カウントダウン ドラマ

友人の誕生会に派手なメイクで参加した主人公。 帰り道に謎の男に浴びせられた薬品により、メイクが顔に張り付いてしまう。 メイクを落とせない顔のまま、平成最後の一週間を過ごす。
まだれ。 11 0 0 11/04
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第一稿

登場人物

本郷 理玖 (ほんごう りく)
十九歳。男性。大学生。いわゆる陽キャでお調子者。
海城 羽美 (かいじょう うみ)
十九歳。女性。大学生。理玖の高校時代の同級 ...続きを読む
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登場人物

本郷 理玖 (ほんごう りく)
十九歳。男性。大学生。いわゆる陽キャでお調子者。
海城 羽美 (かいじょう うみ)
十九歳。女性。大学生。理玖の高校時代の同級生で、同じ大学に進学。美人でモテるが性格が男勝りで言葉遣いも荒い。
早田 曾良 (はやた そら)
十九歳。男性。フリーター。理玖の幼馴染。性格は大人しめだがデリカシーのない発言が多い。
黒ずくめの男








○ 昼 ゲームセンターのトイレ

T 「四月二十五日」

理玖、洗面台の前に立ち鏡を見ている。

理玖 「マジかよ。」

自分の手で右頬を叩く。
顔がピエロのようになっている。


○ 夕方 理玖自宅

T 「四月二十四日」

テレビから令和に関するニュースが流れている。

キャスター 「平成の終了まで一週間を切りました。SNSの話題は新元号『令和』で持ち
きりとなっています。」

理玖、道化師の仮装をし、道化師の化粧をしてベッドに座って足を組んでいる。
曽良、理玖に正対するように、カジュアルな格好で立っている。

理玖 「だから、そう。今ニュースでもやってるけど、日付が変わる瞬間、令和に変わる瞬間にジ ャンプできれば、願いが叶うらしいのよ。いや、わかんないよ?日付が変わる瞬間に跳ぶのか、あらかじめ跳んどいて空中にいる間に日付越せばいいのか、その、細かいルールみたいなのはわかんないんだけど。うん。でもさ、やるだけやりたいじゃん?バえるし。」
曾良 「しょーもな。」
理玖 「しょうもなくねーじゃん、楽しいじゃん。やろうぜ一緒に。」
曾良 「いやほんと、オレそういうイタいのやりたくないからさ。横で見てるわ。オマエらがハッチャけてるとこ。」
理玖 「はあ。オマエそういうとこだぜほんとに。そういう、なに?プライドみたいなの?クールぶってさあ。」
曾良 「あのさあ。」
理玖 「なに。」
曾良 「なんだその格好。」
理玖 「ピエロじゃん。」
曾良 「いやそりゃ見りゃわかるけど。なんでピエロの格好してんだっていう質問。」
理玖 「パーティーといえばピエロだろ。」
曾良 「誕生日パーティーだよ?ハロウィンじゃないよ今日。しかもパーティーったって来るの四、五人だよ?」
理玖 「いいんだよ人数とか。こういうのは派手にパーっとやるもんなんだって。」
曾良 「逆に考えろって。オマエ幼馴染にピエロの格好で誕生日祝われて嬉しいか?」
理玖 「嬉しい!(立ち上がりながら)」
曾良 「そう。そりゃ結構。」

曾良の携帯が鳴る。
曾良、携帯を取り出しメッセージを見る。

曾良 「来ていいって。」
理玖 「よし行こう!盛り上がっていこう!」
曾良 「どうせ今日も酒飲むんだろ。」
理玖 「当たり前だろパーティーだぞ。」
曾良 「未成年なんだから飲むなよ。」
理玖 「大丈夫だって来月にはハタチだから。」

曾良と理玖が家を出る。


○ 同日 夜 公園

理玖、酔いつぶれてベンチに座っている。
少し離れた場所で学生グループが騒いでいる。

理玖 「あー気持ち悪い。飲みすぎた。」

学生の一人が悲鳴をあげる。

理玖 「んー。なんだ。」

理玖、顔を上げる。
黒ずくめの男が瓶に入った液体を理玖にかける。

理玖 「うおっ!」

理玖、顔をかばいながらうずくまる。
黒ずくめの男が走り去る。

曾良 「お待たせー。ごめーん、エナドリ売り切れてたわー。」

曽良、コンビニ袋を持って理玖に近づく。
理玖、えづきながら立ち上がる。

曾良 「え、水飲むの下手すぎん?」
理玖 「違うって!なんか変な水ぶっかけられたんだよ!あのおっさんに!」

理玖、公園の外を指差す。

曾良 「ごめん、見えねえ。」
理玖 「くっそーなんだよこれ。口にも入ったし。なんかタオル的なのねえか。」
曾良 「着替え買ってきたから、今着てんの脱いでそれで拭けよ。」
理玖 「あー。最悪だよもー。」


○ 昼 ゲームセンターのトイレ

T 「四月二十五日」

理玖、顔を洗っている。
曾良、トイレに入ってくる。
理玖、顔を上げる。
メイクは落ちていない。

理玖 「くっそ、とれねえ。」
曾良 「オマエ今日電車で来たって言ってなかったか。」
理玖 「いやほんと駅員も止めろよな、こんな怪しい奴が乗ろうとしてたら。」
曾良 「帰って落とさなかったのかよ。」
理玖 「いや、風呂入ったしクレンジングしたはずだったんだけど。酔ってたからあんま覚えてない。」
曾良 「なに、ペンキかなんか塗ってたの。」
理玖 「ちげえわ普通の化粧品でやったわ。あーそっか、やっぱネットで買わねえ方が良かったかもしれねえ。」

曾良、公園での光景を思い出す。

曾良 「なあ。」
理玖 「あい。」
曾良 「オマエ昨日なんか変な水ぶっかけられたとか言ってなかったっけ。」

理玖、固まる。

曾良 「昨日の夜、パーティーの帰りの公園。」

理玖、鏡に顔を近づける。

理玖 「ほんとだ、化粧残ってるの昨日あの水かかった部分だけだ。」

少し沈黙。

曾良 「とりあえず、出ようか。」

理玖、服で顔を拭く。

理玖 「マスクある?」
曾良 「あるよ。」

曾良、カバンからマスクを取り出す。
理玖、マスクをつける。

理玖 「ごまかし効くかな。」
曾良 「自分の顔のデカさを恨め。」
理玖 「ぶん殴るぞ。」


○ 朝 大学中庭

T 「四月二十六日」

羽美、歩きながらラブレターを読んでいる。

羽美 「今どきラブレターとか。」

羽美、ラブレターをゴミ箱に捨てる。
目線の先でサングラスとマスクをつけた理玖がオドオドしながら歩いている。
羽美、走って理玖に近づく。

羽美 「理玖!」
理玖 「うおっ!」

理玖、ずれたサングラスをなおす。

理玖 「ああ、おはよう!よくオレだってわかったね!」
羽美 「いや知らない人が見たら完全に不審者だからね。いつもだけど。なにその格好。」
理玖 「あの、ちょっと花粉症になってさ。」
羽美 「いや、だったら普通サングラスじゃなくていいじゃん。」
理玖 「いや、ほんとほんと!大丈夫だから!ってか、オマエこんな変質者と一緒にいたら彼氏に怒られるぞ。」
羽美 「彼氏じゃないし。コクられただけ。んでもうフったし。」
理玖 「スッゴ。モテモテじゃん。何人目だっけ。」
羽美 「五人か六人。」
理玖 「新天地キラーじゃん。」
羽美 「入学して一ヶ月で告白なんかするかよふつう。『一目惚れです』とか『可愛いと思ってました』とか。中学生か!どーせヤることしか考えてねーだろ!なんだよみんな揃って可愛い可愛いって。人間は顔じゃねーんだよ!」
理玖 「わかったから落ち着けって!」
羽美 「ごめん、取り乱した。大丈夫、アタシはそんなアバズレじゃないから。」
理玖 「いやまあ、しっかり返事してるのは偉いと思うよ。オレの昔の同級生の思わせぶり星人に見せてやりたいわ。」
羽美 「まだあの女引きずってんの。」
理玖 「引きずってるか!」

通行人が悲鳴をあげる。
理玖と羽美、声がした方を見る。
大学前の道路で、男が女性のカバンを奪おうとしている。
カバンを取った拍子に女性が倒れる。
男が走り去る。
理玖と羽美、女性に駆け寄る。

羽美 「大丈夫ですか!」
理玖 「羽美その人頼む!」

理玖、男を追いかけて学校を出る。


○ 同日 交差点歩道

理玖がひったくりと距離を詰める。

理玖 「待たんかいこらー!」

理玖、ひったくりに飛び蹴りする。
ひったくり犯、転ぶ。
理玖、馬乗りになって抑える。
暴れる二人の周りに人だかりができ、数人がスマホで撮影し始める。
ひったくり犯がもがき、理玖のマスクとサングラスを外す。
外れた拍子に理玖が倒れる。
理玖の顔を見て周囲の人間がざわつき、数人がスマホで撮影する。
パトカーのサイレンが近づいてくる。

羽美 「理玖!」

羽美が倒れた理玖に駆け寄る。

羽美 「大丈夫!?」

理玖、手で顔を隠す。

理玖 「いや、大丈夫大丈夫!気にしないで!」
羽美 「ちょっと血出てるじゃん!」

羽美、理玖の手を無理やり外し、口紅を指で拭く。

羽美 「なんだ口紅か。」
理玖 「へ?」

数人が二人をスマホで撮影している。
それに気づき理玖が羽美の手を取る。

理玖 「行こう。」
羽美 「へ?」

羽美の手をとったまま立ち上がり、走ってその場を離れる。


○同日 夜 理玖自宅

理玖、ベッドに寝転がって天井を見ている。
理玖、寝転がったまま昼間の光景を思い出す。

理玖M「『口紅か』って言ったってことは化粧残ってるの気づいてんだよな。白塗りは見えなかったとか。んなわけないか。」

曾良から電話がかかってくる。
スマホを取り電話に出る。

理玖 「うい。」
曾良 「ネットニュース見たか。」
理玖 「ネットニュース?」
曾良 「掲示板見てみろ。」

理玖が通話をつないだままスマホでネットニュースを開く。
ひったくりの記事と理玖の顔写真が載せられている。

理玖 「マジかよ。」
曾良 「名前とか大学とかバッチリバレてる。SNSも目撃情報いっぱいだわ。」
理玖 「うわ、なんか変なハッシュタグまでバズってるし。」

ため息をつき顔を枕にうずめる。

理玖 「オレにはわかるぞ。」
曾良 「うん。オレにもわかる。」

理玖が顔を上げる。

理玖・曾良 「絶対にめんどくさいことになる。」


○ 夜 理玖自宅

T 「四月三十日」

理玖、ベッドに座り俯いている。
曽良、正対するように立っている。
理玖、スマホで自分の画像が載ったSNSを見ている。
街中で盗撮される光景がフラッシュバックする。

理玖 「オレはパンダか!」

理玖がスマホを床に叩きつける。

曾良 「どっちかっていうとブタだろ。」
理玖 「やかましいわ!」
曾良 「しかしなー。皮膚科の医者にもお手上げとか言われたしなあ。ネットで調べても出てこねえし。」
理玖 「公園行ってくれたか。」
曾良 「行ったけど、やっぱり怪しいものは無かったよ。ベンチとか後ろの花壇とかも見たけど、異常なし。花が枯れたりもしてなかった。化粧品だけに効く薬とか、存在すんのかよ。」
理玖 「はあ。」

理玖、ベッドに仰向けで倒れる。

理玖 「普通の男の子に戻りたーーい!」

曾良のスマホの着信音が鳴る。
曾良、スマホを取り出しメッセージを確認する。

曾良 「時間ぴったし。理玖、行くぞ。」

理玖、倒れたまま天井を見つめている。

曾良 「理玖!」

曾良、理玖の頭をはたく。

理玖 「痛った!なんだよ。」
曾良 「もう来てるから。」

曾良、理玖の腕を引き理玖を起こす。

理玖 「いや、おい、来てるって何が。」

曾良、理玖を玄関まで引っ張る。
曾良、ドアを開け理玖を外に押し出す。
羽美が立っている。

羽美 「よっ!」
理玖 「うおっ!え、なにしてんの。」
曾良 「じゃ、あとはごゆっくり。」
羽美 「ありがとね曾良くん。」
曾良 「いえいえ。」

曾良、その場を去る。
放心状態の理玖。

羽美 「よし、じゃあ行こっか。」

羽美、理玖の手を引き歩き出す。

理玖 「え、ちょっとどこにー。てか靴履かせてー。」


○ 同日 深夜 海岸

テトラポットの上に立つ羽美。

羽美 「登れる?」
理玖 「うん、大丈夫大丈夫。」

理玖が登ってくる。
二人で並んで海を見つめる。

羽美 「なーんか、パッとしない天気。」
理玖 「いや、でも。綺麗だよ。」
羽美 「アタシとどっちが綺麗?」
理玖 「オマエ。」
羽美 「うーわ。(笑いながら)」
理玖 「いや言わせただろ今の。(笑いながら)」

二人が一息つく。

理玖 「静かだなー。」
羽美 「久しぶりでしょ。外出て誰にも見られないの。」
理玖 「まあなー。まさかこんなことになるとは。」
羽美 「よかったじゃん人気者になれて。」
理玖 「人気者に言われても嬉しくねーわ。」
羽美 「フフッ。」
理玖 「あのさあ。」
羽美 「ん。」
理玖 「めっちゃキモいこと言っていい?」
羽美 「いいよ。今更だし。」

理玖、一度深呼吸する。

理玖 「ピエロが彼氏になったら、嫌か?」
羽美 「全然。(即答)」

理玖、羽美を見る。
羽美、理玖を見る。

羽美 「どーでもいいじゃん。顔とか世間と評判とか。人間、顔じゃないんだから。」

理玖、照れて鼻を拭う。

理玖 「サンキュ。」
羽美 「なにそれ。(笑いながら)」

羽美、理玖を海に向かって押す。

理玖 「うおっ!」

理玖、海に落ちる。
羽美、笑う。
羽美のスマホのアラームが鳴る。
羽美、スマホを取り出し画面を見る。

羽美 「ねー!」
理玖 「はーい。」
羽美 「日付変わったー!」
理玖 「えー?」
羽美 「五月一日ー!平成が終わったのー!」
理玖 「マジでー!すっげー!令和最初の海水浴だこれ!」

理玖、泳ぎ始める。

羽美 「よーし、じゃあ帰ろ!」
理玖 「え、もうかよ!」
羽美 「帰ってお風呂入ろ!ほら、行くよ!」
理玖 「えーちょっと待ってー。」
羽美 「一緒に入ってあげるから!」
理玖 「へ?」
羽美 「先行くからね!」

羽美、テトラポットを降りる。

理玖 「え、ちょ、今なんつったー!」

理玖、羽美の方に泳ぎ始める。


○ 朝 理玖自宅 洗面所

T 「五月一日」

理玖、洗面台の前に立ち鏡を見ている。

理玖 「マジかよ。」

自分の手で右頬を叩く。
顔が元に戻っている。
○ 昼 公園

T 「五月二日」

理玖と曾良がベンチに座りハンバーガーを食べている。

曾良 「で、どこまでいったの。(笑いながら)」
理玖 「いや中学生か。(笑いながら)」

二人が笑う。

理玖 「結局あれがなんだったのか分からずじまいだわ。」
曾良 「まあ目撃者もいなかったしなあ。病院に行ってもどーにもならなかったし。なんで急に治ったんだ。」
理玖 「さあな。にしても。」

理玖が公園内の人を見渡す。

理玖 「外でこんなのんびりできる日が来るとは。オレすっかり忘れられてんな。」
曾良 「もう世間は令和一色。ひったくり捕まえたピエロがニュースになる時代は終わったみたいだな。」
理玖 「たった1週間でブームは去ったのか。」
曾良 「オマエあれだな。SNSで晒されてすぐ飽きられて。パンケーキみたいだな。(笑いながら)」
理玖 「やかましいわ。(笑いながら)」

二人が笑う。

曾良 「で、どこまで行ったの。」
理玖 「いやだから中学生か。」
曾良 「違うって、どこの海まで行ったんだよ。」
理玖 「え、ああ。それはな。あのー。」

                                      (終)

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