二高祭 学園

人生第二高等学校の文化祭、通称「二高祭」当日。真島直人(33)らE組のお化け屋敷は繁盛する一方、真島の勤めるヤノヤ製菓のブースは閑古鳥が鳴いていた。
マヤマ 山本 5 0 0 04/20
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第一稿

<登場人物>
真島 直人(33)会社員
田畑 桃(18)真島のクラスメイト
二谷 幸生(63)同
押尾 英二(35)同
馬場 喜高(23)真島の同僚
有働 南(43)真 ...続きを読む
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<登場人物>
真島 直人(33)会社員
田畑 桃(18)真島のクラスメイト
二谷 幸生(63)同
押尾 英二(35)同
馬場 喜高(23)真島の同僚
有働 南(43)真島の上司

特待生A 真島のクラスメイト
特待生B 同



<本編> 
○人生二高・校門
   「二高祭」と書かれた看板がある。

○同・校舎前
   多くの模擬店が並んでいる。準備中。
   並んで歩く真島直人(33)と田畑桃(18)。
桃「模擬店の数、めっちゃ多いね」
真島「ここまで大規模とは……」
   空き缶で作られたタワーが三本並んで立っている。
真島「(タワーを指差し)あれは?」
桃「(左から順に)あれはB組が作った空き缶タワー。真ん中がC組で、隣がD組」
真島「……人気だね、空き缶のタワー」
桃「(腕時計を見て)あ、もうこんな時間だし。教室行こっか」

○同・校門
   続々とやってくる客。

○同・E組・前
   行列ができている。

○同・同・中
   真っ暗な室内。恐る恐る歩く客。
   お化け姿の真島と桃が出てくる。
   驚いてその場を去る客。
   互いにピースサインする真島と桃。
押尾の声「次のお客さん入るわよ~」
   慌てて持ち場に戻る真島と桃。
   恐る恐る歩く馬場義高(23)。
   真島と桃が出てくる。
   驚く馬場と目が合う真島。
真島「馬場君!?」
馬場「え? 真島さん……ですか?」

○同・ヤノヤの模擬店
   空き缶タワーの正面に立つ模擬店。
   客はいない。
   レジを挟んで立つ有働南(43)と真島、馬場。
南「いや~、客が全然来なくてな」
馬場「暇すぎて、自由時間になったんですよ」
南「このままだと、真島の手伝い要らないかもしれないな」
真島「そうだったんですか……」
馬場「何か対策立てなきゃいけないんでしょうけど、いい案浮かばないんですよ」
真島「対策、か……」
   考え込む真島、馬場、南。
   そこにやってくる桃と二谷幸生(63)と押尾英二(35)。二谷はゾンビの特殊メイクをし、お化け屋敷の看板(手持ち式)を持っている。
桃「直君、お疲れ~」
真島「みんな、来てくれたんだ」
二谷「売り上げにちょこっと貢献しようと思ってね、チョコだけに。なんちゃってね、ガッハッハ」
押尾「やだもう」
桃「直君、そろそろ借りていっていいですか?」
南「あぁ、いいぞ。持ってって」
真島「物扱いしないで下さいよ」
桃「それじゃ、直君持ってきま~す」
真島「だから~」
二谷「さぁ、行こうかね」
真島「(二谷の持つ看板を見て)あっ! 部長、看板持ちなんてどうでしょうか?」

○同・校舎前
   並んで歩く真島、桃、二谷、押尾。ヤノヤの看板(手持ち式)を持っている真島。

○同・模擬店A
   焼きそばを作っている店員。
   焼きそばを買う真島。
    ×     ×     ×
   店の脇のテーブルを囲む真島、桃、二谷、押尾。談笑しながら焼きそばやチョコを食べている。

○同・フリーマーケット会場
   フリーマーケットが開かれている。
   洋服が置いてある店。
   若者風な服を選び二谷に合わせる桃。
   その様子を見ている真島と押尾。

○同・模擬店B
   パンチ力を計る機械がある。
   「100kg超えた方に景品差し上げます」と書かれた看板。
   挑戦する真島、桃、二谷。いずれも100kgに満たない数字。
   挑戦する押尾。200kg近い数値をたたき出す。驚く真島、桃、二谷。
   「やだ~」と言いながら店長に抱きついて喜ぶ押尾。

○同・校舎前
   並んで歩く真島、桃、二谷、押尾。
二谷「いや~、今年は面白いね」
押尾「ほんとね」
桃「次はどこ行こっか?」
   真島のスマホが鳴る。
真島「はい、真島です」

○同・ヤノヤの模擬店
   行列ができている。
   レジを打つ馬場と南。
   店内にやってくる真島。看板は持っていない。
真島「すみません、遅くなりました」
南「悪いな、真島。いきなり呼び出しちゃって。いきなり、ご覧の通りでさ」
真島「いえ。大繁盛で何よりです」
馬場「真島さんの看板持ちのおかげじゃないですか? ……あれ、真島さん、看板はどこに置いてきちゃったんですか?」
真島「あぁ。さっき雇った、看板持ちのアルバイトの子に預けてあるよ」
馬場&南「アルバイト?」

○同・廊下
   ヤノヤの看板を持って歩く特待生A。
特待生A「この冬発売予定のヤノヤの新商品が一足先に食べられるよ~。場所は校舎前、空き缶タワー正面」
   やってくる特待生B。
特待生B「お前も物好きだよな」
特待生A「だって、バイト代くれるって言うからさ。だったらやるだろ」

○同・ヤノヤの模擬店
   レジを打つ真島と南。注文を取る馬場。
   次々に売れるチョコレート。
    ×     ×     ×
   客はいない。
   店内の片付けをする馬場と南。
馬場「売れましたね~」
南「売れたな~」
   「完売」と書かれた看板。

○同・E組・前
   受付に座る桃。客はいない。
   やってくる真島。
真島「桃ちゃん」
桃「あれ、直君。どうしたの?」
真島「チョコは完売したから、ちょっとこっち来てみたんだ」
桃「そっか、おめでとう。でも、こっちでも直君に手伝ってもらう事はないかな……。もうお客さんもいないし」
真島「いるよ、ここに」
桃「え、直君?」
真島「記念にね」
    ×     ×     ×
   開かれたドアの前に立つ真島と桃。
桃「お客さん入りま~す。(真島に小声で)じゃあ、行ってらっしゃ~い」
真島「行ってきます」

○同・同・中
   真っ暗な室内。恐る恐る歩く真島。
   次々と出てくるお化け姿の生徒達。
   それらに驚く真島。
   出てくるお化け姿の二谷と押尾。
真島「(腰を抜かして)うわっ」
押尾「やだ、直君大丈夫?」

○同・同・前
   フラフラしながら出てくる真島。
   桃の元にやってくる。
桃「どうだった?」
真島「あんなに恐いと思わなかったよ……」
桃「何言ってんの。直君の企画書通りだし」
   笑う桃。つられ笑う真島。

○同・校舎前(夕)
   客が誰もいない。
   片付け始められている模擬店。

○同・校門(夕)
   看板等を片付けている生徒達。
   それを眺める真島、桃、二谷、押尾。
二谷「終わっちゃったね」
押尾「何か、あっと言う間だったわね」
桃「あ~あ、何か文化祭終わっちゃったら、あとは卒業だけって感じだし」
真島「卒業、か……。寂しくなるな」
二谷「寂しくなったら、また通えばいいじゃない」
真島「え?」
二谷「いつでも帰ってくればいいんだよ。この学校はね、そういう場所なんだから」
押尾「そうよ。何てったって、ここは私達の母校なんだから」
桃「母校……」
真島「帰ってくる場所、か……」
                   (完)

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