河田恭子(みほ)(27) 顔が可愛く性格が悪い。恭子という名前がコンプレックスで男の前ではみほという偽名を使っている。金髪。
男A(30) 恭子のセフレ
ナンパ男(36) 道路でナンパしてきた男
男B(43) バーでナンパしてきたおじさん
章(32) 恭子の彼氏。女遊びが激しい。
准(25) バーテンダー。毒舌。恭子に媚びない。イケメン。
○男Aの部屋
スマホの通知音で目を覚ます恭子。
スマホを見る。
LINEが沢山来ている。
広夢“今から会えない?”
康太“今夜飲むんだけど来ない?”
百合“かすみからアンタが優希と寝たって聞いたんだけど、どういうこと?私が好きなの知ってるよね”
ため息をつきスマホを伏せる恭子。
電話が来る。
面倒くさそうにスマホを見るが、画面の名前を見て嬉しそうな表情に変わる。
○男Aの部屋・同
下着を付けている恭子。
物音に気がつき目を覚ます男A。
男A「早くね?」
目をこすり、あくびをする男A。
恭子「章ちゃんが会いたいんだって」
手早く服を着る恭子。
男A「なぁ〜あいつクズじゃね?俺にしとけよ〜」
恭子にすり寄る男A。
恭子「やめてよ」
男の腕を振り払う恭子。
男A「チッ」
舌打ちをし、離れていく男A。
鞄を持ち、玄関に向かう恭子。
恭子「あと、アンタとはもう会わないから」
ベッドから起き上がる男A。
男A「は!?なんでだよ!」
男Aの方を振りかえる。
恭「章ちゃんの悪口言うとか本当何様って感じ。だから万年セフレ止まりなんだよ〜〜」
あっかんべーのポーズをする恭子。
玄関を出る恭子。
男A「クッソ…本当に嫌な女」
玄関が閉まる音がする。
○歌舞伎町・早朝
歩いている恭子。
恭子N「嫌な女なんてもう、何回言われてきたことか。女から言われることもあるし、さっきみたいに男からも言われるし」
ナンパ男が恭子をニヤニヤと見ている。
男の視線に気付く恭子。
恭子「でも、嫌な女って言ったって結局顔が可愛ければ世の中勝ちなんだよ」
恭子に近づいてくる男、酔っ払っている。
ナンパ男「ねぇ君、こんな時間にここにいるってことは帰る場所ないんじゃない?家泊めてあげようか?」
顔を覗き込んでくるナンパ男。
ため息をつく恭子。
恭子N「まぁ、可愛いと面倒臭いことも多いけど」
立ち止まり、ナンパ男の顔を見る恭子。
恭子「んーー」
ニコッとナンパ男に微笑む恭子。
恭子「イケメンじゃないのでお断りしまーす!」
男の横をすり抜け、走る恭子。
ナンパ男「クソアマが!」
○章の部屋・玄関・外
恭子インターホンを鳴らす。
恭子「章ちゃん〜!来たよ〜開けて〜!」
ドアが開く。
章「こんな時間に来てくれてありがとう、早く入って」
章と一緒に部屋の中に入る恭子。
○章の部屋・廊下・同
後ろから突然恭子を抱きしめる章。
恭子N「今日も違う女の匂いがする」
章「会いたかった」
恭子N「でも、お金もくれるし」
恭子「うん、みほも」
恭子N「良いっか」
抱きしめ返す恭子。
○バー・夜
男B「1人?隣座っても良い?」
恭子「どうぞ」
微笑む恭子。
椅子に座る男B。
男B「お嬢さん、こんな時間にここ居て良いの?未成年でしょ?」
恭子「童顔なんです。ちゃんと成人はしてるから安心して」
悪戯っぽく微笑む恭子。
男B「そうなんだ、可愛いね。名前、何て言うの?」
恭子「みほ」
男B「みほちゃんか〜名前も可愛いんだね」
恭子「ふふ、あ!みほ美味しいカクテルが飲みたいな〜」
メニューを広げるみほ。
男B「でも、まだグラスに残ってるよ?」
メニューを開いていた恭子の手を下げる男B。
男B「お酒より俺と話してよう?」
恭子「は〜〜」
メニューを机に置く恭子。
男Bの方を向く恭子。
恭子「奢ってくれないんだったら声かけないでよ〜おじさん」
男B「は?」
恭子「だーかーら、おじさんしつこい。奢ってくれないんだったらあっち行って」
掌をひらひらと振る恭子。
ハッと鼻で笑い、立ち上がる男B。
男B「大人を馬鹿にするんじゃねぇぞ」
恭子の腕を掴む男B。
恭子「離して」
腕を振り払おうとする恭子。
准「お客様、店内での暴力行為は警察に通報させて頂きます」
男B手首を掴んだまま少し考え、戸惑う。
男B恭子の手を投げ捨てるように離し、准を睨みながら舌打ちをして去る。
恭子「いった〜」
手首をさする恭子。
恭子、准の方を見上げる。
恭子「助けてくれるんだ、優しいね」
恭子の方を見ずに答える准。
准「いや、仕事なんで」
恭子「え〜〜〜私に興味ない男とか珍しい〜〜ねえ名前は?」
身を乗り出す恭子。
准「教える義理もないんで」
恭子「冷たい〜〜イケメンなのに残念〜〜」
乗り出していた身を元に戻す恭子。
准「あと俺、アンタみたいな女が一番嫌い」
恭子「…あっそ」
酒を一気に飲み干す恭子。
恭子「あーあ、気分下がっちゃった〜」
鞄から財布を取り出す恭子。
恭子「はいこれ。おつりいらないから」
お金を置き、バーを出ていく恭子。
○バー・夜・別日
扉のベルが鳴る。
准、扉の方を一瞬見るが、恭子だと分かり俯きながら声をかける。
准「いらっしゃいませ」
准の目の前に座る恭子。
恭子「なんか甘くて美味しいやつ頂戴〜」
拭いていたグラスを置く准。
准「また来たんですね」
恭子「アンタは嫌いだけど、ここのお酒美味しいから特別ね」
准「はぁ…」
○バー・夜・別日
恭子「で?冷徹君はまだ恋人もいたことないの?かわいそ〜〜」
お皿を拭いている准、恭子の方を見ずに会話をする。
准「関係ないですよね」
恭子「ねぇ〜私の話聞きたくない〜?」
准「聞きたくないです」
拭き終わったお皿を棚に戻す准。
恭子「章ちゃんがね、あ、彼氏なんだけど、みほのことも〜大好きで。イケメンだし、優しいし、これでみほの好きなもの買いな〜ってお小遣いもくれるの。見て〜〜そのお金でこの鞄買っちゃった!でね、みほのと大好きなくせに他の女とも寝るの。まぁでもみほも別にそうだし良いかなって〜」
准小さい声で呟く
准「…嫌な男ですね」
恭子「え?なに聞こえなかった〜」
准「いや、似た者同士なんですね」
恭子「え?まぁ、みほも可愛いからね〜〜美男美女って感じ?」
笑う恭子。
ため息をつく准。
一口酒を飲む恭子。
恭子のスマホが鳴る。
恭子「珍しい!章ちゃんから電話だ!」
スマホを耳に当て喋り出す恭子。
恭子「もしもし?章ちゃん?」
章・電話「…みほ、あの」
恭子「章ちゃんから電話なんて珍しいね!どうした?みほのこと恋しくなっちゃったんでしょ〜〜〜あ、でも」
章・電話「別れよう」
恭子「…え?何で?」
章・電話「他に好きな人が出来たんだ」
恭子「みほ、前から章ちゃんが他の女と寝てるの知ってたよ、だから大丈夫だよ」
章・電話「…俺、初めて本気で人を好きになったんだ。だからその子と誠実に付き合いたい」
みほ「じゃあみほは何だったの!ねぇ!!」
章・電話「ごめん」
みほ「章ちゃんから貰ってるお金で暮らしてるんだよ!!どうすれば良いの!?」
章「…今月の分は口座に入れておくから、来月からは」
みほ「章ちゃん、これってあんまりだよ…みほだって」
章「とにかく、ごめん。もう切るね」
みほ「え!ちょっ」
電話が切られる。
呆然とする恭子。
准の視線に気がつき喋り出す。
恭子「まぁ?別に?そんなに好きじゃ無かったし!」
氷が溶けたお酒を一気に飲む恭子。
恭子のことを見つめる准。
小さくため息をつき酒の瓶を取る。
准がシェイカーを振る音がする。
× × ×
准「はい」
カクテルを差し出す准。
恭子「何これ?」
准「可哀想なんでサービスです」
恭子「…別に可哀想じゃないし」
酒の瓶を戻しながら喋る准。
准「…アンタはちゃんと好きだったと思いますよ。その、彼氏のこと」
恭子「…え?」
顔を上げる恭子。
准と目が合う。
准「そうじゃ無かったら泣かないでしょ」
恭子、自分の頬を触り、泣いていることに気が付く。
准「まぁ、とりあえず飲んでみてくださいよ」
グラスを掲げ光に透かす恭子。
恭子「…綺麗…だね」
准「メリーウィドウっていうカクテルです。 辛口の方が好きでしょ」
恭子「はは、バレてたんだ…」
カクテルを一口飲み、喋り出す恭子。
恭子「章ちゃん、優しかったんだぁ…こんな私でも良いところ見つけて褒めてくれて、浮気してても帰って来てくれればそれで良かったのに…」
静かに泣く恭子。
黙ってグラスを拭く准。
○バー・外・同日
准「じゃあ、気をつけて」
店の中に戻ろうとする准。
恭子「あ、待って」
振り返る准。
准に一歩近づく恭子。
スマホを弄りながら喋る。
恭子「さっき出してくれたカクテル、何か意味があるのかなってトイレで調べてたんだけど」
スマホの画面を准に見せる。
スマホの画面には『カクテル言葉一覧』。
恭子「『もう一度素敵な恋を』ってまさか自分」
准「俺ではない」
恭子「も〜〜つれない〜〜」
一歩後ろに下がり、話し出す准
准「まぁ、でも意味はそうです。優しくて、素敵で、浮気しないような人見つけてくださいよ」
恭子「ん〜〜好きな人もまぁそうだけど…今は仕事も探さなくちゃだなぁ」
大きく伸びをする恭子
准「あぁ、章ちゃんに養ってもらってたんでしたっけ……」
伸びをしながら何かを思いつく恭子。
恭子「あ、このバーとか!」
准「やめろ、アンタ絶対仕事できないから嫌です。はい、帰って」
帰り道へ恭子を押しやる准。
恭子「さっきからアンタ、アンタって…」
立ち止まり准の方を振り返る恭子。
恭子「失礼でしょ!お客さんなの!名前で呼んでよ!」
一歩後ろに下がる准。
准「…名前…なんでしたっけ…」
恭子「はぁ〜〜?みほだよみーほ!今覚えて!」
准「…じゃあ、みほさん」
恭子の肩に手を置く准。
准「働き口は他にもいっぱいあります。他で働いてくだ」
准の手を払い除ける恭子。
恭子「みほじゃなくて恭子だからここで働きまーーーす!」
准「はぁ?」
恭子「じゃーーーねーーー!」
大きく手を振り帰っていく恭子。
准「…やっぱヤバイ人だな…」
○バー・別日
髪を黒に戻した恭子。
開店準備をする2人。
准「うわ、何やってるんですか!」
酒を移し変えようとして床に沢山こぼした恭子。
准「あ〜〜〜何でこんな人雇っちゃったんだろう…」
ため息をつく准。
恭子「バイトを育てるのがオーナーの仕事でしょ!」
准「口だけは一丁前じゃないですか」
准、恭子に雑巾を手渡す。
准「はい、拭いて」
床を拭きながら呟く恭子。
恭子「…でも私のこと雇うって決めたのは准君じゃん」
准「まぁ…確かに」
少し笑っている准。
不思議そうな顔をして見上げる恭子。
恭子「笑ってる…」
恭子を見つめながら言葉を零す准。
准「本当、嫌な女」
恭子、一瞬驚くがすぐ目線を下に戻す。
床を拭く恭子。
恭子「そんなの、言われ慣れてるから傷つきませーん!」
准「…別に今のは悪口じゃないですよ」
恭子「え?」
再び見上げる恭子。
准「褒めたんです。恭子さんは不思議な魅力があるから」
訝しげな顔をする恭子。
准「言動とか、憎たらしいの結局許しちゃう。だから嫌な女だなぁって」
静まり返る店内。
准「…何でもないです、忘れてください」
立ち上がり、准の方へ詰め寄る恭子。
恭子「バーテンダーってそういう口説き文句みんな持ってるの?ねぇ?」
恭子から逃げる准。
准「持ってないし、別に口説くのが仕事じゃないし、今のは口説いてない」
追いかける恭子。
恭子「じゃあ何?私のこと好きなの?ねぇ〜ねぇってば」
准「やっぱりあんたって普通に嫌な女」
恭子「ツンデレなんだから〜」
立ち止まる准。
恭子と向かい合わせになる。
准「クビにするぞ」
ゆっくりと後ろを振り返る恭子。
恭子「あ、床拭かなきゃいけないんだった〜」
床を拭き始める恭子。
准「終わったらこの空瓶も出しておいて」
恭子「え〜」
准「あ?」
タイトル『嫌な女』
FIN
コメント
翻訳家をしております、岩崎と言います
突然なのですが、南さんの脚本を海外の映画祭に出品したいとは思いませんか?
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