人生第二高等学校 ドラマ

人生第二高等学校。それは高校生活をやり直すための場所。マジメ一筋に生きてきた真島直人(33)は、ひょんな事から同校に通い始め、出会ったクラスメイト達と二度目の高校生活を満喫し始める。
マヤマ 山本 75 0 0 01/07
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

<登場人物>
真島 直人(17)(33)会社員
田畑 桃(18)真島のクラスメイト
二谷 幸生(63)同
押尾 英二(35)同
馬場 喜高(23)真島の同僚
有働 南( ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

<登場人物>
真島 直人(17)(33)会社員
田畑 桃(18)真島のクラスメイト
二谷 幸生(63)同
押尾 英二(35)同
馬場 喜高(23)真島の同僚
有働 南(43)真島の上司
石井 夏奈(32)真島のクラスの担任
木崎(48)校長

特待生A 真島のクラスメイト
特待生B 同
生徒A 真島の高校時代のクラスメイト
生徒B 同
社員A 真島の同僚
社員B 声のみ
社員C 声のみ



<本編>
○人生二高・外観
   一般的な高校のような外観。
   「人生第二高等学校」と書かれた看板があるが、ここではまだ「高等学校」の部分しか映っていない。
真島M「高校時代」
   チャイムの音。
夏奈の声「はい、みんな静かに〜」

○同・E組・前
   「E組」と書かれた表札。
夏奈の声「では、まず新入生の真島君に自己紹介をしてもらいます」

○同・同・中
   教壇の前に立つ石井夏奈(32)と学生服姿の真島直人(33)。
真島M「それは多くの人にとって、人生で最も明るく輝いていた時期だろう」
真島「本日より、こちらのクラスに編入する事になりました、真島直人と申します。今年33歳になる会社員ですが、思いの外学生服が似合っていてホッとしています」
   一部生徒の間で笑いが起こる。
   その後も自己紹介を続け(得意科目など)「よろしくお願いします」と一礼する真島。
真島M「しかし一方で、暗く陰のある三年間を送った人間もまた、少なくないハズだ」

○(イメージ)真島の母校・教室(夕)
   顔を上げる真島。
   窓際の一番前の席に座る真島(18)以外、誰もいない教室。
真島M「取り戻せるなら、取り戻したい。でもそんな事、出来る訳がない」

○人生二高・E組・中
   顔を上げた真島の前には、拍手をする多数の生徒達。その半分近くが真島より年上。
真島M「……と思っていた」
夏奈「では真島君の席は、廊下側の一番後ろですね。以上でホームルーム終わります」
   席に着く真島。その隣の席に座る田畑桃(17)。
桃「田畑桃です、よろしく」
真島「こちらこそ、よろしくお願いします」
   「若いな……」とばかりに桃の顔をまじまじと見る真島。
桃「……ウチの顔、何か付いてる?」
真島「いえ、別に何も」
真島M「今日から、僕は取り戻す。青春を」

○同・外
   看板が全て映る。
真島M「人生二度目の高校生活で」

○メインタイトル『人生第二高等学校』

○ヤノヤ・外観
   大きな自社ビル。
   「ヤノヤ製菓」と書かれた看板。
   T「二週間前」

○同・オフィス
   パソコンに向かう真島。
   チャイムが鳴ると同時に、慌てた様子でかけこんでくる馬場喜高(23)。
馬場「お〜、超ギリギリセーフ」
真島「アウトですよ、馬場君。チャイムが鳴った時点で、遅刻です」
馬場「真島さんはマジメすぎるんです。ちょっとくらい大目に見てくれたって、バチは当たりませんよ?」
真島「まぁ、私は別にいいですけどね。(課長席を指して)課長はそうは思っていないみたいですよ?」
   課長席に目を向ける馬場。有働南(43)が馬場を睨みながら手招きをしている。
馬場「げっ」
馬場の声「『いつまで学生気分なんだ』」

○オフィス街
   並んで歩く真島と馬場。
馬場「『ロクに仕事もできないんだから、時間ぐらい守れ』……って超怒られちゃいました」
真島「まぁ、そもそも学生も遅刻なんてそうそうしないと思いますけどね」
馬場「あ〜、確かに真島さんって遅刻とかした事なさそうですよね」
真島「した事ないですね」
馬場「仮病使って授業サボったり、帰り道に買い食いしたり、テスト期間中なのに友達と遊びに行ったり」
真島「した事ないですね」
馬場「それ、楽しかったですか?」
   立ち止まる真島。
馬場「? どうかしました?」
真島「いえ、別に」
   再び歩き出す真島。
馬場「真島さんって超マジメですよね」
真島「あんまり『マジメマジメ』言わないでもらえますか?」
   チラシを配る女性。受け取る真島。
馬場「そういうの受け取っちゃう所とか」
真島「……」
馬場「(前方を指し)あ、ちょうどいい所に喫茶店ありますよ。真島さんの奢りで、ちょっと休んで行きましょうよ」
   と言いながら店に向かっている馬場。
真島「ちょっと、勝手な行動しないで下さいよ……」
   ふと手に持ったチラシに目を向ける真島。「青春をもう一度! 人生第二高等学校」と書かれたチラシ。
真島「人生第二高等学校……?」

○人生二高・外観

○同・校長室・中
   応接スペースに向かい合って座る真島と木崎(48)。名刺を差し出している真島。
木崎「これはこれは、ご丁寧に。人生第二高等学校理事長兼校長の木崎です。本日は、本校のシステムについて詳しくお知りになりたい、という事でしたね」
真島「はい。そもそもこちらは、教育機関ではない、という事ですが……?」
木崎「そうですね。本校は、厳密に申し上げれば、高等学校ではございません」

○同・E組・中
   授業を受ける生徒達。
木崎の声「その名の通り『もう一度高校に通いたい』という方々のために設立された『高校生活を再現する場所』という事になります」

○同・廊下
   談笑する生徒達。
木崎の声「入学される方は、真島様より少し上の世代の方が多いですね」

○同・校庭
   体育の授業を受ける生徒達。
木崎の声「大半の方が社会人でいらっしゃるので登校は毎週土曜日の週一回だけですが、その際には制服着用等、本校の規則のもと、高校生活を送っていただきます」

○同・校長室・中
   向かい合って座る真島と木崎。
木崎「もちろん、通常の授業の他に、文化祭や体育祭、期末テストといったイベントも用意しております」

○同・外観
   チャイムが鳴る。
木崎の声「尚、学費さえお納めいただければ何年でも通っていただく事は可能です」

○同・E組・中
   真島の元にやってくる二谷幸生(63)と押尾英二(35)。押尾は女子の制服を着ている。桃の席は空席。
真島の声「なるほど……」
二谷「やぁ、真島君。ようこそE組へ」
押尾「ようこそ〜」
真島「はい、お世話になります」
二谷「ここは良い組だよ、E組だけにね。なんちゃってね、ガッハッハ」
真島「はぁ……。えっと……」
二谷「僕は二谷幸生。よろしく。気軽にユッキーって呼んでいいからね」
押尾「私は押尾英二。ちなみに、普段はメイクアップアーティストやってるんで、よろしく〜」
真島「よろしくお願いします」
二谷「僕はもう、この学校に通い始めて七年目だから、分からない事あったら何でも聞いてよね」
押尾「ちなみに、私は六年目」
   自分の席に戻ってくる桃。
桃「あ、何か抜け駆けしてるし」
押尾「やだ、そんなんじゃないわよ」
二谷「ほら、桃ちゃんも自己紹介」
桃「さっきしたけど、改めて。特待生の田畑桃です。(ピースサインをして)イェイ」
真島「あの、特待生というのは?」
二谷「アルバイトで入ってる、現役の高校生の事。よりリアルな高校生活を再現する為にね、雇われてるんだよ」
真島「あぁ、どうりで(若いと思った)」
押尾「ちなみに、真島君はやっぱり若い娘の方がタイプなのかしら?」
真島「はい?」
桃「ちょっと、英ちゃん」
二谷「(押尾を指して)彼はこう見えても男の子だから、勘違いしないようにね」
押尾「やだもう」

○同・外観(夕)
   チャイムが鳴る。

○同・校門(夕)
   下校する生徒達。
   歩いている真島。若干の笑み。
   真島の前方を歩いている特待生A、B。
特待生A「今日の転校生、どう思う?」
特待生B「あれ、アラサーっしょ?」
特待生A「どいつもこいつも、いい歳して制服着て学校来て、バカみてぇだよな」
特待生B「ほんと、マジありえね〜」
   笑みを消し、うつむく真島。
桃の声「真島君」
   振り返る真島。
   後ろからやってくる桃、二谷、押尾。
桃「これから、何か予定ある?」
真島「いえ、まっすぐ帰るだけですけど」
二谷「マジメだね〜、真島だけに。なんちゃってね、ガッハッハ」
真島「はぁ……」
押尾「ちなみに、私達はこれからご飯食べに行くんだけど、一緒に来ない?」
真島「え……いいんですか?」
桃「もちろん。じゃあ、行こっか」
真島「(笑顔で)はい!」

○ハンバーガーショップ(夕)
   談笑する真島、桃、二谷、押尾。
真島M「こうして、二度目の高校生活が幕を開けた」

○ヤノヤ・外観

○同・オフィス
   パソコンに向かう真島。
   やってくる馬場。
馬場「おはようございます」
真島「おはようございます。珍しいですね、馬場君が五分も前に来るなんて」
馬場「俺だってやる時はやるんですよ。それより、真島さんこそどうしたんですか?」
真島「どうしたって?」
馬場「何か楽しそうっていうか、何か超良い事でもありました?」
真島「あぁ、実は……」

○(フラッシュ)人生二高・校門(夕)
   笑っている特待生A、B。
特待生B「マジありえね〜」

○ヤノヤ・オフィス
   席に座っている真島と馬場。
真島「……いや、何でもない」
馬場「え〜、何か超気になるんですけど〜」
   やってくる南。
南「おはよう」
真島「おはようございます」
馬場「おはようございます。(席を立って)あの、課長。有給の申請書を一枚……」
   パソコンに向かう真島。若干の笑み。

○マンション・真島の部屋(朝)
   スーツを着る真島。

○ヤノヤ・会議室
   プレゼンテーションする社員A。
社員A「この冬発売予定の新商品は、主に高校生をターゲットとし……」
   並んで座る真島、馬場、南。
   聞きながらメモをとる真島。

○マンション・真島の部屋(朝)
   学生服を着る真島。

○人生二高・E組・中
   授業をする夏奈。
   授業を受ける真島。ノートをとるも、弾みで消しゴムを落としてしまう。
真島「あっ」
   落ちた真島の消しゴムを拾い、真島に渡す桃。
桃「はい」
真島「すみません、ありがとうございます」
桃「うん、それはいいんだけど……」
真島「?」
桃「そろそろさ、敬語、止めない?」
真島「え?」

○オフィス街
   先を歩く真島と、追いかけるように付いてくる馬場。
馬場「真島さ〜ん、ちょっと一服しましょうよ〜」
真島「ダメ。先にあと一軒まわってから」
馬場「(タメ口に驚きつつ)……はい」
真島「? どうかした?」
馬場「いや、別に」
真島「あ、そう」
   汗を拭いながら歩く真島。

○人生二高・校庭
   ジャージ姿でサッカーをする生徒達。
   押尾にパスを出す真島。額には汗。
真島「英ちゃん」
   豪快にシュートを放つ押尾。ゴール。
真島「(驚いて)おぉ〜」
押尾「やだ、入っちゃった〜。直君〜」
   真島に抱き付いて喜ぶ押尾。
真島「うぐっ……」
   グラウンドの外で応援する桃と二谷。
桃「英ちゃん、ナイッシュー! 直君もナイスアシスト〜!」

○ヤノヤ・外(夜)
   退社する社員達。

○同・オフィス(夜)
   パソコンに向かう真島。
   大きく伸びをする真島。腰を抑える。
真島「痛たたた……。筋肉痛が遅れてくるなんて、やっぱり歳かな?」
   席を立つ南。
南「真島、まだやってくの?」
真島「はい、もう少しで終わるので」
南「そう、あんまり無理しないように。それじゃ、お先」
真島「お疲れさまでした」
   オフィスを出る南。
   再びパソコンに向かう真島。

○マンション・真島の部屋(夜)
   机に向かい勉強する真島。

○人生二高・E組・中
   真島の机の上に置かれた答案用紙。どれも八〇点台から九〇点台の点数。
   それを隣から覗き見る桃。
桃「直君、凄い。ウチの倍以上とってるし」
真島「いや、桃ちゃんももっと頑張らなきゃ。現役なんだから」
   教壇に立つ夏奈
夏奈「はい、みんな静かに。十一月の第四土曜日に文化祭があります。来週までにこのクラスの出し物を考えてきて下さい」
    ×     ×     ×
   真島の席に集まる桃、二谷、押尾。
二谷「この学校の文化祭はね、大規模だよ」
押尾「校長とかOBの計らいで色んな企業が出店してくれるのよね」
真島「へぇ、そうなんですか」
桃「めっちゃ楽しみだし」
二谷「だから逆に、僕達はする事なくてね」
押尾「そうよ〜。ちなみに、去年の私たちは空き缶でタワー作って展示しただけ」
真島「そっか、ちょっと残念だな……」
桃「え〜、せっかくなんだし、みんなでドカーンと何かやろうよ〜」
二谷「そりゃやりたいけどね、なかなか難しいんだよ。僕達はともかく、特待生の子はみんなすぐ帰っちゃうしね」
真島「そういえば……」
   周囲を見回す真島。
   真島達の他には三〇代以上の生徒数人しか残っていない教室。
二谷「彼らはあくまでもバイトだからね。終わったらさっさと帰っちゃうんだよ」
押尾「ここ、残業代出ないらしいのよ」
真島「そうなんだ……。でも、桃ちゃんの言う事もわかるんだよね」
二谷「そうだね。桃ちゃんは、具体的に何がやりたいのかな?」
桃「何って言われると、わかんないけど」
押尾「ちなみに、桃ちゃんの学校の文化祭はどんな出し物が人気あるの?」
桃「え、ウチ? ウチの学校は……、模擬店とか……かな……?」
押尾「やっぱりそうよね〜」
二谷「でも模擬店だと、企業の出す店には勝てないしね〜」
   桃の様子を訝るように見る真島。

○オフィス街
   歩いている真島と馬場。
馬場「え? 文化祭ですか?」
真島「そう。馬場君は高校の時、クラスの出し物ってどんなものがあった?」
馬場「そうですね……。三年の時は模擬店で二年生の時はお化け屋敷で、一年の時は……あ、空き缶でタワー作りました」
真島「やっぱりタワーか……」
馬場「そんな事より、いい加減昼飯にしません? もう超腹減って死にそうですよ」

○レストラン・外観

○同・中
   向かい合って座る真島と馬場。
   アイスコーヒーを運んでくるウエイトレス姿の桃。
桃「お待たせ致しました、アイスコーヒーになります」
   真島と馬場の元にコーヒーを置く桃。
   桃に気付く真島。
真島「……桃ちゃん?」
桃「……直君!?」
馬場「知り合いですか?」
真島「え、あぁ、えっと、その……」
桃「……(真島の様子を察し)従兄です」
真島「え?」
桃「ウチら、従兄妹同士なんですよ。ねぇ、直君?」
真島「そ、そう、従妹なの」
馬場「あ、そうなんですか。じゃあ、こんな所で会うなんて超偶然じゃないですか」
真島「そうなんだよね。……あれ、桃ちゃん今日学校は?」
桃「え? あぁ……」

○公園
   並んでベンチに座る真島と桃。
真島「大丈夫なの? 抜けてきちゃって」
桃「大丈夫、休憩時間になったし。それより直君こそ平気なの?」
真島「まぁ、何とかなるよ」
桃「……ウチ、定時制の高校に通ってて」
真島「定時制?」
桃「本当は昼の学校に通いたかったんだけどウチの家貧乏だし、弟も妹もいるし、ウチが昼間バイトしなきゃ厳しいから」
真島「そうだったんだ……」
桃「でも定時制ってさ、学校行くのは夜だし制服もないし、何かウチが思ってた高校生活と、大分違う感じなんだよね」
真島「それで二高に?」
桃「いや、最初はただのバイトだったんだけどね。でもおかげで、今は楽しいし。まぁ文化祭はちょっと残念だったけどね。クラスみんなで何か一つの事をやる、っていうのに憧れてたし」
真島「そっか……そうだよね」
桃「ごめんね、内緒にしてて。何か、みんなには言いづらくて」
真島「……窓際の一番前の席」
桃「え?」
真島「僕の高校時代の定位置。いや、そこだけが僕の居場所だった、と言うべきかな」

○(回想)真島の母校・教室
   談笑している生徒達。
真島の声「良い高校に入って、良い大学に入って、良い会社に就職する。それが僕の夢だった」
   机に向かって勉強する真島。
真島の声「だけど、高校受験に失敗してね。だから大学受験だけは失敗しないように、高校時代は部活にも学校行事にも目もくれないでひたすら机に向かっていたんだ」
    ×     ×     ×
   文化祭の準備をしている生徒達。
生徒A「おいマジメ、お前も手伝えよ」
生徒B「無駄無駄。マジメは勉強にしか興味ないってよ」
   机に向かって勉強する真島。
真島の声「そのせいでクラスでは浮いていたし、陰口も叩かれていたと思う」

○公園
   並んでベンチに座る真島と桃。
桃「でも、おかげで夢叶ったんでしょ? ヤノヤって言ったら、めっちゃ大手だし」
真島「確かにそうなんだけどね、最近気付いたんだ。自分の高校時代を振り返ってみた時、僕には何も残ってないって」
桃「それで二高に通うようになったんだ」
真島「まぁ、そんな所かな」
桃「何で、ウチにそんな話してくれたの?」
真島「だって、不公平でしょ? 桃ちゃんだけが自分の秘密話すなんて」
   笑う桃。
真島「何かおかしかった?」
桃「何か、直君らしいな、って思って」
   笑う真島と桃。

○マンション・真島の部屋(夜)
   パソコンに向かう真島。

○人生二高・E組・中
   席に座り、「お化け屋敷」と書かれた分厚い企画書を手に持つ馬場。
特待生A「お化け屋敷?」
   教壇に立つ真島。
   席に座る生徒達。全員の手に企画書。
真島「そう。文化祭には欠かせない出し物だし、出店する企業とも被らないでしょ?」
特待生B「そんなん準備から何から、マジ面倒くせぇじゃん。ありえね〜」
真島「でも僕は、せっかくこうして同じクラスになったみんなと、何か一つの事を一緒にやってみたい。そう思ってる。(頭を下げて)よろしくお願いします」
   席に戻る真島。
   隣の席から真島を見る桃。
桃「(小声で)ありがとう」
真島「(とぼけた感じで)何の事?」
   教壇に立つ夏奈。
夏奈「では、多数決に移りたいと思います」
    ×     ×     ×
   多数決結果を示す黒板。お化け屋敷が僅差で空き缶タワーを上回っている。
   真島の席に集まる桃、二谷、押尾。
二谷「お化け屋敷か、何かドキドキするね」
押尾「私もテンション上がっちゃった」
真島「これから、忙しくなるけどね」
桃「その方が楽しいし。みんな頑張ろう!」
真島&二谷&押尾「おう!」

○ヤノヤ・オフィス
   パソコンに向かう真島。
   後ろからやってくる南。
馬場「真島さん。ちょっといいですか?」
真島「何?」
馬場「今週の土曜日なんですけど、休日出勤してくれません? あの、俺が超頑張って新規開拓した客先との打ち合わせに、誰か同行して貰わないといけなくて」
真島「あ〜、ごめん。土曜日は予定が……」
馬場「あ〜、そうですよね……。急には難しいですよね」
真島「悪いね」
馬場「いやいや、他の人に超頼むんで、気にしなくていいですよ」

○人生二高・E組・前(夕)
   下校する生徒達。

○同・同・中(夕)
   「放課後 文化祭準備にご協力を!」と書かれた黒板。
   真島の席に集まる桃、二谷、押尾。
二谷「みんな帰っちゃうね」
押尾「まぁ、仕方ないわよ」
   席を立つ特待生A、B。
   席を立ち、二人の元に向かう真島。
真島「ねぇ、もし良かったら、二人も手伝ってもらえないかな?」
特待生A「バイト代出んの? 出るんなら、やってやってもいいけど」
真島「いや、お金は出せないけど……」
特待生B「なら、帰るわ。タダ働きなんてマジありえねぇって。行こうぜ」
   教室を出る特待生A、B。
桃「あいつら、性格悪すぎだし」
真島「まぁまぁ、無理矢理やらせる事でもないから、仕方ないよ」
二谷「ところで直君、そろそろ校長室に行かないとまずいんじゃないかね?」
押尾「早くしないと校長帰っちゃうわよ?」
真島「あ、そうだった。(企画書を持って)ちょっと行ってくる」
   教室を出る真島。
桃「直君が校長室に何の用?」
二谷「企画書を見せてね、予算をもうちょっと貰えないか頼んでみるんだって」
押尾「ちなみに、直君曰く『まだ交渉の余地はある』らしいわよ」
桃「へぇ、面白そう。じゃあウチも行く」
   教室を出る桃、二谷、押尾。

○同・校長室・前
   歩いてくる真島、桃、二谷、押尾。
   部屋から出てくる馬場、南、木崎。
二谷「(馬場に)あれ、ヨッシー?」
馬場「あ、ユッキー。英ちゃんも」
押尾「やだもう、久しぶりじゃない。元気にしてた?」
馬場「超元気、超元気」
桃「知り合い?」
二谷「彼は馬場君。昔、この学校の特待生だったんだよ。もう五年くらい前になるのかな? 僕が通い始めて二年目だったから」
押尾「ちなみに、私はその時一年目」
馬場「(桃と真島を見て)つまり、君たちの先輩で……(真島に気付き)真島さん?」
   その声で、全員が真島に注目する。
桃「直君も、知り合い?」
真島「いや、その……」
南「……こんな所で何してるんだ? 真島」
真島「……」

○ヤノヤ・外観

○同・廊下
   歩いている真島。噂話をする社員達。
社員Aの声「真島の奴、週末になると学生服着て、高校生の真似事してるんだってさ」
社員Bの声「休日出勤断ってまで行くなんて相当だよな」
社員Cの声「第三営業部の真島さんでしょ? マジメそうな人なのに、意外よね〜」

○同・オフィス
   パソコンに向かう真島。振り返る。真島から視線をそらす社員達。再びパソコンに向かう真島。真島の肩を叩く南。
南「真島、ちょっと」
真島「……はい」
   南とともに出て行く真島。
南の声「何をやってるんだ、お前は」

○同・会議室
   向かい合って座る真島と南。
南「いくら休日だからって、何であんな場所で学校ごっこみたいな事を?」
真島「はい。私自身、自分の高校時代に大きな後悔が……」
南「マジメに答えなくていい。そりゃ、気持ちはわかる。私だって、後悔してる事は一つや二つじゃない」
真島「でしたら……」
南「目を覚ませ。所詮、偽物だろ?」
真島「……だとしても、会社に迷惑はかかっていないと思います。休日である以上、何も問題は……」
南「現役の高校生もいるんだろ?」
真島「はい」
南「だったら、色々マズいだろ? 昼間っから、女子高生とイチャイチャして……」
真島「そのような場所ではありません」
南「そう思われるような場所だって言ってんだ。変な噂が立てば、ウチの会社の評判にも関わる。充分に問題があるだろ?」
真島「……」
南「わかったら、二度と行くんじゃない。わかったか?」
真島「それは、上司としての指示ですか?」
南「そうだ。会社の規則では、上司の指示には従うものだろ?」
   無言で頭を下げる真島。

○マンション・真島の部屋
   ベッドで寝ている真島。
   携帯電話が鳴るが反応しない。

○人生二高・E組・中
   電話をかけている桃。電話を切る。
   桃の周りにいる二谷、押尾。
桃「だめ、出ない」
二谷「やっぱり、来づらいのかね」
押尾「会社には内緒にしてたんでしょ?」
桃「多分」
二谷「もう、来ないのかもね……」
桃「いくらなんでも、そんないきなり……」
押尾「でもね、桃ちゃん。毎年いるのよ。会社とか家族にばれて、それっきり来なくなっちゃう人って」
桃「そんな……」

○ヤノヤ・オフィス
   パソコンに向かう真島。

○ハンバーガーショップ
   一人でハンバーガーを食べる真島。

○人生二高・E組・中
   授業中の教室。真島の席は空席。

○ヤノヤ・会議室
   プレゼンテーションを聞く真島。
   時折、メモを取る手が止まる。

○人生二高・E組・中
   帰ろうとする特待生A、B。
特待生A「あーあ、今日も疲れた疲れた」
   教壇に立つ桃。
桃「みんな、ちょっと待って」
   桃を見る生徒達。
桃「文化祭も近くなってきたし、お化け屋敷の準備、みんなでやろうよ」
特待生B「いっそ、お化け屋敷は諦めた方がいいんじゃねぇの? 言い出しっぺが逃げ出しちまうなんて、マジありえねえって」
   笑いながら教室を出て行く特待生A、B、その他の特待生達。
   肩を落とし二谷と押尾の元に来る桃。
二谷「もう、彼らを誘うのは諦めた方がいいのかもしれないね」
押尾「そうね。私達だけで何とかしないと」
桃「それじゃダメだよ、クラスみんなでやらないと意味ないし。直君のためにも」
押尾「直君のため?」
桃「ウチ、思うんだ」

○マンション・真島の部屋
   学生服をクローゼットにしまう真島。
桃の声「直君が『この学校が自分の居場所なんだ』って思ってくれたら、またここに戻ってきてくれるんじゃないかな、って」

○人生二高・E組・中
   集まって座る桃、二谷、押尾。
桃「そのためには、直君が提案したこのお化け屋敷を、このクラスみんなで作らなきゃダメなんじゃないかな、って」
二谷「なるほどね……」
押尾「桃ちゃん、そこまで考えてたのね」
桃「ウチの考え、何か間違ってるかな?」
二谷「いや、確かに桃ちゃんの言う通りかもしれないね。だけどね……」
押尾「あの子達に、交渉の余地はないわよ」
桃「交渉の余地、か。……交渉の余地? ……あ、それだ! 英ちゃん、ナイス!」
押尾「え?」
桃「ウチ、ちょっと行ってくる」
   企画書を持って教室を出る桃。

○オフィス街
   一人で歩く真島。数人の高校生とすれ違い、その後ろ姿を眺めている。
   後ろからやってくる馬場。
馬場「真島さん、置いてかないで下さいよ」
真島「馬場君が遅いの」
   並んで歩く真島と馬場。
馬場「そんな事言ってると、また嫌われちゃいますよ? ただでさえ最近、社内で超浮いてるんですから」
真島「……馬場君のそういう所、素直に凄いと思うよ」
馬場「みんな超頭固いですよね。いいじゃん高校生活やり直すくらい」
真島「そう思うのは、馬場君が二高の事を良く知ってるからだよ」
馬場「そんなもんですかね? っていうか、二高ベースで言えば、俺の方が真島さんより先輩なんですよね」
真島「……馬場先輩、って呼べばいい?」
馬場「そういうジョークも言えるようになったんですね。やっぱり真島さん、二高に通うべきですよ」
真島「もう行かないよ」
馬場「でも、行きたいんですよね?」
真島「……」
馬場「行きたいのに、諦めるんですか?」
真島「僕はどうやら、行きたいと思った高校には行けない運命らしいからね」
馬場「……まぁ、いっか。ちょっと早いですけど、そこでお昼にしません?」
   桃の勤めるレストランの前に来る真島と馬場。
真島「馬場君、待って。別の店にしよう」
馬場「そういう訳にはいかなくて」
真島「え?」
桃の声「直君!」
   レストランから出てくる桃。

○公園
   ベンチに並んで座る真島と桃。
桃「久しぶりだね。元気だった?」
真島「……」
桃「直君、何やってたの? 学校にも来ないし、電話しても出ないし」
真島「……ごめん」
桃「仕方ないから、馬場さんに協力してもらっちゃったよ。ユッキー経由で」
真島「……やっぱり、そういう事か」
   しばしの沈黙。
真島「お化け屋敷、どうなってる?」
桃「う〜ん……教えない」
真島「え?」
桃「知りたいなら、学校来ればいいんだし」
真島「そうだね。でも僕はもう……」
桃「『来ない』なんて言わせないし」
真島「桃ちゃん……」
桃「途中で投げ出すなんて、直君らしくないし。それに……」
真島「それに?」
桃「直君がお化け屋敷を提案してくれた時、めっちゃ嬉しかった。なのに、そこに直君が居なかったら、意味ないし」
   立ち上がる桃。
桃「とにかく、待ってるから。ウチも、ユッキーも英ちゃんも、クラスのみんなも、待ってるから。直君が戻ってくるの」
真島「桃ちゃん……」
桃「人生第二高等学校E組」
真島「え?」
桃「直君の居場所、そこにあるんだからね」
真島「僕の、居場所……」
桃「じゃあ、ウチはそろそろバイトに戻るから。またね」
   その場を去る桃。

○ヤノヤ・オフィス(夜)
   パソコンに向かう真島。手を止める。
桃の声「待ってるから」
   振り払うように再び手を動かす真島。

○人生二高・E組・中
   教壇に立つ夏奈。
夏奈「今日の欠席は真島君一人、と」
   空席になっている真島の席を見る桃。
桃「直君……」

○マンション・真島の部屋
   ベッドに寝転がる真島。
桃の声「人生第二高等学校E組」

○(フラッシュ)真島の母校・教室(夕)
   机に向かう真島。他に誰もいない。
桃の声「直君の居場所、そこにあるんだからね」

○マンション・真島の部屋
   ベッドに寝転がる真島。
桃の声「待ってるから」
   ため息をつき、起き上がる真島。
   クローゼットから学生服を出す真島。
    ×     ×     ×
   学生服を着て、鏡の前に立つ真島。

○(フラッシュ)人生二高・E組・中
   真島の席に集まる桃、二谷、押尾。
   笑顔の桃、二谷、押尾、真島。

○マンション・真島の部屋
   学生服姿で鏡の前に立つ真島。

○(フラッシュ)ヤノヤ・廊下
   歩いている真島。噂話をする社員達。

○マンション・真島の部屋(夕)
   学生服を着て鏡の前に立つ真島。
   上着を脱ごうとすると、携帯が鳴る。
   「田畑桃」と表示される携帯の画面。
   意を決して、電話に出る真島。
真島「……もしもし」
桃の声「もしもし、直君? 今家?」
真島「うん、そうだけど……」
桃の声「今すぐ学校に来て……キャー!」
真島「!? 桃ちゃん? どうしたの?」
桃の声「ちょっと何……(電話が切れる)」
真島「桃ちゃん? 桃ちゃん!」
   家を飛び出す真島。

○道路(夜)
   走る真島。タクシーを呼び止める。

○タクシー・車内(夜)
   電話をかける真島。電源が入っていない旨を伝えるアナウンス。

○人生二高・校門(夜)
   タクシーから降り、中に入る真島。

○同・E組・前(夜)
   走ってくる真島。ドアを開ける。
真島「桃ちゃん!」
   目の前に立っている、ゾンビの特殊メイクをした二谷。
真島「(腰を抜かして)!?」

○同・同・中(夜)
   椅子にもたれかかり、額に冷えピタを貼っている真島。
   心配そうに真島の周囲に立つ桃、押尾、ゾンビ姿の二谷。
桃「直君、大丈夫?」
真島「うん、大丈夫……。それより、一体何がどうなって……?」
桃「出来上がったお化けの衣装とかを早く見て欲しくて直君に電話したら、ウチのスマホ、バッテリー切れちゃって」
真島「悲鳴みたいなのは?」
桃「あ〜、こんな格好のユッキーがいきなり出てきさ、めっちゃビックリして……」
二谷「ごめんね、直君。それにしても、英ちゃんのメイクは凄いね」
押尾「当たり前でしょ、プロなんだから」
真島「英ちゃん、メイクアップアーティストって、特殊メイクのだったんだ……」
桃「でも、来てくれて良かった」
二谷「しかも、ちゃんと制服着てるしね」
押尾「ほんと、心配してたんだから」
真島「ごめん。それにしても……」
   桃達の後ろで作業する特待生達。
真島「特待生のみんな、手伝ってくれるようになったんだ」
二谷「それはね、桃ちゃんのおかげ」
桃「イェイ」
真島「どうやってみんなを説得したの?」
押尾「桃ちゃんが説得したのはあの子達じゃなくて、校長よ」
真島「校長先生を?」
二谷「特待生に残業代を出してくれ、って」

○(回想)同・校長室
   向かい合って座る桃と木崎。
   企画書を片手に直談判する桃。
押尾の声「ちなみに、もの凄い剣幕で乗り込んだらしいわよ」

○同・E組・中(夜)
   椅子にもたれかかる真島とその周囲に立つ桃、二谷、押尾。
二谷「おかげでね、文化祭までの間、一日につき二時間分の残業代が出るようになったんだよね」
真島「そっか、桃ちゃん凄いじゃん」
桃「イェイ」
押尾「あの子達が残って手伝ってくれるようになって、作業も大分進んだわよ」
   周囲を見回す真島。
   出来上がったお化け屋敷用の壁やお化けの衣装などが立てかけられている。
   作業している特待生A、B。
特待生A「おい、そこの四人。サボってねぇで手動かせって」
特待生B「マジ給料泥棒で訴えんぞ?」
桃「あ、ごめんごめん。(真島達に)じゃあ、やろっか。直君も」
真島「……いや、まだ無理」
桃「え?」
真島「先に、決着をつけないといけない人がいるから」

○ヤノヤ・会議室
   向かい合って座る真島と南。
南「何だ、話って?」
真島「色々考えましたが、人生第二高等学校に再び通おうと思っています」
南「(ため息をつき)あのなぁ、私がこの間言った事、忘れたのか?」
真島「いえ、覚えています。『何をやってるんだ、お前は。いくら休日だからって、何であんな場所で……』」
南「別に復唱はしなくていい。覚えているなら、何で……?」
真島「これは、私のクラスメイトの話です」

○メイクルーム
   役者に特殊メイクを施す押尾。
真島の声「ある人は、心と体の性別が一致していません。だから高校生の時は、自分を偽り、男子生徒として過ごしていたそうです」

○ヤノヤ・会議室
   向かい合って座る真島と南。
真島「彼……彼女にとって、その時代こそが偽物で、今こそが本物なんです」

○墓地
   「二谷家」の墓。墓石側面には「崇生 享年一五歳」と刻まれている。
真島の声「またある人は、病気で高校に行く事ができなかったお孫さんのために、お孫さんの代わりに高校生活を送るために入学されたそうです」

○ヤノヤ・会議室
   向かい合って座る真島と南。
真島「彼が病室で話して聞かせた高校の話はお孫さんも大変喜ばれたそうです」

○レストラン・中
   接客中の桃。
真島の声「現役高校生の中にも、家庭の事情で定時制にしか通えず、それでも制服を着て登校したいから、という思いの人もいます」

○ヤノヤ・会議室
   向かい合って座る真島と南。
真島「彼ら彼女らにとって『現役高校生』がいる事が大事なんです。我々みたいな人間と現役高校生が一緒のコミュニティでないと、意味がないんです」
南「だから、そこに問題が……」
真島「そこにあらぬ憶測を立て、問題視しようとするのであれば、私はその汚名を晴らさなければなりません。私自身が通う姿で証明するしかありません」
南「だからまた通うって? 何で真島が証明しなくちゃいけないんだ?」
真島「それは、あの学校が、人生第二高等学校が、私の母校だからです」
南「母校……」
真島「……あ、卒業できればの話ですけど」
南「話はそれだけか?」
真島「いえ、もう一つ」
南「何だ?」
真島「(改まり)人生第二高等学校は、文化祭の参加に関して、既に我が社と正式に契約を交わしております。取引先企業のあらぬ悪評を流す事は、会社の規則に反するのではないでしょうか?」
   しばしの沈黙後、笑い出す南。
南「マジメか」

○人生二高・外観

○同・E組・中
   恥ずかしそうに入ってくる真島と、暖かく出迎える桃、二谷、押尾。
    ×     ×     ×
   文化祭の準備をする真島、桃、二谷、押尾、その他生徒達。
   「あと2週間」と書かれた黒板。

○ヤノヤ・オフィス(夜)
   看板作りをする馬場。
馬場「これで良し、と。出来た〜」
   完成した看板を見せる南。「ヤノヤ 冬の新作チョコレートが一足先に食べられる!」と書かれた看板。
馬場「ヤベッ、超いいんじゃない?」

○人生二高・E組・前(夕)
   すっかりお化け屋敷と化した外観。
   入口に「お化け屋敷」と書かれた看板を取り付ける真島。
   クラス全員が、周囲で見守る。
真島「出来た!」
   歓声が沸く。
二谷「いよいよだね」
押尾「やだ、ドキドキしてきちゃった」
桃「めっちゃ楽しみだし」
真島「うん。……(全員に向かって)みんな本当にありがとう」
桃「まだ早いよ。これからなんだし」
二谷「そうそう。それに、お礼を言わなきゃなのは僕たちの方だよね」
押尾「そうよ。直君が提案して企画書まで作ってくれたんじゃない」
真島「でも、ここまで出来たのは本当に、みんなのおかげだと思っているから」
特待生A「そんな礼言うくらいなら、ボーナス出してくれって」
真島「う〜ん……一人分だけならともかく、全員分はちょっと厳しいかな」
特待生B「マジでマジメか」
   頭を掻く真島。笑う生徒達。
桃「それじゃ、完成記念にみんなで写真撮らない?」
真島「いいね」
二谷「あれ、でも誰がシャッター押すの?」
押尾「私はイヤよ。写りたいもん」
桃「そっか〜。誰か自撮り棒とか……」
   そこにやってくる夏奈。
夏奈「あら、凄い完成度。本番が楽しみね」
   夏奈を見て笑みを浮かべる生徒達。
夏奈「?」
    ×     ×     ×
   スマホを構える夏奈。
夏奈「いくわよ? はい、チーズ」
   教室の前、思い思いにポーズをとる生徒達。皆、笑顔。
真島M「こうして文化祭当日を迎えた」

○スマホの画面
   教室の前での写真に始まり、文化祭の思い出の写真(「二高祭」と書かれた看板の前での記念写真、巨大な空き缶タワー三本の前での写真、ヤノヤのチョコを食べながら等、写っているのは基本的に真島、桃、二谷、押尾)を次々とスライドしていく。
真島M「それはとても楽しくて、何で現役当時に味わおうとしなかったのか疑問に思う程だったけれど、その分『この学校に来て良かった』『戻ってきて良かった』と心の隙間が埋まっていくような時間だった」
   最後に「卒業式」と書かれた看板の前に立つ真島、桃、二谷、押尾の写真。
真島M「そしてこの学校が、正真正銘、僕の母校になった」

○マンション・真島の部屋(朝)
   「卒業式」と書かれた看板の前での写真が写真立てに飾られている。
真島M「卒業から一ヶ月」
   その脇でネクタイをしめている真島。
真島M「いつものようにスーツを着て、いつものようにネクタイを締めて」

○ヤノヤ・オフィス
   出社する真島。
真島M「いつものように満員電車に揺られ、いつものように出社する」
   後輩に偉そうに指示を出す馬場。
真島M「そんな生活が戻ってきていた」

○人生二高・外観
真島M「後悔を引きずっていた一年前の自分と何も変わらないまま」

○同・廊下
   並んで歩く特待生A、B。
特待生A「なぁ、見たかよ、転校生。四〇は超えてるっしょ?」
特待生B「あの歳で女子高生の制服なんて」
特待生A&特待生B「マジありえね〜」
   笑う特待生A、B。
真島M「でも多分、自分では気付かないだけで何かが変わっていて」

○同・A組・前
   「A組」と書かれた表札がある。

○同・同・中
   教壇の前に立つ南。
南「今日から、このクラスに編入しました、有働南です。よろしくお願いします」
   拍手する生徒達。
   席に着く南。
   南の隣に座る二谷、その後ろに押尾。
二谷「ようこそ。ここはええ組だよ。A組だけにね。なんちゃって、ガッハッハ」
南「はぁ……。あ、真島のお友達の」
二谷「僕はもう、この学校に通い始めて八年目だから、何でも聞いてよね」
押尾「ちなみに、私は七年目」
真島M「あの時間があったからこそ、今の自分がある」

○レストラン・中
   アイスコーヒーを運んでくる桃。
桃「お待たせ致しました、アイスコーヒーになります」
   向かい合って席に座る木崎と夏奈。
夏奈「ありがとう、田畑さん」
桃「いいえ。(冷やかすように)今日も秘密のデートですか?」
夏奈「内緒にしておいてね」
桃「(ピースサインをして)任せて下さい」
木崎「『その代わり残業代出せ』とでも言うつもりかな?」
桃「言いませんよ〜」
真島M「……というのは、ただの希望的観測だろうか?」

○オフィス街
   一人で歩いている真島。
真島M「ただ、これだけは確信している」
   数人の高校生とすれ違う真島。
真島M「今の僕には、戻れる場所がある」
   数人の小学生とすれ違う真島。振り返り、小学生達の後ろ姿を見つめる。
真島M「もしまた、人生という一本道の中で迷う事があっても」
   前に向き直り、再び歩き出す真島。
真島M「立ち止まって休める場所を、また作る事ができる」
   ビラを配る女性。受け取る真島。
真島M「僕の居場所は、きっとある」
   「ランドセルをもう一度! 人生第二小学校」と書かれたビラ。
真島「人生第二……小学校?」                    
                  (完)

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。