ゲリベンウォーズ~紙の切れ目は縁の切れ目~ ギャグ

久々の再会を果たした小瀧と芳賀沼。 年月は無情にも二人の友情に影を落としてくれていた…。凄惨なゲリベンウォーズ。手に汗握り、巻き取ったトイレットペーパーはベチョベチョに……狂おしい男と男のプライドを賭けた壮絶な戦いが今始まる!!
菅野 芳貴 27 0 0 08/17
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第一稿

【登場人物】
小瀧黎哉(28)
芳賀沼洋勝(28)

○喫茶店・店内
賑わう店内。
喫煙席に座り、煙草を吹かしている芳賀沼洋勝(28)。
その向かいに座る小瀧黎哉(2 ...続きを読む
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【登場人物】
小瀧黎哉(28)
芳賀沼洋勝(28)

○喫茶店・店内
賑わう店内。
喫煙席に座り、煙草を吹かしている芳賀沼洋勝(28)。
その向かいに座る小瀧黎哉(28)、嫌悪の表情で芳賀沼を眺めている。
芳賀沼「悪いね」
小瀧「くっせー」
構わず煙草を吹かす芳賀沼。
呆れ顔でコーヒーを啜る小瀧。
と、芳賀沼、おもむろに財布から3万円を取り出し、小瀧が飲んでいるタピオカミルクティーのコースターに挟む。
小瀧「!」
芳賀沼「サンキュー、その節は助かったよ」
小瀧、コースターの3万円を受け取り、表情が柔らかくなる。
小瀧「貸してた事すら忘れてたから何か得した気分だな」
芳賀沼「最近どうよ? 仕事忙しいの?」
小瀧「まあね。残業は多い方だね。そーゆー芳賀沼はどうなんだよ?」
芳賀沼、不適な笑みを浮かべる。
小瀧「?」
芳賀沼「大変だねー、リーマンは」
小瀧「何だよ? お前だってリーマンだろ?」
芳賀沼、優雅に煙草を吹かし
芳賀沼「俺はリーマンじゃねーのよ」
小瀧「フリーターか」
芳賀沼「いやいや、フリーターなんてこの歳でやってられませんよ」
小瀧「じゃあ何なんだよ?」
芳賀沼、更なる不適な笑みにより顔面が酷く歪む。
芳賀沼「投資家……とでも言っときましょうか」
小瀧「はあ? お前そんな余裕あったか?」
芳賀沼「あるのよね、それが。ありとあらゆる運が舞い込んで来た訳よ。ほんの数年の間に」
小瀧「親の遺産とか?」
芳賀沼「まあ、それもあるね。というかそれを元手にちょっと転がしただけで爆発的に増えちゃった訳よ」
小瀧「へー」
芳賀沼「しかし小瀧はご苦労様だよなー。俺は寝てるだけで資産爆上げ状態だってのに、会社に魂売って馬車馬のように毎晩残業尽くしな訳だろ? いやー、リーマンって大変だよねえ~」
小瀧、ムッとした表情で
小瀧「あ、嫌みか?」
芳賀沼「いやいや、純粋に同情してるのよ。俺との格差を目の当たりにして」
小瀧「……」
芳賀沼、辺りの客らに蔑みの眼差しを投げ掛けて
芳賀沼「いやー、ここの皆も安い給与で会社に自由を奪われ、なけなしの暇と遊行費を無理矢理捻出して現実逃避の一時を満喫してるって思うと本当に涙が出てくるよ(嘘泣きをする)」
小瀧「お前、馬鹿にしすぎだろ……」
芳賀沼「これ、仕方ねーのよ。金と時間に余裕が出てくるとさ、真理に気付いちゃってね、周りを見渡すと嫌でも哀れだなーって思い知らされちゃうのよ。これ、別に悪気があって見下してる訳じゃねーから」
小瀧「悪気ありまくりだろ……」
芳賀沼「やっぱ一般庶民と選び抜かれた富裕層とじゃ意思の疎通が噛み合わないのも無理ないからさ、金持ちの戯言だと思って聞き流してくれればいいよ」
小瀧、メラメラと憤怒の表情に。
小瀧「同情するくらいならその資産運用の方法教えろよ」
芳賀沼「いやいやいや、何といってもこいつぁーハイリスキーな事案だからね、自己責任で己を信じてやるしかないのよ! ご教示出来る内容じゃないのよ、悪いね!」
小瀧「はあ~?」
ふてぶてしく煙草を吹かす芳賀沼。
小瀧「……勿体ぶって結局だんまりかよ」
ひょうきんな表情で鼻から紫煙をモクモクと吐き出す芳賀沼。
それを見て、苛立ちの籠った溜息をこれ見よがしに吐く小瀧。
沈黙が続く。
小瀧、グラスの下に溜まったタピオカをズボボと吸い込み、モムモムと口内で弄んでいる。
スマホを弄りだす芳賀沼。
タピオカがなくなって暇を持て余している小瀧、無言・無表情で石像のような佇まい。
互いに無関心のまま、続く沈黙。
小瀧「!」
ギュルギュルルと小瀧の腹が鳴る。
小瀧「やべえ、タピオカ食い過ぎたわ……。ちょっと、便所行ってくるわ」
芳賀沼「お! 大か小か?」
小瀧「どっちだと思う?」
芳賀沼「小だろ? カフェで堂々と大しちゃうような掟破りで少数派な客、そうそういねーよ」
小瀧、目をキラリと輝かせ
小瀧「残念でした~! 俺はこれから大大便に行ってきま~す!」
芳賀沼「うっわ、大迷惑……」
すっくと立ち上がる小瀧。
小瀧「……言っとくがな、俺の大は長いぞ」
芳賀沼「長いっつっても15分くらいだろ?」
小瀧、得意気な表情で
小瀧「外れ~! 優に30分はかかっちゃうもんね~!」
芳賀沼「なげっ! 漫画でも読みながらぶっぱなしてんのかよ?」
小瀧、又もこれ以上ない程の得意気な表情で
小瀧「俺はね、便臭が衣類に染み込むのがとてつもなく許せないのだよ。安月給だけどお洋服には金かけてるからね。高価なお洋服がウンコ臭くなるの絶対やなの。だから大の時は全部脱いで全裸で便臭の染み付きを回避してる訳さ」
芳賀沼「いるよなー、そーゆー訳わかんねー拘り持っためんどくせーヤツ。ファブリーズでもプシュプシュすりゃいーじゃんかよ?」
小瀧「無駄無駄。肉食メインの俺の便臭は超強力だから。市販の芳香剤なんかきかないね」
芳賀沼「なんでもいーからさっさと行って来いよ!」
小瀧、意気揚々と
小瀧「じゃ、行って参ります!」
トイレに向かって歩きだす小瀧。
芳賀沼「ちょ、待てよ!」
小瀧「?」
振り返る小瀧。
芳賀沼「行っトイレ!」
小瀧「……」
小瀧、無言・無表情でスタスタとトイレに向かう。
芳賀沼「おい!(シュンとした表情)」

○同・トイレ・内
入って来る小瀧。すぐさまトイレットペーパーを多めに巻き取り、ペーパーでガードしながら鍵を掛ける。
鏡に映る自分を見つめ、深く深呼吸する小瀧。
まるで警視庁の鑑識課職員でもあるかのような抜け目ない形相で個室内を見渡す。
と、ポケットからゴム手袋を取り出し、伸縮性を最大限に活かし、パッチンパッチンとゴム同士を打ち付けるデカい音を鳴らしながら大袈裟にはめる。
頭上の戸棚の開き戸を慎重に開ける小瀧。
中の掃除道具類を脇に退かしてスペースをつくり、そのスペースに幾重にも重ねたトイレットペーパーを敷く。
服を脱ぎだし、手際よく空中でコンパクトに畳んで戸棚内のペーパーの上に重ねていく。
×   ×   ×
全裸で靴だけ履いたシュールな小瀧、便意を我慢した苦悶の表情で便座を消毒して尻が触れないようにトイレットペーパーを敷き詰めている。
×   ×   ×
完成した小瀧専用ゲリベンぶちかましスペース。
達成感に満ちた表情の小瀧、心置きなくゲリベンをぶちかます。

〇同・店内
芳賀沼、片手で苺ショートケーキを頬張りながらスマホゲームに熱中している。

○同・トイレ・内
スッキリとした表情で便座に腰かけている小瀧。
トイレットペーパーに手を伸ばす。
小瀧「げっ!」
紙がない。
小瀧「なんてこった! 序盤のセッティングで使い過ぎちまった!」
暗雲立ち込めた表情の小瀧。
小瀧「ふざけんなよ。まだ一回も拭いてねーってのによ~……ケツがヌメヌメして史上最悪の不快感だぜ」
辺りを見回す小瀧。
小瀧「!」
頭上の戸棚内の自身の衣類の下敷きにしてあるトイレットペーパーを発見する。
小瀧「この際しゃーねーな」
小瀧、上体をひねって衣類の下からペーパーを抜き取り、コンパクトに畳む。
小瀧「少ねえ……」
が、自身の手にはめられたゴム手袋を見つめ、ペーパーに希望を託す小瀧。
思いきってケツを拭く小瀧。
小瀧、尻文字を書くように腰をくねらせてケツの感触を確かめている。
小瀧「ちきしょー、まだまだヌメリ気が俺のケツを支配してやがんぜ……」
ふと便座を見やる小瀧。
小瀧「お!」
便座に敷いたペーパーを発見する。
小瀧「よっしゃ!」
便座のペーパーをコンパクトに畳む小瀧。
小瀧「少ねえ……」
邪念を棄て、紙(神)にすがる思いでケツを拭く小瀧。
小瀧「……」
小瀧、腰をくねらせてケツヌメリチェック。
小瀧「お! こいつぁー良い感じに拭き取れてんぞ!」
希望に満ちた表情で水を流そうとする小瀧。
と、ギュルルルと予期せぬ便意第2波が再来する。
小瀧「う!!」
便座にケツが触れないように空気椅子状態でゲリベンをぶちかます小瀧。
小瀧「……」
絶望の表情でうなだれる小瀧。

○同・店内
片手でミルフィーユを頬張りながらスマホゲームに熱中している芳賀沼。
と、スマホに着信が入る。
芳賀沼「ん?」
着信は小瀧からである。
出る芳賀沼。
芳賀沼「どーした?」
小瀧の声「紙が1枚もねーんだ! ソッコー店員とかから貰ってきてくれねーか?」
芳賀沼、ミルフィーユを食べるのを止め
芳賀沼「……うわ、きったね」
小瀧の声「はよ頼むわ! 絶体絶命の大ピンチなのよ!!」
みるみる悪企みの表情になる芳賀沼。
芳賀沼「……そっか。わかった、わかった。ちょっと待ってろ」
キョロキョロと店内を見渡す芳賀沼。

○同・トイレの通路
トイレを使用したいと思しき客で行列ができている。

○同・トイレ・内
全裸に靴だけ履いた苦悶の表情の小瀧。空気椅子状態で静止している。
と、『コンコン』とドアをノックする音に耳をそばだてる小瀧。なりやまないノックの嵐。罪悪感に苛まれる小瀧。
と、スマホに着信が入り出る小瀧。
芳賀沼の声「俺だよ俺!」
小瀧「おう、やっと来てくれたか!!」
芳賀沼の声「持って来てやったぜ。お待ちかねの紙」
小瀧「サンキュー! 今一瞬ドア開けて受け取るからよ!」
芳賀沼の声「いや、大丈夫」
小瀧「は? 開けないとトイレットペーパー受け取れないだろ?」
と、ドアの下の隙間からスルスルと紙ナプキンが押し込まれてくる。
小瀧「おい、てめえ! ふざけんじゃねーよ!!」
芳賀沼の声「え? れっきとした紙なんだけどなあ」
紙ナプキンが引っ込む。
小瀧「ちょ待てよ!」
苦悶の表情で思案に耽る小瀧。
小瀧「わかった。それでいいからくれよ!」
芳賀沼の声「あ~い、わがりやんした~」
ドアの下から紙ナプキンがスルスルと押し込まれてくる。
無愛想に紙ナプキンを殴り取る小瀧。
小瀧「……」
静寂。
小瀧「おい! もっとよこせよ!」
ドアの下からスルスルと押し込まれてくる紙ナプキン。
紙ナプキンを引っ張る小瀧。が、取れない。
小瀧「?」
芳賀沼の声「あ、言い忘れたけど1枚1万円ね」
小瀧「はぁ!? てめえコノヤロウ! ぶち殺すぞてめえコノヤロウ!!!」
紙ナプキンがシュッと引き戻され、お預け状態に。
小瀧「あぁ、 ちょ待てよ!」
芳賀沼の声「さっさと腹決めろよ。ドアの外は行列の出来るカフェのトイレ屋さん状態だぜ」
小瀧「てめえコノヤロウ……ここぞとばかり人の弱味に漬け込みやがって……わかった。ありったけの紙ナプキンくれ!」
芳賀沼の声「まいど~」
「2万円、3万円etc…」と芳賀沼の憎らしい掛け声と共にドアの下から紙ナプキンがキャッシュディスペンサーの如くシュッシュシュッシュと押し込まれてくるのを憎悪に満ち満ちた眼光で次から次へと受け取る小瀧。
小瀧「(小声)てめえコノヤロウ……覚えてろよ。ケツ拭き終わったらぶっ殺してやる……」
× × ×
小瀧の掌に紙ナプキンが山積みなっている。
芳賀沼の声「おいおい大丈夫? 総額135万円になってるけど、ちゃんと払えんの?」
小瀧「……」
芳賀沼の声「ちなみにこの通話、録音してるからバックレとかしたら出るとこ出ちゃうからね」
小瀧「て、てめえコノヤロウ……」
芳賀沼の声「いや~突発の棚ぼた臨時収入だな~。何に使おうかな~ウキウキしちゃうな~」
小瀧「……」
芳賀沼の声「潔癖は身を滅ぼすねえ……さっさとケツ拭きな」
怒りを超越して無の境地に達した小瀧、ケツを紙ナプキンの束で拭く。
尻文字を描くようにケツヌメリチェックをする小瀧。
小瀧「オッケィ!!」
水を流そうとレバーに手を伸ばす小瀧。
小瀧「!」
静止する小瀧。
小瀧「てめえコノヤロウ! これ絶対詰まるじゃねえかコノヤロウ! てめえコノヤロウ俺を罠にハメやがったなてめえコノヤロウ!!!」
芳賀沼の声「ちょ……人聞きのわりい事言うなよ。こっちは絶体絶命の大ピンチを救ってやった救世主なのによ」
小瀧「てめえコノヤロウ!」
芳賀沼の声「なんなら流さねーで便座下ろしてさっさと帰ろーぜ」
小瀧「なんて無責任なヤツなんだ……てめえコノヤロウ……」

○同・トイレ前
ドアの前でスマホ片手に佇んでいる芳賀沼。
芳賀沼「さっさと行こうぜケツ拭き終わったんだろ? 紙代だけど分割でも対応してやるからよ、安心して出てこいよ」
応答が無い。
芳賀沼「?」
スマホのスピーカーから獰猛な鼻息が漏れ聞こえている。
芳賀沼「お~い、小瀧ぃ~?」
と、ドアがぶち開けられ、猛スピードで服を着た小瀧が脱出してくる。
小瀧「てめえコノヤロウ!!!」
芳賀沼「!?」
ざわめくトイレ待ちの客ら。
小瀧、芳賀沼をトイレの中目掛けて思い切り蹴り飛ばす。
芳賀沼、便器の前につんのめり、ドアの付近にスマホを落とす。
芳賀沼「うわ、クッセ!!」
小瀧、咄嗟に芳賀沼のスマホを拾い上げ、便器の中目掛けて前代の敵討ちの如くぶん投げる。
スマホは便器の中にホールインワン。
ゲリベンまみれのスマホを見た芳賀沼、絶望の表情で
芳賀沼「ああああああ!!!」
小瀧、完全勝利の表情でゴム手袋を脱ぎ、芳賀沼に投げ渡す。
小瀧「せめてもの情けだ。てめえコノヤロウ……じゃねえや、クソヤロウ!」
ドアを蹴り閉める小瀧。脇に置いてある消火器をハンマー代わりにしてドアノブを破壊。ドアが開閉不能になったのを確認するとざわめくトイレ待ちの客らをよそに何食わぬ顔で店を後にする。

○同・外観
出てくる小瀧。
空を見上げ、広がる快晴に染々する。
と、思い立ってスマホで電話をかける。
小瀧「……あ、どうも。あのー、今店内のトイレで不審な人物が立て籠ってるっぽいんですよ……はい……」
用件を伝え終え、通話を切る小瀧。
小瀧「あ! 最初からこのやり方で店員に紙持って来てもらえば良かったわ……」
小瀧、頭をポカスカ殴り、あちゃードンマイといった表情でスマホに登録してある芳賀沼のデータを抹消する。
小瀧「芳賀沼、ターミネイティッド!」
(完)

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