松江の雨は優しく降る。 恋愛

友人の益田航平と松江駅のエキナカにあるコーヒー店でバイトをしている宮本凌夢。そこへ雨の日だけ電車を利用している横井結愛が来店し一目ぼれしてしまう宮本。しかし友人の益田はその様子を見て複雑な気持ちになる。 ※シナリオセンター課題「雨」の作品。 来年「しまね映画塾」へ応募予定の作品です。
大門なおき 20 1 0 11/14
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第一稿

   人 物
宮本凌夢(読み:みやもと りむ)(20)大学2年生
益田航平(20)宮本の友人
横井結愛(読み:よこい ゆめ)(26)会社員
長野和成(29)結愛の恋人

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   人 物
宮本凌夢(読み:みやもと りむ)(20)大学2年生
益田航平(20)宮本の友人
横井結愛(読み:よこい ゆめ)(26)会社員
長野和成(29)結愛の恋人

サラリーマン


○JR松江駅・外(夕)
   雨が降っている。
   駅のバスターミナルに路線バスがひっ
   きりなしにやってくる。
   傘をさして駅から出てくる人々。

○駅ナカ・水都(すいと)カフェ・外(夕)
   「水都カフェ」と書かれた看板が出て
   いるカフェ。
   大勢の学生や会社員が行きかっている。

○同・同・店内(夕)
   落ち着いたシックな内装の店内。
   カウンターの内側で黒いシャツに「宮
   本」と名札がついた松江城の絵が入っ
   た白いエプロンをした宮本凌夢(20)
   と、「益田」と名札がつけた益田航平(20)
   がコーヒーカップを拭いている。
   窓を見る宮本。
宮本「雨、止まねえかな…」
益田「それなー」
宮本「なあ益田」
益田「なに?」
宮本「相合い傘して帰ろうぜ」
   頬を赤らめる益田。
益田「は、はぁ⁉ な、なんで男同士で!」
宮本「えー! 傘忘れたけん入れてや!」
益田「傘忘れた凌夢が悪い」
   顔をしかめる宮本。
   店のドアが開き鈴の音が響く。
宮本・益田「いらっしゃいませ」
   コーヒーカップを拭くのを止める宮本
   と益田。黒髪でビジネスカジュアルの
   格好をした横井結愛(26)が入ってく
   る。
宮本「!」
   カウンターにあるメニュー表を見る結
   愛。結愛を見ている宮本。
   結愛、顔をあげる。頬を赤らめる宮本。
結愛「すみません、水都コーヒーください」
   結愛をぼーっと見つめる宮本。
益田「おい凌夢」
   我に返る宮本。
宮本「あ、失礼いたしました。もう一度ご注
 文お伺いしてもいいですか?」
結愛「水都コーヒーを…」
宮本「あ、水都コーヒーですね。ホットとア
 イスがございますが」
結愛「ホットでお願いします」
宮本「かしこまりました。320円です」
   320円ちょうどを支払う結愛。
宮本「ちょうどいただきます。お席でお待ち
 ください。お持ちいたしますので」
   番号札を渡す宮本。札を持って一人席
   に座る結愛。益田、宮本に近づき
益田「どうした、ボケーっとして」
宮本「なっ! ぼーっとなんかしとらんわ!」
   結愛を見る益田。
益田「まさか…、惚れたのか?…」
宮本「ち、ちげーし! そんなんじゃねーし!」
   横目で結愛を見ている宮本。
   宮本を寂しげな表情で見る益田。

○同・同・店内(夕)
   T「次の日」
   店内でコーヒーを飲んでいる客たち。
   カウンターでコーヒーカップを拭いて
   いる宮本。宮本一人だけである。
   店内の窓から雨傘を差して駅前を歩く
   人々が見える。ドアが開き、鈴の音が
   響く。
宮本「いらっしゃいま…せ…」
   カウンターにやってくる結愛。
宮本「あっ…」
   気にしない素振りをするが目は結愛を
   追っている。
結愛「すみません、水都コーヒーのホットを
 お願いします」
宮本「す、水都コーヒーのホットですね」
   レジを操作する宮本。
宮本「あ、あの…」
   宮本を見る結愛。
宮本「も、もしよかったらその…」
結愛「?」
宮本「ポ、ポイントカードどうっすか? ポ
 イントが貯まると水都コーヒー一杯無料券
 として使えるんすよ」
結愛「あー…。ごめんなさい」
宮本「え⁉…」
結愛「え、何か」
宮本「あ、いや…。すみません…」
   吹き出し笑いする結愛。
結愛「可愛い店員さんね」
宮本「え…」
結愛「私、雨の日だけ松江駅使ってるの。電
 車来るまで時間空くし、ずっとホームで待
 ってるのも嫌だなって…。それでここに…」
宮本「そ、そうだったんすね…」
   番号札を差し出す宮本。結愛、笑顔で
結愛「ありがと、可愛い店員さん」
   カウンターを後にし、一人席に座る。
結愛を見つめる宮本。

○松江大学・外観
   広大な敷地に校舎が建っている。
   快晴の空が広がっている。

○同・教室(中)
   30人ほどが入る広さの教室。
   椅子に座ってスマホで松江市の天気予
   報を見ている宮本。水曜日と木曜日に
   雨マークがついている。
   机の上に逆さに吊るされた、てるてる
   坊主が宮本の目の前に2つ置かれてい
   る。宮本、小声で、
宮本「雨降れ雨降れ…」
   教室に入ってくる益田。恐る恐る宮本
   の隣にやってくる。
益田「凌夢…、なんだそれ…」
   顔を上げ、てるてる坊主と益田を見る宮本。
宮本「え? 何って…。てるてる坊主だけど」
益田「なんで逆さ⁉ 普通逆じゃね? って
 か晴れがいいだろ!」
宮本「いいんだよこれで! それより、今週
 の水曜日と木曜日のシフト変われ!」
益田「はぁ? なんで」
宮本「いいからっ!」
益田「あ、まさか、あのバイト先の美人とな
 んかあったとか?…」
宮本「そ、そんなんじゃ…なくもない…」
   頬を赤らめ益田から視線を逸らす宮本。
宮本「こ、告白…、しようと思ってんだよ…」
益田「えっ…」
   益田、小声で
益田「やだっ…」
宮本「なんか言ったか?…」
益田「べ、別に何も…」
   いぶかし気な表情をする宮本。
   宮本を寂しげに見つめる益田。

○水都カフェ・店内(夕)
   T「水曜日」
   カウンターで落ちつきなく立っている
   宮本とマグカップを布で拭いている益田。
   カウンターには逆さまになった
   てるてる坊主が2つある。
   店内の窓からは雨傘を差して駅前を歩く
   人々が見える。
益田、宮本を見て
益田「凌夢…、あのさ、俺…凌夢のこと…」
   扉が開き、鈴の音が響く。
益田「いらっしゃいませ」
宮本「あ、あの!」
   店内に入ってきたサラリーマン、立ち
   止まり、
サラリーマン「な、なんでしょうか…」
宮本「あ…。いえ、何でもないっす…」
   首をかしげながら店内に入るサラリーマン。
   片手で顔を覆い溜息をつく宮本。
宮本「俺、クッソだっせぇ…」
   ホッと胸をなで下ろす益田。
    ×    ×    ×
   カウンター立っている宮本と益田。
   ドアが開き、鈴の音が響く。
益田「いらっしゃい…、ませ…」
   私服姿の結愛がカウンターに来る。
宮本「い、いらっしゃいませ…」
   宮本と結愛を横目で見ている益田。
   結愛、笑顔で
結愛「こんにちは! また来ちゃった」
宮本「こ、こんちは! い、いつもの水都コ
 ーヒーっすよね?」
結愛「うん! 今日は2つ下さい」
宮本「ふ、二つっすか…」
結愛「はい」
   番号札を結愛に渡す宮本。
結愛「ありがとう、宮本さん」
   番号札を持って二人席に座る結愛。
   カウンターから出てきて結愛に近づく
   宮本。益田、小声で
益田「凌夢頼む! フラれてくれ!…」
宮本「あ、あの!…」
   ドアが開き、鈴の音が響く。
   店の出入り口を見る宮本。
   店内に入ってくる長野和成(29)。
   ドアの方向を見る結愛。
   結愛、立ち上がり
結愛「あ、カズくんこっちこっち!」
宮本「え…。か、カズくん…」
   宮本の前を通り過ぎる長野。
長野「おまたせ~。待った?」
結愛「ううん。私もいま来たところ」
   仲良く向かい合って座る結愛と長野。
   俯く宮本、カウンターへ戻る。
   窓についた雨水が滴り落ちる。
宮本「雨…、止まねえかな…」
益田「今日、相合傘して帰ぇか?」
宮本「アホ。やんねえよ」
   益田を見る宮本。笑顔の益田。
   逆さじゃないてるてる坊主にする益田。

おわり。

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