おまえは匿名 ドラマ

大学生の祥真は、匿名で個人への誹謗中傷を書くことに快感を得ていた。 そんな暗澹な日々を送っていたが、同じ学部の同級生・羽菜を好きになり、また47歳の日常系ユーチューバー・‘やっさん‘にどハマりする。 つまらなかった日々が輝いた。のも一瞬だった…。 些細な事から日常は再び暗澹とし、匿名での誹謗中傷はさらにエスカレート。それは好きだった‘やっさん‘にも向かう。 ある日、やっさんのYouTubeの更新が突然止まる。やっさんは祥真の身近な人物であった。そしてこれが世間をも巻き込む大事件へとなっていく…
古堅元貴 66 4 0 04/27
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第一稿

『おまえは匿名』

登場人物
矢作祥真(21)大学3年生
矢作太一(46)祥真の父
矢作優(49) 祥真の母

三上亮(21)大学3年
小川羽菜(21) 大学3年
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『おまえは匿名』

登場人物
矢作祥真(21)大学3年生
矢作太一(46)祥真の父
矢作優(49) 祥真の母

三上亮(21)大学3年
小川羽菜(21) 大学3年

竈門二朗(39) 祥真のバイト先の店長
金井とよ(86) 祥真の祖母。優の母。



○ある部屋
暗い室内。男、三脚に立てられたカメラ前に立つ。

○法明大学・大教室(日中)
100名ほどの学生が授業を受けているが、大半は授業を聞いてない。
その中に大学3年・矢作祥真(21)。スマホでSNSのタイムラインを漫然と見ている。

○同・キャンパス内広場(夕)
授業後。校門へ向かって歩いている祥真。
中庭でキスや抱擁をしている学生カップルがちらほら。
二度見、三度見している祥真。

○地下鉄・ホーム(夕)
電車を待っている祥真。電車が来る。
車内に入り、席に座ろうとすると、後ろから中年男性が割り込みで入ってきて座られる。
睨む祥真。
中年男性、スマホをいじっている。祥真、スマホを出し、ツイッターに
【電車で割り込みしてでも座りたい奴。疲れるほ
ど社会に貢献してんのかよ】と投稿。
続けてツイッターに、
【公然で堂々とイチャイチャ出来るカップル。ほぼ確でブス】と投稿。
タイトル『おまえは匿名』

○矢作家・リビング(夜)
スマホをいじりながらテレビを観ている祥真。先程の投稿に数件のいいねが付いている。
キッチンで夕食の準備をしている矢作優(45)。
テーブルでビールを飲んでTVを見ている矢作太一(49)。
×    ×     ×
祥真、太一、優、夕食中。
優「祥真、日曜は?アルバイト?」
祥真「今週はないよ」
優「駅前に新しくしゃぶしゃぶのお店出来たの」
祥真「へえー。行くの?」
太一「日曜・・」
優「お父さん、日曜ダメ?」
太一「いや、大丈夫」
優「また休日出勤?」
太一「今週もたまたま」
優「この前もよ」
祥真「休日まで社会の歯車。嫌だね」
太一「誰かが休日も社会の歯車になるからこそ、便利な世の中に繋がってるんだぞ」
祥真「よくない」
優「同意」
太一「ごちそうさま」
優「あ、逃げた」
太一、食器を片付け、2階の自室へ向かう。
優「部屋行くの?」
太一「仕事残ってて」
優「最近仕事持ち帰りすぎじゃない?押し付けられてたら、拒まないと」
太一「大丈夫大丈夫」
太一、部屋へ行く。

○法明大学・教室(日中)
授業中。祥真、スマホで
「注目女優・有紗!躍進のワケ!?」という見出しのネット記事を見ている。
祥真、記事のコメント欄に、
【誰こいつ?観たことねえ】と投稿。隣の三上亮
(21)が
亮「まじかよー」
祥真「え?」
亮「来週発表だって。グループプレゼン」
祥真「グループプレゼン?」
教授「近くの人とグループを作って下さい」
教室内の学生達、近くの人とグループを作る。
祥真と亮、席近くの学生1・2と小川羽菜(21)に挨拶をする。
羽菜「小川です。よろしくお願いします」
祥真「・・・お願いします」

○カフェ(夕)
祥真と亮、飲み物を飲んでいる   
祥真「だりぃ」
亮「しかもメンツぱっとしなくね?」
祥真「それな」
亮「でも小川さん?あの子可愛いな」
祥真「そう?」

○ファストフード店・店内(夜)
祥真、レジで接客をしている。
客1「ポイント付かないの?」
祥真「・・・先程お聞きしたのですが」
客1「はい?」
客1、イヤホンを付けている。
祥真「会計後は付けられないので」
客1「何そのルール?おまえらの都合じゃん」
店長の竈門二朗(39)が来る。
竈門「大変申し訳ありませんでした!今回のポイント分は返金いたしますので」
竈門、客1に金を渡す。客1、スマホをいじりながら去っていく。
竈門「(舌打ち)。ああいう奴がネットで悪口書き込んでんだよ」
祥真「え?」
竈門「しかも自分の名は晒さずに匿名。現実世界で上手く行かないからって。街中でタピオカジュースのゴミを捨ててるのもほとんどあいつ。俺には分かる」
バイト1「(奥から)炭次郎店長。またサーバー止まってます」
竈門「だから二朗。竈門だけど炭次郎じゃないから」
竈門、バックヤードに向かう。

○部屋
男、PCでネット記事のコメント欄を見ている。
コメント欄には匿名で多くの誹謗中傷の書き込み。
部屋の外からノック音。男、振り向く。

○矢作家・リビング(夜)
祥真、太一、優、夕食中。
祥真「イヤホン付けてて、聞いてないのに逆切れ。意味分かんなくない?」
優「いやぁ。私は絶対働きたくない」
太一「そういう奴はな、いつか必ず自分にバチが降りかかってくる」
スマホの通知音。太一、確認する。
優「また仕事~?」
太一「え?ごめんごめん」
優「ご飯食べてる時くらい持ち込まないでよ~」
祥真「家族で飯食ってる時に仕事持ち込む父親も、バチが降りかかってくるね」
優「よく言った」
太一「(祥真に)おまえっ」
太一、祥真にちょっかいを出す。

○法明大学・カフェテリア(日中)
祥真達、プレゼンについて話し合っている。亮、動画を流している。
やっさん(動画)「49歳会社員のやっさんです!」
祥真「何これ?」
亮「やっさん」
祥真「誰?」
亮「会社員ユーチューバー。今キテるのよ」
祥真「ユーチューバーって信用ならないでしょ?」
学生1「このチャンネルよく観る」
羽菜「私も!面白い上に、観ると視野広がるし。世の中の為に動かなくちゃって思える」
祥真「偽善。登録者数増やす為だけの偽善」
学生2「ひねくれてますね」
祥真「その場の少数派をひねくれてるって決めつける方がひねくれてるよ」
羽菜「ひねくれてる」
亮「いいから見てみろって!」
祥真「おれユーチューバー見ないから」

○地下鉄・車内(夕)
祥真、やっさんの動画を見て、笑っている。

○矢作家・玄関(夜)
祥真、玄関に入ると宅配業者とすれ違う。玄関に太一と優。横に大きな段ボール。
祥真「何これ?」
太一「仕事で必要なんだよ」
優「そんなに大きいもの?」
太一「長持ちするから高いの買ってしまった」
優、段ボールのラベルを見ようとする。
太一「(優を制止し)たいしたものじゃないよ」
優「最近仕事ばっかり。家にまで持ち込んで。断れないんでしょ。私が会社に言おうか?」
太一「大丈夫大丈夫!今が頑張り時だから!」
太一、段ボールを抱えて2階へ上がる。
優「(溜息)。・・・それとも浮気?」
祥真「まさか」

○同・祥真の部屋(夜)
祥真、やっさんの動画を見て、大爆笑している。

○法明大学・カフェテリア(日替わり・日中)
祥真達、集まって話している。
祥真「・・・面白かった」
亮「だろ!」
羽菜「これも面白いよ」
羽菜、祥真に動画を見せる。羽菜の顔が祥真に近づく。
祥真「・・・」
   2人で動画を観ている。
亮「(祥真と羽菜に)ちょい!話し合い!」
羽菜「あ、ごめんなさい」
羽菜、祥真から離れる。残念な祥真。

○ファストフード店・店内(夜)
祥真、レジで接客している。竈門が来る。
竈門「好きな子できた?」
祥真「はい?」
竈門「いつもは愛想も機嫌も悪そうに働いてるのに。今日はニコニコして」
祥真「おれいつもそんな悪い印象なんですか?」
竈門「授業で一緒になって。話すようになって。そして突然物理的な距離が縮まって、あれ?好きかもって?」
祥真「・・・出来てないっすよ」

○法明大学・教室(日中)
授業中。祥真、窓の外を見て、黄昏ている。
×     ×     ×
授業終わり。祥真、教室を出ると遠くに友人と話しながら歩いている羽菜。
祥真「!?」
祥真、羽菜を見続ける。その姿は遠くなる。

○地下鉄(夜)
祥真、電車を待っている。
駅員「(アナウンス)電車の遅れ、申し訳ありません」
祥真「(舌打ち)」
   祥真、スマホを出そうとすると
女性の声「矢作さん?」
祥真「え?」
祥真、振り向くと目の前に羽菜。
祥真「あっ!?」
羽菜「お疲れ様です」
祥真「・・お疲れっーす」
×     ×    ×
電車内。祥真と羽菜、他愛もない会話で盛り上がっている。

○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、羽菜のラインのプロフィール写真を見ている。羽菜の写真をスクロールし拡大する。
祥真、それを見てにやけている。
ツイッターを開き、
【人生面白っ!】と投稿。

○実景(数日後)

○法明大学・キャンパス内広場(夕)
授業終わり。祥真、校門へ向かっている。広場にはキスや抱擁をしている学生カップル。
祥真、気にせず歩く。

○地下鉄・ホーム(夕)
祥真、電車を待っている。電車が来る。車内に入り、席に座ろうとすると、後ろから中年男性が割り込みで入ってきて座られる。
祥真、気にせずスマホをいじる。

○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、ベットでくつろぎながらツイッターに
【人生、自分次第!】と投稿。

○法明大学・カフェテリア(日替わり)
祥真達、プレゼンの話し合いをしてる。祥真、羽菜を見ている。
羽菜「なんかパッとしない」
祥真「え?」
亮「(PCのパワポを見て)確かに」
祥真「(気づいて)あー」
学生1「どうしますか」
学生2「手詰まりっすね」
祥真「・・・これどう?」
祥真、自身のPCの資料のフォルダを開き、皆に見せる。
一同「おおぉ」
羽菜「祥真君、いいかも」
祥真「・・・よかった」

○コンビニ(夜)
祥真、動画を観ながら買い物している。
×     ×     ×
祥真、レジで会計をしている。
店員「お支払いは現金ですか?」
祥真、電子決済の端末にスマホを置いている。
店員「お客様、お支払いは現金ですか?」
祥真、イヤホンをして店員の声が聞こえていない。店員の視線に気づく。
祥真「はい?」
店員「お支払いは現金です・・」
祥真「電子決済」
祥真、端末に置いてるスマホを強調している。
祥真「(つぶやきで)分かるだろ」
店員「すいません」
祥真「(聞こえてた事に)え。あ・・」

○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、羽菜に
【明日頑張ろう!】
とラインを送る。
×     ×     ×
祥真、やっさんの動画を見ている。
その後、LINEを開き、羽菜へのメッセージを確認する。が、既読は付いてない。
×     ×     ×
0時過ぎ。羽菜からのメッセージはない。スマホを置き、ベッドに入る。スマホから通知音。
祥真「!」
スマホを確認すると
【よろしくです!】
と羽菜からのメッセージ。祥真、にやけている。

○法明大学・大教室(日替わり・夕)
プレゼン当日。祥真達、壇上でプレゼンをしている。
×     ×     ×
羽菜が話し終わる。
亮「(祥真に)頼むぜ」
他メンバー、祥真に託すような眼差し。
祥真「おう」
   祥真、一歩前に出る。
祥真「では次に・・・」
×     ×     ×
祥真達、プレゼンが終わる。一同、教授からのコメントを待っている。
教員「・・・何が言いたかったんですか?」
亮「え?」
他メンバー「!?」
祥真「あ、いや・・・」
教員「これはプレゼンではない。君達の主観。今の君達
の話、ここにお酒がないだけで居酒屋で友達同士
で話してる会話と同じだよ」
祥真「いや・・・」
教員「君の主観はいらないんだよ」
×     ×     ×
授業後。他の生徒達、教室を出ていく。祥真達、教室に残っている。
学生1「こうなると思ったー」
祥真「は?」
学生2「それな」
祥真「何?俺が悪いの?」
亮「まあまあまあ」
祥真「なら案出せよ」
羽菜「単位大丈夫かな」
祥真「え?」
学生1「絶対落としたわ。この授業」
祥真、学生1に詰め寄る。
亮「とにかく!終わってよかった!」
最悪な空気の一同。

○同・校門前(夜)
祥真、校門へ歩いていると前に羽菜。
祥真、羽菜の方へ向かう。羽菜、走り出し、校門前に立つ男の所へ行く。
祥真「!?」
羽菜、男と抱き合い、手をつないで歩いていく。
絶望する祥真。

○地下鉄・ホーム(夜)
電車を待っている祥真。
駅員(アナウンス)「人身事故の影響で遅れが発生しています。誠に申し訳ありません」
祥真「(舌打ち)」
祥真、スマホでツイッターを開き、
【何回目だよ。学べよ、クソ。それにこいつら遅れて申し訳ないって気持ちある?】
と投稿。

○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、スマホにやっさんの動画更新の通知。
苛つく祥真。スマホを投げる。
祥真、再びやっさんの動画を開く。コメント欄に、
【つまんな。消えろよ】と投稿。

○実景(数日後)

○法明大学・廊下(朝)
授業後。祥真、次の授業の教室へ移動している。向こうから羽菜が歩いてくる。羽菜、祥真に気づく。
羽菜「(祥真に)お疲・・・」
祥真、羽菜を避けて通り過ぎる。

○プログラミング会社・オフィス(日中)
太一の職場。慌ただしい社内。太一、自身のデスクで俯いている。
同僚「矢作さん?」
太一「・・・。え、はい?」
同僚「大丈夫すか?」
太一「・・・はい」

○法明大学・教室(日中)
授業中。祥真、スマホでやっさんの動画を開く。数日前の祥真のコメントに多くのいいねが付いている。さらに
【こいつの動画で笑った事ねえ】
【早くやめろよ】
等のやっさんへの中傷コメントが増えている。
祥真「!?」

○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、PCでやっさんの動画のコメント欄を見る。やっさんへの誹謗中傷はさらに増えている。

○同・リビング(日替わり・朝)
祥真、リビングにやってくる。太一とすれ違う。
祥真「おはよう」
太一「・・おう」
太一、2階へ行く。
祥真「?」
×     ×     ×
優、家事をしている。
祥真「父さん、どうしたの?」
優「体調悪いから仕事休むって。だから言ったのに」
不安がさらに募る祥真。

○大学近く・歩道(夕)
祥真、歩きスマホでやっさんの動画のコメント欄を見ている。
【やっさんきめえ】
【死ね】
などの誹謗中傷はさらに増えている。
罪悪感を感じている祥真。
前方から車。祥真、歩きスマホで気づかず、どんどん車道に出ていく。車のクラクション。
祥真「!?」
急ブレーキで停まる車。
運転手「殺すぞ!」
逃げるように去っていく祥真。

○矢作家・リビング(夜)
祥真と優、夕食中。
優「何かあった?」
祥真「え?」
優「あんたまで顔色悪くして」
祥真「別に。父さんまだ体調悪いの?」
優「部屋から出てこない」
祥真「そうなんだ」
優「無理にでも休ませるべきだった」
何も言えない祥真。
  
○法明大学・情報ルーム(日替わり・日中)
祥真、PCでやっさんの動画を開くとコメント欄  
   に
【匿名だから何書いてもいいわけねえだろ】
【いじめと同じ。書いた奴らは犯罪者】
など匿名アカウントがやっさんを誹謗中傷しているアカウントを叩いてる。
祥真「!?」
   さらにコメントを見ると
【こいつらの特定求む!】
   という書き込み。
祥真、やっさんに書いたコメントを削除する。

○地下鉄・車内(夜)
祥真、これまでネットで投稿した自身のあらゆるコメントを削除している。

○矢作家・玄関(夜)
祥真、帰宅。2階から声。

○同・2階廊下(夜)
太一の部屋から声が聞こえる。祥真、部屋に入る。中に太一と優。
優「祥真・・・」
室内にはカメラの三脚やマイクなど多くの撮影機材。
祥真「何これ?」
太一のPC画面にはやっさんの動画。
祥真「!?・・・どういうこと?」
俯いている太一。

○矢作家・リビング(夜)
祥真と優、座っている。
祥真「・・・誹謗中傷の書き込み?」
優「同僚の萩原さんに聞いたら仕事押し付けられたり、パワハラは無いって。でも会社でも最近元気なかったとは言ってて。それで直接聞こうと部屋入ったら・・・」
優、やっさんの動画を流す。
祥真「これ、父さん・・・」
優「観て」
コメント欄には多くの誹謗中傷の書き込み。

○同・祥真の部屋(夜)
祥真、ベッドに横たわっている。

○地下鉄・車内(日替わり・朝)
祥真、やっさんの動画を開く。コメント欄に
【消えろって書いたこいつらが消えるべき】
【消しても書いた事は一生消えない】
などやっさんに誹謗中傷を書いたアカウントを攻撃するコメントが増えている。さらにやっさんに誹謗中傷を書いたあるアカウントが炎上している。
さらにスクロールしていくと
【(速報)こいつ特定!】
との書き込み。下のリンクをクリックすると
祥真「!?」
コメントを書いたアカウントの人物の実名や顔写真などの個人情報が晒されている。
祥真、自身のSNSアカウントを削除する。

○渋谷駅前・実景(数日後)
歩きスマホをしている多くの人達。

○法明大学・教室(日中)
授業中。祥真の席の後ろから声が聞こえる。
学生3「絶対あいつだろ」
学生4「きめー。来るなよ」
祥真、会話の聞こえる方を見る。学生達、笑っている。
スマホのカメラ音が聞こえる。
祥真「!?」
祥真、音の方向を見るが、誰が撮ったかは分からない。
亮「祥真?」
祥真「え?」
亮「大丈夫?」
祥真「・・・おう」

○矢作家・2階廊下(夜)
祥真、太一の部屋の前を通る。部屋前には食事が置かれている。

○同・リビング(夜)
祥真、リビングに降りてくる。優、テーブルで俯いている。
祥真、自身の部屋に戻る。

○ファストフード店・店内(日替わり・日中)
祥真、レジ前に立っている。
竈門「また自殺だよ」
祥真「え?」
竈門、スマホでネット記事を祥真に見せる。見出しは、
【女優・有紗自殺 誹謗中傷が原因?】
竈門「理解すべき。書き込んだ奴は自分達が殺人犯だっ
て。こういう奴らはカフェで自分の席以外の場
所でも平気でスマホ充電するんだよ」
祥真「・・・すいません」
竈門「え?」

○地下鉄・電車内(夜)
祥真、車内全員に見られているように感じる。

○矢作家・リビング(日替わり)
祥真と優、夕食を食べている。
祥真「・・・書いた」
優「え?」
祥真「消えろって・・・父さんの動画に」
優「どういうこと?」
太一、リビングに現れる。
優「・・・お父さん」
祥真「ごめんなさい」
優、祥真を叩く。
優「何してんの」
何も言えない祥真。
×    ×    ×
祥真、暗いリビングに一人。

○矢作家・リビング(日替わり・朝)
祥真、リビングに降りてくる。優、家事をしている。
祥真「・・・おはよう」
優、返答せず家事を続ける 。
   
○法明大学・教室(日中)
授業中。
亮「祥真」
祥真「ん?」
亮「顔死んでる」
祥真「ごめん」
亮「やっさんの動画、更新されないな」
祥真「そうなんだ」
亮、祥真にやっさんの動画のコメント欄を見せる。
亮「悪口書いて炎上させて。自分は顔が見えないからって好き放題書いて」
何も言えない祥真。
亮「こいつらが消えろよな」
その言葉が突き刺さる祥真。

○矢作家・太一の部屋前(夜)
祥真、2階へ上がると太一の部屋前に優。
優「お父さん、話そう。じゃないと解決しない」
優、祥真に気づく。  
優「・・・どうにかしてよ」
何も言い返せない祥真。
優「あんたがこうしたんじゃない。何とかしてよ」

○法明大学・校門前(日替わり・日中)
祥真、校門に着く。だが、校舎に入らず来た道を戻る。

○ゲームセンター(夕)
祥真、メダルゲームをしている。

○漫画喫茶(夕)
祥真、漫画を読んでいる。

○ファストフード店・店内(夜)
祥真、レジで接客をしている。
客2「釣り。五千円札。これ千円だろ」
祥真「え?あ、すいません」
祥真、五千円札を渡す。去る客2。竈門がくる。
竈門「フラれたか~」
祥真「はい?」
竈門「恋愛は数こなしてナンボ。フラれたら次。未練は相手にとってはストーカーだよ」

○矢作家・リビング(夜)
祥真、帰宅。優とスーツの男がいる。
優「(スーツの男に)よろしくお願いします」
スーツの男、優に会釈をし、リビングを出る。祥真、男とすれ違う。
祥真「・・・誰」
優「弁護士さん」
祥真「弁護士?」
優「裁判するから」
祥真「え?」
優「あなたが何を犯したのかちゃんと理解してもらう為に」
それをリビングの外で聞いている太一。

○実景(数日後)

○矢作家・玄関(日中)
インターホンが鳴る。優、扉を開ける。祥真の祖母・金井とよ(86)が立っている。
×    ×    ×
リビング。優、とよが座っている。
とよ「優、何してるの!?」
優「あの子は許されない事をした」
とよ「だからって裁判・・・。家族よ」
優「その家族を壊したの」

○公園(日中)
祥真、ベンチに座っている。家族連れが目に入る。
祥真、立ち去る。

○矢作家・リビング(日中)
太一、リビングに降りてくる。優、テーブルで俯いている。
太一、部屋へ戻る。

○とよの家・居間(日中)
祥真、座っている。とよ、お茶を出す。
とよ「大丈夫?」
祥真「うん」
とよ「おばあちゃんは分からないけど、どうして書き込
み?していたんだい?」
祥真「・・・ストレス発散・・・出来ると思って・・・」
とよ「ストレス発散になったのかい?」
祥真「え?・・・」
とよ「自分でも分からない?」
俯く祥真。

○矢作家・太一の部屋(夜)
太一、PCを見ている。画面には祥真と太一、優の実名と顔写真が掲載されているまとめサイト。
×     ×     ×
リビング。優、pCの画面は家族の個人情報が晒されているまとめサイト。
優「なんで・・・」
×     ×     ×
祥真の部屋。祥真、スマホを見ている。画面は太一、優と同じまとめサイト。  

○矢作家・リビング(日替わり)
優、弁護士と話している。優の横にはとよ。
弁護士1「こちらも調査していますが、やはり匿名の書き込みを特定するのは難しく・・」
優「・・・分かりました。ならまず息子を訴えます」
とよ「優!」
優「息子が書き込んだのは事実ですから」
とよ「家族の事なら家族内で解決すればいいじゃない。わざわざ裁判なんて祥真が・・・」
優「裁判しなくちゃいけないほど重い事なの」
何も言えなくなってしまう、とよ。
優「それに書き込んだくせに、こうしてる今ものうのうと生きている他のネットの奴ら一人ひとりにも分からせる為にも、裁判をする」

○法明大学・教室(日中)
   授業中。亮、周りをチラチラ気にしている。祥真、それに気づく。
亮「・・・あれ、まじ?」
祥真「え?」
亮「あのー、ネットのさ。書き込み?」
祥真「・・・まあ」
亮「・・・そっかあ」
他の学生達、祥真を見てざわついている。

○ファストフード店・バックヤード(夕)
祥真、退職届を竈門に渡す。
竈門「そっかあ」
祥真「・・・すいません」
竈門「まあ働きたくなったらすぐ連絡頂戴」
祥真「・・・お世話になりました」

○矢作家近くの道(夜)
祥真、家へ歩いている。通りすがる人達、祥真を二度見したり、噂話などをしている。

○矢作家・太一の部屋前(夜)
祥真、太一の部屋前に立っている。
祥真「(部屋にいる太一に)父さん」
応答はない。

○同・リビング(夜)
祥真、リビングにくる。優、祥真に気づいてテーブルに明日の裁判の開廷時間などの詳細が書かれた資料を置く。
優、家事を続けている。

○裁判所・入り口前(日替わり・日中)
裁判所の前には報道陣と野次馬。
×     ×     ×
ニュース中継が行われている。
レポーター「人気ユーチューバーへのネット上での誹謗中傷。何とこのユーチューバーの実の子供が書き込みを行っていたというこの事件。裁判がいよいよ始まります。現場には多くの人がおり、世間の注目の高さがうかがえます」

○同・法廷(午前)
被告席に祥真。傍聴席に優、とよ。
裁判長「開廷します」

○矢作家・祥真の部屋(日替わり・日中)
暗い室内。祥真、ベッドに横たわっている。

○スーパー・売り場(日中)
優のパート先。優、品出しをしている。
奥でパート1・2が話している。
パート1「家族同士ってすごいよね~」
パート2「でもだからって自分の子供訴える?」
パート1・2、話続けている。優、気にしないで働く。

○弁護士事務所・応接室(日中)
祥真、弁護士と打ち合わせをしている。
弁護士2「大丈夫?」
祥真「・・・はい」
弁護士2「過ちは誰にだってあります。一つ一つ一緒に
乗り越えていきましょう」
祥真「はい」
×     ×     ×
弁護士2「では書き込んでしまった相手が自分の父親だとは、全く認識していなかった」
祥真「はい」
弁護士2「また誹謗中傷の対象となる書き込みは10月
13日の一度ですね」
祥真「・・・はい」

○裁判所近く・歩道(日替わり・日中)
祥真ととよ、裁判所へ歩いている。とよ、立ち止まり膝を休める。
祥真「大丈夫?」
とよ「全然!おばあちゃんは全然大丈夫」
歩き始める、とよ。

○裁判所・法廷(日中)
検察官、祥真に質疑をしている。
検察官「ユーチューバー・やっさん、いや父・矢作太一
さんへの誹謗中傷の書き込みは10月13日の『つまんな、消えろよ』。この一度ですか?」
祥真「はい」
検察官「その後、矢作太一さんへの誹謗中傷が加熱。怖くなり、被告は10月18日、自身のコメントを削除した」
祥真「はい」
検察官「あなた、いくつかのSNSやウェブサイトのアカウントを持っていますね?」
祥真「・・・はい」
検察官「被告、その他の匿名アカウントでも誹謗中傷を
行っていたのではないですか?」
祥真、次の言葉が出ない。

○同・エントランス(日中)
裁判後。祥真、とよと出口へ向かう。優と鉢合う。
祥真と優、目が合う。優、出口へ向かう。

○裁判所近く・歩道(日中)
   祥真ととよ、駅に向かって歩いている。
とよ「祥真、何か食べていくかい?」
祥真「ううん、大丈夫」
とよ「次は15日ね」
祥真「次は一人で行くよ」
とよ「何言ってるの。おばあちゃんも行く」
祥真「でも・・・」
とよ「一人より一緒の方がいい!」
辛い祥真。

○デパート・フードコート(日中)
祥真、うどんを食べている。
食べながらも周囲が気になっている。

○同・屋上(日中)
祥真、柵の前に立っている。屋上には祥真の他に数名。
祥真、手すりに手をかける。学生2人が祥真を見ている。
祥真、手すりから離れる。

○実景(数日後)

○裁判所近く・歩道(日中)
祥真、裁判所に向かって歩いている。

○裁判所・エントランス(日中)
祥真、歩いていると優と鉢合う。
優「おばあちゃんは?」
祥真「・・・体調悪くて今日は来れないって」
優、控室へ向かう。

○矢作家・太一の部屋(日中)
太一、上司とオンライン通話をしている。PC画面には退職勧奨通知書。
太一「・・・確認しました」
上司「うちも不景気で。君を守れなかった」
太一「・・・いえいえ」
上司「大変な時に本当に申し訳ない」
太一「・・・いえ」

○とよの家近く・歩道(日替わり・日中)
祥真、とよの家に向かっている。手には土産が入った紙袋。 

○スーパー・売り場(日中)
優、品出しをしている。店長がやってくる。
店長「矢作さん。電話」
優「電話?」
店長「帝大付属病院?から」
優「え?」

○葬儀場(日替わり・夜)
とよの葬儀が行われている。祥真、優、太一、親族席に座っている。
×     ×     ×
翌日朝。告別式。多くの参列者の中、とよが出棺される。祥真、太一、優、霊柩車に乗っている。

○火葬場・(日中)
棺が火葬炉に入れられる。祥真、太一、優、それを見ている。点火される。
優「お母さん」
優、崩れ落ちる。

○矢作家・リビング(日中)
祥真、太一、優、座っている。それぞれ離れた位置にいる。
優「・・・救急車、もっと早く呼べなかったの?」
祥真「・・・行った時にはもう倒れてた」
優「・・・なんでよ」
祥真「え?」
優「なんで現実で生きられないの?書き込みなんてするの。匿名で誹謗中傷書けるの?」
祥真「・・・」
優「気が済むの?え、スッキリするの?」
祥真「・・・いや」
優「あんたは好き勝手書いて、それで何人傷つけたのよ」
何も言い返せない祥真。
優「ネットの世界にすがって。存在しない世界なのに。
存在しないの!こんな事、起きるはずないのに」
何も言い返せない祥真。
優「嫌な事あっても、現実で何とかするしかないの。皆そうよ。でも苦しいよ。苦しいけど、でもせめて他の人は巻き込まないで!・・・もう一人でくたばってくれれば・・」
太一「やめろ!」
優「!?」
太一、2階へ上がる。

○地下鉄・ホーム(日替わり・日中)
祥真、電車を待っている。
祥真、白線を越えて、電車を待つ。とよの「祥真」と呼ぶ声が聞こえる。
祥真「!?」
祥真、見回すが、とよはいない。3歳ほどの子供が白線を越えようとしている。電車がホームに近づいてくる。
祥真「!?」
祥真、子供を止める。子供の母親がやってくる。
母親「ありがとうございます!」
祥真「・・・いや」
母親、何度も祥真に礼を言う。

○裁判所・法廷(日中)
祥真、被告席にいる。太一、原告人席にいる。優、傍聴席にいる。その他傍聴席には多くの記者、一般人。
記者1「やっと本人登場だな」
記者2「面白くなってくれよ~」
開廷時間になる。
裁判長「開廷します」
×     ×    ×
検察官、太一に質疑している。
×     ×     ×
検察官、祥真に質疑していると
太一「・・・・何してるんだ」
検察官「はい?」
記者達、太一に注目する。
検察官「どうしました?」
太一「・・・家族3人集まるの久々なんですよ、今日。その前は妻の母の葬式。次が今。いや、集まってるとは言えないですね。地獄です」
裁判長「(太一に)発言を控えて下さい」
太一「ごめんなさい・・もう色々大丈夫です」
   
○矢作家・祥真の部屋(夜)
祥真、PCでやっさんの動画チャンネルを開く。
祥真、最初に投稿された動画を見つける。投稿日は約5年前。動画タイトルは
【47歳会社員・動画はじめました!】
祥真、動画を開く。動画内の太一(やっさん)、バタバタでたどたどしい。
太一(動画)「息子が今高校生なんですよ!いつか息子や妻にバレたら、どうしよう。でもせめてその時は登録者数や再生回数が多かったらいいですよね」
やっさんの現在の登録者数は約30万人。50万再生を越える動画もある。
太一(動画)「いつまで続くか分かりませんが、楽しん貰えるように頑張ります!」
祥真、流れ続ける動画を観ている。

○矢作家・リビング(夜)
優、夕食の準備をしている。太一、リビングに降りてくる。
優「(太一に気づき)あ、ごはんもうすぐ出来・・・」
太一「手伝う」
太一、キッチンに行き優の作業を手伝う。
優「・・・ありがとう」
×     ×     ×
太一と優、夕食を食べている。
太一「・・・やめよう」
優「え」
太一「裁判」
祥真、リビングに降りてくる。太一と優の前に立つ。
優「・・・ごはん食べ・・・」
祥真「ごめんなさい。・・・ごめんなさい・・ごめんな
さい」
祥真、謝り続ける。

○地下鉄・車内(日替わり・日中)
祥真、座っている。近くの会社員男性、バレないようにスマホを祥真に向け、祥真の事を撮っている。それに気づいた小学生、会社員男性の近くへ行く。
小学生「何してるんですか?」
会社員男性「は?」
小学生「勝手に人の事、撮っちゃだめです」
祥真、会社員と小学生に気づく。
会社員男性「撮ってねえけど」
他の乗客、会社員男性を見ている。電車、駅に到着する。会社員男性、降りて去っていく。
祥真、小学生を見る。小学生、ランドセルから本を出し、読む。

○法明大学・廊下(日中)
祥真、教室へ向かっている。向かいから羽菜が友人と歩いてくる。お互い、気づく。
羽菜、祥真を避けて通り過ぎる。

○同・教室(日中)
祥真、席に座っている。亮、教室に入ってくる。
亮、祥真とは離れた席に座る。

○大学近くの公園(日中)
祥真、ベンチでパンを食べている。スマホで自身の名前を検索すると
【親殺し】
など祥真への誹謗中傷は減らない。その中には、
【彼を叩いているあなた達も同じです】
【卑怯です。何を書くにしても匿名。自分達は身元を明かさずに好き放題に書いて】
【匿名は誰もが善意をしやすくする為にあるものだと思います】
などの書き込み。そのアカウント名は竈門二朗。プロフィールには
【しがない店長。炭次郎ではなく、二朗です】との記載。
祥真「!?」

○ファストフード店・バックヤード(日替わり・日中)
祥真、出勤する。竈門、PCで仕入れ作業をしている。
竈門「(祥真に気づき)おはよう」
祥真「おはようございます。店長、自分・・」
竈門「待ってたー。新人さんすぐ辞めちゃって人足りてなかったんだから。早く!ゴーゴー!」
祥真「・・・ありがとうございます」
   祥真、頬を拭ってレジへ向かう。

○裁判所・控室(日替わり・日中)
祥真、太一、優、裁判長や弁護士、検察官と和解の話をしている。
裁判長「告訴はしないという事でよろしいですか?」
太一「はい」
優、頷く。祥真、頭を下げる。

○実景(数日後)

○携帯ショップ・店内
モニターでニュースが流れている。
キャスター「ネット上で誹謗中傷を書いたとして侮辱罪、脅迫罪などの容疑で神奈川県の主婦・中村洋子容疑者37歳が逮捕されました。調べに対し中村容疑者は日常のストレスを発散したく日頃から書き込んでいたと供述しています」
スマホをいじって待っている客が、
客3「政治が何もしねえから。また出るぞ」
とぼやく。

○矢作家・和室(朝)
祥真、とよの仏壇に手を合わせている。

○同・リビング(日中)
優、家事をしている。祥真、リビングにやってくる。冷蔵庫から水を取り、飲む。太一、リビングにやってくる。
気まずい祥真。
太一、冷蔵庫から水を取ろうとする。
祥真、水を渡す。
太一「ありがとう」
祥真「うん」
祥真、部屋に戻ろうとすると
優「祥真」
祥真「・・・え」
優「日曜、空いてるの?」
祥真「え?・・・まあ」
優「どっちよ?」
祥真「空いてる」
優「駅前のしゃぶしゃぶ屋。週末割引デイだから。お父
さんは?日曜」
太一「大丈夫」
優「じゃあ決まり」
リビングに陽が差し込んでいる。
               
おわり

「おまえは匿名」(PDFファイル:441.76 KB)
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