サッカーパンチ ドラマ

サッカーパンチ(不意の一撃) 正社員を目指し工場勤務を続ける派遣社員の中田。俳優を目指す荒木。上司は小言の繰り返し。そんな折り、上司の密会を目撃するふたり。荒木は生活苦をネタに身重の妻から罵倒される。中田は社員に?また、荒木の取った行動は?
湊本 佳孝 10 0 0 03/09
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第一稿

人物
中田進 (28)派遣社員
荒木崇 (32)中田の同僚
佐藤高広 (38)中田の上司
荒木友美 (28)荒木の妻

○工業団地 俯瞰

田園の中に数個の工場が建 ...続きを読む
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人物
中田進 (28)派遣社員
荒木崇 (32)中田の同僚
佐藤高広 (38)中田の上司
荒木友美 (28)荒木の妻

○工業団地 俯瞰

田園の中に数個の工場が建つ。

◯三つ葉自動車部品(株) 全景

門柱に『三つ葉自動車部品』のプレート。

敷地内には大きな工場の建屋。

◯同 製造ライン 中

大きなベルトコンベア。
その上を自動車のホイールが次から次に流れる。

作業着を着た数人の作業者たちが、ラインに流れる重そうなホイールを裏返し、金槌を片手に裏面に刻印を打つ作業をしている。

作業を続ける中田進(28)。

中田の斜め前で作業をする荒木崇(32)。

いきなり止まるコンベア。

作業を止め不思議そうな顔の作業者たち。

隣接する事務所から製造ラインに入ってくる佐藤高広(38)。

佐藤「はい、作業止めて、作業止めて、一回
集まってー」

一斉に作業を止め、集合する作業者たち。

その中にいる荒木と中田。

佐藤「えー先日の作業ロットから不良が発生しました。刻印漏れです。ロット表からはこのチームの作業時に発生したことが分かりました」

荒木を見る中田。

佐藤「あのー、なんとかなんないですかねー、 これで何回目ですか?ほっんとに。派遣の方々はウチがダメになっても他に行けばいいんですけど、私らそうもいかないいんでね。信用なくなるんですよ、ちゃんとやってください、こんな簡単な仕事」

お互いの顔を見合わす作業員たち。

◯同 たちばな食堂 入口

入口ガラスに『たちばな食堂』の文字。

◯同 中

多くの社員がテーブルにつき食事をしている。

荒木、テーブルにトレイごと激しく定食を置き席に着く。

荒木「あーイラっとする、佐藤課長」

後に続きテーブルに定食を置き席につく荒木。

中田「言い方がムカつきますけどね」

荒木「何様だっつうの、仕事はしないくせに、そう思わない?」

中田「あれでも正社員っすからね、なりたいっすわー、課長にも出せって言われてるし」

荒木「なに?中田君ってそっち側なの?」

中田「そんなんじゃないっすけど、荒木さんは?今回も希望出さないんすか?これ」

中田、『正社員登用申請書』と書かれた紙をテーブルに置く。

荒木「出さないよ。俺は劇団あるし、夢があるから」

中田「奥さん、なんか言ったりしません?」

荒木、少し詰まりながら、

荒木「う、うん、応援してくれてるよ」

中田「よかった今回は募集、一人なんすよねぇ、ウチは嫁があまり体強くないから早く安心させたいんす」

荒木「おーがんばれ、がんばれ夢の持てない若者よ」

中田「俺は、幸せな家庭を持ちたいだけっすよ」

荒木「いいんじゃない?そういうのも。俺は夢にしか興味ないし、ぜんっぜんだから、応援するために辞退するよ」

中田「あざーっす」

申請書を見つめる荒木。

◯居酒屋 大将 前 (夜)

商店街にある居酒屋。

降りていたシャッターが開き店員たち数名が出てくる。

後から出てくる中田。

店員たち「お疲れ様でしたー」

方々に散る店員たち。

◯商店街 (夜)

店のシャッターが降りた商店街。

スマホを片手に歩く中田。

スマホ画面、ライン『由香:申請書出した?』の文字。

スマホを操作する中田。

スマホ画面、ライン『進:出したよー、熱は?下がった?』の文字。続いてライン『由香:うん、大丈夫、3年間無遅刻無欠勤、きっとなれる!正社員』の文字。

微笑む中田。

ラインの着信音。

中田、スマホを操作する。

スマホ画面、ライン『荒木:トニーズに来ない?』の文字。

ハテナ顔の中田。

◯トニーズ 外観 (夜)

郊外型のファミレス。屋根の上に『トニーズ』の看板。

◯同 店内 中 (夜)

普通のファミレス。入口から入ってくる中田。辺りを見回す。

一つの席にメニューで顔を隠すように座る荒木。

メニューからチラッと顔を出し中田を見る荒木。

中田、荒木に気付く中田。荒木のテーブルに行き座る。

中田「なにやってんすか?」

荒木、小声で、

荒木「しっ、あっち、あっち」

荒木、目配せで別のテーブルを指す。

× × ×

別のテーブルで若い女性と手をつないで楽しそうに話す佐藤。

× × ×

中田「えっ!あれ、総務の和田さんと佐藤課長じゃないっすか?」

荒木「しっ、声出すなって」

ニタニタする荒木。

◯三つ葉自動車部品(株)製造ライン (朝)

作業員たちが集合しコソコソ話をしている。

その中にいる荒木。

出勤してくる中田。

中田「おはようございます」

中田、様子に気付き、

中田「なんかあったんすか?」

作業者「会社のホームページに書き込みがあったんだって、総務の和田さんと佐藤課長が不倫してるって」

荒木と目が合う中田。

ニヤニヤしている荒木。

 × × ×

隣接する事務所で佐藤が部長(男性)に怒鳴られペコペコ謝っている姿。

  × × ×

佐藤の姿を見つめる作業者たち。

作業者「みっともねー」

持ち場に移動する作業者たち。

ニタニタして中田に近づく荒木。

荒木、小声で、

荒木「スッキリ〜。自業自得」

荒木、中田の肩を叩き去る。

呆気にとられる中田。

◯アパート 外観 夜

古びた2階建アパート。

◯同 荒木宅 玄関 外

表札に『荒木』の文字。

◯同 居間 中

和室二間の部屋。

テーブルに置かれた数枚の『督促状』と書かれた葉書。

督促状を手に取り眺めるお腹の大きな荒木友美(28)。

玄関の開閉音。居間に入ってきて座る荒木。

荒木「悪ぃ、稽古遅くまでかかちゃって」

友美「ご飯は?」

荒木「食べてきた」

友美「稼ぎも少ないのに?外で?」

荒木「牛丼だよ、いいだろそれくらい!」

友美、手に持つ督促状を荒木に投げながら、

友美「出産費用がかさんで、電気、ガス、水 道が止まりそうな家計状況なのになんで外で牛丼なの?正社員になって稼いでからにしてよ。こんな田舎で叶わない夢追うのはいいからさ、家庭を取るのか夢を取るのか?はっきりしてよ、私は一人でもこの子育てるから」

おし黙る荒木。

ため息をつく友美。

立ち上がり玄関に向かう荒木。

友美「どこ行くの」

荒木「外の空気吸ってくるだけ」

友美「そうやってまた逃げる」

荒木、玄関から出て行く。

◯同 玄関 外 (夜)

玄関のドアが開き出てくる荒木。

ポケットから『正社員登用申請書』を取り出し見つめる。

◯三つ葉自動車部品(株)製造ライン (朝)

出勤する中田。

中田「おはようございまーす」

コソコソ話をする荒木と佐藤。

佐藤、中田に近づき、

佐藤「申請書出せって言ったけどアレ無しな、密告するようなやつと仕事できないから」

佐藤、手に持つ申請書を見せる。

氏名の欄に『荒木崇』の文字。

唖然とする中田。

舌打ちをして立ち去る佐藤。

ラインの着信音。ポケットからスマホを出し画面を見る中田。

スマホ画面、『由香:今日発表でしょ?正社員、なれた?』の文字。

荒木、中田の横にきて肩を叩き、

荒木「中田君のせいにしちゃった、悪ぃ、嫁が喜ぶもんだからさ」

顔が曇る中田。

作業台の上にある金槌。

荒木を睨みつける中田。

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