そして、正しい唄を知っている 恋愛

音読は苦手。声は小さいし、クラスの女の子とも仲良くなれない。そんな私を支えたのは、隣の席に座る朝井くんが弾くギターだった。
ウノカグラ 25 2 0 10/29
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

遠野芽衣(18)…高校生
朝井春(18) …芽衣のクラスメイト

女子生徒A
女子生徒B
女性教師
生徒たち

○高校・教室・中
   授業中。
   女性教師 ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

遠野芽衣(18)…高校生
朝井春(18) …芽衣のクラスメイト

女子生徒A
女子生徒B
女性教師
生徒たち

○高校・教室・中
   授業中。
   女性教師、前に立ち。
女性教師「じゃあ、この行から……」
   遠野芽衣(18)、窓際の席。
   机の上の教科書に視線を落としている。
女性教師「遠野さん」
   芽衣、反射的に顔を上げる。
   渋々立ち上がる。
   教科書を開いて、持ち、
芽衣「(小さな声で)……恥の多い生涯を送って来まし
 た。自分には」
   女性教師、それを遮り、
女性教師「もっと、はっきり読める?」
芽衣「(変わらない声量)……自分には、人間の生活と
 いうものが、見当つかないのです」
   と、音読を続ける。
   呆れた様子の女性教師。
   生徒たち、聞いていない。
   課題をする人。居眠りする人。
   朝井春(18)、芽衣の隣の席。
   ただ一人、真面目に聴いている。

○同(夕)
   窓の外、夕暮れ。
   芽衣、自分の席で課題をしている。
   女生徒たち、黒板に落書きをしている。
女子生徒A「遠野さーん」
   芽衣、顔を上げる。
女子生徒A「これさ、消しといてよ」
   と、黒板を指差す。
芽衣「え、でも」
女子生徒B「じゃ、よろしく」
   と、出て行ってしまう。
   取り残された芽衣。
   廊下から、
女子生徒A「楽勝すぎるんだけど」
女子生徒B「まじで優等生」
   × × ×
   芽衣、背伸びして、黒板を消している。
   届かず、黒板消しが床に落ちる。
   同時に、チョークの粉が舞う。
   制服が白く汚れてしまう。
   思わず溜息を吐く。

○同・廊下(夕)
   芽衣、手洗い場でハンカチを濡らし、制服の
   汚れを落としている。
   と、微かにギターの音色。

○同・音楽室・前(夕)
   芽衣、ハンカチで手を拭きながら、静かにド
   アを開ける。

○同・中(夕)
   朝井、床に座り、ギターを弾いている。
   芽衣、その姿に見惚れてしまう。
   朝井、視線に気がつき、手を止める。
朝井「ん?」
芽衣「あ、あの、私、その曲好きで」
   と、必死に伝えようとする。
朝井「そんな一気に言わなくても」
   と、笑う。
芽衣「……ごめん」
朝井「こっち、来なよ。おいで」
   と、手招き。
   × × ×
   芽衣、朝井の前に座っている。
   朝井、エレキギターを弾いている。
芽衣「……ギター、上手だね」
朝井「人に聞かせたことないけど」
芽衣「あ、ごめん、聞いちゃって」
朝井「いや、クラスの明るーい連中に聞かれちゃっ
 たら、ちょっと面倒でしょ?」
   芽衣、頷いて、
芽衣「厄介だね。あの子たちは」
朝井「だから」
   と、演奏を止めて、
朝井「見つけてくれたのが、あなたで良かった。本
 当に」
   芽衣、少し驚くが、吹き出す。
芽衣「……ライブのMCみたい」
朝井「いや、ほんとに。これ本音」
芽衣「ごめんごめん。分かってる」
朝井「結構笑うんだね」
芽衣「え?」
朝井「あんまり、遠野さんが人と話してるところ、
 見たことないから」
芽衣「声、出すの疲れるっていうかね。どうして
 も」
   朝井、ギターを床に置く。
芽衣「この距離とかは大丈夫なんだけど……」
朝井「うん」
芽衣「今日みたいに、音読する時とかは、声大きく
 しないと」
朝井「俺には聞こえてるよ」
芽衣「え?」
朝井「まあ、隣の席だからってのもあるかもしれな
 いけどさ、ちゃんと俺には聞こえてるよ。大丈
 夫」
芽衣「ほんと?」
朝井「うん。遠野さんの声、結構好きだし」
芽衣「……朝井くんって、そういうの軽々しく言っ
 ちゃうタイプの人?」
朝井「あ、嫌だった? ごめん」
芽衣「ううん。すごく嬉しい」
   と、照れ隠しでギターに視線を移す。
朝井「良かった。あ、弾いてみる?」
芽衣「え、いや、私は」
朝井「弾きたいって顔してる」
   と、芽衣の顔を見つめる。
   芽衣、思わず目を逸らす。

○同(夜)
   窓の外、薄暗い。
   芽衣、ギターを構えている。
   朝井、後ろから包むようにコードの押さえ方
   を教えている。
朝井「そう。で、人差し指が……」
   と、互いの指を重ねる。
   芽衣、顔を赤くさせている。
芽衣「……うん」
   ゆっくりコードを鳴らす。
   芽衣と朝井の指、当たったり、時に離れたり
   しながら。
朝井「で、次がG、C……」
   と、芽衣の耳元で伝えていく。
   場所が変わっていく指。
   綺麗な音ではないコード。  
   室内、その音だけが響く。

○遠野家・外観(夜)

○同・芽衣の部屋(夜)
   芽衣、ベッドに座り、イヤフォンで音楽を聴
   いている。
   ギターを弾くように、空中でコードを押さえ
   る。
   静かに目を瞑る。

○高校・教室・中(朝)
   芽衣、窓際の席で本を読んでいる。
   朝井、席に着く。
朝井「おはよ」
   芽衣、本に栞を挟んで閉じる。
芽衣「あ、おはよう」
朝井「放課後、どう?」
芽衣「え?」
   朝井、ギターを弾くポーズ。
   芽衣、笑顔で頷く。  

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。