<登場人物>
ザ・ガンバルマン(37) 第7話主人公
軽井沢 奈津(18) 第8話主人公
黒田 鉄男/クロガネ(26) 第9話主人公
怪人
西 町子(80) 武器商人
シゲ(19) 奈津の恋人
子分(18) シゲの子分
メタルマスク
お嬢様(17) 黒田の雇い主
軍人
実況 声のみ
<本編>
○商店街(夜)
人通りのない道。
T「第7話 説明しよう、ザ・ガンバルマンは矛盾を手に入れたのだ」
向かい合って立つ戦闘スーツ姿の男、ザ・ガンバルマン(37)と怪人。
怪人「今日はこの辺にしておいてやろう。覚えておけ、ガンバルマン」
ガンバルマン「ガンバルマンではない、ザ・ガンバルマンだ」
姿を消す怪人。
ガンバルマン「……逃げられたのである」
× × ×
歩いているガンバルマン。道端で西町子(80)が店を開いている。その前を通り過ぎるガンバルマン。
町子「おやおや、アンタ。ガンバルマンじゃないかい?」
ガンバルマン「ガンバルマンではない、ザ・ガンバルマンだ」
町子「武器は、いらんかい?」
ガンバルマン「必要ない。なぜなら吾輩は、格闘術で戦うヒーローであるからだ」
町子「でも、そのせいで今逃げられたろ?」
ガンバルマン「……聞くだけ聞いてもいいだろう。どんな武器なんだ?」
町子「コレだよ」
矛を出す町子。
町子「この矛は、それはそれは強力でね。貫けない物はない、って逸品さ」
盾を出す町子。
町子「そして、この盾の頑丈さはお墨付き。防げない物はない、って代物だからね」
ガンバルマン「ほう」
町子「どうだい? 何かの縁だ。セットで購入なら特別価格にしてやるよ?」
ガンバルマン「ハハハ、吾輩をからかっているのなら、止めた方がいいのである」
町子「からかう? 何の話だい?」
ガンバルマン「ならば、聞こう。その何物をも防ぐ盾に、その何物をも貫く矛を突き立てたら、一体どうなるのだ?」
町子「(ニヤリと笑い)知りたいかい? 教えてやるから、よく見ておきな(と言って盾を渡す)」
ガンバルマン「(受け取り)?」
矛を持ち、立ち上がる町子。
町子「それじゃ、見ててごらん」
町子の姿を見つめるガンバルマンの目に驚愕の色が広がって行く。もの凄い光を発している事以外、実際に何が起きているのかはわからない。
ガンバルマン「お、お、おぉぉ!!!」
光が消える。
振り返る町子。
町子「どうだい?」
腰を抜かすガンバルマン。
ガンバルマン「い、戴くのである」
町子「(ニヤリと笑い)毎度あり」
○廃倉庫・外観(夜)
二人の男の殴り合う声、物音と、野次馬の男女のあおる声。
T「第8話 説明しよう、軽井沢奈津は改心したのだ」
○同・中(夜)
殴り合うシゲ(19)と若い男。野次馬の中に居る軽井沢奈津(18)。全員が素行の悪そうな出で立ち、奈津は紅一点。
シゲ「うおらっ!」
シゲのパンチでKOする若い男。
シゲ「しゃあ!」
シゲに駆け寄る奈津。
奈津「さすがシゲ君。強い男の人って、最高~」
シゲ「だろ?」
× × ×
シゲ、奈津を中心にたむろする子分(18)ら若者たち。花粉の入った袋を誇らしげに見せるシゲ。
シゲ「じゃーん」
子分「何ですか、それ?」
シゲ「何年か前の、植物怪人の話、覚えてる?
奈津「あー、何か花粉的なのを浴びると、人間も同じ怪人になっちゃう、的な話だっけ?」
シゲ「そう。で、(袋を指し)その花粉的なの」
子分「え!?」
思わず後ずさりする奈津以外の若者達。
奈津「凄ーい。そんなの、どうやって手に入れるの?」
シゲ「俺の人脈、なめんなよ?」
奈津「かっこいい~」
シゲ「でよ、奈津。これ、どこにまく? 警察? 軍? それとも国会?」
と言って花粉の袋を奈津に渡すシゲ。
奈津「そうだな……」
壁が壊される。その際に生じた煙によって、壊した主の姿は見えない。
奈津「何?」
シゲ「誰だ!?」
正体不明の侵入者に殴りかかる子分。
子分「誰だって聞いてんだろ!?」
相手を殴る子分。逆に拳を痛め悶える。
子分「ぐあっ!?」
煙が晴れ、姿を見せるメタルマスク。
奈津「メタルマスク……!?」
子分「これ、やべぇっしょ」
逃げ出す若者達。残るはシゲ、奈津のみ。
シゲ「この……」
手近な鉄パイプを手にメタルマスクを袋叩きにするシゲ。まったくダメージを受けていないメタルマスク。
シゲ「おら! おら! これでどうだ!」
メタルマスク「少シ、大人シクシテイテ下サイ」
シゲの首根っこを叩き、気絶させるメタルマスク。今度は奈津の方へ。花粉の袋を落とし、後ずさりする奈津。
奈津「嫌、来ないで。許して。何でもするから!」
花粉の袋を手にするメタルマスク。
メタルマスク「回収シマシタ。Misson Completeデス」
尚も奈津に目をやるメタルマスク。
メタルマスク「……秘書、探シテマス」
奈津「え?」
メタルマスク「今『何デモスル』言イマシタヨネ? 秘書、居ナクテ困ッテマス」
奈津「はぁ……」
メタルマスク「私ノ秘書、嫌デスカ?」
奈津「いえ……(頬を赤らめ)強い人、最高です」
○豪邸・外観(夜)
大豪邸。
T「第9話 説明しよう、クロガネは全世界を敵に回したのだ」
忍び寄る謎の集団の影。
○(回想)闘技場
超満員の観客。
ロボットのような戦士、メタルマスクの攻撃を受け、倒れるクロガネ。
実況の声「第1回HERO―1グランプリ決勝、日本の雄・クロガネを倒し、初代チャンピオンに輝いたのは、アメリカからの刺客・メタルマスク!」
悔しげに拳を握りしめるクロガネ。
お嬢様の声「黒田、黒田」
○豪邸・視聴覚室
プロジェクターを使い、前記回想シーンの映像を観ている執事風の男、黒田鉄男(26)。
お嬢様の声「ちょっと来なさい、黒田」
黒田「はい、ただいま」
プロジェクターの電源を切る黒田。
○同・お嬢様の部屋
入ってくる黒田。窓から外を見つめるお嬢様(17)。
黒田「いかがなされましたか、お嬢様」
お嬢様「見てみなさい、黒田」
窓から外を見る黒田。庭に忍び込む軍隊の姿。
お嬢様「警察の次は軍の秘密部隊だなんて、政府も暇なのね」
黒田「……失礼ながら、お嬢様。一体何をなされたのですか?」
お嬢様「あら。『聞かなきゃ戦えない』とでも言うつもり?」
黒田「滅相もございません。お嬢様をお守りする事が私の使命ですから」
お嬢様「……まぁ、これから忙しくなるわ。だから、貴方の趣味の『世界を守る為の戦い』は、しばらく諦めてくれるかしら?」
黒田「もちろんです。私一人が戦わなかったとして、この世界はヒーローで溢れていますし、それに……」
黒いベルトを締め、窓枠に立つ黒田。
黒田「もとより、私にとってはお嬢様こそが世界の全てでございます」
お嬢様「それもそうね」
黒田「では、変身させていただきます」
お嬢様「許可する」
飛び降りる黒田。
○同・庭
慎重に歩みを進める軍人達。その前に降りてきて着地するクロガネ。
クロガネ「申し訳ありませんが、お嬢様のご迷惑になります。お引き取り下さい」
軍人「(驚いて)クロガネ……正義の味方のハズのアンタが、何であの女を……」
クロガネ「私にとって、お嬢様こそが正義であり、お嬢様こそが世界の全て。それを傷つけるというのであれば、私は戦うまでです」
戦闘態勢に入るクロガネ。
クロガネ「たとえ世界の全てを敵に回し、世界の全てを滅ぼす事になっても、です」
飛びかかるクロガネ。
(その3 完)
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