【登場人物】
宮藤 圭(24) プロのスーツアクター
を目指す青年。
英雄(6) 内気な男の子。
礼央(8) 秀をいじめる男の子。
勝俣 勝利(32) 圭の先輩スーツアクタ
ー。
お姉さん(26) ヒーローショーの司会の
お姉さん。
智樹(7) 礼央の腰巾着1
祐也(7) 礼央の腰巾着2
【登場キャラクター】
銀河剣聖ジオリオン 日曜朝9時放送の特
撮ヒーロー番組『銀河剣聖ジオリオン』
の主役ヒーロー。
ベルベロス 『ジオリオン』の敵怪
人。
地球剣豪ジアース 20年前に放送して
いた特撮ヒーロー番組『地球剣豪ジアー
ス』の主役ヒーロー。
○森林公園・全景
ジオリオンの声「銀河剣聖! ジオリオ
ン! さあ、夜空に輝く星になれ!」
○同・ステージ
ステージの上には『銀河剣聖ジオリオ
ン ショー』の看板。
銀色の甲冑を身につけたヒーロー=ジ
オリオンが醜悪な見た目な怪人=ベル
ベロスと戦っている。
客は、ほとんど入っていないが、英雄
(6)が食い入るように見ている。
お姉さん(26)、疲れ気味の笑顔で
お姉さん「さー、ジオリオンを応援するよー。
せーの、頑張れー」
客、ほとんど無反応。
英雄「頑張れぇーっ!」
ジオリオン、アクション中に転倒!
ジオリオン「くらえっ! シリウスブレイ
ク!」
ジオリオンの声だけが虚しく響く。
お姉さん、ため息。
英雄、がっかりした顔。
勝俣の声(先行)「宮藤おまえさ、いい加減
にしろよ」
○控え室
ベルベロスの上半身を脱いだ勝俣勝利
(32)、汗を拭いている。
ジオリオンのメットを外した宮藤圭
(24)、こうべを垂れている。
お姉さん、部屋の隅でタバコを吸って
いる。
宮藤「すみません、ホントに」
勝俣「ヒーローは主役なんだからさ。何度目
よ? こんなしょうもない」
宮藤「……」
勝俣「いくら地方営業だからって、手を抜か
れるのは困るんだよね」
宮藤「そんなっ」
勝俣「まあ、仕方ねぇか。俺たちはテレビと
違って、代理のニセモノだからな」
宮藤「……で、ですよね! ハハッ!」
勝俣「失敗していい理由にはなんねぇけど
な」
宮藤「……すみません、明日も頑張ります」
○タイトル
『ニセモノヒーロー』
○森林公園・広場
英雄(6)、礼央(8)に突き飛ばされ
る。智樹(7)と祐也(7)が礼央の裏
でニヤニヤしている。
礼央、英雄のランドセルについていた
ジオリオンのキーホルダーをむしり取
る。
英雄「あっ!」
礼央「まだこんなの見てんのかよ、ダッセー」
智樹&祐也「ダッセー!」
英雄「や、やめて!」
礼央、ニヤリと笑って、キーホルダーを
遠くに投げてしまう。
× × ×
ベンチに座り、泣いている英雄。
隣に腰掛ける宮藤。
宮藤、ジオリオンのキーホルダーを英
雄に渡す。
宮藤「ほいこれ、君のでしょ?」
英雄、キーホルダーと宮藤の顔を交互
に見た後、キーホルダーを受け取ろう
と手を伸ばす。
直前でその手を止め、うつむく英雄。
英雄「礼央くんが──礼央くんが、こんなの
見てるの、ダサいって」
宮藤「……」
英雄「だからもう、いらない」
宮藤、キーホルダーを眺める。
宮藤「……俺もさ、好きなんだ。ヒーロー」
英雄、宮藤の顔を見上げる。
宮藤「ヒーローは、強くてかっこいいし、絶
対に負けないからさ」
英雄「でも、失敗してかっこ悪かったよ。勝
ってたけど」
宮藤「えっ!? 見てた?」
英雄「うん。あのジオリオンは偽物だった」
宮藤「えっ……」
英雄「ホンモノは、もっとかっこいいもん」
宮藤、少し考えた後、英雄にキーホルダ
ーを押し付けるように渡す。
宮藤「明日、絶対にかっこ悪いところ見せな
いから!」
英雄「え?」
宮藤「ジオリオンにお願いする! だから
……、だから! 見に来てね!」
宮藤、逃げるように駆け出す。
○公園(夜)
公園で必死に練習する宮藤。
○デパート・ミニステージ(宮藤の回想)
ミニステージで戦う地球剣豪ジアース。
ジアース、膝をつき、肩で息をしている。
幼い宮藤(5)、ジアースに向かって、
宮藤(5)「頑張れぇーっ!」
ジアース、宮藤の顔を見て力強く頷き、
ジアース「トドメだ! マグマフレイム!」
派手な効果音とともに必殺技のモーシ
ョンを繰り出す。
ジアース、宮藤に向かってサムズアッ
プ。
○公園(回想終わり)
汗を流し、地面にヘタレ混む宮藤。
夜空を見上げる。
立ち上がり、天に手を掲げて、
宮藤「(ポーズをとりながら)銀河剣聖!
ジオリオン! さあ──」
○森林公園・ステージ(翌日)
ジオリオン、ポーズを決め、
ジオリオン「──夜空に輝く星になれ!」
相変わらず客は少ないが、英雄が最前
列で見ている。その手にはジオリオン
のキーホルダー。
ジオリオン、ベルベロス、激しい殺陣!
お姉さん「さー、ジオリオンを応援するよー。
せーの、頑張れー」
英雄「……」
ジオリオン、駆け出すが足を挫いて転
倒しかける。
英雄、キーホルダーを握りしめ、
英雄「頑張れぇぇぇーーーッ‼︎」
ジオリオン、グッと踏みとどまり、英雄
の顔を見て力強く頷く。
ジオリオン「くらえっ! シリウスブレイ
ク!」
派手な必殺技モーションを成功させる
ジオリオン!
お姉さん、どこか感心した表情。
ベルベロス「ぐわーっ! やられたーっ!
今日のところは許してやる〜!」
ベルベロス、ステージ裏へ捌ける。
ジオリオン、英雄に向かってサムズア
ップ。
英雄、目を輝かせている。
○同・広場(数日後)
礼央、英雄を突き飛ばしている。
智樹と祐也、ニヤニヤしながらそれを
見ている。
礼央、またもランドセルからジオリオ
ンのキーホルダーをむしり取る。
礼央「へへっ、まだつけてやがんの! ダッ
セー」
智樹&祐也「ダッセー!」
英雄「うわあああっ!」
英雄、礼央に飛びかかる!
礼央「わっ、な、何すんだよ! この!」
礼央、英雄を何度も振り払うが、英雄は
何度も立ち向かう。
礼央、観念してキーホルダーをその場
に捨てて立ち去る。
礼央「きょ、今日のところは許してやる!」
智樹&祐也「ゆ、許してやる!」
智樹と祐也もその後を追ってそそくさ
と立ち去る。
英雄、ジオリオンのキーホルダーを拾
い上げ、満足げな表情。
○控え室(数日後)
ジオリオンのスーツを着ている宮藤。
宮藤の声「俺はニセモノかもしれない。でも、
誰かのヒーローになることはできる」
ジオリオンのメットをかぶる宮藤。
了
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