それでも僕たちは後編 ドラマ

仕事に一生懸命で回りが見えていなかった信二。その彼を一途に思っていた陽香。二人はとうとう再会を果たす。不器用な男の真実とは。そして彼女の本当の思いとは。不器用な二人の純愛ストーリー後編
奈々瀬りん@脚本家志望 31 0 0 08/12
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第一稿

〇 バスの中(明け方)
  窓枠に頭を垂れている信二。
信二・N「俺たちは何でいつも」

〇 北川家・ベランダ・外(明け方)
  ベランダの手すりに寄りかかっている陽香。 ...続きを読む
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〇 バスの中(明け方)
  窓枠に頭を垂れている信二。
信二・N「俺たちは何でいつも」

〇 北川家・ベランダ・外(明け方)
  ベランダの手すりに寄りかかっている陽香。
陽香・N「こうすれ違うんだろう」
  ベランダをのぞき込んでくる美香。
美香「あんたさ、いつまでそうしてんの」
陽香「…何でいるの」
美香「親友の夜歩きのために呼び出されたなんてかっこ悪いじゃん。ついでに入ってきた」
陽香「…そう」
美香「私好きだよ陽香のこと」
陽香「は?」
  再度火をつけようとしていたタバコを下げる陽香。
美香「何にもまっすぐで、一途でそうやって一人でくよくよしているとこ。別にレズじゃないけどなんか親友として守りたくなる」
陽香「…」
美香「でも、言わなきゃ伝わらないことだってあるんじゃないのかな」
陽香「…」
美香「そんななれないタバコ吸ってないで早く伝えないと。じゃないとほんとに信二君いなくなっちゃうよ」
陽香「…っ」
  陽香の右目から流れる涙。
陽香「ありがとう。美香」
  立ち上がる陽香。
陽香「私、行ってくる!」
  そのまま部屋を飛び出していく陽香。
美香「…(そのまま見送る)」

〇 東京駅・前
  バスから降りてくる信二。
  
〇(回想)北川家・リビング
  ベッドに座っている陽香。
  その下でギターをいじっている信二。
陽香「好きだね。ギター」
信二「まあね。今度ライブあるし」
陽香「東京だっけ?」
信二「東京」
陽香「東京かー。いつか行くことがあったら東京駅に行ってみたいな」
  そういいながらポテトチップスをほおばる陽香。
信二「東京にはめっちゃ細い人いっぱいいるぞ」
陽香「まじで?痩せないとダメ?」
信二「かもな」
陽香「そんな…」
  愕然とする陽香。
  笑う信二。

〇 カプセルホテル・中(夜)
  部屋の中に荷物を置く信二。
信二「本当は一緒に行こうって誘うつもりだったんだけど…」
  チケットを握り締める信二。
信二「何で俺は…」
  信二の頬を伝う涙。

〇駅・駅員室・中
陽香「この人見かけませんでしたか」
  信二の写真を神田雄介(38)に見せる陽香。
神田「いや…見たことないなあ」
陽香「何時間か前にこの駅使ってるはずなんです。覚えてないですか」
神田「あ、そしたらあのスーツのお兄ちゃんかもしれん」
陽香「(前のめりに)どこに行きました?」

〇電車の中
  ドアの前に立っている陽香。
陽香「…まさか東京だなんて…」
  ×  ×  ×
信二「今度東京でライブがあるんだ」
  ×  ×  ×
陽香「そうならそうって言ってくれればいいのに」
  うつむく陽香。

〇 線路
  走っていく電車。

〇 ライブハウス・中
  ギターケースを開けて準備している信二。
露木の声「彼女はいいのか」
  振り向く信二。
  露木修吾(34)がテーブルのセッティングを始める。
信二「彼女?」
露木「陽香ちゃんだっけ。兄貴からお前探しに東京来てるって聞いたぞ」
信二「まじ」
露木「彼女さんも一途だよなあこんな奴に」
信二「こんな奴はなくないか」
  「悪い」と言って会場を出ていく露木。
信二、チューニングをしながらも気まずい表情。

〇 喫茶店・中
陽香「やっぱり駄目だよこんなこと」
  カウンター席に座る陽香。
  スマホで電話をしている。
美香の声「ダメって何が?」
陽香「何でこんなこと…これじゃまるでストーカーじゃん」
美香の声「そうだよ?」
陽香「『そうだよ?』じゃなくてさ。やっぱりこういうのよくないと思うの」
美香の声「(大きなため息)」
陽香「なんか間違ったこと言った?」
美香「間違いも間違い。大間違いよ」
陽香「え…」
美香の声「いい?恋ってのは追って追われてなんぼのもんよ。待ってますなんてシンデレラ思考は今どきはやんないわよ」
陽香「美香…」
美香の声「あくまで個人論だけど」
陽香「やっぱりよくわからない」
美香「…(愕然とした様子)」
  ×  ×  ×
  電話口の前でスマホをいったん耳から話す美香。
美香「…は?」
  ×  ×  ×
陽香「このまま会いに行っていいのかな。会いに行って文句言われないかな。ねえどう思う」
美香「あんたさ…」
陽香「はい…」
美香「そこまで考えてる時点で相手のこと好きなんだよ。大事な人がほかの女の子のろこ行ってもいいの」
陽香「…よくない」
美香「じゃあ、悩まない!行く!」
  切れる電話。
陽香「えええ…」

〇同・外
陽香「そんなこと言ったって…」
  店の外に出てくる陽香。
  ヤンキー風の青年が陽香の前に現れる。 
青年「あ、姉ちゃん暇?」
陽香「…?」
青年「これから友達と遊ぶんだけど暇なら姉ちゃんもどうよ」
  陽香の腕をつかむ青年。
陽香「いやあの…」
青年「何?用事あった?もしかして彼氏とか?」
陽香「あの…」
信二「うっせえんだけどお前」
  背後から青年の腕を払う信二。
信二「人の女に手だしてんじゃねえよ」
青年「あ?ああ…(信二の腕の入れ墨を見て)えっと…すみませんでした!」
  逃げていく青年。
陽香「信二?」
信二「何であんな奴の一人や二人断れないんだお前は」
陽香「その腕」
信二「ん?」
  自分の腕を見る信二。
陽香「掘ったの」
信二「安心しろテープだから」
  ペりぺりと一部のタトゥーシールをはがしていく信二。
信二「来るか」
陽香「え?」
信二「もうすぐだから。ライブ」
  陽香の手をつかんで地下のライブ会場に入っていく信二。
  信二に手を引かれるままついていく陽香。

〇 ライブハウス・中
  ステージで準備している信二。
  椅子に座っている陽香。
露木の声「彼女さんですか」
  振り向く陽香。
  陽香の後ろに微笑んで立っている露木。
陽香「はぁ…」
露木「あいつの友人です。あいつ、あなたのことめっちゃ好きですよね」
陽香「は?そんなの言われたこと一度も…」
露木「口に出したら自覚しちゃうからしないんじゃないですか。ほら頑固だから」
  ギターを構える信二。
  信二を見つめる陽香。
陽香「意外とわかるかもしれません」
露木「そうなんですか」
陽香「だってあの人のそのかっこ悪いとこが好きなんだもの」
  笑う陽香。

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