T【2016年2月】
▼快晴の空のシーン
◯歩道(夕方)
▼山田 啓次(やまだ けいじ)と菊池 広輔(きくち こうすけ)が歩道を歩く。
菊池「いやー春休みか」
山田「そうだな、じゃあ4月だな、また宜しく」
菊池「おう、またね」
▼山田、手を振る。
▼山田と菊池、帰っていく。
◯アパート・入口(夕方)
▼山田、ポストを見て入っていた手紙を見つける。
山田「誰だろう…あっ!」
▼山田、宛名を見て微笑む。
◯部屋・中(夕方)
▼山田、自分の部屋に入る。
▼山田、持っていた鞄を置き、手紙を開ける。
▼山田、手紙を読んでいる。
山田くんへ
こうして手紙を出すのは久々ですね。
あの時貰った手紙読みました。改めてありがとう。
今は順調に回復していて、来学期からまた復帰できるようになりました。
私は、あの時期とても辛い時期でした。
でも、最後はあなたと話せて、それまであった悲しみだけの気持ちは少し喜びに変わりました
まるで雨が降っていた場所が晴れて、虹が生まれた気がします。
今でもあなたへの気持ちは変わりません。
もし、あなたの気持ちも変わらないのであれば、また会いましょう
上本より
▼山田、笑顔になる。
T【2014年12月】
▼曇り空のシーン
◯講義室・中(朝)
▼講義前、菊池と片岡 勇人(かたおか はやと)が座っている。
▼山田、講義室に入ってくる。
山田「おはよう」
菊池・片岡「おはよう」
菊池「山田、これ上本さんから」
山田「もーまたかよ、そのドッキリには飽きたよ」
菊池「いや、これは本当なんだって」
山田N「以前俺は手紙でひどい目に遭っていた」
◯講義室・中(回想)
▼山田、菊池から手紙を受け取る。
▼菊池と片岡、手紙を受け取った山田を見ている。
山田「何これ」
菊池「いいから開けてみてよ」
▼山田、手紙を開ける。
山田「うわっ!ラブレターじゃん」
SE「カメラ音」
▼菊池、携帯カメラで山田を撮る。
菊池・片岡「ハハハハハ!」
菊池「違うよ!今時手紙なんてないない」
山田「は?」
片岡「いやー、ドッキリ大成功だな」
▼菊池、撮った写真を近くに座っている生徒たちに見せる。
菊池「おい!これ見ろよ、山田の顔!」
生徒たち「ハハハハハ!」
▼山田、落ち込む。
(回想終わり)
◯講義室・中(朝)
山田「またあんな目に遭うのは嫌だよ」
菊池「上本さんからどうしても受け取ってほしいっていう手紙なんだよ」
山田「中身は?」
菊池「それはお前宛なんだから見てないよ」
山田「おかしいな、第一上本さんの小説チックな文章にはごめんだ」
▼近くに座っていた上本 敬子(うえもと たかこ)、見上げる。
菊池「お前それ…」
▼菊池、山田に後ろの席を見ろと指示する。
▼山田、振り返ると後ろの席に上本がいたことを知る。
▼山田、唖然としている。
◯廊下
▼山田と菊池、食堂に向かって歩いている。
山田「とりあえず受け取ってやるよ、でも絶対見ないからな」
菊池「お前あの言い方はないだろ、しかもお前上本さんと同じゼミだろ」
山田「だって本当じゃん」
菊池「俺もあの人と同じアパートなんだから…」
山田「別に何もないだろ…」
菊池「お前のせいで俺も会うのが気まずくなるだろ」
山田「第一、そもそも怪しいんだよ、お前の馬鹿みたいな手紙のせいで」
菊池「…とりあえず、あの手紙は絶対見ろ。分かったな」
山田「さぁー、どうかな…」
菊池「頼むぞ…じゃあな」
山田「あれ、昼飯は?」
菊池「ちょっと用事あるし、今のお前とは食べたくないな…」
▼山田、唖然としている。
◯大学内・ベンチ
▼菊池、ベンチへ向かう。
▼上本、ベンチに座っている。
上本「ごめんね」
菊池「いや、大丈夫です。とりあえず手紙は渡しておきました」
上本「そう…」
菊池「行きますか」
◯大学内・食堂
▼山田、昼食を摂る。
山田「誰が信じるかよ…あれ?」
▼山田、食堂の窓から歩いている菊池と上本を発見する。
山田「菊池と上本さんだ…」
▼山田、菊池と上本のもとに亀澤 直倫(かめざわ なおみち)が合流する。
山田N「彼は亀澤さん、俺と同じゼミで厳しい人だ」
山田M「怖いなー…見なかったことにしよ」
▼山田、視線を逸らす。
◯大学内・ゼミ室
▼ゼミ室に山田、上本、亀澤含め8人が口の字型に座っている。
▼ゼミ生の荒木 弘和(あらき ひろかず)が司会を務めた議題が終わる。
荒木「では、今日はここまでにします。えー来週は発表なので準備を忘れずに」
▼荒木、ゼミ室を出る。
亀澤「山田」
山田「はい」
▼上本、持っていたペンを落とす。
▼上本の隣に座っていた亀澤、上本が落としたペンを拾う。
上本「あーごめん」
亀澤「大丈夫?」
▼上本、頷く。
亀澤「山田、先週言ったレジュメ持ってきたよな」
山田「あっ!すみません、忘れました」
▼山田の前に座っている石川 寿彦(いしかわ としひこ)が話す。
石川「えっ!ヤバくない」
亀澤「お前、来週の発表どうすんだよ」
山田「はい、来週には必ず持っていきます」
▼亀澤、机を叩く。
亀澤「来週発表なんだからそれまでに持ってこないとダメだろ!」
山田「はい、すみません」
亀澤「いいか!ちゃんと持ってこいよ」
山田「はい」
▼亀澤、ゼミ室から出る。
▼上本、ゼミ室に出ようとする。
▼山田、帰ろうとする上本に話し掛ける。
山田「あっ、上本さん…昨日は」
上本「ごめんなさい!」
▼上本、ゼミ室から出る。
▼山田、ため息をつく。
◯大学内・講義室・中(朝)
▼山田、落ち込んで座っている。
▼片岡、講義室に入ってくる。
片岡「あれ、山田じゃん、おはよう」
山田「…おはよう」
片岡「元気ないね、そうだ、おとといの手紙何て書いてあった?」
山田「見てないよ」
片岡「なんだ、見てないのかよ…面白くねぇな」
山田「は?」
片岡「あーてっきり見てるかと思った、前みたいに」
山田「そんなに面白いか?」
片岡「当たり前じゃん」
山田「そうか…もういいよ」
片岡「どうしたんだよ?逆ギレか?」
山田「もう知らない」
片岡「なんだよ、ちょっとからかったくらいで、弱い奴だな」
山田「だったら、人の気持ち考えろよ!」
片岡「はー…お前とは合いそうにないわ…もう知らない?こっちの台詞だよ!」
▼片岡、文句をぶつぶつ言いながら帰る。
◯大学内・廊下(朝)
▼山田、1人で廊下を歩いている。
山田「もーなんだよ、あいつ」
▼亀澤、山田を見かけて話し掛ける。
亀澤「おーちょうど良かった、レジュメは出来たか?」
山田「あっ、ちょっと待ってください」
▼山田、鞄の中を探す。
亀澤「相変わらず遅いなー…早くしろよ」
山田「はい…すみません」
▼亀澤、歩き始める。
▼山田、亀澤についていく。
▼山田、菊池から貰った手紙を落としてしまう。
山田「ごめんなさい、忘れました」
亀澤「そうか…もう分かったよ」
山田「はぁ…(溜め息)」
◯大学内・講義室
▼講義が終わり、山田が帰ろうとする。
▼山田、菊池と片岡と目が合う。
▼菊池と片岡、山田を避けるように視線を外す。
▼上本、講義室から出る。
◯大学内・廊下
▼山田、廊下に出た上本を話し掛ける。
山田「上本さん!」
上本「あっ!ごめんなさい」
山田「いや、謝るのは僕の方です。ごめんなさい」
上本「手紙、見てくれた?」
山田「手紙?あれは本当に上本さんの手紙だったんですね、今見ます」
▼山田が鞄の中を探す
上本「持っててくれたんだね」
山田「はい…あれ?」
▼山田、手紙がないことに気付く。
山田「ごめんなさい、ないです」
上本「…そう、分かった。ごめんね」
▼上本、その場から離れる。
山田M「はぁ…何をやっているんだ、俺は」
山田N「気付けば手紙を貰ってから1週間が経っていた。亀澤さんから言われたレジュメを忘れ、菊池と片岡との関係も悪化。上本さんから貰った手紙も無くした。俺は心身ともに疲れ切っていた。」
▼雨のシーン
◯大学内・食堂
▼山田、食堂でご飯が進まない。
▼山田の携帯に電話が掛かってくる。
山田「もしもし」
亀澤の声「亀澤だ、もうレジュメは出来てるだろうな」
山田「あー今日早急に持っていきます」
亀澤「分かった、それとお前に渡すものがある」
山田「渡すもの?」
亀澤「いいから、早くレジュメを持って来い」
◯大学内・ベンチ
▼山田、亀澤が座っているベンチに向かう。
山田「すみません、遅れました」
▼山田、亀澤にレジュメを渡す。
亀澤「やっとか、まぁ座れよ」
山田「はい」
▼山田、亀澤の隣に座る。
亀澤「どうやら上本から貰った手紙を見ていないようだな、なぜだ?」
山田「…あれは友達から貰ったものだったので、上本さんの手紙だとは思いませんでした」
亀澤「菊池くんか、申し訳ないことをしたな…」
山田「でも、さっき上本さんの手紙だと知りました」
亀澤「そうか、そのことで上本は相当落ち込んでいたからな」
山田「そんなに重大な手紙だったんですか?」
亀澤「さっき上本に会ったんだ、これ」
▼亀澤、山田に手紙を渡す。
山本「手紙…」
亀澤「俺に渡されたんだよ…なくしたんだろ?上本から聞いたぞ」
▼山田、手紙を開ける。
山田くんへ
こうして手紙を書くのは、前にもありましたが今回で最後になりそうです
実は今年中に大学を休学にすることを決めました。というのも以前から私は手が震えるように
なってしまい、とても今江の状態では学べる状態ではありません。
本当は今学期終わりまでと決めていましたが、もう限界です。
前に菊池くんにお願いした手紙には助けてほしいというお願いをしていましたが、それもよく
考えると図々しいお願いですね。
私にとって山田くんは、とても大きな存在でした。例えると飛べない鳥のような私に翼をくれるような存在でした。
でも、こういった文章、あなたは嫌いですね。
申し訳ありません。
上本より
▼山田、溜め息をつく。
亀澤「菊池は、実は面と向かって告白できない上本を支えていた、上本にとって菊池は唯一の幼馴染みだからな」
山田「えっ!そうなんですか?」
亀澤「なんだ、知らないのか…。2人が同じアパートに住んでいるのも幼馴染みだからだぞ」
山田「知らなかった…」
亀澤「菊池はお前と仲が良いって言ってたのにな。あっ最近喧嘩したみたいだが、それがドッキリの手紙か…。あいつも馬鹿だな〜。留学前に何やってんだよ」
山田「留学?」
亀澤「それも知らないのか?全然仲良くないな。上本が聞いたら悲しむぞ」
山田「…菊池はお調子者だし、それに上本さんはどうぜ嫌われたと思ってたし…」
亀澤「そうやって人を決めつけるのはよくないぞ、お前はなんでも決めつけているから相手の気持ちが分からないんだよ」
山田「いや、だって…」
亀澤「自分から相手のことを知ろうとしているか?」
山田「…でも、話を」
亀澤「何かを言い返したい気持ちは分かる、でも、現実は違うんだ。まずは、相手の話をしっかり聞いてあげることが大切じゃないか」
山田「はい」
亀澤「ただ、そんなお前を認めてくれる人がいるんだ、お前もちょっとは気になってたんだろ」
山田「まぁ、はい」
亀澤「上本に会えるのは明日が最後だ…しっかり気持ちを伝えないとな」
山田「はい」
◯大学内・廊下
▼ゼミ終わり、山田が廊下で上本を呼び止める。
山田「上本さん」
上本「…ゼミお疲れ様、じゃあね」
山田「手紙読みました。あなたのことをもっと早く知っておくべきでした」
上本「私もごめんね、ちょっと重いかな、あっ、菊池くんだ」
▼菊池、現れる。
菊池「山田…」
山田「あんなこと言ってごめん」
菊池「俺の方こそ悪かった…実は俺留学するんだよ」
山田「そうか…寂しくなるな」
菊池「で、手紙は読んだか?」
山田「読んだよ」
菊池「しばらく上本さんとは会えなくなっちゃうな」
山田「俺、手紙書いてきました、上本さんに」
上本「えっ?」
▼山田、上本に手紙を渡す。
山田「今は大変だと思うので、回復したら読んで欲しいです」
上本「…分かった、絶対戻って来れるようにするから」
山田:いつでも待っています」
菊池「あれー、なんか俺だけ必要ない感じ?」
山田「そうかもね」
菊池「せっかく上本さん迎えに来たのに意味ないな、山田、上本さんを頼んだぞ、じゃあ」
山田「えっ?ちょっと」
▼菊池、帰っていく。
山田「…帰りましょうか…」
上本「…うん」
◯講義室・中(朝)
▼講義前、菊池と片岡が座っている。
▼山田、講義室に入ってくる。
山田「おはよう」
菊池「あーおはよう。山田、あの手紙になんて書いたの?」
山田「それは秘密に決まってんじゃん」
▼山田、片岡に話し掛ける。
山田「片岡、この間は悪かった」
片岡「…俺も…ちょっと言い過ぎたよ…ごめん」
山田N「こうして俺たち3人は関係を取り戻し、楽しい日々が続いた。でも、こころのどこかでは上本さんが大丈夫かと心配になった。そんな思いの中、上本さんと最後に遭ったときから1年以上が経とうとしていたときに…」
T【2016年2月】
▼快晴の空のシーン
◯アパート・入り口(夕方)
山田:誰だろう…あっ!
山田N「上本さんが来学期から戻ってくるということを知った。俺の手紙が読んでもらえたと思うととても嬉しかった」
T【2016年4月】
◯講義室・中
◯廊下
▼山田、講義を終え廊下を歩いている。
上本さんへ
お元気ですか?
この文章を見ているということは、回復の方向に進んでいるのだと思います。
あのとき貰ったあなたが書いた手紙
実は菊池が書いたドッキリの手紙だと決めつけてしまいましたが、今思えば、あいつの顔はいつもと違っていました。
このように考えるようになったのもあなたと同じ学年だった亀澤さんのおかげです。
これからは何事も決めつけず、相手の立場になって物事を考えるようにします
最後にあなたには酷いことを言ったり、手紙をなくしてしまったり、とても残念な思いをさせてしまいました。
でも、僕はあなたのことを気になっていました。
あのような行動をしてしまったことを今でも反省しています
あなたは僕に震える手で手紙を書いてくれました
だから、次は僕があなたを心から支えたいと思います
回復したら、こうして手紙を送ってください
いつでも待っています。また会いましょう
山田より
◯大学内・ベンチ
▼上本、ベンチに座って山田から貰った手紙を読み終わる。
▼山田、上本が座っているベンチに到着する。
山田「…あっ!いた」
上本「久しぶり」
山田「手紙ありがとうございます、じゃあご飯行きましょうか」
▼上本、微笑む。
▼虹が掛かった空のシーン
終
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