明日と僕 SF

ある青年の元に死神が舞い降りる。死神に将来を宣告された青年が死を理解している人生に意味を見出す物語。
Nana 10 0 0 10/08
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第一稿

ある日目の前に大男が現れた。釜を持ち羽が生えていかにも漫画に出てきそうな死神だ。
彼は淡々と僕の生命の終わりを語った。
最初は信じられなかったが、とても健康に気を使っていた父の ...続きを読む
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ある日目の前に大男が現れた。釜を持ち羽が生えていかにも漫画に出てきそうな死神だ。
彼は淡々と僕の生命の終わりを語った。
最初は信じられなかったが、とても健康に気を使っていた父の病死とクラスメイトの事故死を宣告され実際その通りになった。この時点でこの大男の宣言は確実であり、逃げることのできない絶対だと悟った。
僕は1年後死ぬらしい。何故か理由は言われなかったが、とりあえず大学生になれずに死ぬことを知り悲しむ母を横目に学校に行くのをやめた。1年あるならとバイトを始め、10ヶ月間頑張り1ヶ月で使いきった。日本を旅して最後にリゾート地で豪遊して女も知った。今まで日陰に隠れて生きてきた僕の中で1番幸せで、最初からこんな生き方をすればよかったと後悔した。そして最後の1ヶ月が終わりを告げようとしていた。明後日僕は死ぬ。どのようにして死ぬかはわからないが自然と受け入れてしまっていた。僕は家から出ず、二日間ねれるように強い睡眠薬を準備していた。痛いのは嫌だし寝て死ねるなら怖くもないと考えていたからだ。死ぬ準備はバッチリだった。だがその日は来なかった。起きて生を確認し驚きと同時に湧き上がる悦びに体がついていけないほどだった。母は心配そうにしていたがそんなのどうでもよかった。死を乗り越えその先の未来を手に入れた、それは死を前にして諦めていた全てができる、これからもご飯が食べれて、これからも行きたいところに行けて、これからも人と関わり関係を築ける。そんなふうに喜んでいた、違和感に気づくことなく。よろこび学校にその日のうちに復帰し一年遅れて授業を受け今のクラスメイトに積極的に話しかけた。二日目で違和感を感じたが確信に至ったのは三日目だった。授業もクラスの反応も全く一緒だった。そして日付も変わることはなかったた。日付は僕の命日の前日で固定され僕以外は全く同じ日々を過ごしている。最初はいつか来ると恐怖していた。そんな僕はもういない。日付が変わらなくなってもう数日がと経った。いくつかのルールと規則性は見つけたが一向に先が見えない。ルールの一つ目は僕は移動して0時を回ってもそのまま、家に強制移動とかはない。二つ目はものは変わらない。印をつけてもそのまま日を跨げる。最後三つ目は僕は老いずまた記憶が消えない。そして他の事象は全てリセットされる。飛行機の乗客は同じで学校の奴らも一言一句同じだった。何故命日の前日にループが始まったかがわからない。だけど少し嬉しい気持ちもあった。明日が来なければ死ななくて済む。明日が来なければ何もかも遊び尽くせる。移動もできるしなんでもできる、リセットされるから犯罪も可能ものは変わらないから、お金には困らない。そんな空想世界のような生活を送ってたまたま立ち寄った他県のグランドを見て僕は現実に引き戻された。そこには「17時に〇〇公園へ」と白線で大きく書かれていた、そこで僕はある可能性に気づいた。僕以外の人間もこの世界に取り残されているのではないかと。嬉しかった。一人に限界が来ていたところだったと思い、足取り軽く書かれた場所に向かった。そこには一人の少女が立っていた。まだ中学生?もしかしたら小学生かもしれないくらいの幼い空気をまとっていた。振り向くとそれは確信に変わった。その子はこちらを向き数秒驚いた後顔が崩れその場に倒れ込んだ。泣いている少女をほっとけず。その日泊まっている場所まで移動させた。誰かに話したかったのだろう彼女がどんな風に日々を過ごしたか、少女が喋りたいだけ喋らせた。そしてその日は糸が切れたかのように寝てしまった。たしかに、何もできない少女がこんな境遇にあったら何もできずつまらなくなるのは簡単に理解できた。ここでやっと今ぶつかっている問題に僕は目を向け始めたのだった。確認すると僕は死神に命日を宣告された前日でループしている。これは神様の温情と思ってループを楽しんでいた。しかし僕以外にもこの少女も同じ境遇にあっている。そっれには何か理由がある。と考えたところで僕の意識は消えた。次の朝彼女に話を聞いたが、小学生クオリティーの文はいささか理解が難しい。しかし、ある程度は分かった。彼女は明日父と母が死ぬらしい。だから死なないでと願い続けたらこの世界に来てしまったという。もしかしたらこの世界は明日を望まない人間の来る場所ではないかと思う。しかし、僕の場合明日が来れば全てが終わる。彼女も両親が死ぬ。じゃあどうすればいいのか、明日が来ていいことなど一つもない。お互いこの世界を求めてきたのに何故か胸に残るモヤモヤが取れない。彼女もこの世界に嫌気はさしているだろうが、明日は求めていないだろう。きっと他にも明日を望まない人間がこの世界にいることが予想できる。だからなんだと言うのだ。明日を望まない美女でも探して永久にこの世界で過ごすのか?たしかにそれもいいかもしれない。しかし、現状それしか方法はない。明日が来ないというこの状態を解決する方法がないのだから。その日は少女の願いで遊園地に来ていた。彼女は両親はループしていて仕事だし、移動手段もないからしょうがなしに僕が少女を連れ出してあげることにした。警察沙汰になっても明日には治っている。ほんと都合のいい世界だと感じながら少女と回っていると、少女は色々話しだした。好きなこの話、友達の自慢、学校の先生の話、他にも色々話した。そして最後に家族の話をした。両親はともに警察関連で忙しいが、毎年決まった時期に旅行行ったり、定期的に遊びに連れてってくれる優しくてかっこいい自慢の両親だという。少女にとっては、かけがえのない世界で一番大好きなものなのだろう。しかし明日が来れば両親は死に辛い現実が待っている。じゃあこの世界に一生いればいいじゃん。と思う僕はやっぱ性格が捩れてると自分でも思う。同じことをし続ける両親、逆に言えば僕たちのせいで彼らの時間を止めてるとも言えるだろう。明日の来ないこの世界で少女に何ができるというのだ。夢も成長も愛情もないこの世界で、ましてや子供など耐えれるわけがない。など考えて少女の話を聞き終えた。そして帰りの深夜バスの中で異変が起きた。0時を回ったタイミングで彼女が消えたのだ。どこを探しても少女はいない。深夜バスに揺られ帰ってきた朝に少女は小学校の通学路にいた。そして昨日のことなど綺麗さっぱり忘れていたのだ。その次の日も少女は通学路にいた。彼女はこの世界を抜けたのだ。そしてこうやってこの世界に拘束されている。そして理解した。彼女は明日を望んだのだ。僕に話をして明日を望みこの世界を抜けた。僕は息を呑んだ、この世界の抜け方を知り僕がこの世界を止めている。だけど明日を望めるわけがない。明日僕は死ぬんだ。死は何よりも怖く耐え難いものであり、避けなければならない。しかし、僕はこの世界で少しずつわかり始めていた。不老不死、お金も苦労せずゲームも漫画もやりたい放題、美味しいものもずっと食べれる。そんな世界にいて何になる。お金があっても苦労がなければそれはただの経験であり喜びではない。ゲームも漫画も終わりがなければやっても読んでも気持ち悪い。美味しいものは分かち合う人がいないとただの生存でしかない。なにも築けず結果の出ないこの世界でこれ以上何をすればいいのか。明日死ぬのなら死なないよう頑張ってみよう。明日死ぬのなら少しでも周りに覚えてもらえるよう努力しよう。明日死ぬとしても明日を望む全人類に少しでも、この気持ちを伝えられるように。きっとこの僕の記憶や気持ちは誰にもわからないだろう。だけど、少し、10分の1、100分の1でもいい、理解してもらえるかもしれないなら。僕は死んでも明日を望むんでよかったと思えるだろう。
-ある古本屋-
(「明日を望む世界」著者----)
「この本ください。」

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