this dance is distance 日常

体の大きい少年だった遠田は中学時代にラグビー部に所属し、高校時代はハンドボール部でGKを務めた。どちらも体を張るが、後者は快適で……。
マヤマ 山本 7 0 0 07/20
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第一稿

<登場人物>
遠田(13)~(25)学生~会社員
上司



<本編>
○メインタイトル『this dance is distance』

○中学校・外観
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<登場人物>
遠田(13)~(25)学生~会社員
上司



<本編>
○メインタイトル『this dance is distance』

○中学校・外観
   「○○中学校」と書かれた看板。
遠田M「中学時代」

○同・校庭
   先輩のラグビー部員達に挨拶する遠田(13)ら新入部員達。遠田は長身。
遠田M「体が大きい僕は、半ば強引にラグビー部に入部させられた」

○競技場
   ラグビー部の試合が行われている。キックオフのボールをキャッチする遠田。
遠田M「ラグビーというスポーツは、ボールを捕ったら最後……」
   前方から、体重100キロ級の相手選手数名が、遠田に向かってくる。
遠田「ひっ!?」
遠田M「屈強な男達が群れを成してボールを奪いに襲い掛かってくる」
   相手選手にぶつかり、背を向ける遠田。後方から、やはり体重100キロ級の味方選手数名が飛び込んでくる。
遠田「ひっ!?」
遠田M「そして、やはり屈強な味方選手達がボールを奪われまいと必死の抵抗を見せる」
   選手達が密集している(モール)状態。その中心で苦悶の表情を浮かべる遠田。
遠田M「こんな怖いスポーツは、もう御免だった」

○高校・外観
   「○○高等学校」と書かれた看板。
遠田M「高校時代」

○同・ハンドボールコート
   先輩のハンドボール部員達に挨拶する遠田(16)。やはり長身。
遠田M「高校から始める人も多い、ハンドボール部に入部し」

○体育館
   ハンドボール部の試合が行われている。
   ゴールキーパーのポジションにつく遠田。尚、競技のルール上、ゴールの周囲六メートル以内にキーパー以外の選手は入れないため、遠田の周囲にも他の選手はいない状態。
遠田M「背の高い僕は、半ば強制的にゴールキーパーをさせられた」
   相手選手のシュートを体に当てて止める遠田。
遠田M「周りらはよく『キーパーって怖くない?』と聞かれたが」

○(フラッシュ)競技場
   前方から、体重100キロ級の相手選手数名が、向かってくる主観映像。
遠田M「体重100キロの人間が数人がかりでぶつかってくるスポーツに比べたら」

○体育館
   ハンドボール部の試合が行われている。
   シュートを放つ相手選手。
遠田M「たかだかボール一個」
   飛びついてシュートを止める遠田。
遠田M「それも、体に当てる事を目的としていないシュートに飛びつくくらい」
    ×     ×     ×
   相手選手のシュートが顔に当たる遠田。顔を押さえ、苦痛の表情。
遠田M「大した事じゃなかった」
    ×     ×     ×
   相手選手のシュートが股間に当たる遠田。苦悶の表情を浮かべる遠田。
遠田M「……大した事じゃなかった」

○大学・教室
   講義を受ける遠田(20)ら学生達。座席の間隔は狭く、窮屈そう。
遠田M「それから、時は流れ」

○学生寮・一室(夜)
   六畳一間の部屋。一人、座卓の前に座る遠田。座卓の上には酒類を飲み散らかした跡があり、遠田の周囲には酔いつぶれ雑魚寝する学生達。窮屈そうな遠田。
遠田M「僕は大学生となり」

○電車内
   満員電車に揺られる遠田(25)。スーツ姿。
遠田M「社会人となった」

○駅前
   スマホで通話している遠田。周囲に人や雑音が多く、手間取っている。
遠田「すみません、ちょっとお声が遠いようで」
遠田M「もちろん、社会人というものは」

○スクランブル交差点
   行きかう人でごった返す。その中に居る遠田。何度も人と接触し、その度に謝っている。
遠田「すみません。あ、すみません」
遠田M「体重100キロの人間にぶつかられる事もない」

○ラーメン店・前
   長蛇の列。恋人とともに並ぶ遠田。
遠田M「なのに、何故だろう?」

○同・中
   決して広くない店内。並んで座る遠田と恋人。腕が隣の席の客に当たり、謝る。
遠田M「僕は未だに」

○マンション・同棲部屋(夜)
   ベッドに恋人と並んで眠る遠田。恋人がベッドの中央付近に陣取っているため肩身が狭そうな遠田。
遠田M「あの頃に似たストレスを抱いていた」

○飲み屋街(夜)
   べろべろに酔っぱらった上司の肩を担いで歩く遠田。
遠田M「いや、むしろ考えるべきは」

○(フラッシュ)体育館
   ゴールキーパーの位置に付く遠田。
遠田M「『何故高校時代は、ストレスが少なかったのか』という事だろう」

○マンション・同棲部屋
   荷物をまとめ出ていく遠田。泣き崩れる恋人。
遠田M「その答えは、ある時わかった」

○ニュース映像
   新型コロナウイルス関連のニュース。「三密」「ソーシャルディスタンス」と言った文字が躍る。

○繁華街
   人通りがない。
遠田M「二〇二〇年」

○ラーメン店・中
   食事する遠田。周囲を見回すと座席を一席おきに使っている客達。
遠田M「世界は新型コロナウイルスの蔓延により未曽有の事態に陥った」

○コンビニ・中
   レジ前に並ぶ遠田ら客達。客同士の間隔は適度な距離が保たれている。
遠田M「人々は接触を避け、集まる事を避け」

○アパート・遠田の部屋
   上司らとリモート会議中の遠田。顔色がいい。
遠田M「人と人との距離はどんどん離れていった」
上司「おい、遠田。出社しなくていいのが、そんなに嬉しいか?」
遠田「いや、別にそういう訳じゃ……」
遠田M「それが、僕には快適だった」

○(フラッシュ)競技場
   前方から、体重100キロ級の相手選手数名が、向かってくる主観映像。
遠田M「つまり僕のストレスは、体重100キロの人間にぶつかられる事ではなく」

○(フラッシュ)電車内
   満員電車に揺られる遠田。
遠田M「人との距離が近い事で」

○(フラッシュ)体育館
   ゴールキーパーの位置に付く遠田。
遠田M「僕にとって快適なのは」

○(フラッシュ)コンビニ・中
   レジ前に並ぶ遠田ら客達。客同士の間隔は適度な距離が保たれている。
遠田M「人との距離が保たれている状態なのだ」

○繁華街(夜)
   人通りのない道。
遠田M「もちろん、今回のウイルスで亡くなった人も多い。職を失った人もいる」
   一人歩く遠田。
遠田M「だから、こんな事を思ってしまうのは不謹慎である事も重々承知している」
   小躍りしながら歩く遠田。
遠田M「それでも僕の心は、踊ることを我慢してはくれないのだ」
                   (完)

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