アイスクリーム・ショック コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 28 0 0 12/12
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 29歳


○ホストハウスの玄関前

リコ、家の玄関のドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HF「いらっしゃい」

○ダイニング

地球家族6人とHF、HM、HB。
HF「長い飛行機の旅でお疲れでしょう。甘いものでも食べていただこうと思ったのですが、みなさんの好みがわからないので、一緒にスーパーに買いに行きましょう」

○スーパーのお菓子売り場

地球家族6人とHF、HB。
HB「みなさん、お好きなデザートを選んでください」
ミサ「じゃあ、私はオレンジケーキ」
ジュン「僕はドーナツ」
タク「僕はカスタードプリン」
ジュン「プリンは無いんじゃないか?」
ジュンが、カスタードプリンと書かれた札を指差す。その下には、プリンは置いていない。
HB「ちょっと待って。カスタードプリン、あるよ。ここに書いてあるけど、今、品切れなんだ」
タク「えー、残念」
HB「だいじょうぶ。ここにボタンがあるから、押してごらん」
HB、『カスタードプリン』と書かれた札の下にあるボタンを指差す。
タク、ボタンを押す。ランプに数字の『1』が光る。
HB「ほら、1分後にここに届くよ」
タク「届くって、どこから?」
HB「国内のスーパーは、全部、地下のパイプでつながっていて、品切れの物は、近くのスーパーから探して、特急列車のようなスピードで運ぶんだ。1分後に届くということは、たぶん、隣の町のスーパーに残っていて、そこから取ってくるんだな」
みんなが立ち止まってしばらく待っていると、壁の小窓が開き、プリンが飛び出てくる。
HB「ほら、来た」
タク「すごい!」
HB「リコちゃんは?」
リコ「私はイチゴのアイスがいいな」
HB「イチゴのアイスも品切れだな。でもだいじょうぶ。このボタンを押して」
リコ、『イチゴのアイス』と書かれた札の下にあるボタンを押す。
ランプに数字の『60』が光る。
HB「60と出た。60分、つまり1時間待っていれば、届くよ」
リコ「えー、そんなに・・・」
そこに、HFが来て、ランプをのぞき込む。
HF「1時間? そんなはずはないぞ。ここから一番遠いスーパーから取り寄せる場合でも、30分で届くはずだからな・・・」
HB「あ、お父さん、実は、今年に入ってから、パイプを改良したんだ」
HF「どういうことだ?」
HB「あ、みなさんにはまだ言っていませんでしたけど、僕が、この地下のパイプを作っている会社の社長をやっています。去年までは、父が社長だったんですけど、今年引退したので、僕が引き継ぎました」
父「へえー」
HB「それで、去年までは、国全体が、8つの地方に分かれていて、この辺は、北部地方のスーパーとしかつながっていなかったでしょう。今では、南部地方まで、スーパーは全部地下のパイプでつながるようになったんだよ。だから、こんなふうに、時間はかかるけど、他の地方のスーパーで品物が余っていれば、ここまで取り寄せられるようになったんだ。お父さんの時代に比べて、さらに進歩しているんだよ」
HF「ううむ、そうだったのか(渋い表情)」
リコ「(ランプの数字を見ながら)あと57分か・・・」
みんな、だまってランプの数字を見ている。
HB「ちょっと、時間がかかりすぎて、大変だね。リコちゃん、ほかにほしいものある? もう1個、買ってあげよう」
リコ「じゃあ、イチゴのプリン」
ジュン「リコはイチゴが大好物だから・・・」
父「お母さんは、何にするんだい?」
母「私は、バニラのアイスにしようかしら」

○客間

ジュンが一人でドーナツを食べていると、リコが入って来る。手には、イチゴアイスとイチゴプリンを持っている。
ジュン「リコ、イチゴアイスが無事に手に入ったようだね。プリンもまだ食べてなかったの?」
リコ「うん、今はどっちか一つしか食べられないや。もう1個は、明日にしよう。どっちにしようかな」
ジュン「アイスを先に食べちゃいなよ。とけちゃうよ」
リコ「そうだね。スプーン取って来よう」
リコがドアを開けて外に出る。
ジュン「そうだ、リコ」
ジュン、立ち上がってドアを開け、さけぶ。
ジュン「おーい、リコ。やっぱりプリンを先に食べたほうがいいんじゃないか! アイスは、この家の冷凍庫に入れておけばとけないと思うよ。プリンは傷みやすいから、先に食べたほうがいいよ。アイスは冷凍庫に入れておけば長持ちするから」
リコからの返事はない。
ジュン「(心の中で)リコ、聞こえたかな。まあ、いいや、どっちでも」

○寝室

母がベッドで寝ている。苦しそうな表情。
そばに、ミサ、HM、医者がいる。
医者、母から体温計を受け取る。
医者「熱が40度あります」
ミサ「先生、早く薬を・・・」
医者「残念ながら、熱にきく薬はありません」
ミサ「えー!?」
医者「熱を下げる効果があるのは、イチゴのアイスだけです」
ミサ「イチゴのアイス? バニラアイスじゃだめなんですか?」
HM「そう。ここでは、熱を下げる薬は、イチゴアイスなのよ」
医者「地球のように医学があまり進んでいないので、理由はわかっていないのですが、ほかのアイスを食べても熱は下がらないんです。とにかく、イチゴアイスなんです」
ミサ「私、すぐ買ってきます!」
ミサ、部屋を飛び出す。

○スーパーのお菓子売り場

ミサがかけてくる。HFとHBがいる。
HB「ミサさん、どうしました?」
ミサ「母が熱を出したんです!」
HB「そりゃ、大変だ! じゃあ、すぐに、イチゴアイスを!」
HB、アイスクリームのケースに向かう。
ミサ「お願いします!」
HB「あ、イチゴアイスは品切れだ! すぐに取り寄せますよ」
HB、『イチゴのアイス』と書かれたボタンを押す。
しかし、数字は表示されず、ピーという音が鳴る。
HB「あれ、なぜだ?」
ミサ「もう在庫がないんじゃないですか?」
HB「そんなこと、今までに一度も無かったんだが・・・ 国内に1個も残ってないなんて・・・」
HB、何度もボタンを押すが、ピー音が出るだけ。
HB「メーカーに電話して、問い合わせてみるか・・・」
そこへ、HMが来る。
HM「イチゴアイス、買えなかったでしょ」
HB「うん、なんで知っているの?」
HM「今、テレビのニュースでやってるのよ」

○居間

HF、HM、HB、ミサがテレビを見入っている。
アナウンサー「約30分ほど前、イチゴアイスが、国内からすべて売り切れるという前代未聞の出来事がありました。どうやら、メーカーが在庫をきちんと管理できていなかったことが原因のようです」
ミサ「えー、なんとかならないのかしら」
アナウンサー「でも、みなさん、ご安心ください。メーカーはすぐに商品を作れる体制に入っています。今日じゅうに、500個は作れると言っていますので、今すぐ電話で予約すれば、今日にはお手元に届くでしょう・・・」
ミサ「あー、よかった・・・」
HF「早く予約を」
HB「はい」
HB、電話を始める。
HM「イチゴアイスはふだん1日に100個も売れていませんから、予約すればすぐに手に入るでしょう」
ミサ「でも、熱を出している人はみんなほしがっているんじゃ・・・」
HM「私たちは、めったに熱を出さないんです。今ちょうど熱を出して苦しんでいる人は、国全体でも、10人もいないでしょうから、すぐに買いたがる人はいないと思いますよ」
ミサ「それを聞いて安心しました」
HB、電話を切る。がっくりしている様子。
HB「だめだ。イチゴアイスが手に入らない・・・」
ミサ「え、どうして?」
HB「予約が殺到していて、1万人待ちの状態になっているらしいんです」
ミサ「なんで1万人も予約するんですか? ふだんは1日100個も売れないんでしょう? 熱を出している人が、今たまたま1万人いるということですか?」
HB「いや、それは違います。おそらく、イチゴアイスが一時的に全部なくなったというニュースを聞いて、国民がみんな不安になったんだと思います」
ミサ「・・・」
HB「自分が今すぐに熱を出さないという保証はどこにもありません。アイスは長持ちしますから、早めに買って家の冷凍庫に保存しておこうと誰もが考えるのは当然でしょう」
ミサ「そんなこと、ふだんからちゃんと考えておかなきゃいけないはずなのに」
HF「まさに、ミサさんの言うとおりです。私たちは、危機感が無さすぎたんです。ボタンを押せばどんな品物も必ず手に入るから、買い置きなどということを考える人は、誰もいませんでした」
HB「だから、いざというときにこういうことになるんですね」
HF「それでも、私はこういうときのために、国内を8つの地方に分けて、あえてパイプをつないでおかなかったのだ。分けておけば、どこかの地方で商品が足りなくなったときに、在庫が少なくなったという合図になるからね」
HB「そうだったのか・・・」
HF「それを、君は、8つのパイプを全部つないで一つにしてしまった。だから、国じゅうの最後の1個が無くなるまで気づかずに、今回のようなことが起きてしまうんだ」
HB「気がつかなかった・・・」
そのとき、医者が寝室から出てくる。
医者「イチゴアイスはまだ手に入りませんか? 患者さんの具合が悪化しています!」
ミサ「お母さん・・・」
HF「こうなったら、近所の家に聞いて回って、イチゴアイスを持っている人がいたら、譲ってもらうしかない!」
HB「急ぎましょう!」
そのとき、父、ジュン、タクが入って来る。
ミサ「あ、ちょうどよかった! お母さんが熱を出して倒れたの。みんな協力して!」
父「それは大変だ! で、どうすれば・・・」
ミサ「近所の家を手分けして回って、イチゴアイスを探してほしいの」

○近所の道

ジュン、近所の家から出てくる。
ジュン「(心の中で)何軒も回ったけど、イチゴアイスはどこにもないな・・・。あ、そういえば、イチゴアイスなら、リコが買ってたじゃないか。リコ、もう食べちゃったかな・・・」
そのとき、タクが通りかかる。
ジュン「あ、タク、リコを見なかった?」
タク「見てないけど」
ジュン「(心の中で)いちかばちか、言ってみるか」
タク「え?」
ジュン「リコがイチゴアイスを買ってたはずだから、見かけたら、すぐにお母さんに食べさせるように、伝えてほしいんだ」

○近所の道

タク、リコが歩いているのを見つける。
タク「おーい、リコ!」
リコ「あ、どうしたの」
タク「お母さんが熱を出して寝てるんだ」
リコ「えー!?」
タク「リコはイチゴのお菓子が大好きなのは知ってるけど、がまんして、お母さんにあげるんだ。そうすればお母さんの病気、治るから。さあ、早く!」
リコ「わかった!」
リコ、かけだす。

○居間

父、ジュン、ミサが入る。中に、医者、タク、リコ、そして母がいる。
ミサ「イチゴのアイス、みんなで探したけど、無かったわ」
医者「お母さんの熱、下がりましたよ」
母「ほら、このとおり、今は元気よ」
父「え、本当ですか? 良かった。でも、どうして?」
タク「リコが持ってたんだ」
ジュン「そうか、イチゴのアイス、食べずにとっておいてくれていたか」
タク「いや、リコはすでにイチゴのアイスを食べてしまっていたよ。リコがお母さんに食べさせたのは、イチゴのプリンだったんだ」
ミサ「どういうこと?」
医者「いや、お恥ずかしながら、私にもわけがわからなかったのですが、きっと、イチゴに熱を下げる成分が含まれているのでしょう」
父「確かに、ビタミンCに解熱作用があるという話は聞いたことあるけど・・・」
医者「これが本当だとすれば、医学的な大発見です」
ミサ「じゃあ、リコ、これがニュースになる前に、明日のイチゴのデザート、買っておかなきゃね。また全部売り切れちゃうといけないから」
リコ「え、それは困るー」
リコ、部屋からかけ出そうとする。みんな笑い出す。

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