思い出ガイドで軽井沢 ドラマ

26歳のバスガイドが、軽井沢の高級ホテルを経営する親子の貸切軽井沢ツアーをガイド。
袰岩慧 50 0 0 10/13
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第一稿

◯ピース交通株式会社・外観(夕)
タクシー、バスが並んでいる。
  入り口には青文字で書かれた看板。
  バス窓後ろに『軽井沢不動産』の広告。   
   
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◯ピース交通株式会社・外観(夕)
タクシー、バスが並んでいる。
  入り口には青文字で書かれた看板。
  バス窓後ろに『軽井沢不動産』の広告。   
   
◯同・休憩室(夕)
   バスガイド姿の宮地有紗(26)がスマホを見ている。
   Yシャツ姿の柏原文世(48)。
   そばに帽子を置いて壁の時計をボーッと見つめている。
   有紗、スマホから顔を上げて
有紗「柏原さん、来週、貸切のツアーが一件入ってましたよね」
柏原「うん億平ホテルの社長と会長親子だね」
有紗「えっ、あの?一泊何万円もする高級ホテルの?」
柏原「そうそう。有紗ちゃんや僕のような一般市民には縁のない御殿だよ」
   有紗、ニヤリと笑い
有紗「残念でした。私は億平ホテルに泊まったことありますよ」
   柏原、お尻をかきながら
柏原「へーすごいじゃない。やっぱりほかのホテルとは違った?」
   有紗、口を少し尖らせて
有紗「実はあんまり覚えてなくて。なぜか私、泣いてた記憶はあるんですけど」
柏原「リッチすぎて、庶民派の有紗ちゃんには落ち着かなかったのかもね」
有紗「どうしても私を庶民にしたいのですね」
柏原「それにしても億平の社長と会長親子が2人きりのツアーか。男同士で、しかも2人とも結構    
な歳だし。なんでだろうね?」
   有紗、首を傾げて
有紗「親子水入らずで積もる話もあるんじゃないですかね?よし、お母さんに電話して自慢してき.
ます!」
   有紗、柏原に一礼し、部屋を出てくる。

◯グランディーバ軽井沢・外観(夜)
   3階建て。横に広いベージュの建物。
   ベランダが突き出している。
   
◯同・有紗の部屋・リビング(夜)
   シンプルな黒パジャマ姿の有紗。
   スマホをテーブルに置きながら
有紗「お母さん、私来週、億平ホテルの社長と会長のガイドする」
直美の声「本当に?失礼のないようにね」
有紗「わかってるって」
直美の声「有紗覚えてる?あんたが小さい頃、億平ホテルにみんなで行ったこと」
有紗「泣いたことだけ覚えてるんだよね」
直美の声「ああ泣いてた泣いてた。あんたジェラートが食べたいって駄々こねたのよ」
有紗「え、そんなことで」
直美の声「それでホテルのスタッフさんが銀座通りのお店に連れて行ってくれて」
有紗「え、そうなの?」
直美の声「恥ずかしかったよ私は」
   苦笑いで頭をかく有紗。

◯軽井沢駅・外観(朝)
   モダンな雰囲気を感じさせる駅舎。
   小さな庇の下に『軽井沢駅』の文字。

◯軽井沢駅・北口前(朝)
   バスの前に有紗と柏原が並ぶ。
   緊張している有紗。
   バスから離れた所でハイヤーが止まる。
   運転手が降りて、後ろのドアを開ける。
   和装の片岡武雄(79)が地面に足を下ろす。
   杖をつき、運転手の助けを借りている。
   後から、カッチリしたスーツ姿の片岡謙(51)が降りる。
謙は眉間に皺を寄せてバスを見る。武雄と謙がバスに向かって歩いてくる。
有紗緊張気味に
有紗「おはようございます。2名様でご予約の片岡武雄様、片岡謙様ですね。本日ガイドを担当さ
せていただきます宮地です。よろしくお願いいたします」
   柏原、帽子をとり微笑みながら
柏原「運転手を務めます、柏原と申します」
   和装の武雄、静かな笑みを湛えて
武雄「はい。こちらこそ今日はよろしくお願いします。しかし気持ちのいい天気ですな」
   武雄、眩しそうに目を細める。
武雄の横に仏頂面でいる謙。
謙「よろしく」
   有紗と柏原、一瞬目を交わし
有紗「それでは出発致します。バスにお乗りください」
   武雄バスに乗り込もうとしてぐらつく。
   後ろにいる謙が慌てて受け止める。
謙「父さん、気をつけて」
武雄「すまんな」
有紗「大丈夫ですか?」
   謙、ブツブツと
武雄「ステップの補助くらいついていないのかこのバスは」
有紗「申し訳ございません」

◯バス車内(朝)
   武雄は1番前の席に座る。
   謙はその隣の窓側に座っている。
   謙と武雄の前に立つ有紗。
マイクを手にして
有紗「皆様おはようございます。この度はピース交通株式会社の軽井沢ワクワクツアーにお越しいた
だき誠にありがとうございます」
   武雄、笑顔で拍手する。
   謙は窓の外を見ている。
有紗「車は軽井沢本通りを走っております。こちらの道は平成15年、19年前ですね。そのとき
行われた公募により、軽井沢本通りと名付けられました」
   ミラー越しに後ろを見る柏原。

◯旧軽井沢銀座通り・全景(朝)
   両側にぎっしりと並ぶお店。
   平日なので、人はまばら。

◯同・商店街(朝)
有紗を先頭に、武雄と謙がついていく。
   武雄、興味津々に辺りを見渡す。
   謙、人目を気にしながら歩く。
有紗「こちらは旧軽井沢銀座通りでございます。イギリス人宣教師のショーによって開かれた通り
です。宣教師由来ということもあって、歴史ある教会が多く見られます」
   感心した様子の武雄。
有紗「60年以上の歴史を誇る『ミカドコーヒー』のモカソフトは絶品です。『ちもと』
のちもと餅は求肥にくるみと黒糖を練り込んだ軽井沢が誇る名物の1つです。」
謙、『リビスコ』の前で立ち止まる。
武雄「どうした?」
謙「ああ、いや、ちょっとね」
有紗「ジェラートの名店『リビスコ』ですね」
武雄「そういえば、あれは20年くらい前だったか。お前が泣いてた女の子をこの店に連れてきた
んだったな」
謙、自嘲気味に笑って
謙「ジェラートを食べたいって駄々こねてたからね。非効率なことだよ。客1人のためにわざわざ
ここまで連れてきて」
武雄「そうかな、あの頃のお前はお客様1人1人のことを大切に考えていたよ」
謙「どういう意味だい?父さん」
   有紗、謙と武雄を交互に見る。

◯駐車場(朝)
   バスが止まる。

◯バス車内(朝)
   有紗、武雄と謙に向かって
有紗「それでは一旦トイレ休憩とさせていただきます」
   有紗、柏原、バスから降りる。
   武雄、立ちあがろうとすると
謙「父さん、なんで今こんなツアーを予約したんだ?言い辛いけど、今うちの利益は相当下がって
る。社員の首切りも視野に入れてるくらい苦しいんだ。俺は社長として、こんなことしている場合
じゃないよ」
武雄「謙、軽井沢の街並みを見てどうだった?」
   謙、一瞬戸惑い
武雄「こんなにゆったり、軽井沢を見たのは久しぶりだったろ?社長業が大変なのはわかる。でも
お前にはちょっと肩の力を抜いて欲しいんだ。お前が誰よりも軽井沢を愛していたこと、思い出し  
てみてくれ」
   謙、額に手を当てて難しい顔をする。
   有紗、柏原が車内に入ってくる。
有紗「おトイレ大丈夫ですか?」
武雄「ああ、すみませんな。今から行ってきます」
謙「父さん、俺もついていくよ」
   謙、武雄が出ていく。
   有紗、謙と武雄の後ろ姿を見つめる。
謙「ちょっとムードが険悪だな」
有紗「そうですかね?最初よりいい感じですよ」

◯軽井沢駅・北口前(夕)
  ロータリーにバスが止まる。有紗武雄のサポートをして降りる。
  続いて謙が降りてくる。バスの近くにハイヤーが止まる。
武雄「今日は本当にありがとうございました」
有紗「こちらこそ、弊社ツアーをご利用いただきありがとうございました」
柏原「また、お待ちしております」
   武雄、謙、ハイヤーの方に歩いていく。
有紗「あの、ありがとうございました」
   振り向く、武雄、謙。
有紗「24年前、銀座通りの『リビスコ』に連れて行ってもらった子供、私です」
   驚いた表情の謙と武雄。
有紗「また、絶対泊まりに行きます」
    顔を見合わせる謙と武雄。
武雄「謙」
   謙、黙り込む。やがて自然な笑顔で
謙「はい、お待ちしています」
   有紗、ニコっと笑い勢いよくお辞儀する。

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