鎖縁 日常

腐れ縁の玲子と穂澄。高校の卒業日に教室で約束を果たそうとするが、どちらも肝心の約束内容を忘れてしまい...。 少女二人の芝居。
AYUMU 6 0 0 07/06
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第一稿

◯教室。昼。

腐れ縁の玲子(18)と穂澄(18)、イスに座ってそれぞれ何かを待っている。二人の距離は心なしか遠い。
玲子「(皮肉っぽく)まだかなあ。ああ、退屈で死に ...続きを読む
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◯教室。昼。

腐れ縁の玲子(18)と穂澄(18)、イスに座ってそれぞれ何かを待っている。二人の距離は心なしか遠い。
玲子「(皮肉っぽく)まだかなあ。ああ、退屈で死にそうだ。退屈で死んだ人っているのかな。今ここにケータイはあるけど、面白いゲームもない、話したい人もいない。隣にはだんまりの穂澄さんしかいない。私が初めてかも知れない、人類初、退屈で死んだ女子高生。新聞に載るかな」
穂澄、髪の毛をいじる。
玲子「穂澄さん、聞いてるー?」
穂澄「……卒業式の後にこんな事やってるの、あたし達だけだろうね」
玲子「そうだよ。みんな写真撮ったり連絡先交換したりして、別れを惜しんでるっていうのに、あたしらだけ何してんのかな。家が隣で18年毎日顔を合わせ、事もあろうか大学の学部まで一緒のあたしらが、卒業式に何やってるんだろうね!もっと話さなきゃならない人もいるし、先生にもさよなら言わないといけないのに。……で、なんでだっけ?」
穂澄「玲子の言い出しでしょ」
玲子、驚く。
玲子「あたし?あたしが言い出したの、なんて?」
穂澄「この間、小学生の時に共同で使ってた楽譜が出てきたの。書いてあったのよ、玲子の字で」
穂澄、鞄から楽譜を取り出す。
玲子「……何て?」
穂澄「(呆れて)覚えてないの?」
玲子「楽譜に何を書いてるの?」
穂澄「『穂澄に、高校の卒業の日に確かめる』って」
玲子、穂澄から楽譜をとって見る。
玲子「何を?……8年前のあたしは、穂澄に何を確かめようとしたの?」
穂澄「(憎らしげに)覚えてないの?!……ああ、神田先生に挨拶しなくちゃ!戻ってくるまでに思い出してね」
穂澄、部屋を出て行く。玲子、イスに座る。
玲子「8年前のあたし、8年前のあたしが穂澄に何を確かめようとしたの」
玲子のケータイが鳴る。
玲子「誰だろう。知らない番号。(一度切れるが、もう一度鳴るのでイライラしながら出る)……もしもし」
?の声「もしもし玲子?」
玲子「.......穂澄?どうしたの?……なんか声が変じゃない?」
穂澄?の声「楽譜見たけど、確かめたい事って何?」
玲子「まだ思い出してないわよ。神田先生には会えたの?」
穂澄?の声「神田先生?……まあ、いいや。切るわね」
玲子「穂澄?……変なの。思い出さなくちゃ、何か大事な事だった気がする」
穂澄、戻る。
穂澄「玲子、神田先生、1時間後に会議があるんだって。挨拶いいの?」
玲子「え!ちょっと行ってくる。先生どこにいた?」
穂澄「第2音楽室よ」
玲子、出て行く。間。穂澄のケータイが鳴る。
穂澄「誰だろう……(訝しげに)もしもし?」
?の声「あ、あたし、あたし!」
穂澄「玲子?」
玲子?の声「大事なこと、確かめなくちゃ。あのね」
穂澄「思い出したのね?」
玲子?の声「この前……じゃないや、小学5年の秋祭りの時のこと、覚えてる?」
穂澄「秋祭り?地元の灯篭祭りの事?」
穂澄、考える。
穂澄「小学5年の灯篭祭り……もしかして、私がおでこを怪我した時の事?」
玲子?の声「そう、あたしが髪飾りを失くして、一緒に探してくれたでしょ。怪我をしてでも見つけてくれた時、あたしら、約束したじゃない。『いつまでも側にいる。離れても、離れなくても』って。『高校の卒業式に確かめるよ』って。」
穂澄「そんな約束、したっけ。……思い出したわ。玲子はいつも文句言いながらも側にいてくれてる。ありがとう、ちゃんと思い出したわ」
玲子?の声「良かった。次はいつ確認するか、二人で決めておいてね。高校最後のあたしと」
穂澄「高校最後の玲子?あなたは?……もしかしてその声」
玲子?の声「じゃあね」
ケータイが切れる。穂澄、立ち尽くす。
穂澄「今のは子供の時の玲子?」
玲子、戻る。
玲子「先生のLINEのID、ゲットしたよ!今度カラオケしようって!」
穂澄「で、確認したい事は思い出したの?」
玲子「……ああ、いや、全く。なんだっけ?小学生の時の話でしょう。もう思い出せないよ」
穂澄「もう、いいわ!……玲子、いつもありがとう」
玲子「(吹き出す)何それ。……急にどうしたの?」
穂澄、楽譜に何かを書き込み玲子に渡す。
穂澄「今度は玲子が持っていて」
玲子「え……うん。帰るの?」
穂澄「後で先生のID、教えてね」
玲子「うん」
穂澄、出て行く。玲子、楽譜を見て読み上げる。
玲子「『玲子、確かめる必要ないんじゃない?10年後も、20年後も』……(顔を上げて)だから、何を!?」

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