七人乗りのバス コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 6 0 0 12/19
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘 ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 16歳


○空港の近くの道

地球家族6人が歩いている。
母「今日のホストハウスは、ジュンと同い年の女の子が一人いるそうよ」
ジュン「ほんと?」
ミサ「ジュン、良かったわね。仲良くなれるかもしれないよ」
父が地図を見ながらキョロキョロしている。
母「町まで行くバスはどこかしら」
父「この辺だと思うんだがなあ」
そこへ、15歳くらいの女子7人組とすれ違う。ジュンが振り返り、追いかけてそのうちの一人に話しかける。
ジュン「あの、すみません。町まで行くバスに乗りたいんですけど、乗り場はどこでしょうか?」
女子A「すぐそこのつきあたりを、右に曲がったところですよ」
ジュン「あ、ありがとうございます」
女子A「あなたは、6人でご一緒なんですか?」
ジュン「はい、そうですけど・・・」
女子A「残念だけど、6人だとバスに乗りにくいですよ。私たちのように7人組じゃないと・・・」
ジュン「乗りにくい?」
女子Aが振り返ると、他の女子6人が先に行ってしまっている。
女子A「あ、待って!」
女子A、追いかける。

○バス乗り場

地球家族6人がバス乗り場に到着すると、1台のマイクロバスが止まっている。運転手が運転席で寝ている。
母「このバスね」
ジュン「ちょうど来ていて、ラッキーだね。さっそく乗ろう」
地球家族6人が乗り込む。

10分が経過する。時計は13:30を指している。
母「このバス、いつ発車するのかしら」
父「そうだね」
父、身を乗り出して運転手に話しかける。
父「運転手さん、このバスはあと何分で発車するんですか?」
運転手「発車時刻は決まっていません」
タク「決まっていない?」
運転手「あと1個、席が余っているでしょう。もったいないから、あと1人来るまで待っています。あと1人来たら、すぐ発車しますよ」
地球家族6人、バスの中を見渡す。席は7個あり、1個が空席になっている。
父「ああ、そうですか。わかりました」

さらに時間が経過する。時計は13:45を指している。
ミサ「誰も来ないわね」
ジュン「このまま永久に誰も来なかったら、僕たち永久に町まで行けないね」
そのとき、7人組の家族が近づいてくる。1人が運転手に話しかける。
7人家族の1人「次のバスは、いつ来ますか?」
運転手「このバスが発車すれば、すぐに来ますよ」
7人家族の1人「このバスは、まだ発車できないんですか?」
運転手「あと1人足りないんですよ」
7人家族の1人「あ、そうですか・・・」
運転手「でも、お客さんはちょうど7人ですね。じゃあ、先にご案内しましょう。(地球家族に向かって)お客さんたちは、降りてください」
ジュン「えー?」

バスが7人を乗せて発車する。
後に残された地球家族6人。
タク「次のバス、すぐ来るかなあ」
ジュン「すぐに来るってさっき言ってたよ。ほら、来た」
バスが近づいてくる。
乗り込もうとしたとき、2人組が近づいてくる。
ジュン「残念、お2人さんか。合計で8人になっちゃうな。(運転席に向かって)8人は乗れませんよね」
運転手「無理ですね。7人でお願いします」
そのとき、さらに別の2人組が近づいてくる。
ミサ「また2人組だわ」
すると、さらに今度は3人組が近づいてくる。
ジュン「今度は3人か。1人の人が来ればいいんだけどなあ・・・」

時間が経過する。時計は14:00を指している。
バスの外に、地球家族6人と、2人組、2人組、3人組。
3人組の1人「私たち、いつになったら乗れるのかしら」
3人組の1人「7人組じゃないと、乗れないからな。いや、待てよ、おい。2人と2人と3人を足せば、7人じゃないか!」
周りを見渡す。みんな笑顔になる。

バスが7人を乗せて発車する。
後に残された地球家族6人。

次のバスが来る。
地球家族6人、すぐに乗り込む。
ジュン「今度は、何があっても、席を絶対に譲らないぞ」
ミサ「そうよ。私たちが先に来ているんだから、早い者勝ちで当然認められるべきよね」
ジュン「そうだ、そうだ。もし次に2人組が来たら、1人ずつに分かれてもらって、発車してもらおう」
運転手「いや、そうはいかないですよ。早い者勝ちよりも優先されるのが、仲間の結びつきなんです。人数がぴったりそろえば、来た順番は関係なくなります。それがマナーなんです」
父「マナーと言われてしまえば、さからえないな」
運転手「もっとも、このマナーを変えようとしている団体もありますよ。その名も文字通り、『早い者優先団体』といいます。彼らに出会えば、仲間の結びつきを切り離してでも、先にいる人に譲ってくれますよ」
父「ということは、その団体に入れば、逆に、早く来れば先にバスに乗ることができるんですか?」
運転手「いや、無理です。その団体はまだ人数も少なくて、弱い存在です。早い者優先という考えを理解してくれる人は、まだほとんどいません。だから、その団体のメンバーは、先に来ている人には譲ってあげるけれど、逆に譲ってもらえることはないんです」
ミサ「何、それ? じゃあ、その団体に入っても、いいことは何もないんですね」
運転手「今のところは、一つもいいことはありません。善意の団体ともいえます。でも、彼らは、世の中を変えようと本気で考えています。私だって、このマナーが少しおかしいことくらいわかっています。早い者優先のほうが、理にかなっているでしょう。でも、この風習を変えるのは、そんなに簡単なことじゃないんですよ」
地球家族「・・・」
ジュン「そうですね、それはわかります。それより、一つくらい空席があっても、発車していいんじゃないですか?」
運転手「いえ、それはできません。空席があるままバスを走らせるのは、エネルギーの無駄です。それは理にかなっていると思います」
地球家族「・・・」

時間が経過する。時計は14:15を指している。
ミサ「次に2人組が来たら、リコがお母さんのひざの上に乗ったら? それでちょうど発車できるわ」
リコ「えー」
リコ、憮然とした表情。
母「ちょっと、リコは赤ちゃんじゃないんだから」
ジュン「お、ちょうどいい。お一人さんが来たぞ!」
外を見ると、一人の男性が近づいてくる。非常に太っている。
太った男性、バスの外から声をかけてくる。
太った男性「(地球家族に向かって)すみません、私は太っているので、二人分の席が必要です。切符もちゃんと二人分持っています」
ジュン「えーっ!」
父、時計を見る。
父「困ったな。そろそろホストハウスに着かないとまずいぞ」
ミサ「え、全員が着いていないといけないの?」
父「いや、誰か一人でも到着していればいいんだが・・・」
ジュン「じゃあ、6人一緒にバスに乗るのはあきらめて、先に行ける人だけ行くことにするか・・・」
父「太った人を半分に切るわけにはいかないからな。われわれが二手に分かれるしかないだろう」
母「仕方が無いわ。じゃあ、私がここに残って、次のバスを待つわ」
ジュン「いや、お父さんとお母さんは先に行ったほうがいいよ。僕は元気だから、ここで待つよ」
ミサ「いいの? ホストハウスの女の子に早く会いたくないの?」
ジュン「いいんだ」
父「じゃあ、ジュン、頼んだぞ」

バスが地球家族5人と太った男性を乗せて発車する。
後に残されたジュン。
次のバスが来る。ジュンが乗り込むと、ジュンと同い年くらいの男子が乗ってくる。
次に、やはり同い年くらいの女子が乗ってくる。
女子、ジュンと男子の間の席に座る。
ジュン「(心の中で)なんてかわいい子なんだ・・・」
ジュン「あの・・・」
ジュンが女子に話しかけようとすると、すぐに男子が割り込んで入って来る。
男子「君、かわいいね。名前は? どこに住んでるの?」
女子「え、そんな」
女子、ほほえむ。
ジュン、面白くなさそうな表情で男子をにらむ。
ジュンと男子、ライバル視するような感じでにらみあう。
そのとき、6人組がバスに近づいてくる。
6人組の1人「乗れますか?」
運転手「乗れますよ。あとから来た2人は、降りてください。(ジュンに向かって)君はそのまま乗っていけるよ」
男子と女子が降りかける。
ジュン「(心の中で)悔しい、彼らは今からしばらく、二人きりか・・・。そうだ・・・」
ジュン、立ち上がる。
ジュン「あの、僕、急いでないので、次のバスでいいです。僕、降ります!」
運転手「え? 本当にいいのかい?」
ジュン「いいんです」
運転手「じゃあ、(男子に向かって)君が乗って、(女子に向かって)君は後から来たので降りてください」
男子、面白くなさそうな表情で座る。
ジュンと女子がバスを降りる。
ジュン「(心の中で)よし。これで彼女と二人になれる。バスもきっと一緒に乗れるぞ・・・」
ジュン、女子に向かってほほえむ。女子もほほえむ。
そのとき、バスに乗り込みかけていた6人組の一人の女性が、女子に向かって叫ぶ。
女性「あら! 今帰り? 偶然ね」
女子「お母さん!」
ジュン「お母さん?」
運転手「親子でしたか? じゃあ、家族の結びつきは、来た順番よりも優先します。(女子に向かって)一緒に乗ってください。(男子に向かって)悪いけど、君が降りてください」
男子、面白くなさそうな表情でバスを降りる。

バスが去っていく。
後に残されたジュンと男子が、無言で面白くなさそうに立っている。
ジュン「(心の中で)あの女の子と一緒にいるつもりが、なんで彼と一緒にいなきゃいけないんだ・・・。でも、彼も同じことを思っているんだろうな・・・」
ジュンが男子を見る。
次のバスがまた来る。
そのとき、6人組がバスに近づいてくる。
ジュン「よし、今度は、僕が先だ」
そのとき、6人組の一人の老人男性が、男子に向かって手を振る。
男子「あれ、おじいちゃん!」
ジュン、手を顔で覆う。
ジュン「ちえっ、今度はおじいちゃんか・・・」

6人組と男子を乗せたバスが去っていく。
後に残されたジュン。あたりが暗くなりかけている。
次のバスが来る。
ジュン「(心の中で)暗くなってきて、人通りが少なくなったな。このままホストハウスに行けなかったらどうしよう」
そのとき、最初に会った15歳くらいの女子7人組が近づいてくる。
女子A「あれ、さっきの人だ。(ジュンに向かって)まだバスに乗れないんですか?」
ジュン「あ、うん。残りの家族はもう乗っていったんですけど、僕一人残されて・・・」
女子A「私たちも、遊び終えて、今からバスに乗って町へ帰るところなんですよ」
ジュン「あ、そうなんだ。君たち、ちょうど7人だね。じゃあ、また僕が置いてきぼりか・・・」
女子B「違うわ」
ジュン「え?」
女子B「先に乗ってください。私がここに残ります」
ジュン「どういうこと?」
女子B「『早い者優先団体』って、ご存知ですか?」
ジュン「さっき、運転手さんに聞いたけど・・・」
女子B「私、そのメンバーなんです。だから、先に来ている人がいれば、友達と別れてでも、譲ることにしているんです。さあ、みんな早く乗ってください」
残りの女子6人、バスに乗り込む。
ジュン「(女子Bに向かって)本当に、いいの?」
女子B「もちろん。いつも、私はこうですから」
女子A「(バスの中から)かまいませんよ。彼女の主義なんだから、言うとおりにしてあげて、乗ってください」
ジュン「じゃあ、遠慮なく・・・」
ジュン、バスに乗り込む。
女子Bに見送られながら、バスが発車する。

○バスの中

ジュン、女子6人に取り囲まれて楽しそうに話をしている。
ジュン「(心の中で)いろいろあったけど、結果的には、最高のバスの旅になったぞ・・・」

○ホストハウスの玄関

ジュンがドアを開ける。
ジュン「おじゃまします。遅くなりました」
HMが出てくる。
HM「まあ、大変でしたね。バスになかなか乗れなかったんですか?」
ジュン「ええ、まあ」
ミサも出てくる。
ミサ「災難だったね」
ジュン「うん、まあ・・・。(心の中で)バスの旅が楽しかったから、まんざらでもないけど・・・」
ジュン、にやける。
ミサ「何? 何かいいことあったの?」
ジュン「い、いや、別に」

○居間

地球家族6人とHM。
ミサ「ジュン、残念なお知らせがあるの。ここの娘さん、今日まだ帰ってきてないのよ。楽しみにしてたのにね」
ジュン「え・・・」
HM「娘は、しょっちゅう帰りが遅い日があるんですよ。今日も、もう帰れないかもしれないわね」

○翌日午前、空港へ向かうバスの中

地球家族6人とHMがバスに乗っている。
父「帰りは、HMさんを入れてちょうど7人だから、すぐに乗れてよかったですね」
HM「そうですね。いらっしゃるときも、私が空港までお迎えできていれば、ちょうど7人で何の問題もなかったんですけどね」
母「いえいえ」
HM「さあ、空港に着きますよ」
バスが速度を落とす。
ミサ「結局、娘さんとはお会いできませんでしたね。残念だわ」
HM「もしかしたら、会えるかもしれませんよ」
ミサ「え?」
バスが止まる。全員降りる。
HM「ほら、やっぱりここにいたわ。HS!」
HS「あ、お母さん」
HM「ここで昨日からずっとバスに乗れるのを待ってたの? お友達7人組なんだから一緒に帰ればいいのに、『早い者優先団体』なんかに入るから、またこんなことになるのよ」
ジュン「あ!」
HS「あ、昨日の・・・」
ジュンとHS、目が合う。HSは、ジュンが昨日会った女子Bであった。
ミサ「え、ジュン、知っているの?」
HS「ええ、昨日の夕方、・・・」
HS、ジュンを指しながらペラペラと話し始める。
ジュン「あー」
ジュン、天を仰ぐ。

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