田中君の災難 学園

田中(12)のバスケ部入部初日、新入生歓迎試合で彼のチームメイトになったのは……。
マヤマ 山本 10 0 0 11/17
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第一稿

<登場人物>
田中(12)バスケ部員
高木 理央(12)同
石田 輝久(12)同
安田 健司(12)同
熊野 武(12)同
前川(14)同主将



<本編>
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<登場人物>
田中(12)バスケ部員
高木 理央(12)同
石田 輝久(12)同
安田 健司(12)同
熊野 武(12)同
前川(14)同主将



<本編>
○メインタイトル『田中君の災難』

○田中家・外観
   「田中」と書かれた表札。
田中M「前略、はじめまして」

○同・田中の部屋
   学ランに着替えている田中(12)。
田中M「僕は田中、浦野宮第二中学校の一年生です」
   バスケットボールのグッズが飾られた室内。
田中M「特技はバスケ」
   写真立てに飾られたミニバスチームの集合写真。中央に田中。
田中M「自慢じゃないですが、ミニバス時代はチームのキャプテンも務めていました」

○中学校・外観
田中M「もちろん、中学でもバスケ部に入ります」

○同・体育館・外観
田中M「というより、今日僕はバスケ部に入部したのです」

○同・同・中
   前川(14)らバスケ部員の前に並ぶ田中ら一〇人の一年生。
前川「じゃあ、まぁ、入部祝いに、一年生同士で紅白戦やってみよっか。ちょうど一〇人いるし、そっから半分に別れて〜」
   五人ずつに分かれる一年生達。片方の五人の輪の中に田中。
田中「田中です。よろしく」
   チームメイトに目をやる田中。一人だけやる気のある安田健司(12)と、面倒くさそうな高木理央(12)、石田輝久(12)、熊野武(12)。
高木「つーか、何で俺がバスケやんなきゃいけねぇんだよ」
安田「いいだろ? 俺っちが古橋先輩に近づくチャンスなんだからさ」
熊野「(ため息まじりに)……」
田中「あ、あの……」
石田「なぁ、田中君とやらさ。バスケで一番のポジションって何?」
田中「一番?」
石田「ほら、サッカーのキーパーとか、野球のピッチャーみたいな」
田中「あ〜、ならポイントガードっていう、司令塔みたいなポジションが……」
石田「じゃあ、俺それでいいし。お前らはどこやりたい?」
安田「俺っち、トップ下やりたい!」
高木「外野でいい」
熊野「ナンバーエイト」
石田「よし、決まり」
   コートに散って行く高木ら四人。
田中「いや、そんなポジションは無いんですけど……」
田中M「まぁ、仕方ない。僕は経験者として、このチームを立派にまとめないと」
    ×     ×     ×
   試合中の田中達と審判を務める前川。
   ボールを持っているのは石田。ゴール下に高木と熊野、端っこにいる安田、動き回るもマークされている田中。
安田「へい、へい、パ〜ス!」
石田「おいおい、パスできるヤツいねぇし」
安田「俺っち空いてるって。パスパス!」
石田「おい理央、もっと動けって」
安田「おい、テルってば~」
田中「石田君、落ち着いて。焦らないで」
石田「あ〜、もう面倒くせぇし」
   シュートを放つ石田。
田中「だから焦らないでって……」
   シュートが決まる。どよめく部員達。
田中「入った……しかもスリー……」
石田「お、決まっちゃったし」
    ×     ×     ×
   ディフェンス中の田中達。
   ゴール下の選手にパスが通る。その選手の前に立つ高木。睨みつける。
高木「あぁ?」
   怯み、後ずさる選手。
   笛が鳴る。
前川「トラベリング」
田中「凄い……目だけで……」
    ×     ×     ×
   オフェンス中の田中達。ポジショニングは先ほどと同様。
安田「へい、へい、テル〜」
石田「よし、もう一丁」
   シュートを放つ石田。外れる。
石田「あちゃあ」
田中「そう何度も……」
   リバウンドを捕る熊野。そのままシュートを放ち、決まる。
田中「高い……」
安田「ずるいぞ、クマ。俺っちにもパスしろよ」
熊野「あぁ」
石田「理央もやってみれば? 身長だけなら負けてねぇんだし」
高木「は? 何で?」
   四人を見つめる田中。
田中「よ〜し、僕も頑張らなくちゃ」
    ×     ×     ×
   ボールを持つ石田。ディフェンスに詰められている。
   マークを振り切る田中。
田中「石田君、こっち」
石田「おう」
   石田からのパスを受け取る田中。スリーポイントシュートを放つも、僅かに外れる。
田中「あっ……」
安田「おいおい、決めろよ〜」
田中「……ごめんなさい」
    ×     ×     ×
   相手選手がシュートを放ち、外れる。
   絶好のリバウンドポジションに立つ田中。
田中「よしっ」
   ジャンプするも、横から飛んできた熊野に吹っ飛ばされ、ボールも奪われる。
熊野「すまん」
田中「いえ、ナイスリバウンド」
    ×     ×     ×
   巧みなドリブルで相手選手を抜いて行く田中。シュートフェイントを入れた後、フリーの高木にパス。
田中「高木君」
   しかし受け取らない高木。
田中「え?」
   ボールはラインの外へ。
田中「えっと……ごめんなさい。今のパス、難しかったですか?」
高木「は? つーか、お前今シュート打とうとしてたじゃねぇか」
田中「え? あ、いや、まぁ、それはそうですけど……」
高木「紛らわしい事すんじゃねぇよ。ったく」
田中「ごめんなさい……」
   笛が鳴る。
前川「試合終了!」
   他の部員達に囲まれる高木、石田、熊野。「凄いな」「マジで初心者?」等と声をかけられている。
   誰にも声をかけられない田中。肩を落とす。
田中「全然ダメだった……」
   顔を上げる田中。
田中M「でも、みんな凄い。こんな人達と一緒のチームでやれば、きっと全国大会だって夢じゃない」
   高木達の元に行く田中。
田中「皆さん、凄かったです。これから、一緒に頑張って……」
石田「え〜? バスケの背番号って1番ねぇの? じゃあ、もういいし」
田中「え?」
安田「(泣きながら)クマ〜、古橋先輩って前川先輩と付き合ってるんだって〜。俺っち、もうバスケ辞める〜」
熊野「(ため息まじりに)……」
田中「え?」
高木「つーか、髪型崩れちまったじゃねぇかよ。やってらんねぇ」
田中「え〜?」
   体育館から出て行く高木達四人。
田中「……そんな〜」
                  (完)

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