AppaRition GraveMarker 第3話 ドラマ

AppaRition GraveMarker 妖怪の墓標。赤子の正体はごぎゃ泣きじじいだった。今回は父・福弥津が依頼を引き受け、善とRainに託す。ゴミの焼却施設で聞こえる婆さんの声。婆さんと言ってもあの婆さんではなく・・・そして、善は善人だが・・・
非露亞貴(令和2年8月5日開業届。脚本執筆、シナリオ代行) 5 0 0 11/18
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第一稿

【登場人物 】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) /(9)妖怪ハンター。体内に最強の妖怪を宿している

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ ...続きを読む
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【登場人物 】

良心寺善 《りょうしんじぜん》(19) /(9)妖怪ハンター。体内に最強の妖怪を宿している

Rain  相棒の傘お化け

良心寺福弥津 《ふくみつ》(44) 住職、父親

赤子  福弥津の相棒。ごぎゃ泣き(子泣き)じじい。善とRainは見えない

五味大《ごみまさる》 西南環境事業センター収集作業員

塵塚怪王《ちりづかかいおう》女の妖怪。勿体無い、勿体無いと発声する。

良心寺美海《みみ》  (享年32) 善の母親

良心寺幸蔵《こうぞう》(享年63) 善の祖父

良心寺穂枝《ほのえ》(享年60) 善の祖母

良心寺曽福《そうふく》(享年33) 福弥津の弟で善の叔父
   
良心寺岐依《きい》(享年36) 曽福の妻。善の叔母

良心寺千木郎《ちぎろう》(享年13) 曽福の子。善の従兄弟

神八代舞理《かみやしろまいり》(享年39) 美海の姉。善の叔母

神八代岐丸《きがん》(享年42) 舞理の夫。善の叔父

*以上8人は善の体にいる妖となっている。

謎の男  草履にパーカー付きトレーナーにサングラスにマスク姿。
    正体不明。善を師と仰ぐ。2番目に強い。

化け狸

サブタイトル「赤子は赤子でも婆さんは婆さんでも?善は善人でも」

○良心寺(朝)
全景・山が見える。
点景・山門、良心寺。
二人の姿なし。

○良心寺・本堂

障子が開いていて、本堂を掃除する、良心寺善。
背中越しからの映り。叩きで仏様の埃を落とす。
舞う埃と、頭中埃だらけ。

良心寺善「(画面左からの映り)ゲホゲホ。
     塵も積れば山となるだな」
Rain OFF 「爆ワロ!善、一気に老けたな」
良心寺善 「(振り向き)や、喧しい。
      うちの寺は開店休業状態だ。
      知ってんだろ」

○良心寺・廊下
雑巾掛けをしていたRain。
障子を挟んで本堂との会話。

Rain M 「何も覚えて無いんだ。やっぱり」
良心寺善 「何だよ」
Rain 「いやっ、疲れたって思って。ベストキッド凄いわ」
良心寺善  「なぁ、障子の上って」

本堂内、鴨居の上の壁を見上げ、埃が頭から落ちる。

良心寺善 「死んだ母ちゃんとじっちゃん、ばっちゃん、親父の弟で
      おじさん、おばさん、従兄弟の兄ちゃんに、母ちゃんの
      姉ちゃんでおばさんとおじさんの遺影写真があるけど痛っ」

こめかみを押さえる。8人の親類縁者の遺影写真がある。

良心寺善  「何だいつも思い出そうとすると頭が。思い出せない。
      何故、死んだんだっけ?」
良心寺福弥津OFF「飯の時間じゃぞーー」
Rain   「はい。父上殿」   
Rain 「気にするな!善」
良心寺善  「ああ・・・」
Rain 「今日のご飯は?」
良心寺善  「安定のおにぎりだろ」

(本堂)廊下〜渡り廊下を渡る(庭と蔵が見える)。再度別棟の廊下を歩く2人。
奥へリビングの障子。本堂〜庫裏(住職や家族の居住場所、リビング含む)
を接続する形。襖が開く。福弥津の部屋から赤子が姿を現す。自立している。

赤子    「(視聴者に)まだまだだなぁ。善の事、
      どう思う?ずっと、僕居たんだな。
      第1話では、リビングで父上の背中に。
      父上の「依頼か」の台詞のシーンね。
      第2話は、膝の上に座ってたの。
      父上がお茶を啜るモノローグのシーンね。
      依頼を受けて、タブレットのアプリを使
      って目の前に出て来るのしか見れないのか。
      味方は靄が出ないしね。もやもやはするよ。
      唐傘は、本当は妖同士だから、見えるのに
      彼奴、一度破けてるから能力落ちたんだな。
      そうそう、皆んな赤子だけど、赤子じゃ
      無いんだな。でも・・・」

○リビング・食卓

良心寺善  「(おにぎりを食べながら後ろを振り返り)
      何か親父の部屋から声が聞こえるな。
      そんな事より、親父!その顔、如何したんだよ」

 ガスコンロで湯を沸かす良心寺福弥津。傷だらけの顔。

良心寺福弥津 「うん。これはの、その、なんじゃ・・・」


             xxx

 ○山間(濃霧)

謎の男    「サングラスにマスクは邪魔だな。
       (足元に落として足で横へはらう)
        ほら如何した?何、固まっている?」
良心寺福弥津 「貴様、ワシの・・・」
化け狸    「化けてんに決まってんだろクク」

良心寺福弥津の顔になっている。

謎の男    「直ぐ正体を明かすと、面白味が無くなる。
       (手を上に手招きをし)来い!じじいとじじい」
赤子      「父上殿!」
良心寺福弥津 「行けっ!赤子!重力で押しつぶせ!」
赤子     「はい!父上」     

 飛び掛かる赤子。一度謎の男の頭を超え、背中に伸し掛る。

赤子     「ごぎゃ、ごぎゃ・・・」

 石に変化する赤子。

化け狸    「久々だな。ごぎゃ泣きじじい」

 赤子、ごぎゃ泣き(子泣き)じじい。


謎の男     「重い、重い、体がーーー!つつ、潰れるーー!!」
良心寺福弥津 「占めた!首も絞めた」
赤子     「ごぎゃ?」
謎の男    「オラァ!!」

 アッパーが炸裂する赤子の顎。
 宙を舞い地面に沈む。

良心寺福弥津 「大丈夫か!赤子よ!!」
赤子     「(石から元に戻り)大丈夫・・・父上ーー」

 化け狸が飛び掛かり、マウントを取る。
 倒れ込む、良心寺福弥津。

化け狸    「オラァ!オラァ!オラオラオラァ!!」

 連打を浴びせる化け狸。ジタバタ足を上げ下げする良心寺福弥津。


赤子     「やめてーー父上がーー」

 赤子の横を通過する。謎の男。

謎の男   「(狸の手を掴み)やめろ!俺の客人だったはずだ。年寄りを労われ」
化け狸    「ハァハァ、調子こくなよ!じじい。このお方は、2番目に強いんだよ」
       
 良心寺福弥津の顔が腫れ上がる。

良心寺福弥津 「ガハッ(血を吐く)くっ、そっ」
謎の男    「とっとと、帰れ!言っとくが、お前は一番弱い。そう、
        俺は、狸の言う通り2番目。一番強いのは善なんだからよ」
赤子     「父上ここは引き下がりましょう」

              xxx

○戻って・リビング・食卓

良心寺善   「(おにぎりを食べ)親父!」
謎の男OFF 「善と会えるのを楽しみにしてるぜ。善の記憶が
        戻るのも。なんたって俺らの師匠なんだからよ」
良心寺福弥津M 「お前らの師匠では無い!妖めが!!」
良心寺善   「親父!おい、親父、親父!!」

 ヤカンの音が鳴る。

良心寺福弥津 「へっ?ああ、この傷か。パチンコに勝って、その後、オヤジ狩りに」
良心寺善   「何やってんだよ、ちゃんと警察に被害届出してんだろうな」
良心寺福弥津 「当たり前じゃハハ」
Rain M 「真逆、山へ行っておられたのですね」

 心の中での会話モノローグ。

良心寺福弥津M 「そうじゃ。善に言うな。良いな。Rainのお前自身の能力も一部消えておるが」
Rain M 「えっ、何のことですか父上?まぁでも、はい黙っておきます」
良心寺善    「気持ち悪っ。何、2人で見つめ合ってんだよ」
Rain 「サザンオールスターズだよ」
良心寺善    「サザン?掛け算か?」

 外からメロディ音が聞こえる。火を止める。

良心寺福弥津 「しまった、今日は燃えるゴミの日じゃ。出して来るわ」
良心寺善    「障子をバンって開けるなよ」
良心寺福弥津 「(リビングを出ながら)あいむ障子!」
Rain 「今日は、Kaitter来てないのか依頼」
良心寺善   「(充電中のタブレットをタッチ、スワイプし)まぁそう言う日も有る・・・」

 外から声が聞こえる。

良心寺福弥津OFF 「すいません。ゴミお願いします」
収集作業員  「ええいいですよ。あの・・・」
Rain 「何?気になる事でもあるの」
良心寺善   「親父の部屋・・・違和感あるかなって。玄関開けっ放しかよ」

 赤子と目は合っている。

Rain 「何だよそれ」
良心寺福弥津 「(戻って来て)善、予約だ。仕事が終わってからお越しになる」

○良心寺・本堂(夕方)

 振り子時計が17時58分頃を指す。座布団に正座する4人。電気が点いている。

五味大    「この度は、お忙しい中時間を割いて頂きまして。私、
西南環境事業センターの収集作業員五味大と申します」
良心寺福弥津 「いえ。とんでもございません。住職の良心寺福弥津
        と息子の善とRainです。ささっお茶を」
五味大    「いただきます」

 一口お茶を啜る。

良心寺善   「(小声で)Rain、ごみまさるだってよ。ウケねえか?
        ゴミの収集の五味だぜ。しかも一字違いでごみあさ、
        (痛い表情)」


 拳骨をくらう。レギュラー西川君のように白目向く善。

Rain 「アカン良心寺くん、気絶してもうた!」
五味大    「ハハ。ドゥドゥビ?ビバビバ?」

 タイトルバック『AppaRition GraveMarker』

良心寺福弥津・善・Rain「勿体無い?」
五味大     「聞こえるんですセンター内で」
良心寺善    「車で収集終わって、誰かが捨てたものを見て、「粗末に
        するな勿体無い。まだ使える」って誰かが言ったんじゃ」
五味大     「そう思いました。確かに、市民の皆さんが、ゴミを確り
         分別出来てるか、確かめる時はあります。上手いこと、
ゴミに違うゴミを紛らわせてることがあるので。その中に」
良心寺福弥津   「誰でもなかったと」
五味大     「はい。その声、居るはずの無い声なんですよ」
良心寺善・Rain 「えっ」
五味大     「婆さんの声なんです。ウチだけかもですが、焼却施設
         は、中々女性が集まらない。雇ってもすぐに・・・
         粗大ゴミ受付の問い合わせには、パートで居ても、
         焼却の方では居ないので」
良心寺善・Rain 「(お互いの顔を見て)ば、ババアって・・・砂・・・」
良心寺福弥津  「その婆さんじゃなかろう。五味さん、今日はもう
明日、うちの息子とRainを使ってくだされ」
五味大     「そうですね。では明日、センターでお待ちしております」


 ○良心寺・山門前(夜)

 軽ワゴンで去っていく五味大。
 山方面へ走って行く。月が見える。

 ○良心寺・本堂

 夜のお勤めをする。お経を唱える良心寺福弥津。

良心寺善    「久々だな俺」
良心寺福弥津  「(お経の途中で)コラ、喋ってはいかん。心静かに祈りを捧げよ」
良心寺善     「蝋燭で照らされてなんか不気味だよな。電気消してよ」
         

 Rain、目を瞑り、姿勢真っ直ぐ、拝む。何も答えない。
仏像の背後から、影が見える。

赤子       「いない、いや、いるいるぞ!ばあ(いないいないばあの仕草)」

欠伸をしている良心寺善と拝んだままのRain。

良心寺福弥津M 「コラッ何をしておる。そこに居たのか」

 心の中での会話。

赤子M      「いやぁ出番少ないから。やっぱ仏様の前でも
         見えないんだね。未熟者。それに(善を見る)」
良心寺福弥津M  「大丈夫だ。例え善が、お勤めをサボっても、私
           のお経で出てこんだろ。善の身体に宿ってる妖が」
赤子M 「だと良いんですけど。彼奴ら強いし、秘策でもあるの?」
良心寺福弥津M  「・・・あの海の向こうの方が使ってた奴じゃ。封じ込められる」
赤子M 「はい?だったらそれを使えば。忘れましたねぇ蔵に。右京さんになったぞ」

 庭の蔵を映す。

Rain 「足痺れた。ずっとだったから」
良心寺善     「お前、正座出来るのか」
Rain 「頭、下げなかったらいいの」


 ○同・善部屋

  TVを見て笑う善とRain。
  TVの時刻は23時15分を表示する。
  木製の扉のノック音がする。
  福弥津の部屋が見える。赤子が出て来る。

良心寺福弥津   「(扉を開け)いつ迄起きておる?飯も風呂も済ませたのじゃ。
          早く寝ろ。明日に備えてな」
赤子       「今日は、ここで寝るぞ」
良心寺善     「へいへい。寝るかRain(TVを消す)」

  二段ベットに入る。上が善(目覚ましがある)下がRain。

赤子       「(梯子を上り)うんしょ、うんしょ、うんしょはどっちも済ませたし」
良心寺善     「何か、窮屈だな」
Rain 「えっ何で」
良心寺福弥津   「おやすみ(電気を消し扉を閉める)」
良心寺善     「あれ、今からキャバクラ行くな」
Rain 「指名はあやちゃんだっけ?カジュアルな格好して。父上ったら!」

  刻々と時間は過ぎる。

Rain 「唸りといびきが煩くて一睡も。寝不足はお肌に悪いのよ」
赤子       「俺もだ。って、傘のくせにお肌もくそも関係ないじゃんか。
          聞こえてないけど」


  夢を見る。

良心寺善     「ここは」

            xxx

 ○山間(昼・快晴)
  
『森の中アスレチック公園』

良心寺美海    「お、落ちないでよ善」
良心寺善(9)    「わかってるよ。母ちゃん。おっちゃん撮ってる」

  三角お山によじ登る。

神八代岐丸    「おう!撮ってるぜ。何たって善君の、お祝いだもんな」
良心寺善(19)OFF 「これ、母ちゃんの姉ちゃんで旦那さんの岐丸おじさん?」
神八代舞理    「いいじゃ無いのよ。折角病気が治って、初めての外だから。
          ロープ掴んでるし。千木郎、携帯ばっかやってないで、
遊んでやりなさい。従兄弟のお兄ちゃんでしょ」
良心寺千木郎   「おん・・・(返事する)煩えって。オセロしてんだよ」
良心寺美海    「でもお姉ちゃん、この子すばしっこいから。ごめんね千木郎君」
良心寺善(19)OFF 「俺、身体弱くてずっと寝てばっかで、でも医者から許可出て
         祝いに、家族総出で、近所の山でバーベキューしてて。確か他の者は」
良心寺穂枝    「あんたら飲み過ぎだよ。爺さん注ぐな。馬鹿垂れが」
良心寺幸蔵    「孫の快復祝いじゃ。さぁパァッと呑め」
良心寺福弥津   「本当ありがとう弟よ。善はあの通り」
良心寺曽福    「いやぁ、俺じゃなくて担当の石原先生。完璧な人」
良心寺岐依    「そうよ、私達夫婦看護師なんだから。携帯取り上げるよ千木郎!」
良心寺曽福    「俺なんかよ、准看護師になった20歳で結婚、しかも先輩を孕ませ、
          怒られたな〜」
良心寺善(9) 「(三角お山に立ち)うわぁ凄い。あっ、ねえねえ何かさ、
          山にお地蔵さんが見えるよ」

  山道に地蔵がある。


良心寺福弥津   「そうだったな、二人とも医者じゃ、(振り向き)善、あれはな」
良心寺善     「お尻痛っ。手、あっつ」
良心寺美海    「もう、何滑ってんのよ」
Rain OFF 「おい、善起きろ朝だぞ。目覚ましは置くだけか?合わせろよ」

   
               xxx

 ○善・部屋
  目覚ましは7時過ぎを刻む。
  扉の前に立つRain。

良心寺善   「おはよう。お前、クマだらけだな」
Rain 「誰の所為だよ」
良心寺善   「今日は、親父酔ってるから飯は無いな。Rain、パンでも食うか」
Rain 「だね。おにぎりは飽きてるから」


 ○リビング・食卓

  障子が開いているリビングと福弥津の部屋越しからの会話。
  福弥津の部屋の襖は僅かながら開いている。

良心寺善    「トーストが出来てる。珈琲も。親父が?」
Rain 「父上、服のまま寝てるよ。朝5時過ぎに帰って来て」
良心寺福弥津  「あやちゅわーーん。ムニュムニュ」
赤子      「俺が作ったんだぞ!残すなだぞ。俺はもう一眠りするぞ」

  福弥津の敷布団に入っている。


 ○西南環境事業センター前(朝)

  馬が大八車を牽き走って来る。
  大八車に乗っている善。
  煙突から煙が上がっている。

良心寺善     「イエイ!イエイ!楽しいぞーーってやめよ。恥ずかしい」
Rain 「(馬と大八車から元に戻り)めっちゃ嬉しそうだったぞ」
良心寺善     「何で馬と大八車なんだ?」
Rain 「大正時代のゴミの運搬さ」


 ○同・センター内
 収集車がバックし、パッカーを傾ける。
 ゴミがピットへと落ちる。

 ○同・クレーン操作室内

 硝子に張り付き眺める。巨大クレーンが可燃ゴミを吊る。
 操縦している男性が居る。

良心寺善     「うわっすげーーぞRain。でっかいUFOキャッチャーだ」
Rain 「興味深々だな。社会見学で行っただろ?」
良心寺善     「俺小4の頃、結局学校行けたかと思ったら、親父が何故
          か行くなって、その頃だっけお前と、仲良くなったのは」
Rain 「おっ、おう!(小声で)しまった」
五味大      「(入室)待たせてすいません」
Rain 「いえ。おい善!」
良心寺善     「(振り向き)あっすいません」
五味大      「良かったらまだ見る?」


 ○同・中間処理施設
  コンベアがある。手選別している人達がいる。

五味大      「臭うでしょ」
良心寺善     「はい、でも依頼されたので」
五味大      「ここは車で収集して来たゴミを、ピット、貯めて
          置く場所から、コンベア使って、袋を破き、ゴミ
          を運び、手で選別する。ほら、燃えるゴミの中に
          ライター。不燃ゴミだよね」
Rain 「危ない」
婆さんOFF    「・・・ない・・・」
良心寺善・Rain 「えっ?今のは」
五味大      「出たぁ、これです。この声」

  辺りを見渡す良心寺善とRain。
  中間処理施設も硝子張りがある。

五味大       「焼却炉です。いつも声するのは」

  中間処理施設を出る3人。

  
○同・焼却施設
  プラットホーム。天井にスピーカー。焼却炉の投入扉の小窓(真中)から
  燃え盛る炎が見える。響き渡る声。


婆さんOFF     「勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」
良心寺善      「くっ、無理だ」
婆さんOFF     「勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」
Rain 「ひっ、熱が伝わって来る。何故、燃えてるのにわかるんだ」
良心寺善     「燃え盛るその前を見てたんだ。さっきの所から選別後、来る
          んだからよってRain」
婆さんOFF    「もっ、ンフッ。勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」
Rain 「あち、頭が!あーちちあーち燃えてるんだろうか」
婆さん      「勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」
五味大OFF    「聞こえますか!今制御室です。焼却止めて開けます」
良心寺善     「はい、お願いします」

  炎が消え、扉が開く。白煙が出る煙突(外)。

婆さんOFF     「勿体無い、勿体無い、もっ」
五味大       「(焼却施設に来て)声が静まりましたね」
良心寺善      「はい。間に合いませんでした(タブレットを持っている)」
Rain 「危なかった。何ババアか知らないけど、笑いやがったな一瞬」

  Rainの頭も白煙が出る。

Rain 「如何する?ぜ・・・何笑ってんだよ。お前も、私の頭見て?」
良心寺善      「そうじゃなくて、(笑う)」


 ○戻って同・中間処理施設

Rain 「やめろ、やめろ善」
良心寺善     「良いから、うつ伏せになれって!もがくな!手と足、傘の中に引っ込めろ」
Rain 「くそーー、私は生きてる傘なんだよーー。ゴミ扱いすなーー」
手選別してる人  「本当に良いのかい?お兄ちゃんよ」
五味大      「焼却炉ですよ!」
良心寺善     「はい。スイッチ押して下さい。いいかRain、唯のビニール傘に見せて
          先回りしておけ」

  スイッチが押され、コンベアが動く。流れて行くRain。

Rain 「アホボケカスーー!ナスのトマトミートスパゲッティ!」
良心寺善     「なんじゃそれ」
Rain 「知るかよ。脚本家の思いつきだろ」

   退室し廊下に出て走って追う。

 ○同・焼却施設

   プラットホーム。投入扉を映す。


 ○焼却炉内


婆さんOFF    「勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」


   ノートがある。パラパラ捲れ上がる。

婆さんOFF 「この和紙の様な物、まだ裏が使える。勿体無い。現世の者は」
婆さんOFF 「これは筆?毛が広がっても、ぬるま湯に浸して、毛を
          ほぐして、揉み洗いし、墨を落とせば使えるのじゃ」

   メイクブラシが浮かんで、落ちる。

婆さんOFF 「信玄袋の様な物も捨ておって。全く使えろうぞ」

   傷んでいないナップサックが捨ててある。浮遊して勝手に閉まり、落ちる。

        T『信玄袋とは江戸時代以前にもあったとされる袋。女性が小物入れ
         に使用していた袋である』


婆さんOFF 「勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い、勿体無い・・・」

   Rainが壁面につながるコンベアから出て来る。
 
婆さんOFF 「あれは、現世の唐傘?何と透き通っておる。折れたり
          破けて・・・貴様、良く見ると手と足があるではないか。妖か」
Rain 「おうよ!姿を現せ」


 ○戻って・焼却施設
   プラットホーム、開いている投入扉前。勿体無いと響き渡る婆さんの声。

五味大      「本当に良いんですか。燃やしても」
良心寺善     「構いません。彼奴、Rainも妖怪です」
五味大      「でも、焼却炉の中は800度に・・・」
良心寺善     「お願いします。では」


   投入扉へ向かって走る。(投入扉を映す)


良心寺善     「Rain!」
Rain OFF 「かささのさっ」
Rain 「早く乗れ!」

   ロケットに変身してたRain。投入扉に来る。

五味大     「そうか。ロケットなら、8000度まで耐えれる」
良心寺善    「危ないので閉めて下さい」

   ロケットに乗り込む良心寺善。ロケットの扉も閉まる。

五味大     「わかりました。(トランシーバーを使い)制御室お願いします」

      
   扉が閉まり、炎が出る。


 ○焼却炉

   Rainが変身するロケットの中。
     
Rain 「何処にいてる?善。作戦開始だ」
良心寺善   「おう!」

      
   ロケットの窓越しからタブレットのカメラを起動する。
燃え盛る焼却炉内が見える。


婆さんOFF    「何だそれは、虚船・・・かああああ!!」


 ○焼却施設
      
   プラットホーム。

制御室(トランシーバーからの声)「こちら、制御室。焼却炉内で、何か白い物が飛んだ。
                監視モニターで確認」
五味大            「えっ?」
制御室(トランシーバーからの声) 「ロケット、ロケットだ」
五味大            「二人共聞こえますか。ダメだ、炎とロケットで聞こえてない」


 ○焼却炉

Rain 「善、粋なし前が見えない」
良心寺善      「えっ?(カメラの卍型フォーカスが合いシャッター音が鳴る)
         おわっ、靄が窓に黒になった!黒がロケットを。暴れるな
           Rain!ヤバイ」
   
    ロケットを覆う黒い物。Rainのロケットが揺れる。

Rain 「妖気!飛行不能!繰り返す、飛行不能!」

    機体が上下左右に揺れる。

良心寺善     「婆さんが現れたけど、おっ落ちる」


    元に戻るRain。善と共に落ちていくのが、投入扉の小窓越しに見える。

五味大      「二人共っ!(ノイズが出る)こちら五味。二人が落ちた。制御室
応答せよ。(ノイズ)制御室!制御室!くそっ、こんな時に電波が・・・」


     焼却炉の底に落ちる。仰向けに落ちるRain。善は尻もちをつく。


塵塚怪王     「(浮いていて)我の名は、塵塚怪王」
良心寺善・Rain 「(立ち上がり)怪王なのに婆さん?」
塵塚怪王     「ちりつもりてなれる山姥とうの長なるべし」
良心寺善           「はい?」
Rain 「後でネット検索。塵塚怪王でね」
良心寺善     「とうって唐揚げの唐?頭?タワーの塔?・・・調べてもわからないと思う」
塵塚怪王     「我はゴミの付喪神でもあろうぞ」
Rain 「だろうね。さっきの黒いのは、ゴミ袋を着てるのって、あちいあちい」

    背中に火が着く。
        
良心寺善            「Rain!!」
塵塚怪王     「お主等は燃える。我は燃えないのだ」
Rain 「プラスチック?江戸には無かった。熱いーー助けてええええ、嫌だーー」


背中から火が全身に燃え広がる。

良心寺善    「れ、Rain・・・そんな・・・お前まで、(手を摩り)ナンマンダブ、
ナンマンダブ」
塵塚怪王    「(善を見て)そこの、若いの何故だ・・・」


 ○焼却施設

プラットホーム。(投入扉が映る)
      
Rain OFF 「ひいいい、火が、ひひ、やああああーー、善助けてくれーー」
良心寺善OFF 「Rain!やめろババア」

     響き渡るRainの声。

五味大       「制御室!制御室!応答せよ!早く、早く、止めてくれ」
制御室       「(ノイズが出る)こちら、制御室。双方繋がった。止める?
           まだ、可燃ゴミを燃やしてはいない!」
五味大       「えっ?あれってじゃあ・・・」


 ○戻って・焼却炉

良心寺善     「Rain、死ぬな、死ぬなーー」
Rain 「熱い、あつ・・・さようなら善」

     力尽きようとするRain。

塵塚怪王     「唐傘の命ここまでよのう。あーはっはっはっ!別れを惜しむが良い。
恨むのなら、ここの人間を恨めーー」
良心寺善     「ふっ、かかったなババア」
塵塚怪王     「なにっ?」
良心寺善     「もういいぞ。Rain」
塵塚怪王     「火が消えた?しかも、唐傘が3人?何も燃えておらん」
Rain 「分身の術よ。忍びを真似た」

     一人になるRain。

塵塚怪王     「嵌めおったのか人間と唐傘よ」


                xxx

 ○中間処理施設

五味大      「焼却炉ですよ!」

小声で会話が始まる。

良心寺善     「それはそうと、Rain!お前、変身は乗り物以外でも」
Rain       「出来るけどそれが如何したんだよっ」
良心寺善     「よっしゃ。だったらよ、お前自身をもう2人増やせ」
Rain 「何故だ」
良心寺善     「焼却炉は、炎だ。しかも、そこで何故か婆さんは燃えず、
          焼却後は、白煙で靄と区別がつかない。つまり、俺達は、
戦うには不向きってわけだ。数秒偽って戦う。自爆するか、
否か。お前は100%本物になる。炎とロケットにもなれ。
焼かれるのも忘れずにな」
Rain 「自爆、焼かれるって嫌な予感しかしないだけど。ヘタ打って・・・
妖怪はね生命保険に入ってないんだよ。なのにムカついてきた。
  そもそも、焼却炉の中に人って入れるの?フィクションだけど」

      小声での話が終わる。

良心寺善     「スイッチ押して下さい。いいかRain、唯のビニール傘に見せて
          先回りしておけ」
Rain 「アホボケカスーー!ナスのトマトミートスパゲッティ!」


                   xxx

○戻って・焼却炉


塵塚怪王    「そら言をぬかしおって。其方等最低じゃ。勿体無い事をする現世の」
Rain   「 そりゃそうだけど、如何する善?」
良心寺善    「そうだなぁ、勿体無い、勿体無いって言ってただけだし」
塵塚怪王    「なんじゃ?」
良心寺善    「確か、HunterStoreでインストール出来るから・・・」
塵塚怪王    「ようわからんが許してくれるのか?」

作務衣からタブレットを出し、『HunterStore』をタップ。
起動し、『Tengoku okuru Map』のアイコンとインストールするの字が表示する。


 ○山間(夜)

化け狸が、茂みの上でいびきをかき寝ている。
木の上に立って、環境事業センターの建物を見ている、謎の男。煙突も見える。

謎の男 「(再度サングラスにマスク)ほほう。名は体を表す。だが、お前の
中身が許すのか、中身の飢えた善よ」


○戻って・焼却炉

『Tengoku okuru Map』をインストール中の、良心寺善の鼓動が鳴る(1回のみ)


良心寺善M  「なんだ・・・」
Rain 「如何した?善」
良心寺善   「急に目眩が・・・」


白目を剥き倒れ込む良心寺善。タブレットを落とす。意識が無く、目を瞑りいびきをかく。

Rain 「(体を揺さぶり)おい!善、なんでいきなり?ぜん、おい善!!」

タブレットのカメラが起動する。

Rain 「えっ?なんで急にしかも・・・」

卍型フォーカスが善を捉える。

Rain 「誤作動?(傘が開き)妖気を感じる。えっ既に塵塚は(塵塚を見る)・・・
真逆!(善を見る)」

良心寺善の体から靄が出る。


塵塚怪王   「なんじゃ?人か。其方から」


靄が人型になる。


Rain 「くっ、本来の姿じゃない。なんで、10年振りに」
神八代岐丸 「久々だな唐傘。変わっちまったな傘が」
神八代舞理  「ちょっと、善。あんたの中狭いじゃない。もうちょっと太ったら?」
Rain 「此奴等正体を現せよ。うっくそっ」


足が震えるRain。


良心寺幸蔵  「お前さんだらしないの。妖の癖に。そんな事よりそこの浮いとる婆さん
可愛いのぉ。ワシと茶でもせんか」
良心寺穂枝  「何言ってんだい爺さん。堕としてやろうか?地獄の沙汰も嫁次第だよ。
そんな事より、何も知らないのかね」
良心寺曽福  「善、福弥津兄さんの、父さんの寺がオンボロなのは・・・」

 善を見る曽福。

Rain 「チッ。うるせーーよ、善は何も知らないんだ」
良心寺岐依  「なんなら、蘇生しようか?美海さん」
良心寺美海  「うーーん、母親としてはやまやまなんだけど、その内
        気付くでしょ。自分で。それに私達は・・・」
良心寺千木郎 「おう、おばさんの言う通りだ。善のおかげで俺達は、
        死んだんだ!此奴にその思いをわからせてやるんだよーー!
        自分がどうなるかってなーー!ハァハァ、そんな事より今は」

   
  8人の腹の虫が鳴る。

Rain 「ぐっ、此奴等、腹を空かせて・・・もう人間じゃない。妖に
        あの妖・・・震えが止まらない。逃げろーー!塵塚怪王ーー」
塵塚怪王   「なんと?何故にだ唐傘」
8人全員   「(不気味に)ここでかぁ?密室だぞ。腹減った腹減った腹減った腹・・・」
       
Rain M 「早く、早くインストール終われ!悪い妖は天に召されない。塵塚を」


  インストールが終了仕掛ける。


Rain 「よっしゃーー、お前らーーえっ?」


   『インストールに失敗しました。』と、画面に表示される。


Rain 「電波が・・・」
8人全員 「減ったぁあああああ(其々の声が変わり低くなる)」
塵塚怪王  「ひやああああああ」
Rain 「やめろーー」

   8人が闇と化し、塵塚怪王に覆い被さり、喰らいつく。
   身体が欠けていく塵塚怪王。


Rain 「やめろーー、やめ・・・ろーー」


  焼却炉中響き渡る。


良心寺福弥津OFF「善、起きろ善。善!」


 ○良心寺・善・部屋

  ベッドの上で目を覚ます良心寺善。(両瞼を開けるシーン)
  視界が、歪んだのち、父・福弥津の姿と梯子に上がるRainが見える。


良心寺善  「あれ?家?ババア、塵塚怪王は?お、俺夢見てて」
Rain 「ゆ、夢?」
良心寺善OFF 「目眩起こした後・・・」


               xxx

 ○夢の中

良心寺美海 「善、善ったら、善、善!」

  夢の中で起き上がる良心寺善。濃霧が出ている。
  その他は何も無い空間。

良心寺善  「か、母ちゃん?そっかここ夢か」
良心寺美海 「あなたの事を見守ってるわ。善が如何であれね」
良心寺善  「どうって、如何なんだよ?かあ・・・地震か。母ちゃん!」
良心寺善  「善は善。善なんだからね」
良心寺善  「この地震、前にも。母ちゃん、大丈夫か?かあ・・・消えた」

   揺れも収まる。


                xxx


 ○戻って・善部屋


Rain 「それ、うん、そう絶対的な夢!」
良心寺善  「だよな」
良心寺福弥津「・・・」
良心寺善  「それで塵塚怪王は?」
良心寺福弥津「安心せい。Rainがお前に代わって・・・なっ、Rain」
Rain 「う、うん。おうよ!ちゃ、ちゃんと天国に行かせてやった」
良心寺福弥津「ほほ、報酬、お布施だ、も頂いてきたぞ。5万3000円。本当に」
良心寺善  「ほんとうに?何焦ってんだよ」
良心寺福弥津「いやっ、木星じゃ」
良心寺善  「もくせい?」
Rain 「気のせい。五味さんが善を運んでくれて。お礼も言っといたよ」
良心寺善  「何か怪しいな2人とも」
Rain 「あやかしいだ」
良心寺福弥津「あやちゃんに会いとうなってきたな」
Rain M 「言えない。本当の事を。善は大昔に封印された筈の最強の妖怪、なんだから」


第3話了
 
       


 

































 
          










































      

































          
      



          
         






    
 
















  

































 






         
























  







        













 




      










      




      


      

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