3人、海にて コメディ

大学1年の夏休み。 同じゼミメンバーである3人の若者は海へ来た。 若さ溢れ、個性溢れる彼らは、まぁ、それなりに 青春を謳歌しているのであった。 何てことはない、小さなビーチストーリー。
白石 謙悟 46 0 0 06/05
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第一稿

『3人、海にて』

登場人物

藤崎 信司(フジサキ シンジ)…大学1年生。チャラ男

椎名 健太郎(シイナ ケンタロウ)…大学1年生。読書好き

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『3人、海にて』

登場人物

藤崎 信司(フジサキ シンジ)…大学1年生。チャラ男

椎名 健太郎(シイナ ケンタロウ)…大学1年生。読書好き

那枝 亮 (クニエダ リョウ)…大学1年生。なよなよしている


   明転。夏の海
   テンションの高い藤崎
   別にどうでもよさそうに読書をしている椎名
   妙にそわそわしている邦枝

藤崎 「海だぁーーーーーッ!」

   椎名、那枝、無反応

藤崎 「……海だぁーーーーってば!」
椎名 「うるさいな、知ってるよ」
藤崎 「お前ら、何でそんなにテンション低いわけ!?一緒に叫ぼうよ」
椎名 「断る」
藤崎 「何でだよ!海で遊ぶ時は、身も心も開放的にならねば!」
椎名 「誰がそんなこと決めたんだよ」
藤崎 「俺!」

   無視して読書に戻る椎名

藤崎 「なぁ、邦枝。そう思うだろ〜?」
那枝 「え、僕?そうだね、うん!」
藤崎 「お前ら、感謝しろよ!人類史上最も夏の似合う男であるこの藤崎信司が、
    わざわざ君達を誘ってあげたんだから!ハイ感謝感激雨あられっ!」
邦枝 「ありがとう、藤崎君!」
椎名 「別に行きたいって言った覚えないんだけど…」
藤崎 「ハイ辛辣ワード入りましたーっ!信司傷心フゥーッ!」
椎名 「うぜぇ…」
藤崎 「まぁ、そんなつれないこと言わないでよ、椎名チャ〜ン」
椎名 「大体さ、俺達じゃなくて、女と行けばいいじゃん。藤崎のことだから、
    5、6人くらいいるんだろ?」
藤崎 「ノンノン。今の俺は孤高のロンリーウルフ。血に飢えているのさ」
邦枝 「え、藤崎君、彼女いないの!?」
藤崎 「うるっせーよ!でかい声で言うなボンクラが!」

   邦枝を叩く藤崎
   ちょっと嬉しそうな邦枝

藤崎 「今は、って言ったろうが!この海で、かわうぃ〜彼女をGETするのさ!」
椎名 「いわゆる、ナンパ?」
藤崎 「Notナンパ!ナンバーワンビーチボーイの求愛行為と言ってちょうだい!」
椎名 「同じだろ」
邦枝 「やっぱり、男はナンパするものなんだね…」
藤崎 「ほら、SMAPも歌ってるだろ?『もう恋なんて、現地調達〜♪』ってさ」
椎名 「俺はパス。興味ないから」
邦枝 「ぼ、僕もちょっと…」
藤枝 「ジーザス!それでもお前ら、健全な男子大学生か!?」
椎名 「大学生なんだから、少し自重しようぜ」
藤崎 「そんなものは犬に食わせちゃえ!お前らが行かなくても俺は行くよ!?
    いいの?行っちゃうよ!?戻って来た時には、隣に君達の知らない
    美人がいるかもしれないよ!?」
椎名 「せいぜい頑張れ」

   なぜかちょっと残念そうな邦枝

藤崎 「Soクールだね、椎名ちゃん!あとで吠え面かくなよ!
    じゃあ、俺行くから。お、そこのかわうぃ〜ね!俺と真夏の海に
    ランデヴーしない?」

   そんなことを言いながら藤崎がはける

椎名 「真性の馬鹿だな、あいつは」
邦枝 「ねぇ、椎名君…」
椎名 「ん?」
那枝 「藤崎君って、前からあんな感じなの?」
椎名 「ん〜…。あいつとは高校からの付き合いだけど、
    あそこまではっちゃけてはいなかったな。
    大学デビューってやつじゃないか?」
邦枝 「そ、そうなんだ…」
椎名 「何でそんなことを聞く?」
那枝 「い、いや!別に!?ふ、深い意味はないよ」
椎名 「ふ〜ん…」
那枝 「あ、ジュースでも飲む?」
椎名 「ああ、貰おうかな」

   那枝がクーラーボックスからジュースを取り出し、椎名に渡す
   那枝もジュースを飲む
   二人、しばらく海を眺める

那枝 「はぁ〜…………くそがッ」

   ジュースを吹き出す椎名

那枝 「何で女ばっかりなんだよ……くそッ」
椎名 「く、那枝…?」
那枝 「(我に返り)……えっ!?何、椎名君」
椎名 「今、何て言った…?」
那枝 「ぼ、僕、何か言ってた?」
椎名 「俺の記憶が正しければ…そこらじゅうの女の子を見ながら、
    悪態を吐いてたぞ」
那枝 「嘘……。またやっちゃったのか」
椎名 「また?」
那枝 「ううん、気にしないで。僕の悪い癖なんだ」
椎名 「そ、そうなんだ…」

   気を取り直し、ジュースを飲む椎名

那枝 「……僕、女の子に興味がないんだ」

   ジュースを吹き出す椎名

椎名 「はああ!?急に何言い出すの、お前!?」
那枝 「これって…変なのかな」
椎名 「いや、変って言うか…え、どういうこと?」
那枝 「自分でもよくわからない。本能…みたいなものじゃないかな」
椎名 「つまり……こっち系なのか(オカマのポーズをとり)」
那枝 「違うよ!ただ、女の子に全く興味がないだけで、他は正常だってば!」
椎名 「大分、異常だぞ」
那枝 「あと、男の人を見てた方が少しだけ嬉しくなるだけだよ!」
椎名 「こっち系じゃねぇか!」
那枝 「違うよ!」
椎名 「うわぁ、まさか同じゼミのメンバーに藤崎以上に濃い奴がいるとは
    思わなかった。那枝、今から俺の半径1メートル以内に近づくな」
那枝 「大丈夫、心配しないで。椎名君は、僕の好みじゃないから」
椎名 「そういう問題じゃねぇよ!」
那枝 「僕はもっと肉食っぽい人が好みなんだ」
椎名 「聞いてないから!お前、ここに来て一番生き生きしてるよ、今」
那枝 「そうかな?」
椎名 「よし、じゃあ俺帰るから。またな、那枝!藤崎にもよろしくな」

   立ち上がり、逃げるようにその場を離れようとする椎名

那枝 「どうやって帰るの?」
椎名 「……(ピタッと立ち止まり)」
那枝 「ここへは、藤崎君の車で来たよね」
椎名 「……」

   無言で元の位置に戻り、座る椎名

那枝 「仲良くしようよ、椎名君」
椎名 「今の話聞いたら、ちょっと…」
那枝 「(遠くを眺めて)…那枝君は、ああいう女の人見て、どう思う?」
椎名 「(眺めて)…良いと思うよ、うん」
那枝 「あの人は?」
椎名 「か、可愛いんじゃないかな」
那枝 「こっちは?」
椎名 「グラマラス」
那枝 「椎名君って、意外とむっつりなんだね」
椎名 「うるさいよ!?」
那枝 「冗談だよ。でも、これでわかってくれたんじゃないかな」
椎名 「何を?」
那枝 「僕の場合、その感情が、単に男性に成り変わったってだけのことさ」
椎名 「いや…それはちょっと違うんじゃ…」
那枝 「同じだよ。男だとか女だとか、そんな矮小な二元論に惑わされちゃいけない」
椎名 「お前、なんかキャラ変わってないか?」
那枝 「目を覚まして、椎名君。世の理に身を委ねちゃ駄目だ」
椎名 「何で俺が説教されてるんだ…」
那枝 「わかってくれた?」
椎名 「ああ、もうどうでもよくなってきたよ」
那枝 「わかってくれたんだね。ありがとう」

   遠くを眺める2人
   やがて、椎名が何かを見つける

椎名 「あれ、藤崎じゃないか?」
那枝 「え!?どこどこ!?」
椎名 「ほら、あれだよ(指さし)」
邦枝 「本当だ。藤崎君、何やってんだろ…」
椎名 「ナンパに決まってんだろ。よくやるよ、ホント…」
那枝 「……」
椎名 「おい、那枝?」

   鬼の形相でその様子を眺める邦枝
   やがて、椎名から離れた場所に移動

椎名 「おーい?」
邦枝 「…………っぁぁぁあああああ!」

   奇声を発しながら地面を殴り暴れる邦枝

椎名 「ちょっ……えぇ……?」
邦枝 「藤崎君!どうしてだよぉぉぉぉ!」

   ひととおり暴れた後、我に返り、元の場所へ戻る

邦枝 「……どうかした?」
椎名 「お前、やっぱり半径1メートル以内に近づくな!」
邦枝 「えっ!どうしたんだよ、椎名君!」
椎名 「お前がどうしたんだよ!エヴァの暴走シーンみたいになってたよ!?」
那枝 「嘘……。またやっちゃったのか」
椎名 「何なの、今のは……?」
邦枝 「僕ね……昔から、スイッチが入ると、我を失っちゃうんだ」
椎名 「スイッチ……?」
那枝 「那枝スイッチ」
椎名 「いや、名前とかはどうでもいい。とにかく、お前は思ったよりずっと
    アブノーマルな奴だな」
那枝 「それ程でも……」
椎名 「褒めてない!それで、今のはどうしてスイッチが入ったんだ?」
那枝 「……(藤崎の方を見て)」
椎名 「藤崎……?ま、まさか……お前!」
那枝 「……」
椎名 「藤崎のこと……!」

   照れながら頷く那枝

椎名 「生きろ、藤崎……!」
那枝 「誰にも言わないでね!」
椎名 「言わねぇよ……。興味ないし」
那枝 「大学生になって、同じゼミのメンバーになってから、
    ずっと彼のことばかり見てた。僕の目には、もう藤崎君しか映らないんだ」
椎名 「……(げんなりしている)」
邦枝 「あ、もちろん、椎名君も好きだよ。友達として」
椎名 「どうも……」
邦枝 「だから……だからね……。藤崎君が、あんなに楽しそうに
    ナンパしてるところを見ると……僕……僕……!」
椎名 「お、落ち着け!どうしようもないじゃないか。藤崎は女にしか興味がない!」
那枝 「そんなことはわかってるよ。だけど、諦めきれないんだ」
椎名 「いや、諦めてくれ!そして、こっち側の人間に戻ってくるんだ!」
那枝 「嫌だぁぁぁ!」
椎名 「くそっ、どうすれば……」

   その時、何かに気付く椎名
   藤崎が登場。魂が抜けている

椎名 「ふ、藤崎!なぜ戻って来た!」
那枝 「ああ、もう抑えられないこの気持ち!僕、彼に気持ちを伝えるよ」
椎名 「よ、よせ!早まるな!」

   藤崎の正面に立つ那枝

那枝 「藤崎君!僕、ずっと君のこと……!」
椎名 「や、やめろー!」

   那枝をスルーして通り過ぎて行く藤崎
   なぜか満身創痍な足取り

那枝 「え……?」
椎名 「ふ、藤崎?」

   そのまま、藤崎はける
   がっくりと膝をつく那枝

那枝 「那枝亮、真夏の海に散る……」
椎名 「お、おい……大丈夫か?」
那枝 「藤崎君は、僕のことなんて眼中にないんだ……。
    僕の声は、彼には届かないんだよ……」
椎名 「そんな感じじゃなかったけどな…。まるで、
    俺達のことが見えてなかったみたいだ」
那枝 「うう…藤崎君…」
椎名 「ま、まぁ、仕方ないよ。藤崎のことは諦めろ。なっ?」
那枝 「……」
椎名 「あ、あいつもきっと、友達としては、お前と付き合っていきたいはずさ?」
那枝 「そうかな…」
椎名 「あ、ああ。だから、元気出せ」
那枝 「ありがとう…。優しいんだね、椎名君」
椎名 「え…」
那枝 「こんなに人に優しくされたのは初めてだよ…」

   椎名に近づいていく那枝
   後ずさる椎名

椎名 「ちょ、ちょっと…?」
那枝 「椎名君…!」
男  「(声のみ)た、大変だーーー!誰か溺れてるぞーーー!」

   海の方を見る椎名と那枝

椎名 「あ……あれ、藤崎じゃねぇか!?何やってんだ、あいつ!?」
那枝 「藤崎君!?」
椎名 「た、大変だ!早く助けを呼ばないと…!」
那枝 「藤崎くーーーん!」

   海に向かって走る那枝

椎名 「お、おい、待て、那枝!那枝―ッ!」

   暗転

   明転。倒れている藤崎
   椎名と那枝が呼びかけている

椎名 「おい!しっかりしろ、藤崎!」

   必死に呼びかける椎名
   しかし、藤崎は目を覚まさない

那枝 「椎名君…。ここは、人工呼吸しかないねっ!」
椎名 「藤崎―ッ!頼む、起きてくれー!」
藤崎 「げほぉっ!」
椎名 「ふ、藤崎!気がついたか!」
那枝 「ちっ…」
藤崎 「し、椎名…那枝…」
椎名 「大丈夫か!?何でお前、一人で溺れてたんだ!?」
藤崎 「……裕美ちゃんがいたんだ……」
椎名 「裕美…?同じゼミの?」
藤崎 「ああ…。俺の…唯一無二の……マイ・スウィート・ハニー」
椎名 「お前の中ではな…」
藤崎 「裕美ちゃん…男と、歩いてた…」
椎名 「男……彼氏か?」
藤崎 「純情で、そんな素振りを全く見せなかった裕美ちゃんに…彼氏が…」
椎名 「……」
藤崎 「その瞬間、俺の世界は闇に包まれ…気が付いたら、海に身を投げていた」
椎名 「藤崎…。お前……馬鹿だろ」
藤崎 「ありがとな……。こんな馬鹿を助けてくれて…」
椎名 「礼なら、那枝に言え。真っ先に海に飛び込んで、お前をここまで運んだんだ」
藤崎 「そうだったのか…。ありがとな、那枝…」
那枝 「藤崎君…」
藤崎 「悔いはねぇ…!こんな最高のダチに見守られて逝けるなんて…
    この上ない幸せだよ」
椎名 「……」
那枝 「藤崎君っ!」
藤枝 「お前ら…本当に、ありがとうな…!」

   力尽きる藤枝

那枝 「うわあああああーーーッ!」

   どさくさで藤枝に抱きつく那枝

椎名 「…………あ、裕美ちゃん」
藤崎 「(起き上がり)裕美ちゃーーーんっ!好きだぁーーーっ!」

   間

藤枝 「……てへ☆」
椎名 「……(呆れて)」
那枝 「藤崎君!無事だったんだね!」
藤崎 「おう、ピンピンしてるぜ!那枝、助けてくれてサンキュッ!」
那枝 「いや、そんな…(照れ)」
椎名 「馬鹿はそう簡単に死なないよ」
藤崎 「ハイ辛辣ワード入りましたーッ!
    よぉし、このテンションのまま男3人で遊ぼうぜ」
椎名 「もうナンパは終わりか?」
藤崎 「ナンパは休憩ターイム!また無意識に身投げしちゃうのも怖いしネっ!」
椎名 「まぁ、勝手に死なれても、こっちが困る」
那枝 「ふ、藤崎君!ビーチバレーやろうよ!僕、ボール持ってきたんだ!」
藤崎 「お、ナイスだね、那チャ〜ン。俺が前衛的なバレーを見せてやんぜ!」
那枝 「うん!」
椎名 「やれやれ…」
藤崎 「よーし、ボール取って来て、那ちゃん!」
那枝 「わかった!」

   那枝がはける

藤崎 「ま、たま〜には、独り身の男同士で遊ぶのも、悪くないねぇってか!?」

   愉快に笑う藤崎

椎名 「……なぁ、藤崎」
藤崎 「ん〜〜〜?」
椎名 「俺、彼女いるんだけど…」

   間

藤崎 「…………はぁぁぁぁ〜〜〜!?」

――完――

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