煙に巻かれて ミステリー

株式会社FNETにて、個人情報の流出事件が発生し、社員の生出愛(26)が逮捕される。 そんな中、現情報システム部、元人事部の秋篠直一郎(45)は、喫煙所にいた。そこで鉢合わせた向井大吾(26)と、個人情報流出事件について対峙することとなる。 シナリオ・センターの課題「写真」での作品です。
ゆう 100 0 0 01/06
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第一稿

人 物
秋篠直一郎(45)株式会社FNET情報システム部。
向井大吾(26)喫煙者。
生出愛(26)株式会社FNET社員。
キャスター


○ニュース映像
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人 物
秋篠直一郎(45)株式会社FNET情報システム部。
向井大吾(26)喫煙者。
生出愛(26)株式会社FNET社員。
キャスター


○ニュース映像
   話すキャスターと、映し出される記者会見の映像。
キャスターの声「コミュニケーションアプリ等で知られる株式会社FNETは、21日、個人情報   など合わせて320万件が、外部企業に売買され、不正利用されていたことを明らかにしました」
   フラッシュの中、頭を下げる株式会社FNETの役員たち。
キャスターの声「また、口座番号を含む個人情報を不正に売買したとして、県警は今日、株式会社FNETの社員1名を逮捕しました」
   映し出される、生出愛(26)の逮捕映像。

○株式会社FNET・外観

○同・喫煙所
   換気扇の音が鳴っている。その中で、秋篠直一郎(45)、タバコを咥え、ポケットからライターを取り出し、火を付ける。秋篠が吐いた煙が部屋内に充満する。そこに、向井大吾(26)、走って入ってくる。
秋篠「はあ……苦しい」
向井、タバコに火を付ける。向井の吐いた煙が部屋に広がる。
向井「(息切れ)マスクって苦しいですよね」
向井、マスクを外し、
向井「……ふう、調子戻ってきた」
   と、向井、壁にもたれる。
向井「……なんか話します?」
秋篠「だめだ。コロナ禍だぞ」
   壁に貼られている「黙煙」のポスター。
   向井、大きく煙を吐いて、
向井「……僕の家の猫見ます?」
   と、ポケットからカバーのついてない携帯を取り出して、秋篠の顔に向ける。
秋篠「だからいいって」
   向井、すぐ携帯を引っ込め、
向井「そんな言い方しなくても」
秋篠「猫には興味がない」
   向井、携帯を弄りながら、
向井「秋篠さん、ですよね。人事の」
   と、向井、携帯をポケットにしまう。
秋篠「元、人事。だけどな」
向井「この人ご存知ですか」
   と、向井、コピー用紙に印刷された女性の写真を見せる。
秋篠「……どこかで見たような」
向井「ご存知ですか」
秋篠「顔だけ」
向井「ご存知なんですね」
秋篠「しつこいな。顔だけだよ」
向井「そうですか……さすが人事」
秋篠「だから、元」
向井「あ、今は情シスなんですよね。大変でしょ。社内であんな事件起こっちゃって」
秋篠「……あんまり開けっ広げに話すな」
向井「またまた。みんな知ってますよ」
秋篠「……刑事事件なんだ。噂話レベルの話じゃない」
向井「いや、僕、真犯人を知ってるんですよ」
   秋篠、大きく煙を吐き、
秋篠「なるほどね」
向井「知りたいですか?」
秋篠「一応、参考程度に」
向井「……犯人、あなたでしょ?」
秋篠「……私?」
向井「……あなたが、生出さんに指示したんでしょ?」
秋篠「……何を言い出すかと思ったら」
向井「彼女は中途で入ってきたばかりで、顧客情報に目を付ける暇もなかったはずだ。顧客情報を盗むよう、誰かが指示をした」
秋篠「もっと面白い話かと思ったんだが」
向井「いえ。面白い話はこれからです」
秋篠「?」
向井「彼女は……愛はあなたと肉体関係にあった。それを利用して、あなたは彼女に情報を持ち出させた。そして実際、大事になったら彼女を蜥蜴の尻尾の如く切ったんだ」
秋篠「妄想だな」
向井「的を射ていると思いますが」
秋篠「その生出とかいう女、確かに知ってはいるが、肉体関係などはなかった」
向井「本当ですか?」
秋篠「聞けばわかる話だ」
向井「愛は依然黙秘しています。おそらく貴方を庇ってる」
秋篠「それにだ。私はつい先月、情シスに配属されたばかり。いわば新人だ。個人情報関連などほぼ知らんし、なんならデータベースを覗いたことすらない」
向井「本当ですか?」
秋篠「本当だ」
向井「じゃあ、この人は」
   と、向井、先ほどのコピー用紙の女性写真を見せる。
秋篠「は?」
向井「この人。どこで見たんでしょうかね」
秋篠「……だから知らない」
向井「この人。顧客リストの一番最初にある人なんですよ」
秋篠「……」
向井「貴方はまさに彼女から顧客リストを受け取ったときにこの人の写真を見たんです。それ以外にありません」
秋篠「そうとも限らない……偶然その辺で見かけただけかもしれないじゃないか」
向井「いや。直接会えるはずがありません。これ。データベースのテスト用に作られたダミーの写真なんです。この世には存在しない人なんですよ」
   秋篠、灰皿に強くタバコを押し付ける。
向井「……どこでご覧になったんですか、この人を」
秋篠「……もう、その辺にしといたらどうだ」
向井「……その辺とは」
秋篠「君、この会社の人間じゃないだろう」
向井「それは今関係のない話です」
秋篠「……君、生出の恋人だろう」
向井「……」
秋篠「口ぶりでわかる。大方彼女が捕まったものだから、会社で密かに調査をしてたんだろうが、そんなことをしても無駄だ。彼女は間違いなく黒だし、君が無意味な調査を続けていると、かえって不利になるぞ」
向井「……黙れ」
秋篠「あ?何と言った?」
向井「……あんたが犯人なんだ……」
秋篠「(笑って)じゃあ聞くが何を根拠に私を犯人だと?顧客リストを覗いたから犯人になるのか?何一つ証拠はないじゃないか」
   向井、秋篠に携帯のLINE画面を見せる。
   画面には愛とのやり取りで、「今夜10時に朝日ホテルで」「誰にも見られなかったか?」などと書いてある。
向井「証拠はいくらでもある」
秋篠「……」
向井「あんたの携帯の中にな」
秋篠「……まさか」
向井「そう。これはあなたの携帯だ。俺が猫の写真を見せようとした時に、顔認証でロックを解かせてもらった。スマホカバーを外すと、自分のだと気づかないからな」
秋篠「……」
向井「……この機会をずっと狙ってたんだ。でも、こういう情勢だからあんたは中々マスクを外してくれない。マスクがあると顔認証できない。だから必ずマスクを外す喫煙の機会を狙っていたんだ」
秋篠「……」
向井「これで、あんたと愛との関係性は実証されたわけだ」
秋篠「……いや」
向井「……何?」
秋篠「……こんなもので私を落とそうとしても無駄だ。今君が捏造したものかもしれないじゃないか」
向井「……」
秋篠「いいか、彼女との肉体関係は、この際だ、認めるとしよう。だが、私を犯人に仕立てるのはお門違いだ。君は彼女が私と浮気していた事実から、逆恨みして私を不当に貶めようとしてる」
向井「……そんなことはない……」
秋篠「(笑って)君は知らんだろうが、彼女の方から私にアプローチをしてきたんだ。私は仕方なく、彼女の相手をしてやった」
向井「……では、彼女を想う気持ちは……」
秋篠「ないと言っていいだろうな」
向井「ない」
秋篠「彼女は私の知る数多の女性の一人に過ぎない。だから私を恨んでも無駄だ。恨むなら、私に擦り寄った彼女を恨め」
向井「……そうですか」
秋篠「ああ」
   向井、秋篠に近づき、
向井「(小声で)……そんな秘密、大声で言ってしまって大丈夫ですか?」
秋篠「……」
向井「秋篠さん、黙煙、ですよ」
   そこに、愛、警官数名に連れられて入ってくる。
向井「愛、全部聞いたか?」
愛「……はい」
向井「……全部話してくれるね」
愛「……秋篠さんに指示されて、データを盗みました」
秋篠「……」
秋篠「……冗談じゃない。こんなこと」
社員1「秋篠さん、お話を」
   と、社員たち、秋篠の腕を引いて喫煙所を後にする。
秋篠「……残念だったな、本当に」
   一人残った向井、タバコに火をつけ、ゆっくりと煙を吐き、
向井「何もかも有耶無耶になるよりマシだ」
   煙が向井を包むように広がる。
(了)

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