怪人派遣会社営業担当・魁島カイジ アクション

説明をば、致しましょう。 緊急侍隊サイレンジャーとの激闘が続く悪の組織「閻魔エージェンシー」は、予算の問題による深刻な怪人不足に陥っていました。そこへ、怪人専門人材派遣会社デリバリーヘルの営業担当・魁島カイジが現れ……。
マヤマ 山本 60 0 0 11/01
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第一稿

<登場人物>
魁島カイジ  怪人派遣会社営業担当 
十戒人クロス 同派遣怪人
キキ     閻魔エージェンシー幹部
ユウジ    同

クライム     閻魔エージェン ...続きを読む
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<登場人物>
魁島カイジ  怪人派遣会社営業担当 
十戒人クロス 同派遣怪人
キキ     閻魔エージェンシー幹部
ユウジ    同

クライム     閻魔エージェンシーのモンスター
スーパークライム 同、クライムのリペイント体
スーパークライムネオ 別組織のモンスター、スーパークライムの改造体
冥奴     閻魔エージェンシーの戦闘員

サイレンレッド 緊急侍隊サイレンジャーの一員
サイレンブルー 同
サイレンピンク 同
仮面騎士ブラン ヒーロー



<本編>
○採石場
   暴れる紫色のモンスター・スーパークライム。
魁島N「説明をば、いたしましょう」
スーパークライム「ムク~っ、まだ……まだなのだ! スーパークライム様は、こんな所では終わらないのだ!」
魁島N「この星には、世界征服を狙う悪の組織と」
   スーパークライムと対峙する赤、青、桃色のバトルスーツを身に纏った戦士、サイレンレッド(25)、サイレンブルー(22)、サイレンピンク(20)。
レッド「残念だな。コレでゲームセットだ!」
魁島N「それを阻止すべく戦う、人類のヒーローが居るのです」
三人「サイレンK砲!」
   発射されるバズーカ砲。その砲撃を受け、爆発四散するスーパークライム。
スーパークライム「あんぎゃあ!」
レッド「楽勝だぜ!」
ブルー「まぁ、前にも倒した事あるヤツだったからな」
ピンク「色変えただけで別物のフリとか、マジ草だよね」
ブルー「そんなに面白いか?」
レッド「どっちでもいいだろ。さっさと勝利の警鐘、鳴らそうぜ」
ブルー&ピンク「了解」
魁島の声「このように、ヒーローによってスーパークライム様は倒されました」

○閻魔エージェンシー本部・外観(夜)
   T「閻魔エージェンシー 本部」
魁島の声「お悔やみをば、申し上げます」

○同・中(夜)
   向かい合って座るビジネススーツ姿の怪人・魁島カイジと女怪人・キキ。
魁島「ここで大事なのは、問題点を洗い出し、改善する事ではありませぬか?」
キキ「問題点、とは?」
魁島「安易なリペイントや再生怪人などでは、ヒーローに太刀打ち出来ぬ事は証明済みです。ですが、弊社のサービスをご利用いただければ、御社にとって大きな利益を……」
ユウジの声「お待たせしました」
   そこにやってくるユウジ(28)。魔族のような服装だが、人間。
キキ「何をしているんですか、ユウジさん。お客様をお待たせして」
ユウジ「申し訳ない。回収したスーパークライムのガワを改造していて……。(魁島に)えっと……こちらの方は?」
魁島「お邪魔をば、いたしております。我ら『地獄を配達る(くばる)』者、怪人専門人材派遣会社デリバリーヘル営業担当・魁島カイジでございます」

○メインタイトル『怪人派遣会社営業担当・魁島カイジ』

○(イメージ)
   暴れる怪人達。
魁島N「説明をば、いたしましょう。最初の悪の組織が誕生してから、既に半世紀以上。数多の組織が世界征服を試みました」
   次々と倒されていく怪人たち。
魁島N「しかし同時に、人類を守るヒーローも次々と誕生。ヒーロー達によって、毎年のように悪の組織は滅ぼされ、何とか生き残った組織も、深刻な予算不足により、満足な数の怪人を確保する事すらままならぬ有様……」

○公園
   求人誌を手に持つ怪人・十戒人クロス。
クロス「どっか募集してねぇかな……?」
魁島N「一方、所属していた組織が壊滅して路頭に迷う怪人も増加。心中をば、お察しいたします。そんな中、今注目を集めているのが……」
クロス「何なに、怪人派遣会社……?」

○オフィスビル・外観
   ごく普通のオフィスビル。
   T「デリバリーヘル 本社」
魁島の声「この度は、ご応募いただき誠にありがとうございます」

○同・中
   向かい合って座る魁島とクロス。魁島の手にはタブレット端末。
魁島「小生、営業担当の魁島カイジと申す者です」
クロス「十戒人クロスだ」
魁島「十戒人様……珍しいご苗字ですね」
クロス「いや、苗字ではなく肩書だ」
魁島「失礼をば、いたしました。では、クロス様。ご登録内容を拝見すると……怪人業は未経験ですか」
クロス「……内定をもらっていた組織が壊滅したんだ。ココは『未経験可』と書いてあったが?」
魁島「はい、問題ございませぬ。戦闘員のアルバイト経験がお有りの方が稀にいらっしゃいますが、応募者のほとんどの方が未経験ですから」
クロス「なら、いい」
魁島「それに必殺技能検定一級をば、お持ちのようで。でしたら、むしろ引く手数多ですよ」
クロス「例えば?」
魁島「オススメはコチラですね」
   端末の画面をクロスに見せる魁島。画面には「派遣先:鬼一族 勤務地:鬼ヶ島 業務内容:桃太郎とそのお供の撃退」。
クロス「島か……遠いな」
魁島「そうですか……でしたら、コチラはいかがでしょう?」
   端末の画面をクロスに見せる魁島。画面には「派遣先:魔王軍樹海支部 勤務地:森の砦 業務内容:勇者一行の撃退」。
クロス「悪くないな」
魁島「ただ一つ、問題がありまして。コチラ、敵である勇者一行が樹海を抜けてからの勤務になりますので、開始日が読めぬのです」
クロス「それは困るな……出来るだけ早く仕事をしたい」
魁島「即日希望ですね。でしたら……あ、コチラは最近新規で入った案件なのですが」
クロス「閻魔エージェンシー……」

○閻魔エージェンシー本部・中
   向かい合って座る魁島、クロス、キキ。
キキ「大王様の忠実な美人秘書、キキです」
クロスM「美人……?」
キキ「申し訳ございません。現場担当幹部が、今日も席を外しておりまして」
魁島「お忙しいのですね」
クロス「というか、何でアンタが?」
魁島「説明をば、いたしましょう。現場初日は大体、営業担当が同伴するのです」
クロス「そういうものか」
キキ「では担当幹部が来る前に、諸々の説明をさせていただきますね」

○(回想)
   閻魔大王のシルエットとその前に立つキキ、ユウジ。
魁島N「説明をば、いたしましょう。閻魔エージェンシーは『古の時代に封印されし閻魔大王の復活』を企業理念に掲げ」

○(回想)遊園地
   冥奴(=戦闘員)を率いて人間を襲う青色のモンスター・クライム。尚、クライムの外見はスーパークライムと色が違うだけ。
魁島N「日々、人類に厄災を振りまいているのです」
クライム「ムククク、今日こそ大王様を復活させるのだ!」
冥奴「ウ~!」
レッドの声「そうはいくか!」
魁島N「しかし、それを邪魔するのが人類のヒーロー……」
   そこに現れるサイレンジャーの三人。
魁島N「緊急侍隊(きんきゅうじたい)サイレンジャーなのです」
レッド「お前らの好きにはさせないぜ!」
クライム「来たな、サイレンジャー。冥奴(めいど)ども。このクライム様を守るのだ!」
冥奴「ウ~!」
レッド「ザコどもに用はねぇ。さっさと道を開けやがれ!」
魁島N「しかし彼らの戦力は絶大。幾度となく敗北を重ねた結果……」

○閻魔エージェンシー本部・中
   向かい合って座る魁島、クロス、キキ。
キキ「今、怪人不足に陥ってるのです」
クロス「なるほど……」
キキ「あ、こういったお話は口外しないでくださいね。たとえ、口が裂けても」
クロス「……笑う所か?」
魁島「承知をば、いたします」
ユウジの声「お待たせしました」
   やってくるユウジ。ボロボロ。
ユウジ「毎度毎度遅くなって申し訳ありません。現場担当幹部のユウジです」
キキ「また随分と派手にやられましたね」
ユウジ「かたじけない」
魁島「最近の幹部様は大変ですね。自ら現場に赴かなければならぬとは」
ユウジ「怪人不足ですから、仕方ありません」
魁島「しかしコレを見ては、若者が出世したがらぬ気持ちもわかります」
ユウジ「そうなんですよ。やはり上司というのは『ロクに仕事もしないでいい給料もらいやがって』なんて思われるくらいがちょうど良いですよね」
魁島「心中をば、お察しいたします」
クロス「……一つ、聞いてもいいか?」
ユウジ「何でしょう?」
クロス「アンタ、人間じゃないのか?」
ユウジ「そうですけど?」
クロス「何故、人間が怪人の組織に?」
ユウジ「いけませんか? 人間だからって、人間に味方するとは限らないと思いますが」
クロス「……納得した」
ユウジ「ありがとうございます。では早速、最初の出動日の調整を……」

○廃倉庫
   冥奴を引き連れるクロス。
クロス「……来たか」
   やってくるサイレンジャーの三人。
レッド「そこまでだ、閻魔エージェンシー!」
   以下、バンク風映像。
レッド「燃える消防魂、サイレンレッド!」
ブルー「正義の警察魂、サイレンブルー!」
ピンク「慈愛の救急魂、サイレンピンク!」
三人「緊急侍隊サイレンジャー!」
クロス「良く来たな、サイレンジャー。『降参だ』と申せば、許してやるぞ?」
ブルー「誰が……って、あれ? 何か今までの敵と雰囲気違くね?」
ピンク「デザイナー変わった? まさか、テコ入れ? マジ草」
レッド「倒すべき敵だって事に変わりねぇ。行くぞ!」
クロス「かかれ~!」
冥奴「……」
クロス「おい、聞いてんのか?」
冥奴「うー」
冥奴M「ったく、派遣が調子に乗りやがって」
クロスM「……とか思ってんだろうな」
クロス「……仕方ない」

○オフィスビル・外観(夕)
魁島の声「そうですか、負けてしまいましたか」

○同・デリバリーヘル(夕)
   電話を受ける魁島。
魁島「それでも、生き延びただけでも素晴らしいですね。何とか月末まで頑張っていただいて、契約をば、更新していただきたいものですね」
ユウジの声「では今後とも、よろしくお願いいたします」
   電話の切れる音。
魁島「十戒人クロス。もしかすると、もしかするのでは……?」

○閻魔エージェンシー本部・外観(夜)
   物音。

○同・中(夜)
   冥奴から報告を受けるキキとユウジ。
キキ「何事ですか!?」
冥奴「ウ~! ウ~!」
キキ「あの派遣バイトが、謀反!?」
クロスの声「そういう事だ」
   やってきたクロスの攻撃で倒れる冥奴。
ユウジ「どういうつもりだ!」
クロス「『理由を申せ』と? 面白い。冥土の土産に教えてやろう。ユウジとやら、アンタは一つだけ良い事を言った。『人間だからって、人間の味方をする必要はない』と」
キキ「ま、まさか!?」
ユウジ「怪人が怪人の味方をする必要はない、とでも?」
クロス「その通り。怪人が居るから、ヒーローや争いが生まれる。だから俺は怪人の本拠地に入り込み、内側から組織を壊滅させ、戒める。それが十戒人だ!」
キキ「アナタの思い通りにはさせません!」
ユウジ「ダメだ、キキさん!」
クロス「くらえ、必殺。クロスファイヤー!」
   火の海に包まれるキキとユウジ。
キキ「きゃああ!」
クロス「ハハハ!」
   どこかから攻撃を受けるクロス。
クロス「誰だ!?」
魁島の声「困りますね、クロス様」
   姿を現す魁島。
魁島「弊社の看板をば、背負っているご自覚はしていただかないと」
クロス「アンタ……何でココに?」
魁島「調査をば、いたしました。近年、自滅したみられる組織内に『十戒人』と名乗る怪人が在籍していた事、その事例が複数回ある事……。弊社は世界中の悪の組織情報に通じていますから」
クロス「……さすがだな。なぁ、俺と手を組まないか? アンタ達の人脈を使えば、色んな組織に入り込めそうだ。その代わり、アンタらの会社は一番後回しにしてやる。どうだ?」
魁島「冗談をば、言わないでいただきたい。クロス様はこの場で、お亡くなりになるというのに」
クロス「何!?」
魁島「『派遣』という怪人の新しい形は、当初様々な批判も受けました。それでも、今後この世界の救世主となり得る存在と信じて草の根活動を続け、やっと花開き始めてきたのです。クロス様の今回の行為は、その芽をば、摘みかねぬ愚行。怪人界の未来そのものを奪う十戒人クロスに、この魁島カイジが鉄槌をば、下します」
クロス「何を偉そうに。言っておくが、俺は一人で組織を潰せるほど強……」
   魁島の攻撃が一閃。
クロス「い……ん……だ……」
   爆発四散するクロス。
魁島「説明をば、いたしましょう。派遣会社の営業は、現場仕事の経験もあるものなのです」

○オフィスビル・外観
魁島N「派遣スタッフの急な欠勤や退職の穴埋め、あるいは……」

○同・デリバリーヘル本社
   向かい合って座る魁島とユウジ。
魁島「かけた迷惑をば、償うとか」
ユウジ「それにしても、お強かったですね」
魁島「そういうユウジ様こそ、あの状況で生き永らえるとは素晴らしい」
ユウジ「キキさんには悪い事をしましたが、咄嗟に盾にさせていただきました」
魁島「やむをば、得ぬ事かと」
ユウジ「ところで、皆は元気にしていますか?」
魁島「無事に、派遣先は見つかりましたよ」

○(回想)港町
   仮面騎士ブランと戦うスーパークライムネオ。尚、スーパークライムネオの姿はスーパークライムに数個パーツが増えただけ。
スーパークライムネオ「ムクククク、スーパークライムネオ様が、相手してやるのだ」
ブラン「今までの敵と雰囲気は異なるが……俺も仮面騎士同士の争いにはうんざりしていたところだ。久々に倒し甲斐のある敵で嬉しいぞ!」

○オフィスビル・デリバリーヘル本社
   向かい合って座る魁島とユウジ。
魁島「元気かどうかは、あずかり知らぬ所ですが。そういうユウジ様は?」
ユウジ「自分は一旦、人間社会に戻ります。閻魔エージェンシーもサイレンジャーも、壊滅してしまいましたから」

○(回想)戦隊基地・外観(夜)
   T「サイレンジャー基地」

○同・廊下
   倒れるサイレンジャーの三人を見下ろす魁島。
レッド「まだだ……俺の火事場のクソ力、見せてやる!」
魁島「では、最後はあの技をば、拝借するとしましょう。クロスファイヤー!」
   火の海に包まれるレッド。
レッド「ぐああああ!」

○オフィスビル・デリバリーヘル本社
   向かい合って座る魁島とユウジ。
ユウジ「『登録された必殺技ならどれも扱える』なんて、羨ましい特技です。いっそ、悪の組織を立ち上げては?」
魁島「いいえ。現場仕事は、退屈です」
   電話が鳴る。
魁島「おっと。失礼をば、いたします」
ユウジ「どうぞ」
魁島「お電話ありがとうございます。我ら『地獄を配達る』者、怪人専門人材派遣会社デリバリーヘル営業担当・魁島カイジでございます」
                  (完)

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