神様の実験 ファンタジー

ある夜、総理大臣の前に死んだはずの死刑囚が光とともに現れる。冷酷で知られたその男は語る、神様が死者を蘇らせて世界を試しているのだと。世界中の首脳の前にも、同じように選ばれた者たちが姿を現していた。彼らを待つのは、赦しか、それとも裁きか。
飴屋 54 0 0 08/03
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第一稿

タイトル 神様の実験

ジャンル ファンタジー
形式 中・短編映画

登場人物
総理大臣(日本国内閣総理大臣、男性、六十代)
死刑囚(本名不明、通称ヒロシ、四十代)
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タイトル 神様の実験

ジャンル ファンタジー
形式 中・短編映画

登場人物
総理大臣(日本国内閣総理大臣、男性、六十代)
死刑囚(本名不明、通称ヒロシ、四十代)
秘書官(総理大臣の側近)
記者A、記者B
国民(複数)
神様(声のみ)


S1 首相公邸・総理執務室(夜)

デスクで書類を読む総理大臣。窓の外は静かな夜。
不意に、部屋の中央で空気が歪み、まばゆい光が弾ける。
光の中から、ひとりの男が現れる。粗末な作業着のような服を着た、痩せた男。ヒロシである。

総理大臣
(椅子を蹴るように立ち上がり)
だ、誰だ! 秘書官! 誰か!

ヒロシ
(自分の手のひらを見つめ、驚いたように)
……本当に、戻ってきたのか。

総理大臣
(後ずさりながら)
お前は……ニュースで見た顔だ。まさか、死刑は……

ヒロシ
(薄く笑って)
ああ。とっくに執行されたよ、俺は。

総理大臣は震える手で内線に伸ばそうとするが、ヒロシがそれを見て言う。

ヒロシ
呼んでも無駄だ。それに、心配しなくていい。

総理大臣
な、何が言いたい……

ヒロシ
やりたくても、出来ねえよ。

総理大臣
(かすれた声で)
何が……出来ないと言うんだ。お前は……人を三人も……

ヒロシ
(総理大臣の怯えを面白がるように、しかしどこか投げやりに)
安心しろ。あんたに指一本触れられねえ。そういう決まりなんだ。

総理大臣
決まり……? 一体、お前はどうなっている。生き返ったとでも言うのか。

ヒロシ
生き返った、ってのとは少し違う。

間。ヒロシは天井を見上げる。

ヒロシ
神様が、試してんだよ。

総理大臣
(聞き返す)
……神様?

ヒロシ
死んだ人間が、今の世に舞い戻ったらどうなるか。そういう実験だとよ。俺は地獄から選ばれた。世界中で、何人かが同じように選ばれてる。


S2 首相公邸・別室(同時刻)

秘書官が慌ただしく駆け込んでくる。手にはタブレット。

秘書官
総理! 大変です、海外から緊急の報告が……アメリカ、イギリス、中国……各国の元首の前に、同時刻に、それぞれ一人ずつ……

総理大臣
(画面を覗き込み、青ざめる)
……本当に、世界中で起きているのか。

秘書官
はい。しかも、報告によれば対象は全員、生前に極刑または重大な罪に問われた人物だと……

総理大臣とヒロシが顔を見合わせる。


S3 首相公邸・総理執務室(夜)

秘書官が退出した後、総理大臣とヒロシのみが残る。

総理大臣
もう一つ、聞かせてくれ。お前たちには何か、共通点があるのか。

ヒロシ
(自分の腕を指差す)
監視付きだ。神様の、な。

総理大臣
監視……

ヒロシ
禁止されてることをやろうとすると、雷が落ちる。マジの雷だ。

ヒロシは自嘲するように笑う。

ヒロシ
だから、あんたに何かする気なんざ、端からねえよ。出来ねえんだから。

総理大臣が何か言おうとしたその時、部屋に低く、響くような声が満ちる。姿は見えない。

神様(声)
この世に晒してみよ。

総理大臣
(周囲を見回し)
今の声は……

神様(声)
そして……

声はそこで途切れる。総理大臣は呆然と立ち尽くす。


S4 記者会見場(翌日)

フラッシュが激しく焚かれる中、総理大臣が壇上に立つ。隣にはヒロシ。うつむき、居心地悪そうにしている。

総理大臣
(マイクの前で、覚悟を決めた表情)
昨夜、私の前に、既に刑を執行されたはずの人物が現れました。世界各国でも同様の事案が報告されています。政府として、この事実を包み隠さず、国民の皆様にお伝えいたします。

記者A
(立ち上がって)
それは本当に本人なのですか! DNA鑑定は!

記者B
なぜ隠さず公表を? 国民の不安を煽るだけでは!

会場がざわめく中、ヒロシは目を伏せたまま、じっと立っている。


S5 街中・複数のカット(数日間)

モンタージュ。ヒロシは特に隔離されることなく、普段どおりの生活を送るよう国に指示されている。アパートの一室から出て、コンビニに行き、道を歩く。ただしその先々で、人々の視線と敵意が付きまとう。

・ヒロシがアパートの前に出ると、通行人が石を投げつける。
・コンビニの帰り道、被害者遺族と思しき女性が、ヒロシの胸ぐらを掴み、涙ながらに詰め寄る。
「お前が、お前があの子を」
・SNSの画面。誹謗中傷のコメントが際限なく流れていく。
・路地裏で、数人の男にヒロシが取り囲まれ、殴られる。
 我慢しきれず、ヒロシが拳を握り、殴り返そうと腕を振り上げた瞬間――
 空から一筋の雷が落ち、ヒロシの体だけを撃つ。殴りかかっていた男たちは無傷のまま、悲鳴を上げて逃げていく。
 ヒロシは焦げた腕を押さえ、地面にうずくまる。
・ヒロシの顔に殴打の痕、腕に火傷の痕。表情から次第に生気が失われていく。

同様のカットが、アメリカ、イギリス、中国など各国でも挿入される。怒号を浴びせられる者、唾を吐きかけられる者。国も言葉も違うが、向けられる憎悪の形は同じ。


S6 首相公邸・総理執務室(夜)

総理大臣が窓の外、群衆の残す喧騒に耳を澄ませている。秘書官が入ってくる。

秘書官
総理。例の、ヒロシという男ですが、精神的にかなり参っているようです。今日も、外に出たところを暴行されて。

総理大臣
(重い息を吐き)
……分かった。

秘書官が退出した後、総理大臣は一人、窓辺に立つ。


S7 路上(夜)

傷だらけのヒロシが、うずくまるように座り込んでいる。目に光がない。
不意に、体が淡く発光し始める。

ヒロシ
(力なく、誰へともなく)
……なあ、これで満足かよ。

光が強くなり、次の瞬間、ヒロシの姿が消える。
世界各地でも同様に、選ばれた者たちが次々と光を纏い、消えていく。


S8 首相公邸・バルコニー(夜)

総理大臣が一人、その一部始終を目撃していた。呆然と空を仰ぐ。

総理大臣
(掠れた声で)
……満足したか、神様。

しばらくの沈黙。

神様(声)
総理大臣はどうなのか。

総理大臣
(息を呑む)

神様(声)
死刑囚と国民。どちらが悪くて、怖いか。

総理大臣は答えられず、ただ息を吐き、俯く。
足元に、どんぐりが二つ落ちている。総理大臣はゆっくりとしゃがみ、それを拾い上げる。
右手と左手に、それぞれ一つずつ。両方とも同じ形、同じ色をしている。
総理大臣はそれを夜空に向かって掲げる。

総理大臣
違いは分かりますか。神様。

返事はない。風が吹き抜けるだけ。
総理大臣は長い間、どんぐりを手にしたまま、空を見上げ続ける。

暗転。


終わり

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