馘首 ドラマ

罪人を首まで土に埋め、そばに置いたノコギリで誰でも首を切っていい。 そんな江戸時代の処刑方法を現代で科せられた男と、それを偶然見つけた男の話。
鈴木俊哉 9 0 0 09/07
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第一稿

登場人物

日影館タミカズ(ひかげだて たみかず)(27)・・・自殺志願者
野点那玩(のだて ながん)(39)・・・銀行強盗犯

○ 山(昼)
   山を登る人の足。
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登場人物

日影館タミカズ(ひかげだて たみかず)(27)・・・自殺志願者
野点那玩(のだて ながん)(39)・・・銀行強盗犯

○ 山(昼)
   山を登る人の足。
   リュックを背負ったその人物は、黙々
   と山を登る。
   ふと開けた土地に出た。淡い太陽光が
   美しい。
   そこである物を見つける、日影館タミ
   カズ(27)。
   土地中央あたりに、大きな竹かごが逆
   さまになって置かれている。
   てくてくと近づくタミカズ。
   カゴを軽く蹴り、どかす。
   と、中から人の首が出てきた。タミカ
   ズの方を振り向く。
   小刻みに震え、驚くタミカズ。
   首の男は、首まで土に埋まっているら
   しい。
首の男「おい・・・、タバコ持ってねえか?」
   ポカンとするタミカズ。
タミカズ「ア、アメスピなら・・・」
首の男「それでいい!」
   タバコを首の男の口に挟んでやるタミ
   カズ。ライターで火を点ける。
   長々と、長々とタバコを吸いこんでか
   ら、吐きだす。
首の男「はああぁぁぁ・・・。生き返ったよ・・
   ・」
タミカズ「そうですか・・・」
   タミカズは気付いた。首の男が、チラ
   ッと何かを見たのを。
首の男「水、持ってない?」
   男の視線の先を追うタミカズ。
   そこには竹でできたノコギリが置いて
   ある。
   タミカズ、察する。
首の男「ねえ、水・・・」
タミカズ「俺・・・これ知ってます・・・。
 江戸時代の罪人の処刑方法だ」
首の男「・・・」
タミカズ「罪人を首まで土に埋めて、そばに
 竹で出来たノコギリを置いておく。通りが
 かった人がノコギリで首を切っていく・・・」
首の男「・・・・・・君は、引くのかね・・・? 」
タミカズ「あなた次第です」
   風が、近くの木々をなびかせていく。
首の男「俺次第・・・?」
タミカズ「ええ。あなたが〝何を〟してそん
 な状況になったのか。首を引くかはそれを
 聞いて判断します」
首の男「俺は・・・野点那玩だ。巷を騒がせ
 た銀行強盗犯だ」
タミカズ「野点・・・。そうだ、銀行強盗犯
 として、捜索中の一人だ」
那玩「そうだ・・・。仲間が二人いたんだが、
 俺は金を隠してね。在りかを吐かないから、
 仲間に埋められちまった」
タミカズ「それで、僕に助けろと?」
那玩「そうだ。ただ助けるだけじゃない!隠
 した金から3000万、君に分ける」
   タミカズはそよ風の心地よさに恍惚と
   なっている。
那玩「・・・おい、3000万だ!」
タミカズ「僕は・・・ここに自殺しに来まし
 た。これから死ぬ人間に、3000万なん
 て必要でしょうか」
那玩「自殺に・・・?」
タミカズ「そこの木で首吊って死にます」
那玩「・・・死ぬ前に、助けてくれないか」
タミカズ「助けたらあなたは僕の自殺を止め
 るでしょう?」
那玩「止めない!黙って、見てる。いくらで
 も自殺してくれ」
タミカズ「・・・自殺するにはまだ時間があ
 ります。那玩さんをよく観察して、どうす
 るか、判断させてもらいます」
那玩「・・・俺も、埋めた仲間が許した時間
 は明日の朝までだ。今日が終わればとにか
 く殺される。長い付き合いになりそうだ」

○ 山(昼)
   タミカズが火を焚き、ヤカンを温めて
   いる。
   ピーっと鳴って沸騰を知らせるヤカン。
   それでコーヒーに湯を注ぐタミカズ。
   飲んで、一休憩。
那玩「・・・君、ホントに自殺しに来たの?」
タミカズ「へ?そうですよ。あと少ししたら
 自殺します」
那玩「・・・なぜ自殺する?」
タミカズ「ふふ。近しい人たちは皆それを聞
 く。答えると嘲笑するんです」
那玩「笑わん。言ってみろ」
タミカズ「仕事場でいじめられてるんです」
那玩「そうか・・・。辛いだろうな」
タミカズ「そんな偽善は聞きたくないな」
那玩「本心だ。俺も過去、色んな職場でいざ
 こざを起こしてきた」
タミカズ「それで強盗犯に?」
那玩「そう言えるだろう。この道以外に生き
 場所は無かった」
タミカズ「僕には、どこにも生き場所は無か
 った」
那玩「そこでだ!3000万!それだけあれ
 ば日本だろうと海外だろうと、好きなよう
 に生きていける!」
タミカズ「3000万ぽっちじゃ僕は救われ
 ませんよ」
那玩「・・・こうしよう。俺は君を社員とし
 て雇う。俺にタバコを吸わせたり、水を飲
 ませたりする度に、給料として金を払おう」
タミカズ「3000万とは別で?」
那玩「別だ!いくらでも上乗せする」
タミカズ「・・・自殺までの暇つぶしだ。や
 ってもいいですよ」

○ 山(夕)
   夕陽が照っている。
那玩「タミカズ、水を・・・」
   タミカズ、地面の上に置いてあった水
   筒を取り、那玩に飲ませる。
那玩「はあー・・・。今ので10万上乗せだ」
タミカズ「いま、3120万になってます」
那玩「分かってる・・・。俺を掘り出してく
 れたら、もっとやるんだが」
タミカズ「それは出来ない。強盗仲間にも那
 玩さんに対して思う所あるでしょう」
那玩「奴らに殺されるかもしれん」
   タミカズ、胸の前で十字をきる。
那玩「助けちゃくれんか」
タミカズ「ふふ。助けて欲しいのはこっちの
 方ですよ」
那玩「自殺か・・・。くだらん死に方だな。
 生き方なんていくらでもあるだろうに」
タミカズ「・・・」
   那玩がふと気付くと、タミカズはいつ
   の間にか瞑想を始めていた。
   じっとしたまま動かない。
那玩「変な奴・・・」
   ×     ×     ×
   30分経過した。
   タミカズは依然として動かない。
那玩「おーい。死んじまったのかぁ?」
   那玩がちらっとよそ見をして、また目
   をタミカズに戻す。
   タミカズは寝っ転がっておいしそうに
   タバコを吸っていた。
那玩「吸うんだ!瞑想後にタバコって・・・」
タミカズ「吸いますとも。瞑想は神との対話
 です。この神が厄介もんでしてね・・・」
   その時、グ~~とタミカズの腹が鳴る。
タミカズ「そろそろ夕食の時間か・・・」 
   那玩が食いつく。
那玩「美味しいものっ、美味しいもの作ってね!」
   タミカズが背負ってきたリュックを開
   ける。
   レトルト食品が何点か入っている。
   那玩が必死にそれを見る。
タミカズ「何にしますかねぇ。カレー、ラー
 メン、さんまの缶詰め・・・」
   タミカズ、那玩の方を見、
タミカズ「社長、何が良いですか?」
   那玩の顔がパッと明るくなる。
那玩「そ、そうだな~。ラーメン・・・、い
 やカレーかな!30万払おう!」
タミカズ「今ので3150万になりました」
   そう言い、カレー作りに取り掛かる。
   火を焚き、お湯を作ろうとするが、水
   が水筒のものだけだ。
タミカズ「近くに水場が無いか探してきます
 ね」
那玩「はやく帰ってきてね」

○ 山(夜)
   暗くなってきた山。
   懐中電灯で山道を照らしながら歩を進
   めるタミカズ。
   しばらく歩くと小さな池を見つけ出す。
   持ってきた鍋に水を入れる。
   池の水面に、夜空の星や月が反映され
   てる事に気づく。
   その美しさに、思わず見入るタミカズ。
   だが、すっと顔の表情が暗くなり、ス
   タスタとその場を去っていく。

○ 山(夜)
   那玩の居る場所まで戻ってきたタミカ
   ズ。
タミカズ「社長、戻ってまいりました。これ
 でカレーが食えますよ」
   返事が無い。
   那玩の元まで近づき、懐中電灯で照ら
   す。照らされた那玩は、首から血を垂
   れ流していた。
タミカズ「!!!」
   しゃがみ込み、傷の様子を見るタミカ
   ズ。辺りを見回す。そばに血の付いた
   竹のノコギリが落ちている。
タミカズ「・・・誰にやられたんですか?」
那玩「わ、分からない・・・。タミカズが行
 ってから、少ししたら後ろで足音がして、
 直後切られた」
タミカズ「とにかく傷の手当てをしましょう」
   タミカズ、リュックから包帯や消毒薬、
   ガーゼなどを取り出す。
   手当てしやすいよう、ランプを灯す。
   辺りが明るくなった。
   まず消毒薬を傷口につけようとする。
タミカズ「ひどい傷だ・・・。沁みるでしょ
 うが、耐えて下さい」
那玩「何か、口に噛ませてくれ・・・」
   タミカズ、近くに落ちていた枝を拾い、
   那玩に噛ませる。
タミカズ「いきます・・・」
   消毒薬のついた綿棒が、傷口に触れる。
那玩「(声にならない絶叫)」
   タミカズは黙々と綿棒を動かしていく。
   やっと終わった。
   那玩が枝を吐き出す。ゼェゼェと息が
   荒い。
   タミカズは傷口に貼るガーゼを用意を
   する。
那玩「犯人は分かってる。強盗仲間の二人だ
 ろう。待ちきれなくなって、脅しをかけて
 るんだ」
   ガーゼを貼り、その上から包帯を首に
   きつく巻く。
那玩「クソどもが・・・!」
   タミカズ、医療品を片付けながら、
タミカズ「また襲ってくる可能性はあるでし
 ょうか・・・?」
那玩「分からん。襲ってきたら、君は逃げて
 くれて構わない」 
タミカズ「・・・僕は逃げませんよ。社長を
 守らなければ」
那玩「・・・」
   ×     ×     ×    
   那玩とタミカズがレトルトカレーを食
   べている。
   と言っても那玩はタミカズに食べさせ
   て貰っているのだが。
那玩「美味い!美味い!タミカズ君、100
 万やろう!」
タミカズ「レトルトカレーくらいで・・・(
 笑)」
那玩「お代わりは無いかな!?」
タミカズ「僕が食べ残したものでよければ・
 ・・」
那玩「それでいい!プラス50万!」
    ×     ×     ×       
   那玩とタミカズ、二人で煙草を一服し
   てる。美味しそうに吸う那玩。
那玩「・・・朝が来れば、俺は殺される」
タミカズ「・・・」
那玩「金の在り処を言わなきゃ、殺される・
 ・・」
タミカズ「僕に、金の在り処を教えてくれな
 いでしょうか」
那玩「タミカズ君に?」
タミカズ「強盗仲間より先に僕が見つけ出せ
 ば、僕たちの金は守られる」
那玩「なら、今、助け出せばいい!」
タミカズ「それは出来ない。仲間を裏切って
 金を隠した罰は、しっかりと受けるべきだ」
那玩「やっかいな性格だね、お前さん・・・」
タミカズ「金の在り処は?」
那玩「・・・神奈川に城山という山がある。
 その山の頂上に大きな木がある。近くに白
 い石があるから、そこを掘れ」

○ 山(朝)
   ガサガサという二人組の足音で目覚め
   る那玩。
   遅れて寝袋で寝ていたタミカズも目を
   覚ます。
   二人の目の前には男が二人立っている。
   拳銃を握っている。
那玩「来たか」
男1「吐く気になったか」
那玩「ならんね。あの金は俺のもんだ」
   男2がタミカズに視線を移す。
男2「聞き出せたのか?」
   驚いた表情の那玩。
タミカズ「聞き出せなかった・・・。この人、
 強情でね」
那玩「タミ・・・カズ・・・君・・・?」
男1「こいつは俺らに雇われた聞き出し屋だ」
タミカズ「そういう事です。社長の首を切っ
 たのも僕だ」
男2「ちっ。聞き出せなかったなら、死んで
 もらう」
   銃口を向ける男二人。
    ×     ×     ×      
   那玩の首の近くに立つ木にロープがか
   けられている。
   その先は輪になっており、手を縛られ
   たタミカズの首に掛っている。
   ロープの反対側は那玩の首に巻かれて
   いる。
   タミカズは大き目の木片に立っており、
   不安定に揺れるそれから落ちたら、タ
   ミカズも那玩も死ぬ。
男1「じゃあな」
男2「くたばりな」
   去っていく二人。
   残された二人。
   タミカズが立っている木片がぐらつく。
那玩「お、落ちんでくれよ・・・!」
   首に巻かれたロープがきつい。苦しそ
   うな那玩。
タミカズ「僕は生き残る・・・」
   タミカズ、慎重に前で縛られた手を動
   かす。
   ズボンのポケットに手を入れようとし
   ている。
   難儀しながらも手が入り、中から取り
   出されたのはポケットナイフ。
タミカズ「僕には・・・、もう切る力は無い。
 ナイフをそっちに投げます。口で受け止め
 て、切ってください」
   木片の揺れが更に激しくなった。
   タミカズ、ゆっくりとナイフを開き、
   那玩がいる方に向けて投げる。
   飛んでったナイフは、那玩の顔の目の
   前の地面に突き刺さった。
那玩「ま、任せとけ・・・!」
   何度か失敗したものの、何とかナイフ
   を口に挟む事に成功する那玩。
   首に巻かれたロープの切断に挑む。
   その間もタミカズの立っている木片は
   グラグラと揺れ続けている。
   ロープが切れた!
   と、同時に落下するタミカズ。
   ホッとしたのも束の間、防犯ブザーが
   どこかで鳴り響き始める。
那玩「な、何だぁ!?」
   ブザーはタミカズが落下すると鳴るよ
   うに仕掛けられていた。
タミカズ「マズイ!奴らが戻ってくる!」
那玩「落ちつけ!」
   辺りをバッと見回す那玩。あの辺だ。
那玩「俺が強盗に使った拳銃を、奴らあの辺
 に埋めたはずだ!掘り出して戦うんだ!」
   那玩の言った〝あの辺〟を必死に手で
   掘り始めるタミカズ。
   二人組の足音が近づいてきた。
   ハアハアと荒く息をしながら掘り続け
   るタミカズ。
   あった!グロックだ。
   同時に男1が現れた。銃口はしっかり 
   タミカズに向けられている。
   が、タミカズの方が速かった。放たれ
   た弾丸は、男1の胸を貫通した。くず
   折れる男1。
   男2は?
那玩「いたぞ!右、15時の方向だ!」
   確かに。その方向から現れる男2。
   タミカズが寝そべるような姿勢で銃を
   構える。
   両者同時に銃を撃つ。
   男2が撃った弾丸は、タミカズの頭数
   センチ脇を通り過ぎていった。
   タミカズが撃った弾丸は男2の脳天を
   ぶち抜く。
那玩「よ、よくやった!撃たれてないか!?」
   タミカズ、ヨロヨロと立ち上がる。
タミカズ「大丈夫です・・・」
那玩「これで・・・全部終わったんだな・・・。
 助かったよ・・・」
   タミカズの様子がおかしい。暗い。
タミカズ「終わったのはあなただけだ。僕は
 終わらない・・・」
   そんなような事をブツブツ呟きながら
   那玩に近づいてくる。
那玩「何言ってるんだ・・・?俺を助け出し
 て、金は山分け。それでいいじゃないか・・・ ?」
タミカズ「欲に目が眩んだ人間の顔をご存じですか?」
   タミカズが伏せてた顔をゆっくりと上
   げる。
タミカズ「こんな顔をしてるんです」
   タミカズの無表情な顔。
タミカズ「さようなら・・・」
   去っていこうとするタミカズ。
那玩「ま、ま、待ってくれ!!なあ!おい!・・
 ・待てって!!!」
   那玩の必死な叫びに、タミカズは足を
   止める。
那玩「餓死なんて、そんな死に方は嫌だ・・・。
 首を切ってくれ・・・!」
   驚いたような表情のタミカズ。
   しかしスッとノコギリが落ちている方
   に歩いていく。
タミカズ「先に地獄で待っててください」
   那玩が瞑るまい、と目を見開いた。
   竹で出来たノコギリが肉を切り裂く、
   不快な音が、静かな山に響く。
   ブシュっと音を立てて、那玩の首から
   血が噴き出す。
   タミカズは首全てを切らず、動脈が切
   れる程度にした。
   那玩の口の中は溢れだした血で埋まり、
   何か言おうとしてるが血が邪魔で聞き
   取り辛い。
那玩「・・・あ・・り・・がと、よ・・・」
   何も言わず、那玩の拳銃だけを持って、
   山から去っていくタミカズ。

○ 山(昼)
   那玩の首から溢れ出た大量の血は、周
   りの土に流れ込み、軟くした。
   那玩が最後の力を振り絞り、体を動か
   す。
   すると、動くではないか。
   必死にモゾモゾと体を動かし、遂に右
   手が土から出てきた。続いて左手。
   あとは這うようにして、体全体を出す。
   大量出血のせいだろう、那玩の顔面は
   蒼白。死人のようだった。
   それでも那玩は冷静だった。
   まず傷口の手当てにかかる。
   タミカズが残していったリュックから
   医療品を取り出し、タミカズがやった
   ように傷口を手当する。
   そして食べられる食料は全て食べ、力
   をつける。
   強盗仲間の拳銃のチェック。どちらも
   使える。
   那玩の目に、復讐の二文字が焼きつい
   た。

○ 神奈川県、城山(夕)
   山を登っていく足。タミカズだ。大き
   なシャベルを持っている。
   登っていくと見えてくる、頂上にある
   大きな木。
   そこには那玩の言葉通り白い石があっ
   た。
   思わず笑みがこぼれるタミカズ。
   シャベルで地面を掘り始める。
     ×     ×     ×    
   明らかに土とは違う感触を、シャベル
   で感じるタミカズ。
   そこから現れたのは大きな麻袋。
   穴から引っ張り上げ、袋を開けてみる
   と大金が入っていた。
タミカズ「ははっ・・・、ははは」
   笑いが止まらない。
   ザッ。
   背後で人の足音がした。
   素早く振り返るタミカズ。
   そこに立っていたのは那玩だった。
   青白い顔。泥だらけの服。血まみれの
   首元。首に巻いた包帯が風で揺れてい
   る。
タミカズ「し、死んだはずだ・・・!」
   そう言いながら地面に置いた拳銃を探
   る。
那玩「お前のお陰で、生き返ったよ」
   タミカズ、闇雲に銃を撃つ。
   那玩の頬をかすめる銃弾。
   那玩が二丁拳銃を構える。
   タミカズ、思わず両手を顔の前に出し、
   銃弾を防ごうとする。
   しかし那玩は撃たない。
   その隙にタミカズが銃を連射する。
   銃弾全てが那玩に当たらず、周りの木
   や地面に着弾する。
タミカズ「てめえ、死ねよ・・・!死んだん
 だろ!!」
   カチッ、カチッ、と弾の無くなった銃
   を虚しく撃ち続けるタミカズ。
   那玩は尚も二丁拳銃を構え続ける。
那玩「・・・お前に、いい死に方があるよ」
   ×     ×     ×   
   タミカズが、金の埋まっていた大きな
   穴に入っている。
   そこにシャベルで土をかける那玩。黙々
   と。
   タミカズが首まで土に埋まった。 
   そんなタミカズを見下ろす那玩。タミ
   カズの首のすぐ側に、竹で出来たノコ
   ギリを放りだす。
   那玩が金の入った袋をかつぐ。
那玩「先に地獄で待っててくれ」
   そう言い、歩き去っていく。
   タミカズは何も言わない。強張った表
   情で、虚空を見つめている。
   今までの事を全て悔いるような、ひと
   筋の涙が頬を伝った。
   これから夜がやってくる。

               終わり

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