座席のドアを開ける。
稲森「ありがとう」
   稲森、タクシーに乗り込む。

○タクシー・車内(夜)
   稲森、後部座席に乗っている。
   葛原、運転席に乗り込む。
葛原「で。稲森警部補。どちらまで?」
稲森「ああ。芸術劇場へ」
葛原「前島由里ですか」
   稲森と葛原、バックミラー越しに目を見合わせる。
稲森「打てば響きますね」
葛原「国民的アイドルグループ・KBJ23の絶対的エースですよ。知らないとお客さんと話し合わないですから」
稲森「会いに行くと言ったら、あの店で差し入れを買うよう同僚に勧められました」
葛原「SNSとかによく書いてますからね」
稲森「なにか情報はありますか」
葛原「どこもすっぱ抜いてないですが例の。俳優の夏川健と不倫してるって話ですよ」
稲森「確かな情報ですか」
葛原「いや。まだ確証までは」
   稲森と葛原、バックミラー越しに目を見合わせる。
葛原「おととい夏川が奥さんを刺した事件のことですね」
稲森「捜査のことは話せません」
葛原「でも、先週の週刊誌に撮られたのは別の。確か。モデルさんでしたよね。だからオレもてっきり都市伝説かと」
稲森「男から見てもいい男です。噂だけなら掃いて捨てるほどあります」
葛原「それは。すみません」
稲森「いえ」
葛原「テレビやSNSの印象だけですけど、稲森さん、苦戦しますよ」
稲森「苦戦」
葛原「彼女。相当キレます」
   車内にウィンカーの音が響く。

○府中芸術劇場・楽屋・中(夜)
   部屋には3台の加湿器。
   由里、スウェット姿でヨガをしている。
   由里の手には手袋。
   ノックの音。
由里「どーぞー」
稲森の声「失礼します」
   稲森、入ってくる。
由里「おはよーございまーす」
稲森「府中署の。稲森です」
   稲森、警察手帳を見せる。
由里「えー? それー。ホンモノですかー?」
稲森「え。ええ」
由里「写メ撮っていいですかー?」
稲森「それはちょっと」
由里「あー。それー。Cramoisiの?」
稲森「ええ。ケーキ大福です。皆さんで」
由里「ありがとーございまーす」
   由里、包みを受け取り、スマートフォンで写真を撮る。
由里「大好きなんですよー。これー」
   由里、楽屋のドアを開ける。
由里「みんなー。刑事さんから差し入れ頂きましたー!」
   湧きあがる黄色い歓声。
   女の子たちが顔を出す。
女の子たち「ありがとーございまーす!」
由里「はーい。よくできましたー」
   由里、女の子たちに箱を渡し、ケーキ大福を一つ持って戻ってくる。
由里「いただきまーす」
   由里、ケーキ大福をくわえ、スマートフォンで自撮りをする。
由里「ちょっと盛りまーす」
   由里、くわえていたケーキ大福をテーブルに置くと、スマートフォンを操作する。
   稲森、うすく歯形だけついたケーキ大福を見つめている。
由里「あとで刑事さんと写メいいですかー?」
稲森「今日は夏川健さんのことでお話が」
由里「これってー。任意の聴取ですよねー?」
稲森「はい。ですが」
由里「夏川さんはー。私にとってー。東京のー。お父さん的な感じ? だからー。すっごいショックでー」
稲森「お父さん」
由里「前にー。あ。私。たまに演技とかやらせてもらっててー。共演したんですよー。夏川さんとー」
稲森「それからはどういうお付き合いを」
由里「お付き合いっていうかー。たまにゴハンしたりー。最近はー。お酒もー。えっと。たしなむ? みたいな」
稲森「夏川は。あなたに言われてやったと主張しています」
   由里と稲森、目を見合わせる。
由里「刑事さん超うけるー」
稲森「え」
由里「だってー。私のところに来たってことはー。それ信じたってことですよねー?」
稲森「食べないんですか」
由里「え?」
稲森「お好きなんですよね? ケーキ大福」
   由里、ケーキ大福を見る。
由里「刑事さん知ってますー? これってー。こーなってるんですよー」
   由里、ケーキ大福を割る。
   白いケーキ大福の中からストロベリーソースが流れ出てくる。
由里「可愛い顔した悪魔なんですよ」
稲森「え」
由里「カロリーめちゃ高なんでー」
稲森「そうですね」
由里「私。完全アイドルになりたくてー」
稲森「完全アイドル」
由里「だからー。大好きなんですけどー。食べないんです」
稲森「はぁ。手袋や加湿器も。それで」
由里「あとー。ヨガとかー。ジムとか?」
稲森「お仕事もお忙しいでしょうに。アイドルは大変ですね」
由里「大変なんですよー。刑事さんはー。動機をどう推理してるんですかー?」
   由里と稲森、目を見合わせる。
稲森「独占欲でしょうか」
由里「ドクセンヨクー?」
稲森「はい。先週の週刊誌の記事でそれに火が付き、奥さんを殺させようとした」
由里「んー。23点かなー。刑事さんモテないでしょー?」
稲森「では前島さんならどう推理しますか」
   稲森と由里、目を見合わせる。
由里「攻めますねー。そうだなー。私ならー。独占欲っていうよか。一体欲かなー」
稲森「いったいよく」
由里「本当に好きになったらー。その人とは一つでありたいんですよー。オンナって」
稲森「一つでありたい」
由里「この場合はー。共犯っていうかー。運命共同体? みたいな」
稲森「しかしあなたはそれも拒絶した」
由里「他に女がいたからじゃないですか」
   稲森と由里、目を見合わせる。
由里「自分を犯罪者にした相手はー。一生忘れないじゃないですかー」
稲森「それは。それはそうかもしれませんが」
由里「ずっとお互いがお互いの記憶に残ってるってー。それはもう一つになったってことじゃないですかー」
稲森「馬鹿げてる」
由里「ひっどーい。人がせっかく」
稲森「命はあなたの欲望を満たすための道具ではありません」
由里「うざ」
   スマートフォンのアラーム音。
   由里、アラームを止める。
由里「証拠はあるんですか?」
   稲森と由里、目を見合わせる。
由里「私が夏川さんに殺害を依頼したり、そもそもお付き合いをしていたっていう証拠が」
   稲森と由里、目を見合わせる。
   由里、微笑む。
由里「だったら今までのってー。ただの想像っていうかー。もう妄想ですよねー」
稲森「前島さんお願いです。本当のことを」
由里「私ー。撮影あるんで行きますねー」
   由里、立ち上がり、ドアに手をかけたところで立ち止まる。
由里「でー。さっきの刑事さんの妄想ってー。間違ってるっていうかー。そもそも前提条件が整ってないんですよねー」
稲森「前提条件?」
由里「ええ。刑事さん知ってます?」
   稲森と由里、目を見合わせる。
由里「アイドルって。恋愛しないんですよ」
   由里、微笑み、出ていく。
   稲森、由里が出て行ったドアを見つめている。
   ストロベリーソースがテーブルの上で赤い水たまりを作っている。

〈おわり〉

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