寺内朔吾郎の流儀 ドラマ

田舎町の頑固じじぃ・寺内朔吾郎(77)は、とにかくエアコンを嫌う。エアコンを買うヤツも嫌う。その結果、一人二人と仲間は離れていき……。
マヤマ 山本 28 0 0 04/09
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第一稿

<登場人物>
寺内 朔吾郎(77)寺内家当主
寺内 海斗(18)寺内の孫

稲川(73)寺内の友人
及川(71)同
加古川(70)同

店員



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<登場人物>
寺内 朔吾郎(77)寺内家当主
寺内 海斗(18)寺内の孫

稲川(73)寺内の友人
及川(71)同
加古川(70)同

店員



<本編> 
○寺内家・外観
   夏。田舎町にある広い庭付きの一軒家。
   「寺内朔吾郎」と書かれた表札。

○同・庭
   壁際に捨てられたバイク用のヘルメットやゲートボールの道具。
稲川の声「寺さん、聞いたかい?」

○同・居間
   エアコンのない室内。汗だくで麻雀をする寺内朔吾郎(77)、稲川(73)、及川(71)、加古川(70)。
稲川「降谷さんの所、エアコン買ったって」
寺内「……(この辺から不機嫌)」
及川「郷田さん、在原さんに続いて、か」
加古川「もういっそ、皆でエアコンを……」
   雀卓を拳で叩く寺内。
寺内「断じて許さん」
稲川「そうだそうだ。及川も加古川も、何を言ってるんだ?」
寺内「人間は自然に生まれ、自然に生きるんじゃ。それが出来ん裏切り者は、町から去れ」
稲川「俺達は裏切らんよ。なぁ?」
及川&加古川「……」

○メインタイトル『寺内朔吾郎の流儀』

○寺内家・居間
   扇風機の前に陣取る寺内海斗(18)と縁側に腰掛け団扇で仰ぐ寺内。
海斗「暑ぃ~。ねぇ、じいちゃん。エアコン買っちゃおうよ。俺溶けそうだよ」
寺内「ならん。水浴びでもしとけ」
海斗「それで冬は『乾布摩擦』って? もう令和なんだよ? 平成すら終わったんだよ?」
寺内「何がエアーコンディショナーじゃ、何がリモートコントローラーじゃ。そんなもんに頼っておるから、今どきの若者は……」
   立ち上がる寺内。
海斗「(期待し)エアコン、買っちゃう?」
寺内「散歩じゃ。海斗も来るか?」
海斗「行かねぇよ。こんなクソ暑いのに」
寺内「体力がないから、この程度の暑さに耐えられんのだろうが」
   出ていく寺内。
海斗「あーあ、大学受かったら一人暮らしして、思う存分エアコン生活してやるんだから」

○商店街
   歩く寺内。電気店の前に「エアコン買うなら今がお得!」というポスター。
寺内「まったく、我が孫ながら情けない(ポスターに気付き)こんな店があるから……」
   電気店から出てくる加古川。
加古川「!? て、寺さん!?」
寺内「おう、加古川。何しとるんじゃ?」
加古川「それは……トイレの電球が……」
   店から出てくる店員。
店員「お客様、すみません。今回、エアコンをご購入いただいた方に、スピードくじを……」
   恐る恐る寺内を見る加古川。鬼の形相。

○寺内家・外観
寺内の声「まったく、あんな奴だったとはな」

○同・居間
   雀卓を囲む寺内、稲川、及川。
寺内「二度とこの町を歩けなくしてくれるわ」
   立ち上がる及川。
稲川「及川、どうした?」
及川「今から電気屋に行って、エアコンを買う」
寺内「何!?」
稲川「お前まで寺さんを裏切る気か!?」
及川「恩はあるけど、付き合い切れん。これ以上寺さんと一緒に居たら、仲間が減る一方だ」
   出ていく及川。

○同・庭
   雀卓が捨てられている。
稲川の声「まぁ、でもさ」

○同・居間
   将棋を指す寺内と稲川。
稲川「あんな奴らの事、気にしなくていいよ」
寺内「当たり前だ。気にしてなどいない」
稲川「俺は何があっても、寺さんの味方だから」
寺内「あぁ、信じとるぞ」

○病院・外観(夜)
   救急車のサイレンの音。

○同・病室(夜)
   ベッドに横になる稲川の妻。その脇に座る寺内と稲川。
稲川「医者の先生が言うには、熱中症だって」
寺内「……」
稲川「なぁ、寺さん。怒らないで聞いてくれよ? 俺の家も、エアコン買う事にしたよ」
   涙を流す稲川。
稲川「女房には昔から、苦労かけてきたからさ。これくらいしてやりたいんだよ。ごめんな」
   稲川の肩を叩き、出ていく寺内。

○寺内家・庭
   将棋盤が捨てられている。

○同・玄関
   帰ってくる海斗、出ていこうとする寺内。海斗の手には「エアコン買うなら今がチャンス」と書かれた電気店のチラシ。
海斗「じいちゃん、どっか行くの?」
寺内「散歩じゃ」
海斗「止めとけって、今日猛暑日だよ? それよりさ(チラシを渡し)『エアコン買うなら今がチャンス』だって……」
   チラシを一瞥するなり、丸めて放り投げる寺内。チラシは屋根の上へ。
海斗「あ……」
寺内「ふん。心配されるほど落ちぶれとらんわ」
   出ていく寺内。

○商店街
   歩いている寺内。周囲の店舗を見回す寺内。どこもエアコンが効いている様子。
寺内「まったく、どこもかしこも……」
   寺内の視界が一瞬ゆがむ。

○公園
   歩いてくる寺内。再び視界がゆがむ。
寺内「な、何だ、これは……?」
   近くのベンチに座る寺内。尚、その背後には屋外用のエアコンが設置されているが、寺内は気づいていない。
寺内「お、落ち着け、寺内朔吾郎。心頭滅却すれば火もまた涼し。この程度の暑さ……」
   目を閉じ、精神を集中させる寺内。
寺内M「ほら、どうじゃ。心なしか涼しさすら感じる……」

○同(夕)
   屋外用エアコンの前のベンチに座る寺内。そこにやってくる海斗。
海斗「あ、じいちゃん。ここに居た」
寺内「おう、海斗か。どうした?」
海斗「倒れてんじゃないか、心配したんだよ?」
寺内「儂はそんなヤワではないわ。見ろ。(腕を見せ)汗一つかいとらんじゃろ?」
海斗「そりゃあ、そうだろ。だって……」
   屋外用エアコンを指す海斗。
海斗「これ、エアコンだもん」
寺内「何!? と、年寄りをバカにするな。エアコンとは、室内の温度を……」
海斗「だから、コレは外用のエアコンなの」
寺内「なっ……」
海斗「令和って、そういう時代なんだよ?」
   呆然と立ち尽くす寺内。

○寺内家・外観(夜)

○同・寺内の部屋(夜)
   仏壇に飾られた寺内の妻の遺影。
   布団に横になる寺内。寝付けずにいる。
寺内「暑い……眠れぬ……」

○同・居間
   縁側に座る寺内。汗だく。
寺内「暑い……暑い……」

○同・寺内の部屋
   仏壇の前に座る寺内。手を合わせる。
寺内「婆さんや。儂はもう、エアコン無しでは生きていけん体になってしまったようじゃ」
   涙を流す寺内。
寺内「もうすぐそっちに行くから、その時はまた一緒に、ツーリングに行こうな」
    ×     ×     ×
   無人。仏壇に置かれた遺言書。

○同・玄関
   扉を開ける寺内。すると屋根の上から丸められた電気店のチラシが落ちてくる。
寺内「(チラシを手に取り)……」
   空を見上げる寺内。
寺内「わかったよ、婆さん」

○同・外観

○同・居間
   エアコンが設置されている。
   雀卓を囲む寺内、稲川、及川、加古川と、寝転がる海斗。
海斗「あぁ、快適……」

○同・庭
   それまで物が捨てられていた場所に設置されているエアコンの室外機。
   笑い声が漏れてくる。
                  (完)

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