Honey bee 恋愛

レズビアンの澪は彩花への失恋からギターを引っ提げて上京する。そこで手毬という女性に出会って…。
Heart noise 34 1 0 01/14
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第一稿

時刻は午前10時。澪は真下を流れる川を見つめながら、一人で煙草をふかしていた。午前中から煙草を吸ってるやつがいるかよ、あ、ここにいた。そう思ってるうちに10時半にスタジオ予約をして ...続きを読む
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時刻は午前10時。澪は真下を流れる川を見つめながら、一人で煙草をふかしていた。午前中から煙草を吸ってるやつがいるかよ、あ、ここにいた。そう思ってるうちに10時半にスタジオ予約をしており、ここから歩いて45分はかかるのに、すでに15分を過ぎているころ合いだった。そろそろまずいんじゃないかと思い、慌ててスマホの時計を見やる。
澪「やべ、もうこんな時間」
澪はまだ火のついている煙草を地面に擦り付けた。
澪「汚れろ、地球。」
澪は急いでその場から走ってスタジオに向かった。



澪がスタジオの前に着くと、走っても10分遅れ、『先に入ってる』とメールが入った部屋に急いで向かった。勢いよく扉を開けると、バンドメンバー達が一斉にこちらの方を見やった。いち早くピアノの佐智子が気づき、ボーカルのえみがごねた。
佐智子「あっ澪来た」
えみ「もー遅い~~」
澪「ごめんごめん」
洋介「なんかあったのか?」
ベースの祐介が相変わらずの低くて優しい声でそう聞いてきた。
澪「いや、大丈夫」
そんな祐介と対照的に、小太りな春生は能天気そうに、澪に話しかけた。
春生「でも、ありがとうな、送ってくれた曲、すげぇよかった」
えみ「そう!えみ、聞いててなんか、すんごいノスタルジィな気持ちになったの!」
佐智子「あー、わかるかも」
澪「ノスタルジィ?笑」
春生「ノスタルジィってなんて意味だったっけ」
澪「春生、『寂しい』って意味だ」
佐智子「澪、似てるけど違うわ、『郷愁』よ」
えみ「きょーしゅーってなんだっけ、澪?」

洋介「まぁまぁ、これで人数そろったわけだし」
澪「うん、じゃあ始めよっか」

ファン1「あ!みなさん!」
えみ「あーーかのちゃんやっほ~~!!」
ファン1「えっスタジオから出てきたってことは…今日練習もう終わりました?」
澪「ああ、かのこじゃん、今日もう終わったよ、いないから来ないんだと思ってた」
ファン1「澪さんお久しぶりです!!あれ、確か祐介さんこの前…」
祐介「ごめん、時間変更になったんだ」

ファン2「あ、じゃあ今日はもう見れないんだ・・・」
ファン1「私、今日友達2人連れてきちゃったんですよね…」
しょぼん、としてしまった女の子たちに春生がのんきに話し出した。
佐智子「あ、じゃあ今度変更したら伝えられるようにメアド交換しようよ!」
えみ「それもいいし、ていうか今からファミレスでご飯食べに行くんだけど、よかったら一緒に来ない?せっかくだからおしゃべりしようよ~~!!!」
ファン1「え…澪さん、いいですか?」
澪「うん、いいよ、なぁ、佐智子」
春生、え?メアド交換いいの?という間に佐智子までも、
佐智子「うん、みんなで行こ!」
 と賛同し、3人は一気に顔を上げ、互いの顔を見合わせた。
ファン3人「ありがとうございます!」
そうして一同はファミレスへと向かった。



澪、席に着くなり、ファンの子達にスマホに入っている新曲を聞かせていた。曲が終わると、かのこはいつものように興奮しながらも笑顔で褒めてくれた。
ファン1「いいですね~~!!」
 澪はその言葉にホッとしつつも、これが聞きたくていつもがんばってんだよな、と心の中で小さくガッツポーズをした。
ファン1「バラードってもしかして、初めてじゃないですか?」
澪「あぁ、かのこに聞かせたのは確かにそうなるかも」
 。
ファン1「他にもバラードあるんですか?」
澪「うん、あるよ」
ファン1「え~!聞きた~い!!」
えみ「はいはい!みんな注文選んでって!!」
ファン2人「は~~い」。
澪「なぁかのこ、この前聞かせた曲の話なんだけど、実は…」
・かのこに作った曲なんだ、と言う前に、かのこのスマホが突然鳴った。
ファン1「あっごめんなさい澪さん」
ファン1「えーー!!今日雄二夜空いてるんだーー!!!ってすみません…実は私、最近彼氏できたんです!!」
「えっ」
ファン1「、前からずっと気になってたんですけど、勇気だして告白したらOKもらっちゃって!!」
澪「あ…そうなんだ…」
ファン1「はい!っあ…澪さん、そういや何か言いかけてませんでしたか?」
澪「えっあぁ…なんでもないよ」
ファン1「そうですか?」
澪「うん」
 澪は、かのこに目をのぞき込まれてとっさに下を向くと他二人がここぞとばかりに澪に話し出した。
ファン2「聞いてくださいよ先輩、かのこったらね、大学でその彼氏と超いちゃついてて!」
ファン3「やばいぐらいラブラブなんですよね~~!!」
ファン1「ちょっと~!やめてよー!」
そんなかの子達がはしゃぐ声は澪には聞こえてない。
『大事な子は決まって、みんな男に取られていく』
 澪は、心の中で、そう呟いた。



手毬「ふぁぁ…」
友人「手毬、また寝不足?」
手毬「昨日バイトがなかなかあがれなくて…」
友人「ね、そこのバイト、ブラックじゃないでしょうね?」
手毬「いや、お客さんの落とし物一緒に店内で探してたら遅くなっちゃって…」
友人「なにそれ、でも、今日はゆっくり寝なさいよ」
手毬「うーん、でも今日もバイトなんだよね」
友人「はぁ?そうなの?!まぁ、あんま頑張りすぎないでよ!」
そう言って友人は自分の友達のグループの所へ戻って行ってしまった。
手毬「うん、ありがとう!」
手毬「ふぁ~…」
いかんいかん、これじゃあ授業で寝てしまう。そう思った手毬は、バイト先の喫茶店メニュー、オムライスを極めるため、常に『オムライス本』を持っており、それを手に取りパラパラめくりだした。
すると澪、ギターを抱えたまま教室に入った。黒板に目を向けると「プリントを2枚取ってください」と書いてあるが、どちらのプリントもどこにも置いてない。
すると先ほど手毬に話しかけた友人のいる女子のグループが澪に気づいて、口々に話し出した。
友人2「あ!高城さんだ、やっと大学来たんだ、ね、あの子全然授業受けてないらしいよ」
友人3「他の授業でも毎回名前を呼ばれるのに、出ないから先生困ってたよ」
友人4「大学なめてるよね、絶対」
手毬は、そんな後ろの声が聞こえつつも、澪の放つオーラに惹かれ、澪を見つめていた。しかし、澪の状況にはっと気づいて、自身のプリントを持ち席を立った。
手毬「これ、使って」
澪にプリントを差し出すと、初めて二人は目を見合わせた。
澪「え」
とりあえずプリントを受け取ると、手毬は澪に微笑んで振り返り、教授に話しかけた。
手毬「先生~!プリント2枚とも1枚ずつ足りません!」
教授「あぁ、ごめんなさい」
手毬は、プリントを受け取って自分の椅子に戻った。澪、あたりを見渡すと、人数が多くてほぼ手毬の横の席しか空いてない。前の方だが、他の席よりましか、と思い、澪は手毬の横の席に座った。ふと横に目を見やると、机の上にはオムライス本が置いてあり、気になって話し出した。
澪「オムライス?」
手毬「あっこれ?私、喫茶店でバイトしてるんだけど、そこのオムライス極めたくて!!」
澪「へぇ、オムライス、私好きだよ」
手毬「ほんと?!」
すると手毬、澪が筆箱から取り出したシャーペンが、自分の好きなバンドのグッズだと気づいた。
手毬「あー!それ、もしかして‘シュガー・スコーン’のやつじゃない?!」
澪「知ってるのこのバンド」
手毬「知ってるも何も私大ファンだよ!だって、ほら!!」
手毬、自分の鞄からそのバンドのタオルを取り出して澪に見せた。
澪「なんで大学にそんな派手なタオルもってきてんだよ笑」
 澪はおもしろくなって笑いだすと、手毬は笑った、と思い、またも澪に見とれていた。するとチャイムが鳴り、教授が席を立って生徒の方を見渡した。
教授「はい、じゃあ授業を始めます。」
手毬、澪、その声を合図にお互い前を向いた。



澪、授業の途中で眠ってしまっていた。チャイムの音でハッと起きると、目には少しの涙が溜まっていた。澪はその涙に気づき、困惑した。
澪「あれ…」
手毬「大丈夫?」
手毬は鞄からハンカチを取り出し、澪に差し出した。
手毬「いる?」
澪「あ、大丈夫」
手毬「そう?」
澪「うん。それにしても、なんで…」
手毬「そういう時、あるよね。私もあるよ」
 
手毬「じゃあ私、もう行かないとだから」
澪「うん。あ、プリントありがとう」
手毬「うん、じゃあまたね!」 




澪が高校時代まで想いを馳せていた近所の1つ上の姉的存在、彩花が澪の夢に出てきた。もう何度目か分からない。澪はこれは夢だ、とどこかでわかったような気になっていつつも、高校時代の服装で、関西弁で彩花の声がする方へ向かって叫んでいた。
彩花「澪…澪!!」
澪「彩花お姉ちゃん!」
彩花「澪…私な…」
澪「待って…待ってや、彩花お姉ちゃん!!!」

澪「はっ!!」
目覚めるとまた目には涙が溜まっており、その粒がいくつか落ちた後、授業の時より泣いてるな、という事に気づいた。
澪「…最近こんなんばっかだな…」
澪、起き上がりギターを手に取って曲を作りだした。


澪は大学の廊下を歩いていると幼稚園の時からの幼馴染で同じ大学に進学した夕子に偶然出会った。
夕子「あっ澪!!」
澪「夕子」
夕子「久しぶりやなぁ、元気してるかー?ていうか、めっちゃ痩せてへん?ちゃんと食べるか、てか…」
夕子が見上げると澪が優しい目で見ている。夕子はその時自分の知ってる澪なはずなのに知らない人みたいに見えた。澪は関西弁だ、なつかしいな、と思って夕子を見つめていた。
澪「うん、まぁ、なんとかやってるよ」
夕子「…そう…、あ、でも、ちゃんと彩花ねぇさんに連絡入れときや!ねぇさんあれでも澪の事、気にしてんねんで!まぁ、今は自分の事で忙しいやろうけど…」
澪「うん、わかってるよ。じゃあ、私急いでるから」
夕子「あ、ごめん」
目の前を立ち去ろうとする澪を、思わず夕子は呼び止めた。
夕子「澪!」
 その声に驚きながら澪は振り返った。
夕子「…あんま遠くに行かんといてな」
澪「…うん、わかってるわ、ごめんな」



手毬、早めのバイトが終わり、時間は21時を過ぎたころだった。
手毬「じゃあ、お先失礼します、お疲れ様でしたーー!」
 東京の夜の街を歩いていると、前から澪が歩いてきた。
手毬「あ!!高城さん!」
澪「あ…えっと、及川さん」
手毬「手毬でいいよ、今帰り?」
澪「うん、まぁ…そっちは?」
手毬「私もバイトが終わって今帰りなの。ね、今日もらってきたんだ、ケーキ食べない?」
澪「オムライスの次はケーキ?いいね」
手毬「うちはスイーツも豊富なんだよ。ね、澪って呼んでいい?」
澪「うん、いいよ。」
手毬「うん、じゃあ、あの川のとこのベンチ行こう!」



手毬「結局ベンチどこも開いてなかったね…」
澪「まぁいいじゃん、ここで」
二人は川を見ながら橋の上で川を眺めていた。
手毬「そうだね…」
手毬は、ケーキ箱を開けようとすると澪は横で煙草を取り出しふかし始めた。
手毬「えっタバコ?!」
澪「あ、ダメだった?」
手毬「ううん…ていうか、吸うんだね」
澪「まぁね」
手毬「ふぅん」
澪「吸う?」
手毬「いっいいですっ!!」
澪「そう?」 
そう言うと澪は、再び煙草に戻った。
手毬「でも、将来お母さんになった時よくないよ。未来の赤ちゃんのこと考えたら…何か害とかが出たら、どうするの?」
澪「…まぁ、そらそう思うか、普通は…」
手毬「…ごめん、人の自由だよね、そんなの」
澪「いや、手毬の言う通りだとは思うよ」
手毬「!今、手毬って言った!!」
澪「え?」
すると、パッパーと車のクラクションの音が聞こえ、二人は振り向くと、手毬の想い人でバイト先の先輩の熊沢であり、熊沢は2人の前で車をとめた。
熊沢「手毬ちゃんじゃん!!」
手毬「熊沢さん!」
熊沢「こんなとこで何してんだよ!もう夜遅いぜ!駅まで送っていこうか?」
手毬「いいんですか!?あっでも…」
澪「いいよ、私すぐそこだし、駅とは間反対だから」
手毬「そう?じゃあお言葉に甘えて…熊沢さん、お願いします」
熊沢「そっちのねーちゃん、ほんとに大丈夫?」
澪「はい、大丈夫です」
熊沢「おっけー」
手毬「じゃあ、また学校でね!」
澪「うん、それじゃあ」
手毬、車に乗って去っていった。
澪「はぁ…」
澪はやり切れない気持ちを抱えながら、2本目の煙草に手を出した。




夕子と手毬は、授業で同じグループになり、大学の廊下に設置されている机で発表の準備をしていた。そこに澪が通りかかった。夕子が先に気づいて声をかけた。
夕子「あっ澪!」
澪「夕子、ってあれ、手毬?」
手毬「澪!おはよう!」
澪「おはよう、ってか、なんで夕子と一緒にいるの?」
夕子「及川さん、文学部の授業も受けてるから同じ班になったの」
手毬「そう!」
澪「あぁ、それで発表の準備かなんかしてんのか」
手毬「澪はこれから授業?」
澪「いや、もう出るよ」
手毬「そっか」
澪「じゃあ、もう行くから」
手毬「うん、じゃあね」
夕子「澪、ちゃんと食いや!」
澪「分かってるよ!」
 澪はこれからスタジオに向かわなければいけないので、遅いでその場を去った。
手毬「え、というかなんで澪と丹波さんが知り合いなの?」
夕子「あ、私らね、地元の大阪で家が近所で、幼稚園以来の幼馴染でさ」
手毬「へ―、知らなかった、丹波さんと澪って幼馴染だったんだ。ていうか、二人とも大阪から来たんだね、澪に全然イメージ無いけど…。ね、澪って昔からあんな感じだったの?」
夕子「…いや?」
 その言葉に夕子は、ふと、高校時代の彩花、澪、夕子の三人で笑った時のことを思い返していた。そこで澪は「何言ってんねん、夕子!!」と笑いながらしゃべっている。
夕子「全然、あんなんじゃなかったよ」
その言葉に手毬はえ、と声を漏らしつつも、それ以上は聞いちゃいけない気がして、そう、とだけ呟いた。



澪「嘘やろ、彩花お姉ちゃん!」
彩花「澪、ごめんね、私、もうすぐ結婚すんねん」
澪「うそ、嫌や、お姉ちゃん、彩花お姉ちゃん!!」
はっと、澪、勢いよく起きた。前より泣いてる。嗚咽するほどに。しばらく抑え込んでた感情の蓋が開いてしまったからだ。
澪「はぁ…」



澪、大学の授業を受けている。内容はLGBT.ジェンダー論。
・板書や教授の言葉をノートに書き留めていく澪の画。
教授2「突然ですが先生は、青春時代、同級生の女性が好きでした。」
・突然の告白に生徒がざわつく。顔を上げて教授を見る澪。
教授2「今やLGBTなんて言葉が出来て、受け入れられるようになったり、知識が学校で教えるなんて時代になってきたけれど、そんなの何もない時代で誰にも言えなかった孤独な痛みと葛藤は消えることはありません。偏見で実際『気持ち悪い』とか『怖いとか』言われました。これも現実だと思います。」
・まっすぐ教授2を見る澪の画。
教授2「でも、誰かへの想いが友情か愛情は正直決めきれないし、それを決めることが重要な事ではないように思います。大事なのは、自分が相手をどのように想ってるかではないかと思いませんか?」
・ざわついていた教室がちょっと鎮まる。
・教授の言葉にインスピレーションを受けて、はっと歌詞を書きだす澪。
・「蜂」という感じだけが見える画。


えみ「いいじゃん今度の歌詞――!!」
佐智子「うん、なんか今までと違う感じ」
春生「なんかあったか?」
澪「いや」
・その言葉は嘘だな、と勘づく祐介の画。でも黙ってる。
祐介「あ、なぁ、これ、今度の文化祭でやらないか?」
えみ「あーー!それいいーー!!」
佐智子「いいかも」
春生「そうだなぁ、いいじゃねぇか?なぁ、澪!」
澪「うん、そうだね。いいと思う。それと、みんな。」
全員「ん?」
澪「…ありがと」
えみ「…それはこっちのセリフだよ」


・バンドメンバーで飲んでる。
えみ「だーーもう!!雪乃のやつ!!『この前言ってた好きって、どういう意味?』だってよ!!そんなのそういう意味に決まってるじゃんか、もーーー!!」
佐智子「えみの幼馴染ちゃん、相変わらずっぽいね」
えみ「なーんで気づいてくれないかな~~」
佐智子「早く分かってくれるといいね」
えみ「ほんとそれ!…あ!ねぇ、佐智子の方は?確か友達の弟さん?だったよね!!上手くいってるの?」
佐智子「あ~~…まぁ、全然…」
えみ「え~~~もう、アタックが足りないんじゃない?」
佐智子「だって親友の弟よ?そんなのただえさえ奈々子…友達にすらまだ言えてないのに、無理よ」
えみ「そんなもんかぁ」
春生「お前らでも相手フリーだろ!?俺なんか…俺なんか相手は彼氏いるんだぜ?!勝ち目ねぇよ!!」
祐介「春生は美容院で働いている子が好きなんだっけ」
春生「そう!」
佐智子「春生が…(笑)」
えみ「美容院て…(笑)」
澪「ふふっ」
春生「あ!今澪まで笑ったな!?お前初めて声出しやがって!なんだよ、俺だって行くよ!美容院!なんだよ!床屋行けってかお前ら!!」
祐介「まぁまぁ(笑)」
祐介「お前も笑ってんだよなぁ祐介!!」
・春生、このこの!!と祐介にちょっかいをかける。痛い痛い!!とじゃれる二人。
えみ「…まぁ、自覚しすぎると辛くなるからさ、あんま考えないようにしてるんだけどね、って そんな感じ。」
澪「自覚しすぎないように、ねぇ…」
えみ「でもしょうがないよね、あたしら全員片想い組!叶わぬ恋してるんだよね~~~」
佐智子「だからバンド名が『bee』なんだもんね」
えみ「そう!まさに今回の曲の通り、花蜜に吸い寄せられた蜂なんだよね~~~私らは。それが男だろうが女だろうが、そうなったもんはそうなったでしょうがないんだよね」
佐智子「もうちょい今回みたいな曲、結成した時にでもできそうだったのにね。バンド名にも沿ってるわけだし」
澪「いや、それが結構難しかったりするんだよ」
えみ「そう!あたしらは、そんじょそこらの漫画やドラマにはない、こう、自分にしかない感情や色や音や風景やパッションを、音楽で、なんとか表現して表したいんだよね。」
澪「目で見えるように、『ある』ってわかるようにしたいんだけど、それを取り出すのは中々簡単なことじゃないんだよ」
佐智子「そうだよね、うちらそれは澪にまかせっきりだもんね、ごめん」
澪「いや、大丈夫」
えみ「もっと、あたしらが持ってる感情もなんていうか…『普通』だ!!って、言えるようになればいいのにね」
佐智子、澪「・・・」
・煙草を取り出す澪。
・澪を見てる祐介の画。


・バンドメンバー、バーから解散する。
えみ「澪だけそっちか」
澪「うん、じゃ、また」
祐介「送ろうか」
澪「いや、いいから」
春生「気をつけてな」
澪「うん」
えみ「じゃあ、バイバーーイ」
・歩いてる澪。向かいから手毬が下を向いて早歩きしている。澪の肩にぶつかる。
澪「うわっと…」
手毬「あっすみません」
・手毬、泣いてる。
澪「え、手毬?!」



・手毬、澪、酎ハイを飲んでる。手毬、酔っている。(澪も酔ってるけど面には出ない。)
手毬「熊沢さん好きな人いるって言ってなかったじゃ~~~ん!!!!最近ね、出来たんだって、彼女」
澪「それもう3回聞いたから」
手毬「う~~~~~~(泣き出す)」
澪「あぁあぁ、せっかくの厚化粧が…」
手毬「厚化粧って言わないでぇ~~~」
澪「ごめんごめん(笑)」
・手毬、澪の笑顔に見惚れる。澪のタンクトップ姿の上半身を見てなぜか照れて目を逸らす。
澪「何?」
手毬「いや、なんでもない」
澪「あ」
・澪、両手を広げる。
澪「来る?」
手毬「いいの?」
澪「うん。ほら、おいで」
手毬「う~~~~(澪に抱き着く)」
澪「よしよし(片手で手毬を包んでもう片方で手毬の頭をなでる)」
・手毬、寝る。
澪「え、寝た?早!!」
・澪、え、どうしよう、どこで寝かそう、という感じであたりをきょろきょろ見る。ベットを見て手毬を見たり。

手毬ナレーション『澪の腕の中は、花の蜜みたいな、甘い匂いがした』




・起きる澪。卵をフライパンで焼いている音といい匂い。手毬がオムライスを作ってる。
手毬「あ、起きた!!ごめん、勝手に台所使わせてもらってるよ。今オムライス作ってるとこ」
澪「朝からオムライス?(笑)」
手毬「極めてきたところだからどうしても澪に食べてほしくって!」
澪「なるほどね」(すげぇな…と思ってる)
・オムライスが2皿できる。ケチャップでハートが書かれている。
手毬「あ、澪、スプーンってどこにある?」
澪「あぁ、あっちの棚の1番上」
手毬「あぁ、こっちか…」
・手毬、棚の上に飾ってある写真を見つける。昔の彩花と澪の写真。
手毬「ね、これ、澪?!全然今と雰囲気違うね!!」
澪「あーーだってそれ、中3?ぐらいの時だし」
手毬「そうなんだ、それじゃあ違ってて当然だよね」
・彩花に視点を当てる手毬。
手毬「ね、これ、横の人、きれーだね、誰なの?」
澪「あぁ、好きな人」
手毬「え?!」
澪「じゃなかった、好きだった人」
手毬「…そうなんだ」
・澪、驚かれるのもしょうがないよなぁという感じで、手毬を見てふっと笑う。
澪「早く食べないと、オムライス冷めちゃうよ」


・バイトに入る手毬。店長の田中が先に居る。
手毬「田中さん、お疲れ様です」
田中「お疲れ様、あれ、この前最後の方元気なかったけど、何か今日は大丈夫そうだね」
手毬「あぁ・・・この前は、でも、今日は大丈夫です」
田中「うん、なんかいいことあったっぽい」
手毬「えへへ」
田中「そういやさ、ケーキ、今日も持って帰らない?この辺ならどれでも持って行っていいんだけど・・・」
手毬「えー!いいんですかー!どうしようかな~…澪、どれが好きかな」
田中「ミオ?」
手毬「最近できた友達なんです!」



・手毬「お疲れさまでしたー!」
・手毬、バイト先を出る画。
・実家の自分の部屋に着く。ベットに突っ伏する。
手毬「つっかれたーー!!寒い…」
・手毬、両手で腕をさする。
手毬「澪・・・」



・一緒に大学まで来た澪と手毬。
手毬「じゃあ、わたしこっちだから」
澪「あ、そっか」
手毬「ありがとうね、色々と、またね!」
澪「うん」
後ろから、夕子が来る
夕子「澪!最近よく会うなぁ!」
澪「うわっびっくりした」
夕子「なにそれ」
澪「だって急だったから(笑)」
夕子「まぁ(笑)…なぁ、さっきの及川さんやんな?」
澪「うん」
夕子「前から思ってたんやけど…及川さんて、ねぇさんに似てへん?」
澪「え?手毬とねーちゃんが?まさか、全然似てないよ」
・澪が昔の雰囲気と違って考え込んでしまう夕子。立ち止まる。澪、それに気づいて立ち止まり振り返る
澪「あれ、夕子?」
夕子「…澪、やっぱ、あんま私の知らん遠くへ行かんといてな」
澪「(少し笑って)前もそれ言ってたけど、だから何言って…」
・真剣なまなざしの夕子と目が合う。
澪「何言うてんねん、ユウ。」
・はっとする夕子。
澪「大体、遠いとこってどこやねん、私がどこに行くっていうん。行きたいとこに行く。それの何が悪いねん。」
夕子「そうやな、ごめん、澪の言う通りやねん。」
澪「私はな、ただ自分のやりたいようにやってるだけ!したいようにさせてくれよ、別に、高校までのあんな狭い空間だけが私の全てやと思いたくないねん。もうあんな、窮屈な思いは嫌や、絶対嫌や。あんな、彩花姉ちゃんが結婚するって、言うて、それで私なんも言われへんかった。おめでとうっていうのがやっとやった。あんなに近くにいたのに。私にとって彩花ねぇちゃんは一番近い人やったのに、彩花ねぇちゃんにとったら私はそうじゃなかった。でもわたしも分からへんねん、こんな気持ちが、こんなこと考えてしまうのが正しいと思わん、間違ってるってずっと思ってた。でも、ここに来て、やりたいようにやって、やっと、あの頃の自分を客観視できるようになったんや。やっと、そんな自分を許せてきたところやねん!それを引き留めようとせんといてくれ!!」
夕子「ごめん、ほんまその通りやと思う、私が間違ってるんやと思う!!ただ、私は澪ほど自分が変わりたいとは思わないから、ただ・・・」
澪「ただ?」
夕子「さみしいねん・・・」
澪「・・・。」
夕子「友達として、私の中の澪を失くしてしまうのがさみしいねん!」
澪「…」
夕子「‥」
澪「…そっか、ごめん」
夕子「…私の方こそごめん」
澪「夕子の気持ちはよく分かった。」
夕子「!じゃあ・・・」
澪「でも、本当の自分でいたいんだ。」
夕子「…」
澪「じゃあ、わたしこっちだから先行くわ。」
・夕子を置いてさっさと歩きだす澪。


・澪と手毬が同じ授業の大学の教室。手毬、友人達と話しているが、澪が来るなり、澪の方へと向かう。
手毬「澪!おはよう!」
・手毬、澪に抱き着く。
澪「おわっと」
手毬「ねぇー私達授業被ってるのこれだけじゃない?!すごい寂しかったーー!」
澪「いや、週一会えば充分じゃん」
手毬「澪は寂しくなかった?」
澪「・・・ちょっと?」
手毬「!嬉しい!あ、ごめん、友達と話途中だったんだ、行くね!」
澪「話途中だったのかよ」

・友人達、2人の様子を見てる。
・手毬、友人たちのとこに戻る
手毬「ごめんごめん!」
友人2「ね、最近すごい親しげだね、木城さんと」
友人3「なんでそんな仲いいの?」
友人1「っていうか、抱き着くまでするかね普通」
手毬「え?」
友人4「っていうかよく木城さんと話せるね」
手毬「だって澪かっこいいし、私と違って・・・かっこいいし、かっこいいじゃん!」
友人1「かっこいいしか言ってない(笑)」
友人2「やだ、手毬ソッチに行かないでよー」
手毬「そっちって?」
友人2「そっちはそっちよ」
・チャイムが鳴る
・手毬、いつも通り澪の横の席に座る。
・澪、音楽聞いて本読んでる。
手毬「(澪に向かって)そっちってどっち?」
澪「え?」
手毬「なんでもない」
澪「なんだよ」
・手毬
澪の横顔を見やる。
手毬「ふふっ」
澪「今度は何?」
手毬「澪ってなんか、いいにおいする」
澪「そう?」
教授1「はい~授業を始めます」


・手毬の布団を敷いている。
手毬「ごめんね、また部屋おじゃまして」
澪「大丈夫だよ」
手毬「でもほんと助かる、明日の文化祭委員の集合、すごく早いから」
澪「せっかくの文化祭なのにわざわざ委員て、大変だね」
手毬「あ、でも自分で立候補したから、平気!」
澪「えっ変わってんね」
手毬「そう?」
澪「手毬、やっぱ変だわ」
手毬「え!?ひどい!!」
澪「いやいや、ほめてんだって」
手毬「それならいいけど…」
澪「それよりさ、今日もう風呂入って寝るでいいよな?」
手毬「うん、明日のためには酒飲んでられないし」
澪「すぐ酔うからな手毬は」
手毬「そんなことないから!」
澪「いや、そんなことあるから!!」
・そうしてる間に布団が敷き終わる。
澪「こんなもんか」
手毬「ありがとう」
澪「ベットじゃなくて大丈夫?」
手毬「そんな!全然いいよ!急にきてベットまで取ったら悪いし…」
澪「そう?まぁ確かに明日大事だから、いつも通りで寝させてもらうわ」
手毬「うん」
澪「じゃあ、先風呂入りなよ」
手毬「あっありがとう」
・風呂場へ行く手毬。
・ふらふらと部屋を歩く澪、棚の上に置いてある彩花との昔の写真楯を見つけ、手に取る。
澪「…明日で最後だ」
澪「じゃあ、電気消すよ」
手毬「うん、おやすみなさい」
澪「おやすみ」
・しばらくの間。
・手毬、閉じてた目をあけて、腕をさする。
手毬「…寒い」
・手毬、澪のいるベットに入る。澪の寝顔を見ながら
手毬「…寝てる」
・手毬、澪の頬にキスする。寝る。
・澪、そっと目を開く、手毬の額にキスする。寝る。



・ざわつくライブ前会場。急いで前の方へ行く手毬。上手く隙間を縫うように前へ行く。
手毬「すみません、ちょっと、すみません!」
・少しハウリングの音。
えみ「こんにちはーー!『bee』でーーす!!」
・わぁっと歓声が鳴る。同じ軽音部の人たちが盛り上げている。ファン1、2、3もいる。
えみ「それでは聞いてください、『花と蜜蜂』!!」

後ろ姿 背中越しに
私専用の香水
花の蜜の香り
誘われ 蜂のように
さまよう さまよう

きっともう 
あなた以外に
吸い寄れない
ダメな蜜蜂
愛だ恋だの
語らせて

花と蜜蜂
咲いたように笑うあなたと
それに魅せられ酔う私は
花と蜂

きっと
悲しみでその瞳
潤んでも
私はそれに
言葉失ってしまう
私を 愛して


・曲終わりにわぁっっとまた歓声。


・曲を聴いて、澪に対する感情がコレだ!と確信する手毬。勢いのまま澪に会いに行く。
・だけど祐介と仲良さげに笑ってる澪。それを見た手毬。気に入らない。でも入る隙が見えなくてその場を去る。
・澪、手毬の気配に気付く。
澪「手毬?」
・手毬のいた方い向かおうとする。
祐介「澪、ちょっといいか」
澪「?うん」
・廊下の隅に出る二人。
祐介「おれ…澪が好きだ」
澪「えっ…」
祐介「おれと付き合ってくれないか」
澪「え…だって、祐介はバンドメンバーで…それで…」
祐介「…やっぱダメか…」
澪「…ごめん」
祐介「こちらこそごめん、どうしても、今日言いたくなって…また、普通にバンドメンバーとして関わってくれるか。」
澪「そりゃもちろん!」
祐介「ありがとう」
春生「あ!二人ともそんなとこにいたのかよ!もう出るぞ!」
澪「あ、うん」
祐介「ごめん、すぐ行くよ。澪、先行ってて。」
澪「?うん。」
・澪、祐介を置いてメンバーのとこへ行く
祐介「…痛いな。…」



・澪、大学の机があるスペースで、手毬が座ってるのを見つける。
澪「手毬!」
・澪、駆け寄る。
・手毬、振り返り澪に気づいた後、、眉を寄せる。
澪「手毬!この前の曲、聞いてくれたよな?!」
手毬「…うん」
澪「手毬?」
手毬「…この前、演奏が終わった後、やけに男の人と一緒にいなかった?あの人同じバンドの人だよね?確かベース弾いてた…」
澪「あ、やっぱ居たんだ」
手毬「え?」
澪「それで?だから何?」
手毬「…」
澪「何だよ、何彼女みたいなこと言ってんだよ」
手毬「…!」
澪「浮気調査ってか。」
手毬「…!!」
澪「あ、でもそそれなら男じゃなくて女か…」
・手毬、立ち上がり、澪の頬をぶつ。右のセリフに被る。
手毬「バカ!!!」
・びっくりする澪、荷物を持ってそのまま去る手毬。ちょっと泣いてる。



・澪、手毬と同じ授業の教室に入る。でもいつもの場所に手毬がいない。
友人1「ねー、今日もまた休むつもりなんかな、手毬」
友人2「なんかあったのかなー」
友人3「授業簡単に休む子じゃないでしょあの子。どうしたんだろうね。」
友人2「ねーどうしたんだろ」
澪「…」


手毬「はぁ…」
田中「手毬ちゃんさ、最近ため息多くない?」
手毬「えっそうですか」
田中「5秒に一回はしてる」
手毬「そんなしてませんよ!」
田中「いや、してるよ」
手毬「してませんて」
田中「いやぁ、まぁそれは冗談だけど、どうしたの、学校でなんか嫌なことでもあった?」
手毬「いや、そういうわけじゃないんですけど、まぁ…」
田中「あ、わかった、恋煩いだろ?!」
手毬「えっ…」
田中「…(察する)。なんだ、好きな人できたんだ。よかったね」
手毬「…なんか、変なんです。相手のなんでもない態度で喜んだり怒ったり…自分ばっかりそんなんで、悔しいし、最近はその人が何考えてるか知りたくて一晩中ずっと考えてしまってたり…そんな自分が嫌なんです。」
田中「なんだ、しっかり恋してんじゃん」
手毬「え?(顔を上げ田中を見る)」
田中「手毬ちゃん、誰かに対して気持ちを一喜一憂させられたり、ずっと考えたりっていうのは、全然変なことなんかじゃないよ。」
手毬「…」
店長「ちょっとー、田中君ヘルプ来てくれないーー?」(遠くから呼ぶ)
田中「あっはいーー!じゃあ、行くね」
手毬「あっはい、ありがとうございました。…。そっか。」



・澪、夕子と飲んでる。
澪「ごめん、急に呼び出して」
夕子「全然」
澪「この前ごめんな」
夕子「だからいいって。私も考え直してん。確かにあの頃の私らが自分の全てでは決してないし、それに、誰も青春時代のままでおれへんし」
澪「今も青春時代やろ」
夕子「まぁ(笑)でも、そうやって変わりゆくとしても、私にとって澪は澪。それは変わらへん。それがすべてやなぁって」
澪「そう」
夕子「そうそれに得やん、これから売れていかんとするギタリストと、幼馴染なんて」
澪「なにそれ(笑)」
夕子「だってそうやん(笑)で、本当の自分とやらは手に入った?」
澪「…もーーー色々と、わけわかんないの」
夕子「なんでよ、なんで及川さんが怒ったか、あんたが一番分かるくせに」
澪「でも色々と考えちゃってさ、あいつは私と違って」
夕子「私はレズだけど向こうはノンケだからってか」
澪「おいユウ。」
夕子「なんやねん、だからなんやっていうねん。澪、あんたはどんなんなっても澪は澪や。今の自分の気持ちを大事にしたりや。で。」
澪「で?」
夕子「澪は及川さんのどんなとこが好きなん?」
澪「えっ」
夕子「どうせやったら教えてや」
澪「ええ~~、う~んと、かわいい…」
夕子「ほうほう」
澪「なんだよ」
夕子「そんで?」
澪「明るい」
夕子「澪と違って」
澪「うるさい」
夕子「それから?」
澪「割としっかりしてて」
夕子「うんうん」
澪「笑った顔が」
夕子「すき」
澪「なんで夕子が言うんだよ」
夕子「だってそうやんか」
澪「まぁそうだけど・・・」
夕子「じゃあ良いやん。」
澪「まぁね。でもやっぱ一番は…」
夕子「え、なんなん」
澪「なんか、うまく言えないけど、・・・匂い、かな」
夕子「匂い?」
澪「うん、匂い。他の人には感じないけど、手毬は匂いで今からここに来るな、とか分かる。そんで、ずっとその匂いに包まれてたいって思う。それが大きいかな。」
夕子「へぇ・・・そうなんだ。」
澪「うん」
夕子「でも」
澪「ん?」
夕子「いっぱいあるんだね、好きなところ。」
澪「…そっか」
夕子「うん」
澪「ごめん、夕子、私もう行くわ」
夕子「え?!」
澪「なんか、今な気がするんだ」
夕子「え?!」
・去ろうとする澪の腕を掴む。
夕子「なぁ、前から思っててんけど、私はありやったりせぇへんの?」
澪「はぁ?!」
夕子「いや、ちょっと気になって」
澪「…友達とはチューせぇへんやろ!」
夕子「え?!」
・澪、腕を払う。
澪「じゃ!」
夕子「あ!ちょっとまだ話聞かせてやーー!まったく…」
・夕子、ため息をついた後、少し笑って澪の
背中を見送る。


・手毬、バイトが終わり、田中と歩いて帰ってる。すごく楽しそうにしゃべっている。
手毬「じゃあ、お疲れ様でしたーー!」
・澪、手毬、会う。
澪「おっす」
手毬「え、澪?」
澪「メ―ルしてもなかなか繋がらないと思ったら…」
手毬「え?」
澪「なんだ、相手いるんじゃん」
・澪、振り返り去る。
手毬「えっちょっと待って、澪!」
・手毬、澪の腕を掴む。
澪「いい、聞きたくない」
・澪、腕を払う。
手毬「ちょっと待ってってば!別に田中さんはそうじゃないから!」
澪「大学にもなかなか来ないと思ったら…、楽しそうにやってんじゃん!」
・澪、走り去る。
手毬「待っ…」
・手毬、澪に拒絶されたショックで固まる。
・手毬、泣き出す。
手毬「うっ、ひっく…」
田中「手毬ちゃん?大丈夫?なんかすごい声聞こえたから戻ってきたんだけど、今の誰?」
手毬「…好きな人です」
田中「えっ…」
・再びなく手毬。
田中「…そっか。」


・手毬、大学に来て教室に入る。でも澪の姿はない。
友人1「あんたがやっと来たと思ったら、今度は木城さんが来なくなったじゃん。」
友人2「二人、なんかあった?」
手毬「も―、ヤダ。どうしたらいいんだろう・・・」



えみ「ね~~最近澪来ないじゃん、どうしたんだろ」
佐智子「メ―ルしても返信来ないし」
春生「何か知ってるか?祐介」
祐介「いや…」
えみ「やっぱいつもんとこにいるのかな…」
・手毬、スタジオに訪れbeeに話しかける。
手毬「あの~…」
えみ「あなたは…」


・澪、河川敷で山座り。夜の川を見てる。煙草をふかしてる。
澪「はぁ…」
・煙草の火を地面で消し、小さな袋に煙草を捨てる。
・はぁ、はぁ、と人の息遣いが聞こえたので、顔を上げ振り返ると、手毬がギターを持って立っている。
澪「えっ手毬?!」
手毬「…聞いてください、『花と蜜蜂』!!」
・手毬、覚えたてのコードをなんとか押さえ、音を外しながらも頑張って歌う。
・澪、少し笑えて微笑む。
澪「いや、そこ音違うから」
・曲が終わる
手毬「…っわたしは、澪が好きです!」
澪「!」
手毬「澪じゃないとイヤです!」
・手毬、泣き出す。
手毬「澪じゃないと…うっ…」
澪「分かった、分かったから…ほら、おいで」
・手毬、澪に近づき、澪、手毬を抱きしめる
手毬「澪って、こうすれば私が黙ると持ってる思ってる。ほんと、ずるい。」
・再び泣き出す手毬。そんな手毬の顎を上げてキスする澪
手毬「!」
澪「あ、泣き止んだ」
手毬「なっ…!」
・澪、手毬の目をのぞき込む。
澪「あたしけっこう嫉妬しいだけど大丈夫?」
手毬「…!!…うん、嬉しいよ。」
澪「しゃべってても愚痴ばっかになっちゃうし」
手毬「大丈夫」
澪「部屋ン中たまに音でうるさいよ」
手毬「『シュガー・スコーン』で?」
・笑う澪と手毬。
澪「じゃあ大丈夫だね」
手毬「うん」
・しばらくの間。
手毬「ね、澪、一つお願い聞いてもらってもいい?」
澪「何?」
手毬「たばこ、もう辞めてね。」
澪「それはどうしようかな・・・」
手毬「もう!わたしは澪の身体を思って・・・」
澪「分かってる、分かってるって、うん、考えてみるよ」
手毬「絶対考えてよね!」
澪「はいはい」
・澪、手毬が持ってるギターを代わりに持つ。
・歩き出そうとする二人。
澪「あ、ちょっと待って」
手毬「何?」
・手毬、澪、お互い正面に向き合う
澪「好きだよ、手毬」
手毬「…私も!」
・手毬、澪に抱き着く。
・澪、手毬を強く抱きしめる。

End.

・エンドロールの曲中は、出演者全員でレコーディングした『花と蜜蜂』を流したい。
(人々全員が「花」であり「蜜蜂」なんだという意味合いを込めて)
・エンドロールの最後に、澪の部屋の棚の写真たての中身が、澪と手毬の写真に変わっている。

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