がくせん 学園

自治区陵南高校で弁護部Dに所属する唯一の部員である無動和真が生徒会長の家中優一に頼まれ、傷害罪並びに強姦罪の罪に問われた大山鉄矢の弁護を引き受け、事件の真相に迫る。
きゃんたま 83 0 0 09/13
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

登場人物
無動和真 むどうかずま 自治区陵南高校で弁護部Dの唯一の部員。過去に扱った事件で、高校では全生徒から嫌わているが後悔はしていない。人と話すのは好きだが、元から口は悪かっ ...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

登場人物
無動和真 むどうかずま 自治区陵南高校で弁護部Dの唯一の部員。過去に扱った事件で、高校では全生徒から嫌わているが後悔はしていない。人と話すのは好きだが、元から口は悪かったが、過去の事件が切っ掛けで、自分の味方に成らないように、わざと口を悪くし、 自分から遠ざかる様にしている。過去の事件については話そうとはしない。
髪はボサボサで、目元にはクマがある。過去の事件の被疑者から貰った手作りのアイマスを寝る時には愛用してるため、少し解れている部分があったりする。

茅野絵里 かやのえり 親の勧めで学生自治区の中にある自治区陵南高校に転入してきた。そこで、弁護部は将来、就職や進学に有利になると聞いて弁護部に所属しようとするが断られるが優一に勧められ弁護部Dのパラリーガルになる。

家中優一 いえなかゆういち 和真達が通う自治区陵南高校の生徒会長。和真が嫌われる切っ掛けになった過去の事件で、周りから和真と縁を切る事を言われて距離を置いてしまった過去があり、それを後悔し、今も何かと和真に弁護人の仕事を回している。

瀬良櫻子 せらさくらこ 和真達が通う自治区陵南高校で中央委員の部長を務めている。有能で、高校のある区画全体の責任者を任せられている。
優一同様に和真が嫌われる原因の事件で、優一と一緒に和真を庇おうとするが、周りに説得され、和真一人を学園から孤立させてしまう。
結果、全生徒から虐めに合う和真を見て後悔し、今は出来る限り和真の協力をしている。

大山鉄矢 おおやまてつや 和真が弁護人をする事になった被告人。普段から態度が悪く、すぐに問題を起こす問題児で真姫とは幼馴染。

泉真姫 いずみまき 鉄矢の幼馴染で、元ボクシング部のマネージャー。事件直後に不登校になる。

堺直樹 さかいなおき ボクシングの部長で中学時代に後輩にたいする虐めの容疑で裁判沙汰になったが、行き過ぎた指導と言う事で不起訴になった。優等生を装い裏では、後輩達と気に食わない後輩やマネージャー達に暴力ばかり振るっている。

高坂智則 こうさかとものり 執行委員で検察官の役目を担っている。問題を起こす生徒には厳しく、懲罰を与える。

橘花 たちばなはな 中学時代に堺に虐めに合い、堺の居ない高校に進学するも、中学時代に受けた虐めの後が身体中にあり、夏でも長袖のニットを着て痣を隠している。
 
その他
裁判長
担任
女教師
学生一&二&三&四&五
中央委員
看守
ボクシング部の後輩
友人

第一話

 〇裁判所・法廷
裁判長「判決を申し渡します」
  神妙な顔で判決を待つ一同。
裁判長「陵南高校の弁護人の意見を認め、学側の弁護人の申し立てを破棄します」
  陵南高校の弁護人と依頼人が握手し、大学側の弁護人が肩を落とす。

 〇学園自治区・全景
  学園自治区に住む学生達が公共交通 機関を使って通学する者やスーパーカブ(学校の許可  ステッカーを貼ってある)に乗って通学している学生。  
  茅野絵里(15歳)が路面電車に乗りスーパーカブに乗っている学生に手を振る。
  絵里に手を振り返す学生。
  スーパーカブの学生と交差点で別れて、直進する路面電車。

 〇自治区陵南高校・校門前
  路面電車から降り、校門の前で立ち止まる絵里。
絵里「ここが、私が通う高校なんだぁ」
  高校を見上げる絵里。
  青々とした緑の葉が咲いている。
学生一「もうすぐ夏休みだなぁ」
学生二「それは良いが、暑すぎだろう」
学生一「今日の最高気温38度らしいぞ」
  太陽を眺め、学生二人が同時に深いため息を付く。
学生二「放課後、東地区に出来たゲーセンに行かねぇ?」
学生一「行かねぇよ」
学生二「なんでだよ?」
学生一「西鉄は行き帰りはいつも遅れるだろう」
  予鈴が鳴り、走って教室に向かう学生達。
学生一「こんな風に!!」
学生二「なら、休日は?」
学生一「分かったから、急げ!!」
絵里「私も急がないと」
  絵里も走って職員室に向かう。

 〇自治区陵南高校・職員室
  担任が出席簿やチョーク入れを整理しながら絵里の方に顔を向ける。
担任「どう? 自治区を見た感想は?」
絵里「聞いてた通り、学生の街ですね」
担任「私達や一部の大人を除いてね」
絵里「そうみたいですね」
  立ち上がり、絵里の肩を叩く担任。
担任「将来の為に勉強に励んでね」
絵里「有名企業に就く為ですよね?」
担任「それが、自治区の目的よ」
  チャイムが鳴り、教室に向かう二人。

 〇同・廊下
  担任の後ろに付いて行く絵里。
担任「くれぐれも、弁護士の世話にはならないように」
絵里「弁護士が居るんですか?」
  クラス前で立ち止まる担任。
担任「そう。学生のね」
絵里「学生が弁護士?」
  立ち止まり絵里の方に向き直る担任。
担任「そうよ」
絵里「なれるんですか? 高校生が?」
担任「ここはそういう所よ」
  教室(一年三組)に入る担任。

 〇同・一年三組
  予鈴が鳴っても、騒ぐ生徒達。
担任「チャイムが鳴ってるわよ」
生徒「は~い」
  席に戻る生徒達。
担任「転校生を紹介するわね」
  ×  ×  ×
  チャイムが鳴り、鞄を持って帰る生徒や部活に向かう生徒。
  他に教室で友人と話し込む生徒。
絵里「(伸びをしながら)終わった~」
  生徒三が教室に飛び込んで来る。
生徒三「はぁ、はぁ、弁護部Aが大学の弁護部相手に勝ったらしいぞ」
  どよめくクラスメイト。
生徒四「凄~い」
生徒五「大学生相手に良く勝てたな」
生徒六「流石、我が校のエースだねぇ」
  絵里が辺りを見渡し、近くの生徒の肩を叩く。
絵里「ちょっと良い?」
生徒四「(振り向き)茅野さん何?」
絵里「弁護部って何?」
生徒四「弁護部って言うのは学内の成績優秀者がのみ入れる部なの」
  生徒四がメモ帳から一ページ破り、三角形を書きその中に上からA、B、C、Dを書き込み、A
  ~Dの間に仕切り線を書いたその紙を絵里に渡す。
生徒四「こんな風に」
絵里「へぇ~」
生徒四「ランクが高ければ高い程、知名度を上げて、進学や就職の時に優遇されるの」
絵里「そうなんだ」
生徒四「扱う事件も凄い物ばかり」
絵里「じゃあ、一番したのDは?」
  肩を竦め首を左右に振る生徒四。
生徒四「うちに限っては関わらない方がいいわよ」
絵里「なんで?」
  絵里に近づき耳元で囁く生徒四。
生徒四「過去に生徒を自殺に追いやった部らしいの」
絵里「(驚く)っえ!!」
生徒四「その部、通称D3って、言うの」
絵里「D3?」
生徒四「何かのイニシャルを取ったらしいけど……」
  他の生徒に呼ばれ、絵里の元を離れる生徒四。
生徒四「一応、忠告はしたからね~」
  絵里に手を降って生徒と教室を後にする生徒四。
絵里「っあ、ちょっと……」
  貰った紙に書かれたDを見つめる絵里。
絵里M「自殺に追いやったって……」

 〇同・別館
  弁護部を尋ねるが全てに門前払いを喰らい、弁護部Dの部室前まで来る。
絵里M「ここが、弁護部D。通称D3」
  絵里の背後に立ち、絵里の耳に息を吹きかける無動和真(17歳)
絵里「(耳を抑え、驚く)ひゃっ」
  後ろを振り向く絵里。
和真「誰が、無能で汚れた馬鹿だ」
絵里「っえ!?」
和真「此処に何か用?」
絵里「(戸惑いながら)っえ、えっと」
和真「用が無いなら退け。邪魔だ」
絵里「(避け)す、すみません」
  鼻を鳴らし、部室に入る和真。
絵里「ちょ、ちょっと待って下さい」
  舌打ちをし、振り向く和真。
和真「なんだ?」
絵里「私を入部させて……」
和真「(遮って)断る」
  散らかり放題の部室に入る絵里。
絵里「何故ですか?」
  鞄を椅子に放り投げる和真。
和真「一人で充分だからだ」
絵里「弁護部は人手が必要なのでは?」 
和真「ロリの手なんか必要ない」
絵里「そこまで違わないですよね?」
  和真に詰め寄る絵里。
和真「ああ言えば、こう言う」
絵里「それに資料作成も出来ますよ?」
和真「自分でも作れる。ブタが」
絵里「私、モデル体型なんですけど」
  絵里の全身を見て、鼻で笑う和真。
絵里「今、笑ったでしょう!?」
和真「さあな。それより出てけよ」
絵里「嫌です。私を弁護部に入部させて下さい」
和真「弁護部なら他にもあるだろうが」
絵里「全部、断られてました」
  口元を緩め笑う和真。
和真「ふふふ。ご愁傷様」
絵里「なんで、笑うんですか!?」
  絵里を指差す和真。
和真「君が無能だと証明されたからな」
絵里「私、お茶くみも出来ますよ?」
和真「ここに相談しにくる奴はいない」
絵里「でも……」
和真「でももヘチマもあるか」
  絵里を部室から追い出す和真。
絵里「それはD3だからですか?」
  大きなため息を付く和真。
和真「入部させない理由はその軽口だ」
  絵里の頬を両手で抓る和真。
和真「口が軽すぎる。だから嫌なんだ」
絵里「ひょうもしゅみましぇん(どうもすみません)」
  絵里のおでこを軽く叩く和真。
和真「ここに居ても何の役にも立たん」
  おでこをさする絵里。
絵里「でも、弁護部は優遇されるって」
和真「それはAやBの話だ」
絵里「ここは違うんですか?」
  和真が机の上に置いてある調書を数冊抜くと、山積みに成っていた調書と資料が崩れ、埃が  舞う。
  和真がため息混じりに絵里を睨む。
絵里「私、何もしてませんよね!?」
  抜き取った調書を絵里に放り投げるとしゃがみこむ和真。
絵里「(調書をキャッチする)何ですか? これ!?」
  調書や資料を積み直す無動。
和真「俺が弁護した事件だ」
絵里「(調書を開きながら)へぇ~」
和真「(顔を上げ、振り返りながら)中は見
 るなよ。見たら捕まるぞ」
絵里「(慌てて、閉じる)なんで見せるんですか!!」
和真「誰も中を見ろ何て言って無い」
絵里「はいぃ!? じゃぁ何ですこれ?」
和真「俺が弁護した事件だ」
絵里「なんで、二回言うんですか!!」
和真「君は物覚えが悪そうなんでな」
  眉間に皺を寄せ、苛立つ絵里。
絵里M「私の何を知ってるんですか!?」
  調書に目をやる絵里。
絵里「百円は何処にいった事件、スカートが捲れた事件、遅刻の原因は寝坊事件。なん
 ですかこれ?」
和真「だから俺が弁護した事件だ!!」
絵里「これが事件?」
和真「分ったか。ここはそういう所だ」
  積み上げ直した調書を見て、立ち上がり、ズボンの埃を払う和真。
和真「ここに居ても無意味だ。帰れ」
  空いてあるドアをノックし、部室に入って来る家中優一(17歳)
優一「お邪魔かな? 無動君」
和真「来客万来だな。何の用だ?」
優一「茅野さん、何か困り事かい?」
絵里「いえ。あ、あの何で名前を……」
和真「こいつはこの学園の生徒会長だ」
  優一の顔が曇る。
優一「こいつ……かぁ」
  首を捻る絵里に笑顔で答える優一。
優一「家中優一です。生徒の名前を覚えるのも仕事でね」
絵里「生徒会長さん!!」
和真「それで、俺に何の用なんだ?」
優一「君に弁護の依頼をしたいんだ」
  学選依頼書を見せる優一。
和真「また、学選弁護かぁ」
絵里「学選弁護って何ですか?」
和真「いちいちうるさいな」
  絵里を睨む和真。
優一「転校初日だから仕方ないよ」
  和真を睨む絵里。
絵里「生徒会長さん、やっさし~い」
優一「学選弁護はね……」
和真「部費に成らない弁護の事だ」
T「通常の弁護には部費とは別に寄付という形で部に計上される」
優一「そういう見方も出来るかな」
  苦笑し、頬を掻く優一。
優一「ここは一般的な学校の数倍はお金が掛かるから、経済的余裕が無い学生に変わって、学校
 が弁護人を指名するのさ」
絵里「本当の裁判みたいですね」
優一「まぁね。事件の詳細は……」
和真「(遮って)瀬良に聞けだろう」
優一「お願い出来るかな?」
  和真に学選依頼書を渡す優一。
優一「じゃあ、僕はこれで……」
  部室を後にする優一。
和真「変な気ばっか使いやがって……」
  ため息を付く和真。

 〇同・中央委員会部室
  部室前で大きなため息を付く和真。
和真「(ため息)……」
絵里「どうしたんですか?」
  絵里をチラ見する和真。
和真「何故、君がここ居る。ロリ」
絵里「ロリじゃありませんって」
和真「俺より年下は全員ロリだ」
絵里「うわぁ……なにそれ」
和真「どう思おうが、俺の勝手だろう」
絵里「最・低」
  ドアが開き瀬良櫻子(17歳)が二人を睨みつける。
櫻子「貴方達、ここで何をしてるの!?」
和真「瀬良、居たのか」
櫻子「えぇ。依頼、受けるのね」
和真「まぁな……」
  櫻子の携帯が鳴る。
櫻子「ごめんなさい」
  携帯に出る櫻子。
櫻子「はい。瀬良です」
櫻子「……分かったわ。直ぐに行くわ」
  櫻子が携帯を切り腕章を付ける。
  櫻子が指で合図し、和真と絵里が部室に入る。
櫻子「時間が無いから手短に話すわね」
  調書に目を通す和真。
櫻子「事件は昨日の夕方、旭ロードの路地裏で起きたわ」

 〇旭ロード・路地裏(夕方)
  大山鉄矢(17歳)を堺直樹(17歳)を殴り倒していた。
  倒れている泉真姫(17歳)
櫻子OFF「被告人、大山鉄矢が被害者泉真姫を襲っていた所を通り掛かった堺直樹が止めに入っ
 た所を大山鉄矢に全治二週間の怪我を負わされ、泉真姫さんは制服を破られていたうえに抱き つかれてたそうよ」

 〇中央委員部室
  ソファー座って話しをする三人。
櫻子「大山被告にはストーカーの疑惑もあるわ」
和真「ストーカー?」
櫻子「何人も生徒が泉さんに付きまとっている所を見ているの」
和真「振り向かないから、やったと?」
櫻子「そう考えているみたいよ」
絵里「酷い」
和真「被告人は?」
  首を横に振る櫻子。
櫻子「黙秘を決め込んでるわ」
中央委員一「部長、早く行かないと」
櫻子「そうだったわね」
  絵里に近づき耳元で囁く櫻子。
櫻子「あなたは裏切らないでね」
絵里「っえ!?」
  中央委員数名と一緒に走り去る櫻子。
  調書を見る和真。
和真「やれる事はやるかぁ」
絵里「まさか引き受けるんですか?」
和真「ロリには関係ないだろう」
絵里「だ・か・ら」
  中央委員の部室を出る和真と絵里。
優一「茅野さん、ちょっと良いかな?」
  後ろを振り向く絵里。
絵里「はい?」

 〇生徒指導館・全景(夕方)
  和真が面会室で鉄矢を待つ。
T「生徒指導館は問題を起こした生徒の判決が決まるまで、補習や奉仕活動を行う宿舎」
  顔に痣が残っている鉄矢が面会室に現れ、和真の前に座る。
和真「大山さんの弁護をする無動です」
  調書を開く和真。
鉄矢「……」
  鉄矢の顔にある痣を指差す和真。
和真「その痣、痛そうですね」
鉄矢「……」
和真「反応なしっと……」
鉄矢「……」
和真「大山さんには黙秘権があります」
鉄矢「……」
和真「ですが、黙秘を続けると印象が悪くなりますので、気をつけて下さい」
鉄矢「……」
  ノートと筆記用具を取り出す和真。
和真「早速、事件についてですが……」
鉄矢「(舌打ちをする)っち」
和真「詳しく聞かせせて下さい」
  ノートを開き、ペンを取り出す和真。
鉄矢「ぶらついてたら、堺の野郎を見つけて、むしゃくしゃしてやった」
  和真の手が止まる。
和真「それだけですか?」
鉄矢「あぁ」
和真「調書と違うんですが、他に何か覚えていませんか?」
鉄矢「どうせ、信じねぇくせに」
和真「信じますよ。それが部活なんで」
  目を逸らす鉄矢。
鉄矢「知るか」
  面会室を出て行く鉄矢。

 〇自治区第二病院・全景
  病院から出てくる堺。
和真「堺直樹さんですね」
  和真を睨む堺。
堺「そうだけど、あんたが何の用?」
和真「今回の事件の弁護人で無動です」
堺「あっそう。あんたに話す事は無い」
  和真の横を通り過ぎる堺と堺の後ろから話を続ける和真。
和真「(苦笑する)まぁ、そう言わず」
  和真の顔に寸止めをする堺。
堺「(笑顔で)話す事はない」
 冷や汗が垂れる和真。
和真「(驚き)そ、そうですか」
  その場を去る堺。
和真「話しは聞けないかぁ」
  ため息を付く和真。
  
 〇自治区陵南高校・バス亭(夜)
  バスから降りる和真。
和真「(懐中時計を見る)もうこんな時間かぁ」
優一「今、帰りかい?」
  手を振り和真に近づく優一。
和真「そっちは?」
優一「ちょっと、裁判をねぇ」
T「自治区での裁判官は各学校の生徒会長がランダムで選出される」
和真「裁判官かぁ」
優一「会長だからね。それに……」
  含み笑いをする優一。
和真「それに?」
  笑顔で答える優一。
優一「それは明日になれば、分かるよ」
和真「明日ねぇ?」

 〇マンション・全景(翌日)
  通学する学生を横目に真姫の部屋を尋ねる和真。
  インターホンを押す和真。
和真「……」
  インターホンを再度を押す。
和真「……」
  携帯を取り出し、学校に電話を掛ける和真。
女教師「はい、こちら自治区陵南高校」
和真「二年の無動ですが、三年の泉さんは学校に来てますか?」
女教師「ちょっと待ってね」
  保留ボタンが押され、和真の携帯から
 『エリーゼのために』が流れる。
女教師「お待たせ、来てないわね」
和真「そうですか。わかりました」
  電話を切り、インターホンを連打する和真。
  真姫の部屋のドアが少し開く。
和真「貴方が泉真姫さんですね」
  真姫がドアを閉めようとすると、和真が
  足を入れ阻止する。
和真「お聞きしたい事があります」
  ドアを何度も閉めようとする真姫。
和真「痛、痛いから止めて下さい」
  痛みに耐えかね、足を引っ込め足を摩る和真。
和真「私は、今回の事件で大山さんの弁護をする事になった……」
  『事件直後に気絶し、知りません。そっとしといて下さい』っと書かれたメモ用紙が新聞受
  けから和真の足元に落ちる。
和真「(メモ用紙を拾い)少しで良いんで、話しを聞かせてくれませんか?」
  『今は声が出せません。帰って下さい』と書かれたメモ用紙が和真の足元に落ちる。
和真「(頭を掻く)そういう意味じゃあ無いんだがなぁ」

 〇旭ロード
  所狭しとスイーツショップが軒を連ね、授業の無い学生達で賑わう。
  もみくちゃにされながらも路地裏に着く和真。
和真「平日なのに人が多いなぁ」
  和真の後ろに立つ櫻子。
櫻子「有名なお店ばかりだからかしら」
和真「うわっ!! ビックリした」
櫻子「驚かしてごめんなさい」
  櫻子を何度も見返す和真。
和真「どうして、ここに?」
櫻子「気になる事があって」
和真「ここはエリア外だろう?」
櫻子「うちの学生が関わってるから」
和真「第八部署の責任者が勝手して良いのか?」
櫻子「私は事実が知りたいの」
和真「事実ねぇ……」
櫻子「(目を逸らし)えぇ……」
  鉄矢と真姫が倒れてた場所を見つめ、櫻子を見る和真。
和真「ここに寝そべってみてくれ」
櫻子「はい?」
和真「良いから!!」
櫻子「(寝そべり)これで良い?」
  櫻子の上にうつ伏せになる和真。
櫻子「えっ、ちょ、ちょっと!?」
  顔を近づける無動と目を瞑る櫻子。
  立ち上がりる和真。
和真「もう、いいぞ」
  調書を取り出し、確認する和真。
和真「奥に大山達が倒れていて、路地裏から頭から血を出しながら出てきた堺を通行人
 が見つけ通報した……かぁ」
  しゃがみ、路地裏から旭ロードを見つめる和真。
  制服についたホコリなどを払う櫻子。
櫻子「今のは何?」
  櫻子の方に向き直る和真。
和真「堺は何で助けを求めたんだ?」
櫻子「何が言いたいの?」
和真「大山は倒れていたんだ。自分で通報すれば良いだろう?」
櫻子「怪我をしてたからじゃないの?」
和真「それに、だ」
  櫻子に近寄り、顔を近づける和真。
絵里「調書だと、泉さんを襲ってた事に成ってますよ」
  絵里の方を向く和真。
和真「(ニヤつき)それだがな……」
  絵里がジャージ姿で現れ、汗を拭く。
和真「(驚き)何でお前が?」
櫻子「貴方のパラリーガルでしょ?」
  櫻子の方に向き直る和真。
和真「はぁ?」
櫻子「私はそう聞いたのだけど?」
和真「俺は知らないぞ」
  絵里が生徒手帳を和真に見せつける。生徒手帳に『お試しパラリーガルD』と書かれている
  のを見つめる和真。
T「パラリーガルは弁護人の監視の下弁護人をサポートする職の事」
和真「何だこれは!?」
  腕を組み威張る絵里。
絵里「生徒会長に頼まれて仕方なく」

 〇自治区陵南高校・生徒会室(昨日・夕方)
  ×  ×  ×
  回想。
  ソファーに座っている優一と絵里。
優一「和真の助手に成ってくれない?」
絵里「嫌です」
優一「(苦笑し)即答だね」
絵里「あの人、口悪いし直ぐ手を出すしで、良い所無いです」
優一「確かにね。でも、腕は確かだよ」
絵里「信じられません」
優一「なら、お試しでどうかな?」
絵里「お試し?」
優一「勿論、就職や進学に有利だよ」
  前のめりで答える絵里。
絵里「やります。やらせて下さい」
  ×  ×  ×

 〇旭ロード
  おでこを抑える櫻子。
櫻子「優一がやりそうな事ね」
  絵里の生徒手帳を取り上げ、絵里の頭を叩く和真。
和真「何が仕方なくだ。おもいっきり物に釣られてんじゃねぇか」
  頭を撫でる絵里。
絵里「すみません。嘘を付きました」
  苦笑し、首を触る和真。
和真「言ってたのはこの事か……」
櫻子「何の事?」
  絵里の生徒手帳を投げ捨てる和真。
絵里「私の生徒手帳!!」
  生徒手帳を探す絵里と櫻子。
和真「それより、どこまで言ったけ?」
櫻子「襲っていたって話しね」
  絵里に汚れた生徒手帳を拭いて渡す櫻子と頭を下げる絵里。
和真「それなんだがな……」
絵里「無理ですよ」
  苦虫を噛みながら、絵里の方を向く和真。
和真「無理ってなにが?」
絵里「学校からこまで走って来ましたけど、30分以上掛ります」
和真「だから?」
絵里「通報があったのは午後3時30分ですから犯行はその前になります」
和真「それが、なんだ?」
絵里「大山さんは補習を受けてます」
和真「補習?」
絵里「はい。まぁ、途中で居なくなったらしいんですけど……」
  絵里のおでこを調書で軽く叩く和真。
和真「だったら意味がないだろう」
櫻子「そうでも無いわよ」
  櫻子の方を振り向く和真。
和真「何か知ってるのか?」
  腕組みをする櫻子。
櫻子「職員室から探すよう頼まれたの」
和真「何で?」
櫻子「単位が危ないそうよ」
和真「まだ、七月だぞ?」
櫻子「通例だそうよ。大山って人の」
和真「(頭を掻く)問題児かぁ」
  匂いを嗅ぐ和真。
和真「さっきから、甘い匂いがするな」
櫻子「スイーツ店ばかりだかしら」
和真「スイーツ店?」
櫻子「そうよ。女性達には人気よ」
和真「ふ~ん。デザートねぇ」
絵里「スイーツですよ」
和真「似たようなもんだろう」
絵里「全・然・違い・ま・す~」
  スイーツショップを見つめる和真。
絵里「って、聞いてます?」

 〇生徒指導館・全景
  面会室で大山を待つ和真と絵里。
和真「ロリ。何で、お前がいるんだ?」
絵里「パラリーガルですから」
和真「俺は認めてない」
絵里「会長は認めてくれました」
和真「だから、俺は認めて無いって!!」
  鉄矢が入ってくる。
和真「大山さんに聞きたい事があって……」
  旭ロードで買ったスイーツを食べる絵里。
  皮膚を掻く鉄矢。
和真「事件当時、補習を受けていたのは本当ですか?」
  絵里を睨む鉄矢。
  鉄矢の目線を追う和真。
和真「あぁ、エクレアなら先ほど看守の方に渡したので食べて下さい。私のおごりですから」
絵里「わ・た・し・の・お・か・ね・です」
  鼻で笑う和真。
和真「卑しいロリは無視しましょう」
絵里「(小声)卑しいって!!」
鉄矢「俺に恨みがあんのか!?」
  作り笑顔で答える和真。
和真「何がです?」
鉄矢「乳製品アレルギーなんだけど」
和真「俺はよせって言ったんですが、このロリが勝手に……」
絵里「(遮って)エクレアを頼んだのはそっちじゃないですか!?」
  絵里に黙るよう片手を広げて見せる和真。
和真「なら、何故旭ロードに?」
鉄矢「はぁ?」
和真「あの辺は乳製品を扱う店ばかりですよね?」
  目線を逸らす、鉄矢。
鉄矢「そ、それは……」
和真「それは……」
鉄矢「そうだ、あの通りを行った先にある『かぶ屋』って言うどら焼き屋に行ったんだよ」
和真「どら焼きを買ったんですか?」
鉄矢「あぁ、もう良いだろう」
  面会室を出て行く鉄矢。

 〇バス・車内(夕方)
  ガラガラの車内で、離れて座る二人。
  バスが信号待ちしている間に絵里に近寄る和真。
和真「なに、拗ねてんだ」
絵里「(和真を睨みながら)別にぃ!!」
  バスが走りだし、絵里に詰めるよう手を振り、絵里の横に座る和真。
和真「昨日、話した時は大山はぶらついていたと話していた」
絵里「はぁ?」
  差し入れのエクレアを勝手に食べ始める和真。
和真「しかしだ」
絵里「私のエクレアなんですけど……」
  食べかけのエクレアを見つめる和真。
和真「今日になって、『かぶ屋』に行ったっと言う」
絵里「そうですね」
  そっぽ向く絵里。
和真「おかしいだろう?」
絵里「何が言いたいんです?」
  外の景色を見る絵里。
和真「昨日の段階で言えば良いのにだ」
絵里「思い出したのでは?」
和真「そんな重要な事をか?」
絵里「そう言われれば、そうですけど」
  顔を正面に向ける絵里。
和真「取り調べの時には黙秘で、今日になって思い出す。おかしいだろう?」
絵里「でも何故?」
  和真の方に顔を向ける絵里。
和真「俺が知るわけ無いだろう」
絵里「はい?」
和真「何かを隠してるな。大山は」
  食べかけのエクレアを食べる和真。

 〇マンション・全景
  真姫の部屋を訪れ、インターホンを押す和真。
和真「泉さん、居ますか? 無動です」
泉「……」
絵里「出かけてるんですかね?」
和真「只の居留守に決まってる」
絵里「何で、そう決め付けるんです?」
和真「決めつけじゃあ無い。事実だ」
絵里「はい?」
  新聞受けから一枚のメモが落ちる。
和真「ほらな」
絵里「はいはい。えっと……」
  絵里が拾うと、それを奪う和真。
和真「『私は何も知りません』かぁ」
  和真の携帯が鳴り電話に出る和真。
和真「はい、もしもし」
櫻子OFF「私だけど……」
和真「瀬良かぁ。何か用か?」
櫻子OFF「旭ロードの時の事覚えてる?」
和真「気になる事があるって奴か?」
櫻子OFF「えぇ。学校に来て貰るかしら?」
和真「俺は今、忙しいんだが」
櫻子OFF「泉さんの事、聞きたいんでしょ?」
和真「何で、それを……」
櫻子OFF「それじゃあ、お願いね」
  電話が切られため息を付く和真。

 〇自治区陵南高校・中央委員部室
  中央委員の部室前でため息を付く和真。
絵里「ため息付くのは癖ですか?」
和真「何で居るんだ。銭ゲバロリ?」
絵里「銭ゲバでもロリでもありません」
和真「なら、金魚のフンだな」
絵里「随分、口の悪い金魚ですね」
  にらみ合う二人。
櫻子「仲が良いのね、二人は」
和真・絵里「どこが!?」
  互の顔を指で交互に指す櫻子。
櫻子「ほらね。さぁ、入って」
  中に入りソファーに座る三人。
和真「でぇ、泉さんの何を知ってる?」
櫻子「退部しているの」
絵里「退部!?」
和真「何の事だ?」
櫻子「中学時代にもボクシング部の女子マネージャー達が退部しているの」
和真「それで?」
櫻子「うちでも、全員退部しているの」
絵里「偶然ですね」
  絵里の頭を軽く叩く和真。
和真「黙って、聞け。それで……」
櫻子「中高共に、堺が所属しているの」
絵里「堺って誰ですか?」
  絵里の頭を叩く和真。
絵里「(頭を撫で)何も叩かなくても」
櫻子「私が言える事は堺先輩は信用しない方
 が良いって事かしら」
和真「同感だな」
  ノートの切れ端を和真に渡す櫻子。
櫻子「無駄だと思うけど、一応」
和真「何だそれは?」
櫻子「女子マネージャー達が通う学校と住所よ」
和真「当たってみろ、と?」
櫻子「何か掴めるかも知れないわよ?」
  ノートの切れ端を受け取る和真。
和真「瀬良にすら話さない事を俺に話すとは
 思えないがな……」
櫻子「事実が隠れているかも知れないのよ」
和真「……一理あるかぁ」
  立ち上がり、絵里を鞄で突く和真。
絵里「退けますから、鞄で突かないで下さいよぉ」

 〇自治区北陽高校・全景(翌日)
  校門が閉ざされ、警備員が配置されている。
  メモを確認し、校門を潜る和真。
警備員「何の用ですか?」
和真「(愛想笑いで)事件の調査で聞きたい事がありましてね」
警備員「事件?」
  生徒手帳にある弁護部の印を見せる和真。
和真「この学校には関係ありませんから、お気遣いなく」
  書類を書き玄関に向かう和真。
絵里「ちょっと、待って下さいよ」
  絵里の前に立ちはだかる警備員。
絵里「あの~私も関係者なんですが」
  絵里の前に立ちはだかる警備員。
絵里「な、何でも無いで~す」
  校門の外に出る絵里。
絵里「(大声で)私、他を訪ねますね」
  
 〇同・三年四組
  昼食を取る学生達。
  勝手にクラスに入る和真。
北陽学生「ちょ、ちょっと君は……」
和真「お構いなく」
  教卓の前に立つ和真。
和真「(大声で)橘花さん、居ますか?」
  ざわめくクラスメイト。
和真「居ますか? 居ませんか?」
  クラスメイトと弁当を食べていた、厚手の長袖セーターを着た橘が恐る恐る手を上げ、和真
  が近づく。
和真「貴方が、橘花さんですか?」
橘「……はい」
和真「貴方に聞きたい事があります」
  箸を置く橘。
橘「……なんでしょう?」
和真「貴方が中学時代に所属していたボクシング部についてです」
  両腕を抑え、顔が青くなる橘。
  橘と昼食を食べてた友人が立ち上がり、和真と橘の間に立つ。
友人「話す事なんて無いわ。帰って!!」
和真「話しが終われば、帰ります」
友人「だから、話す事は無いって」
和真「何でも良いんです」
  友人のスカートの裾を引っ張る橘。
友人「なに? どうしたの?」
  友人に耳打ちする橘。
友人「っえ? 大丈夫なの?」
  頷く橘とクラスを見渡す友人。
友人「人目に付くからついて来て」

 〇同・空き教室
友人「所で貴方は何者なの?」
和真「陵南高校の弁護人で無動です」
友人「弁護人が何の用?」
和真「今、扱ってる事件の被害者が元ボクシング部のマネージャーなんです」
友人「それが何?」
  橘の友人を指を指す和真。
和真「『それが』なんですがねぇ」
  指を払う友人。
和真「もう一人の被害者はボクシング部の部長で堺直樹さんなんです」
  友人の腕を掴み、震える橘。
  橘の震える腕に気づく和真。
和真「その堺さん、中学時代にも女子マネージャーが退部してるんですよ」
  友人の腕を強く握り小さく頷く橘。
和真「何があったんですか?」
  口をパクパク動かすが声が出ない橘。
友人「やっぱり、辞める?」
  首を横に振る橘。
橘「(小声で)殴られた……」
和真「はい?」
友人「暴力を振るわれてたの」
和真「暴力……ですか?」
  頷く橘。
友人「堺は人を甚振るのが好きなの。特に弱者や無抵抗な人間をね」
  橘のセーターを見つめる和真。
和真「具体的には?」
友人「もう良いでしょ。帰って」
和真「では、最後に一つだけ」
友人「なに?」
和真「それは、貴方だけですか?」
橘「(小声で)マネージャー全員」
和真「因みになんですが……」
友人「最後じゃないじゃん」
和真「長袖のセーターを着てるのはその後遺症を隠す為ですか?」
  橘を自分の後ろに匿う友人。
和真「大体の事は分かりました」
友人「もう、来ないでよね!!」
和真「あと、もう一つだけ」
友人「しつこいわねぇ」
橘「(小声で)なに……」
和真「裁判で証言を……」
  首を横に振る橘。
友人「しないに決まってるでしょ!!」
  橘と強引に教室を後にする友人。
  頭を掻き、携帯を取り出す和真。
櫻子OFF「はい、瀬良です」
和真「無動だが、頼み事があるんだが」

 〇自治区陵南高校・中央委員部室
  櫻子が和真に調書を渡す。
櫻子「これが、頼まれてたやつです」
和真「(息を切らし)助かる」
櫻子「これが役に立つの?」
  調書にざっと、目を通す和真。
和真「まぁな。これ、借りるぞ」
  調書を鞄にしまう和真。
櫻子「必ず、返してよね」
和真「わかってる。それじゃあな」
櫻子「えぇ」
  部室を走って後にする和真。

 〇旭ロード・かぶ屋(夕方)
  かぶ屋の前で立ち止まる和真。
  店先に去年5月に閉店した事を知らせる紙が貼られている。
  絵里が走って、和真に近づく。
絵里「ダメでした。みなさん、堺さんの名前を出すと逃げちゃって」
  息を整える和真。
和真「だろうな」
  汗を拭く絵里。
和真「それよりこれだ」
  店の前に貼られている紙を軽く叩く和真。
和真「どう言う事だ?」
絵里「閉店しているみたいですね」
和真「どら焼きはどこで買ったんだ?」
絵里「他のお店とか?」
和真「旭ロードではここだけだ」
絵里「なら、嘘付いたんですよ」
和真「何の為に?」
絵里「無動さんを信じられないとか言いたくない事があるからとか」
和真「それだな」
  走り出す和真とそれを追う絵里。
絵里「どれです? また走るんですか~」

 〇マンション・全景
  マンションまで走ってきた和真と絵里が
  肩で息をし、呼吸を整える。
和真「さっきの話しだがな」
絵里「はい?」
和真「話しを聞けなかったやつだ」
絵里「あぁ、はい。それが何か」
和真「全員、厚手の長袖を着てたか?」
絵里「はい。皆さん凄いですよね……」
和真「(皺を寄せ)やっぱりなぁ……」
絵里「知ってたんですか?」
  自分のこめかみを軽く叩く和真。
和真「ロリとは頭の出来が違うからな」
絵里「はぁ?」
  真姫の部屋まで行きインターホンを連打する和真。
泉「……」
和真「泉さんいるんでしょう」
泉「……」
和真「少しだけでも話しませんか?」
泉「……」
  ドアを叩く和真。
和真「泉さん。貴方、堺さんに暴力を振るわれていたんじゃないですか?」
泉「……!!」
  驚く絵里。
和真「それも、マネージャー全員が」
泉「……!!」
和真「大山さんが貴方をストーカーしていたと調書に書いてあります」
泉「……」
和真「これは、貴方を守っていたんじゃあな
 いですか?」
泉「……」
  ため息を付く和真。
和真「このままで良いんですか?」
泉「……」
和真「貴方の証言一つで、今後の人生が変わってしまう学生がいるんです」
泉「……」
和真「それを貴方は黙って、見過ごすつもりですか」
  写真立てに入ってる幼い頃の泉と鉄矢の写真を見る泉。
泉「……」
和真「貴方はそれで良いんですか!?」
泉「……」
和真「(声を張り上げ)貴方は気付くべきだ。守られるだけでは無く、誰かを守る為には傷つい ても立ち上がるべき時があるという事を!!」
  ドアの前で両腕を抑え、泣き崩れる泉。
  周りの学生がドアから顔を覗かせる。
  和真の肩を軽く叩く絵里。
絵里「無動さん、周りが見てますよ」
  下唇を噛む和真。
和真「明日、裁判所で待ってます」

 〇自治区陵南高校・弁護部部室(夜)
  回転椅子に座り、窓の外を向き、調書を見直す和真。
  お茶を入れ、背を向けている和真の机にお茶を置く絵里。
絵里「本当なんですか?」
和真「なにが?」
絵里「暴力の件とストーカーの件です」
和真「あぁ。それか」
絵里「証拠はあるんですか?」
  椅子を回転させ、絵里を見る和真。
和真「証拠なら無い」
絵里「何言ってるか分ってます?」
和真「当たり前だ。ロリと違うからな」
  お茶を啜る和真。
絵里「いちいちムカつくな」
  鞄からもう一つの調書を取り出し、絵里の頭を数回叩く和真。
和真「これ、何だと思う?」
  調書を受け取る絵里。
絵里「何かの調書……ですよね?」
  お茶を飲み干す和真。
和真「中学時の堺が訴えられた事件の調書だ」
絵里「なんでそれがここに?」
和真「それはどうでもいい」
絵里「良くないと思いますけど……」
  ため息を付く和真。
和真「暴力沙汰を起こしてるんだ」
絵里「(驚き)暴力!?」
和真「まぁ、行き過ぎた指導って事で不起訴だがな」
絵里「じゃあ、意味ないじゃん」
和真「大事なのはそこじゃない」
絵里「え?」
和真「原告の名前にマネージャー達の名前が無いんだ」
  調書を確認する絵里。
絵里「みたいですね」
和真「なのにだ、異常に堺を恐れる女子マネージャー達。面白いだろう?」
絵里「何が言いたいんです?」
和真「彼女達は何か隠してる」
絵里「だと、良いですね」
和真「この裁判、彼女しだいだなぁ」
絵里「来ないかったら?」
和真「現状でやれる事をするまでだ」
絵里「そうかも知れませんけど……」
和真「口を動かす前に手を動かせ」
絵里「は~い」
  イラストを描き始める絵里。

 〇裁判所(翌日)
  裁判所の前で泉を待つ和真と絵里。
絵里「泉さん、来ませんねぇ」
  懐中時計に目をやる和真。
和真「タイムアップかぁ」
絵里「どうするんですか?」
和真「やれるだけの事をやるだけだ」
  裁判所の入り口に向かう和真。
絵里「私、もうちょっと待ってみます」
和真「勝手にしろ」

 〇法廷
  傍聴席に数人の見物人と堺・優一・櫻子が見守る。
  傍聴席の隅に橘と友人が座る。
  堺がふてぶてしい態度で傍聴席に座る。
  裁判資料を机に置く和真。
  和真を威圧的な態度で睨む執行委員の高坂智則(18歳)
  法廷に三台のTVモニターがあり、一台一台に口元が写し出される三人の裁判官。
  和真と高坂が起立する。
裁判長「では、自治区裁判を始めます」
  着席する和真と高坂。
裁判長「執行委員、起訴状の朗読を」
T「執行委員は自治区に於ける検察官」
  起立し起訴状を読み上げる高坂。
高坂「起訴状、被告人大山鉄矢は5月10日の午後3時45分過ぎ、旭ロードの路地裏にて被害者、泉 真姫を襲おうとした所を同級生の堺直樹に見つかり、止めに入った堺氏に暴行し、全治二週間
 の怪我を負わせたのち、意識の無い泉氏にわいせつ行為をしようと思われる。自治区条例及び
 罰条、傷害罪及び強姦罪。条例146条」
裁判長「弁護人」
  立ち上がる和真。
和真「無実を主張します」
  眉を釣り上げる高坂。
高坂「ほぉう」
和真「まずこの調書ですが……」
  調書を数回軽く叩く。
和真「大山さんの証言が何一つ反映されてません」
  手を上げる高坂。
高坂「裁判長」
裁判長「執行委員」
高坂「被告人は事件の事は一切話そうとしませんでした。ですので、もう一人の被害者、堺氏に
 協力を仰ぎ調書を作成したに過ぎません」
和真「裁判長その堺さんですがね、中学時代 に同じ部の後輩達に訴えられています」
高坂「裁判長、その事件では堺氏は不起訴になっております。この事件とも関係があるとは思え
 ません」
和真「ですがねぇ……」
高坂「弁護人は故意に堺氏の人格を否定し、調書の信憑性を無くそうとしています」
和真「(愛想笑いで)考え過ぎですよ」
裁判長「異議を認めます」
  ドヤ顔の高坂。
  苦笑し調書を机に放り投げる和真。
和真「では、犯行時間についてですが大山さんは午後3時50分まで補習を受けてます」
高坂「……」
和真「教師が最後に大山さんを確認したのが午後3時」
  万年筆を開け閉めする高坂。
和真「お願いします」
  中央委員がホワイトボートを持ってくる。
  和真がホワイトボートに自治区の地図を貼りその上に旭ロードと自治区陵南高校のイラスト
  を貼る。
  鞄から大山と絵里の絵を描いたペープサートを取り出す。
和真「ここに足が早いだけのロリがいます」
  絵里のペープサートを左右に振る和真。
  困惑する法廷。
高坂「ロリ?」
  高坂に近寄る和真。
和真「そうなんです。おつむの出来はかわいそうなんですがね、元陸上部らしいので、
 学校から旭ロードまで、走って貰ったんですよ」
  元の場所に戻り、絵里のペープサートを学校の位置から旭ロードの場所まで動かす。
和真「そしたらね、10分しか犯行時間がないんですよ」
裁判長「10分ですか?」
和真「そうなんですよ」
  調書を持ち上げる和真。
和真「にも関わらず、二週間の怪我を負わせたと書いてあるんです」
  調書を数回叩く和真。
和真「たった10分で二週間の怪我を負わせ、泉さんの制服を破くなんて時間が足りませ
 ん。この調書、信憑性は皆無です」
高坂「言ってくれるねぇ」
  立ち上がる高坂。
和真「それに、うちの学校から旭ロードの直通の交通機関が無いんですよ」
高坂「乗り換えで行けるはずだが?」
和真「乗り換えだと、かえって時間を喰うんですよ」
高坂「……」
和真「仮に電車だとしてもですね……」
  高坂に近寄る和真。
和真「西鉄は帰宅ラッシュ時には予定時刻より10分程度遅れるんですよ」
高坂「たかが10分だろう?」
和真「その10分が大いに問題なんです」
裁判長「どういう意味ですか?」
和真「乗り換えが出来ないんですよ」
高坂「他の路線を使えばいいだろう」
和真「我が校の最寄り駅は西鉄しか通っていないんですよ」
  苦虫を噛む高坂。
和真「調書には泉さんに抱きつくように倒れていたとあります」
高坂「それが、どうした?」
  高々と指三本を広げて見せる和真。
和真「妙な点が三点あるんですよ」
高坂「なに?」
  人差し指をだす和真。
和真「一つは堺さんの行動です」
高坂「ほぅ?」
和真「助けに入ったにも関わらず、抱きつかれている泉さんを無視して、その場を後にした事」
高坂「その時点で、堺さんは怪我をしていたんだ。賢明な判断だと思うが」
和真「相手は気を失っているんですよ」
高坂「それは、結果論だ。その場で気を失ってるかは分からんだろう」
和真「(ニヤける)仰る通り」
  怪訝そうな顔で和真を睨む高坂。
高坂「はぁ?」
和真「次は(携帯を取り出す)これです」
高坂「携帯?」
和真「そうです。因みに高校生の携帯普及率はご存知ですか?」
高坂「(目を逸らす)いや……」
  法廷全体を見渡すが誰もが首を左右に振ったり、小声で相談している。
和真「大手携帯電話会社の調べでは約97%です」
高坂「それが何だ?」
和真「堺さんは何故、自分で通報しなかったんですかねぇ」
高坂「たまたま、忘れたとか電源が切れてたとかだろう」
和真「誰かに、今の状況を見せる必要があったからとも考えられます」
高坂「何を馬鹿な」
和真「自分より、第三者の証言が加わればより確実な証拠に成りますからね」
高坂「そこまで言うなら証拠はあるんだろうな?」
和真「それは……」
高坂「推測では済まされないぞ」
和真「……」
高坂「まぁ、学選弁護人にしては良くやった方だが、爪が甘いな」
  下唇を噛む和真。
高坂「学選弁護人。堺氏は誰に怪我を負わされたんだ?」
和真「……」
高坂「自分でやった。なんて言うのか」
  口の端を上げ眉を寄せる和真。
  鼻で笑う高坂。
裁判長「では、求刑に入ります。執行委員」
高坂「被告、大山鉄矢の退学及び自治区からの追放を求めます」
裁判長「弁護人、最終陳述を」
  法廷の扉が開き、息を切らせ和真の元に
  走り、耳打ちをする絵里。
和真「(手を上げ)裁判長!!」
裁判長「なんでしょう?」
和真「追加、証拠を提出します」
高坂「なにを馬鹿な!?」
裁判長「今回だけですよ」
高坂「裁判長!?」
和真「ありがとうございます」
  開かれたドアから真姫が入ってくる。
  証言台に立つ真姫。
和真「泉さん。喋って貰えますね?」
  黙って頷く真姫。
高坂「裁判長、彼女は事件の事は覚えていません」
和真「覚えて無いんじゃない。知らないフリをしていたんです」
高坂「なにぃ?」
和真「泉さん、事実を話して下さい」
真姫「あの日……」

 〇繁華街
  ×  ×  ×
  回想。
  堺から逃げながら鉄矢に電話する泉。
真姫「てっちゃん、助けて。堺に追われてるの!!」

 〇自治区陵南高校
  三年二組の教室で補習プリントをする手を止め、電話に出る鉄矢。
鉄矢「今、何処に居る?」
真姫OFF「旭ロード近くの繁華街」
鉄矢「すぐ行くから隠れてろ!!」
  急いで教室を後にする鉄矢。

 〇旭ロード
  路地裏の物陰に隠れ、怯える真姫。
真姫「(小声)早く来て、てっちゃん」
  真姫の腕を掴む堺と部の後輩達。
堺「み~つけた」
  震え上がる真姫。
堺「サンドバックが逃げるなよ」
  真姫の腹を殴る堺。
真姫「……っは!!」
  お腹を抑え、倒れこむ真姫。
  後輩の一人が鉄矢に殴り飛ばされ、後ろを振り向く堺。
鉄矢「何してんだテメェら!!」
  舌打ちする堺。
  堺の後輩達が鉄矢を取り囲む。
堺「動くなよ」
  堺がバタフライナイフを取り出し、真姫の制服を剥いでいく。
真姫「助けて、てっちゃん」
鉄矢「てめぇ~」
  鈍器で鉄矢の頭を殴る後輩。
  倒れる鉄矢を見て、気を失う真姫。
後輩「続き、やります?」
  ニヤける堺。
堺「いや、もっと面白い事がある」
  真姫の上に鉄矢を放り投げる後輩。
真姫「……うぅ」
  目をゆっくり開ける真姫。
後輩「本当に良いんですか?」
堺「念の為、目は止めろよ」
後輩「大会がありますもんね」
  手鏡を見て、口元から血を見る堺。
堺「ちょっと、足りないなぁ」
  堺がナイフで自分の頭を軽く切る。
堺「まぁ、こんな物かな?」
後輩「えげつない事、考えますね」
堺「お前らも楽しんでるだろう?」
後輩「そりゃ、勿論」
  後輩達が裏路地を出て行き、堺が這い蹲って、裏路地を出て行く。
 ×  ×  ×

 〇法廷
真姫「これが、事実です」
  傍聴席の最前席の前にある柵に走って近づく堺。
堺「(大声で)違う、出任せだ!!」
  目を潤ませ、堺を睨む真姫。
真姫「事実です」
堺「な、なら、証拠を見せろよぉ!!」
 ブレザーを脱ぐ真姫。
高坂「な、何を……」
  身体中に残る痣を見せる真姫。
真姫「これが、殴られ続けた証拠です」
鉄矢「テメェ、ぶっ殺す!!」
  堺に殴り掛かる鉄矢。
和真「……ッ!!」
  堺の身代わりになって殴られる和真。
鉄矢「何やってんだよあんた!?」
  口元を抑える和真。
和真「それは、こっちのセリフだ!!」
  鉄矢を取り押さえる中央委員。
和真「今、問題を起こしたら、弁護の意味が無くなるだろうが!!」
鉄矢「あんた……」
堺「あの女の言ってるのデマかせだ!!」
真姫「私の証言が不十分なら、他の子にも聞いて下さい」
和真「証言、してくれるんですか?」
真姫「私が証言するならって……」
  震えながら立ち上がる橘。
橘「わ、私も証言します」
友人「花……」
  橘を見上げ驚く友人。
和真「(橘の方を向く)大丈夫ですか?」
  頷く橘。
  膝から崩れ落ちる堺。
堺「馬鹿な、そんな馬鹿な……」
和真「よく、証言してくれましたね」
  涙目で和真の顔を見る真姫。
真姫「私、守れたでしょうか?」
和真「えぇ。勿論」
  脱いだブレザーを真姫に掛ける和真。
和真「裁判長、以上が今回の事実です」
  机の上の資料を整理する和真。
和真「裁判長、大山さんの無実、及び堺氏を傷害罪で告発します」
  中央委員に連れて行かれる堺。
  椅子に倒れこむ高坂。

 〇裁判所前(夕方)
  和真と絵里を待つ優一と櫻子。
  口元を抑え、裁判所から出てくる和真と絵里。
優一「ありがとう」
和真「部活をしたまでだ」
櫻子「こっちは、色々増えたけどね」
優一「無実な学生が捕まるより良いよ」
櫻子「あんな思いは私達だけで充分よ」
絵里「何の話しですか?」
和真「優一、なんでこのロリが俺のパラリーガルなんだ?」
優一「君の悪態についていけるのは彼女だけだからね」
和真「アホくさぁ」
櫻子「いんじゃない? お似合いよ」
和真「何を勝手な……」
絵里「私、褒められてませんよね?」
和真「ロリの何処を褒めろって?」
絵里「悪態しかない人よりマシです」
和真「なんだと」
絵里「なによぉ」
  鉄矢と真姫が後ろから走ってくる。
鉄矢「おい、あんた」
  振り返る和真。
鉄矢「その~悪かったなぁ、殴って」
  頭を下げる鉄矢と真姫。
和真「これが、部活ですから」
  頭を上げる鉄矢と真姫。
鉄矢「あんたの事、誤解してたよ」
和真「(苦笑し)馴れてますから」
鉄矢「あの事件の事、俺達なり考えてみるよ」
絵里「あの事件?」
鉄矢「本当、ありがとな」
  鉄矢と真姫が頭を下げ、去って行く。
絵里「あの事件って何ですか?」
  懐中時計取り出し時間を見る和真。
和真「やばい、バスの時間だ。走れ!!」
  和真が走り出し、それに続いて三人も走り出す。
絵里「ちょっと、待って下さいよぉ」


この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。