<登場人物>
真島 直人(33)会社員
田畑 桃(18)真島のクラスメイト
二谷 幸生(63)同
押尾 英二(35)同
馬場 喜高(23)真島の同僚
有働 南(43)真島の上司
特待生A 真島のクラスメイト
特待生B 同
<本編>
○人生二高・校門
「二高祭」と書かれた看板がある。
○同・校舎前
多くの模擬店が並んでいる。準備中。
並んで歩く真島直人(33)と田畑桃(18)。
桃「模擬店の数、めっちゃ多いね」
真島「ここまで大規模とは……」
空き缶で作られたタワーが三本並んで立っている。
真島「(タワーを指差し)あれは?」
桃「(左から順に)あれはB組が作った空き缶タワー。真ん中がC組で、隣がD組」
真島「……人気だね、空き缶のタワー」
桃「(腕時計を見て)あ、もうこんな時間だし。教室行こっか」
○同・校門
続々とやってくる客。
○同・E組・前
行列ができている。
○同・同・中
真っ暗な室内。恐る恐る歩く客。
お化け姿の真島と桃が出てくる。
驚いてその場を去る客。
互いにピースサインする真島と桃。
押尾の声「次のお客さん入るわよ~」
慌てて持ち場に戻る真島と桃。
恐る恐る歩く馬場義高(23)。
真島と桃が出てくる。
驚く馬場と目が合う真島。
真島「馬場君!?」
馬場「え? 真島さん……ですか?」
○同・ヤノヤの模擬店
空き缶タワーの正面に立つ模擬店。
客はいない。
レジを挟んで立つ有働南(43)と真島、馬場。
南「いや~、客が全然来なくてな」
馬場「暇すぎて、自由時間になったんですよ」
南「このままだと、真島の手伝い要らないかもしれないな」
真島「そうだったんですか……」
馬場「何か対策立てなきゃいけないんでしょうけど、いい案浮かばないんですよ」
真島「対策、か……」
考え込む真島、馬場、南。
そこにやってくる桃と二谷幸生(63)と押尾英二(35)。二谷はゾンビの特殊メイクをし、お化け屋敷の看板(手持ち式)を持っている。
桃「直君、お疲れ~」
真島「みんな、来てくれたんだ」
二谷「売り上げにちょこっと貢献しようと思ってね、チョコだけに。なんちゃってね、ガッハッハ」
押尾「やだもう」
桃「直君、そろそろ借りていっていいですか?」
南「あぁ、いいぞ。持ってって」
真島「物扱いしないで下さいよ」
桃「それじゃ、直君持ってきま~す」
真島「だから~」
二谷「さぁ、行こうかね」
真島「(二谷の持つ看板を見て)あっ! 部長、看板持ちなんてどうでしょうか?」
○同・校舎前
並んで歩く真島、桃、二谷、押尾。ヤノヤの看板(手持ち式)を持っている真島。
○同・模擬店A
焼きそばを作っている店員。
焼きそばを買う真島。
× × ×
店の脇のテーブルを囲む真島、桃、二谷、押尾。談笑しながら焼きそばやチョコを食べている。
○同・フリーマーケット会場
フリーマーケットが開かれている。
洋服が置いてある店。
若者風な服を選び二谷に合わせる桃。
その様子を見ている真島と押尾。
○同・模擬店B
パンチ力を計る機械がある。
「100kg超えた方に景品差し上げます」と書かれた看板。
挑戦する真島、桃、二谷。いずれも100kgに満たない数字。
挑戦する押尾。200kg近い数値をたたき出す。驚く真島、桃、二谷。
「やだ~」と言いながら店長に抱きついて喜ぶ押尾。
○同・校舎前
並んで歩く真島、桃、二谷、押尾。
二谷「いや~、今年は面白いね」
押尾「ほんとね」
桃「次はどこ行こっか?」
真島のスマホが鳴る。
真島「はい、真島です」
○同・ヤノヤの模擬店
行列ができている。
レジを打つ馬場と南。
店内にやってくる真島。看板は持っていない。
真島「すみません、遅くなりました」
南「悪いな、真島。いきなり呼び出しちゃって。いきなり、ご覧の通りでさ」
真島「いえ。大繁盛で何よりです」
馬場「真島さんの看板持ちのおかげじゃないですか? ……あれ、真島さん、看板はどこに置いてきちゃったんですか?」
真島「あぁ。さっき雇った、看板持ちのアルバイトの子に預けてあるよ」
馬場&南「アルバイト?」
○同・廊下
ヤノヤの看板を持って歩く特待生A。
特待生A「この冬発売予定のヤノヤの新商品が一足先に食べられるよ~。場所は校舎前、空き缶タワー正面」
やってくる特待生B。
特待生B「お前も物好きだよな」
特待生A「だって、バイト代くれるって言うからさ。だったらやるだろ」
○同・ヤノヤの模擬店
レジを打つ真島と南。注文を取る馬場。
次々に売れるチョコレート。
× × ×
客はいない。
店内の片付けをする馬場と南。
馬場「売れましたね~」
南「売れたな~」
「完売」と書かれた看板。
○同・E組・前
受付に座る桃。客はいない。
やってくる真島。
真島「桃ちゃん」
桃「あれ、直君。どうしたの?」
真島「チョコは完売したから、ちょっとこっち来てみたんだ」
桃「そっか、おめでとう。でも、こっちでも直君に手伝ってもらう事はないかな……。もうお客さんもいないし」
真島「いるよ、ここに」
桃「え、直君?」
真島「記念にね」
× × ×
開かれたドアの前に立つ真島と桃。
桃「お客さん入りま~す。(真島に小声で)じゃあ、行ってらっしゃ~い」
真島「行ってきます」
○同・同・中
真っ暗な室内。恐る恐る歩く真島。
次々と出てくるお化け姿の生徒達。
それらに驚く真島。
出てくるお化け姿の二谷と押尾。
真島「(腰を抜かして)うわっ」
押尾「やだ、直君大丈夫?」
○同・同・前
フラフラしながら出てくる真島。
桃の元にやってくる。
桃「どうだった?」
真島「あんなに恐いと思わなかったよ……」
桃「何言ってんの。直君の企画書通りだし」
笑う桃。つられ笑う真島。
○同・校舎前(夕)
客が誰もいない。
片付け始められている模擬店。
○同・校門(夕)
看板等を片付けている生徒達。
それを眺める真島、桃、二谷、押尾。
二谷「終わっちゃったね」
押尾「何か、あっと言う間だったわね」
桃「あ~あ、何か文化祭終わっちゃったら、あとは卒業だけって感じだし」
真島「卒業、か……。寂しくなるな」
二谷「寂しくなったら、また通えばいいじゃない」
真島「え?」
二谷「いつでも帰ってくればいいんだよ。この学校はね、そういう場所なんだから」
押尾「そうよ。何てったって、ここは私達の母校なんだから」
桃「母校……」
真島「帰ってくる場所、か……」
(完)
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