輝き続ける ドラマ

人気のない地下アイドル・美夏と、人との関わりを避けいつもマスクを着けている悠子。接点のなかった二人がある夜をきっかけに関わり合うようになり…。
潜熱 35 0 0 03/03
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第一稿

<人物>
清水美夏(22) アイドル・大学生
乾悠子(22) 大学生
林亮太(30) カラオケ店の店長
アイドルグループメンバー
大学生
スタッフ


<本編>
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<人物>
清水美夏(22) アイドル・大学生
乾悠子(22) 大学生
林亮太(30) カラオケ店の店長
アイドルグループメンバー
大学生
スタッフ


<本編>
○ライブハウス「Nail」・会場内(夜)
   真っ暗なステージのライトが点く。
   ロリータファッションのアイドル5人組が立っている。
   その一番左端にいる清水美夏(22)。
   曲がかかりメンバーの一人が歌い出す。
メンバーA「ねえ、このまま夢の中で~」
   端っこで真剣に踊っている美夏。

○同・楽屋(夜)
   アイドルメンバーたちが帰り支度をしている。
メンバーB「美夏、先帰るね。お疲れ」
美夏「うん、お疲れ」

○カラオケ「ドンカラ」渋谷店・前(夜)
   煌々と光る「ドンカラ」の看板。
   コートを着た人々が行き交う。街路樹はイルミネーションで彩られている。
   店横の路地からガタンッと硬い音。
   路地に置かれたダストボックスにゴミを詰め込んでいる美夏。
   店名の入ったエプロンを着け、サンタ帽を被っている。
   美夏、スタイルが良く、野暮ったいエプロンも着こなしている。
   ゴミ捨てを終え、従業員用出入り口から店の中に入る美夏。

○同・内・廊下(夜)
   店内BGM と部屋から漏れる歌声で騒がしい廊下を歩く美夏。
   酔っ払った騒がしい男子学生五人組とすれ違う。
   すると、大学生のうちの一人が突然、
大学生A「えっ待って、ドリドル?」
   美夏、振り返る。
大学生A「えやっぱ、この子ドリームドールズっていうアイドルのさ、あ、うえ、」
   大学生A、その場で嘔吐する。その他の学生たち、阿鼻叫喚。
   美夏、突然のことにびっくりして固まっている。
   すると、奥からバケツやビニール手袋等を持った乾悠子(22)が現れる。
   厚い前髪と大きなマスクのせいで目以外ほぼ顔が見えない。
   着け方が悪くくしゃくしゃのサンタ帽を被っている。
   悠子、さっさと嘔吐物の処理を始める。はっとして駆け寄る美夏。
美夏「乾さん、ごめん。私も雑巾持って来る」
悠子「いえ、大丈夫です」
美夏「でも」
悠子「家でよく猫のゲロ処理してますので」
   目をぱちくりさせる美夏。
美夏「……ねこ、のゲロ…」
   もくもくと片付けを進める悠子。

○同・休憩室(夜)
   手を洗う美夏と悠子。デスクに着いている林亮太(30)。胸元に「店長」の名札。
林「とりあえず後の処理はしとくから。あとさ、大晦日清水さんはライブだけど乾さんは出れるってことでいいんだよね」
悠子「はい」
   返事をした悠子と頭を下げた美夏を確認し、忙しそうに休憩室を出て行く林。
   美夏、手持ち無沙汰になり、
美夏「…えっと、さっきは本当にありがとう」
悠子「いえ」
   マスクのせいで表情が見えない悠子。
美夏「…あー、あの、私たち同い年なのにあんまり喋ったことなかったよね」
悠子「そうですね」
   美夏、少しためらうが意を決して、
美夏「大晦日のライブ、私の卒業ライブなんだ。私、結構グループ転々としてて。はは」
   何とか笑顔を作り、明るく話す美夏。
悠子「…そう、なんですね」
   美夏と悠子の間に沈黙が流れる。
美夏「……あのさ、…ライブ、来ない?」
   悠子、びっくりして顔を上げる。
美夏「あっ、そっか、シフト。シフト入ってるよね! やっぱ嘘。今のなし、ごめん」
悠子「…いえ」
   美夏、頭をかいたりと落ち着かない。
   悠子、少しずれたマスクを直す。

○「ドンカラ」・前(夕)
   イルミネーションが外された街路樹。夕日に照らされる「ドンカラ」の看板。

○同・内(夕)
   レジ前に数組の客が並び、混んでいる店内。レジに立っている悠子と林。
   林、悠子に向かって小声で口早に、
林「遅い。もっとパッパとやれよ」
   悠子、サッと頭を下げる。客室から帰ってきた美夏がその様子を見ている。

○同・外・横の路地(夕)
   ゴミ捨てをしている美夏と悠子。
美夏「乾さん、さっき大丈夫だった?」
   悠子、美夏を見る。
美夏「店長。なんか暴言吐いてたよね」
悠子「…大丈夫です」
美夏「…そっか」
   美夏、それっきり黙ってゴミ処理を続ける。悠子、それを見て、
悠子「マスクを」
   咳払いする悠子。
悠子「マスクをずっと着けていれば楽なので」
美夏「…そうなの?」
悠子「表情を読まれる事もないし、他人がむやみに近づいてくる事もないので」
   美夏、ちょっと固まっている。
悠子「…すみません、急に。…分かりっこないですよね。清水さんはアイドルだし、みんなから人気があるし」
   美夏、ゴミ袋を握る指に力が入る。
美夏「そんなこと、ないよ」
   顔を上げる悠子。美夏、自嘲気味に、
美夏「私、全然人気ないよ。グループの卒業も、実質クビだし。もう誰にも何にも影響与えてない、こんなんがアイドルってもう、本当、何の価値もないっていうか」
   美夏の様子に固まっている悠子。美夏、悠子の表情に気付き、
美夏「あ…ごめん、」
悠子「…いえ。…明日のライブ、頑張ってください」
   店内に戻って行く悠子を、気まずい表情で見送る美夏。

○スクランブル交差点(夜)
   人々でごった返している。電光掲示板には「2019→2020」の文字。

○ライブハウス「Nail」・外観(夜)
   都内繁華街の小さなライブハウス。
   「Nail」の看板の横に、ドリームドールズ出演のフライヤーが貼ってある。

○同・会場内(夜)
   ドリームドールズのライブ中。客は70人程度。
   ドリンクカウンターの横に「ミカ卒業おめでとう」のボード。
   ステージの左端に位置する美夏、笑顔で懸命に踊っている。曲が終わる。
   客席の隅の方で、出入り口の扉がゆっくりと開く。
   中に入ってくる悠子。前髪とマスクの隙間から中を見渡す。
   次の曲が始まり、メンバー5人が踊り始める。
   客をかき分け、ステージを見上げる悠子。
   美夏、悠子には気付かず、懸命に歌い続ける。
   きらめくステージをじっと見ている悠子。
美夏「大丈夫 君の未来 私が照らすよ」

○同・ロビー(夜)
   ライブが終わり、メンバーとファンの交流会が開かれている。
   各メンバーごとに列が並び、チェキ撮影や握手などをしている。
   客が四人程並ぶ美夏のレーンに並ぶ悠子。
   美夏、最後の客一人の対応を終える。悠子がいることに気付いて、驚き、
美夏「…! 乾さん」
悠子「…お疲れ様でした」
美夏「…来てくれたんだ」
   美夏、手を差し出す。拒否する悠子。
悠子「あの、握手券は買ってなくて…これ」
   チェキ券を一枚、そっと差し出す悠子。
   美夏、泣きそうな笑顔で受け取る。
   撮影台の上に立つ美夏と悠子。悠子、恥ずかしいのか、俯いている。
美夏「乾さん、カメラカメラ」
悠子「……」
   更に下を向いたかと思うと、素早い動作でマスクを取る悠子。
   美夏、突然の事に驚く暇もなく、
スタッフ「はい、チーズ」
   シャッターを切るスタッフ。撮影台から降りる美夏と悠子。
美夏「…乾さんの顔、初めて見た」
   美夏、弾けるように笑う。悠子もつられて笑う。楽しそうな美夏と悠子。

○道(夜中)
   ライブハウスから駅までの帰り道。
   着替えた美夏とマスクを外した悠子、二人並んで歩いている。
美夏「ね、そういえばさ、バイトは?」
悠子「ああ…えっと、店長に土下座して」
美夏「土下座!?」
悠子「そこまでされたら断れねえよ、行けよって…」
   美夏、大笑い。悠子、ふと真顔になり、
悠子「清水さん、…この前は、ごめんなさい」
美夏「…ううん。私こそ、色々言っちゃって」
   微笑み合う美夏と悠子。
悠子「…清水さんがいるだけで、休憩室の雰囲気、凄く明るくなるんです。清水さんは、笑顔が似合うから。だから大丈夫だって、言いたかったんです。どうしても、今日」
   美夏、涙を何とか堪える。笑顔で、
美夏「…ありがとう」
   恥ずかしそうに微笑む悠子。美夏と悠子、笑い合いながら歩いて行く。

○乾家・悠子の部屋(朝)
   机に置かれたチェキ写真。
   バッチリ笑顔の美夏と、上手く笑えず引きつった顔の悠子が写っている。

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