<登場人物>
高木 理央(12)中学1年生
木下 菜々(12)同、高木の幼馴染
石田 輝久(12)同、同
長瀬 豪毅(14)中学3年生、番長
長瀬 竜二(12)豪毅の弟、高木と石田のクラスメイト
佐野(13)中学2年生
塩屋(13)同
教師(36)
<本編>
○メインタイトル『頭』
○通学路
歩いている高木理央(12)。髪はワックスでツンツンに立てられている。駐車してある車の窓ガラスを鏡代わりにして髪をいじる高木。
後ろから頭を叩かれる高木。
菜々の声「理央、おはよう」
振り返る高木。
立っている木下菜々(12)。
高木「何すんだよ。つーか、(髪が)少し曲がっちまったじゃねぇかよ」
菜々「大して変わって無いじゃん。行くよ」
歩き出す菜々。
渋々、菜々を追って歩き出す高木。
○中学校・前
多くの生徒が歩いている。
並んで歩く高木と菜々。注目の的。
菜々「あーあ、入学早々そんな髪してるから悪目立ちしてるじゃん」
高木「知るか。つーか、そもそも目立ってんの俺だけか?」
菜々「他にいないじゃん」
しかし周囲の生徒たちをよく見ると、菜々に目を奪われてる男子生徒も多数。
菜々「とにかく、ただでさえ見た目で目立ってるんだから、行動は控えめにね」
高木「はいはい、わかってるっつーの」
佐野の声「おいおい、そこのツンツン頭」
振り返る高木と菜々。
そこにやってくる佐野(13)と塩屋(13)。
佐野「お前、一年だろ? あ?」
高木「まぁ、そうっスけど」
佐野「随分派手な髪型してんな。あ?」
塩屋「おまけに女まで連れてよ」
無視して歩き出す高木と菜々。
佐野「おいおい、無視すんのか? あ?」
塩屋「ひょっとして、日本語もわかんねぇ馬鹿なのかよ」
立ち止まる高木。
高木「誰が『馬鹿』だって?」
菜々「ちょっと、理央」
佐野「おいおい、やんのか? あ?」
教師の声「そこ、何やってるんだ!」
校門前に立っている教師(36)。
佐野「ちっ。覚えとけよ。あ?」
学校内に入って行く佐野、塩屋。
菜々「理央、さっき言った事もう忘れた?」
高木「は? つーか、あっちから因縁付けてきたんじゃねぇかよ」
菜々「まったく、もう」
学校内に入って行く高木と菜々。
○同・教室・前
「一年一組」と書かれた表札。
○同・同・中
教室前方のドアの前で談笑する長瀬竜二(12)ら数名の男子生徒。
そこにやってくる高木。
高木「つーか、邪魔なんだけど」
竜二「は? なら、後ろのドアから入れば?」
高木「つーか、随分偉そうな口の利き方だな」
竜二「当たり前だろ? 俺の兄貴はな、この学校の頭なんだぜ?」
二人の間に入る石田輝久(12)。
石田「まぁまぁまぁ。理央、行こうぜ」
高木「は? んだよ、テル。まだ……」
高木を連れ出し、教室後方のドアから教室に入る高木と石田。
石田「(大きく息を吐いて)理央、いきなりキレかけてるから、マジで焦ったし」
高木「つーか、あっちから……」
石田「いいから、問題起こすなって。まだ目立つには早ぇし。我慢、我慢。な?」
高木「ったく、どいつもこいつも」
席に着く高木。
高木「つーか、『この学校の頭』って、どういう意味だ?」
石田「まぁ『番長』って事じゃねぇの?」
高木「ふ~ん。興味ねぇわ」
と言って髪をいじる高木。
○同・外観
チャイムの鳴る音。
○同・廊下
歩いている高木。
向かい側から歩いてくる佐野、B。
佐野「よぉ、また会ったなツンツン頭」
塩屋「ちょっと面かせよ」
高木「何で俺が……」
○(フラッシュ)同・教室・中
高木をなだめる石田。
石田の声「我慢、我慢。な?」
○同・廊下
佐野、塩屋に挟まれる高木。舌打ち。
○同・体育館裏
待っている長瀬豪毅(14)ら不良達。
そこにやってくる佐野、塩屋、高木。
佐野「先輩、連れてきました」
豪毅「こいつが調子ん乗ってる一年坊主か。噂通りの面構えだな」
塩屋「本当、馬鹿面っスよね」
怒りに震える高木の拳。
高木の心の声「我慢、我慢……」
佐野「(高木の拳に気付いて)あれ? こいつ、手震えてますよ」
塩屋「見かけ倒しのチキン野郎なのかよ」
笑う不良達。
より震える高木の拳。
高木の心の声「我慢、我慢、我慢……」
佐野「おいおい、何も言い返せねぇのか?」
塩屋「だったら、こんな髪すんなっての」
高木の髪をぐちゃぐちゃにする塩屋。
塩屋を睨む高木。目の色が変わる。
塩屋「何とか言え……」
塩屋を蹴り飛ばす高木。
吹っ飛び、KOする塩屋。
静まり返る不良達。
佐野「てめぇ……」
佐野を蹴り飛ばす高木。
吹っ飛び、KOする佐野。
殴り掛かる残りの不良達。その攻撃をかわしながら、不良達を一人ずつ蹴り飛ばす高木。
次々と吹っ飛び、KOする不良達。
対峙する高木と豪毅。
豪毅「てめぇ、三年に喧嘩売って、ただで済むと思ってんのか?」
高木「一年とか三年とか関係ねぇ。つーか、そっちから売ってきたんじゃねぇかよ」
豪毅「調子ん乗んな」
殴り掛かる豪毅。
豪毅の拳をかわし、蹴りを入れる高木。ダメージを負いながらも耐える豪毅。
豪毅「……やる、じゃねぇか。けど、これくらいじゃ、この俺は……」
間髪入れず二発目の蹴りを入れる高木。
KOする豪毅。
一息つく高木。ぐちゃぐちゃにされた髪を気にする。
高木「つーか、この髪じゃ教室戻れねぇじゃねぇかよ……」
○同・前
下校する生徒達。
並んで歩く高木、菜々、石田。
菜々&石田「喧嘩した~?」
高木「つーか、喧嘩じゃねぇよ。二、三年に絡まれたから、返り討ちにしただけで」
菜々「同じじゃん。何やってんのよ」
石田「あんだけ『我慢、我慢』って言ったのに、意味ねぇし」
高木「いいじゃねぇかよ、別に」
○同・外観
T「翌日」
○同・廊下
顔に絆創膏を貼って歩く佐野、塩屋。
○同・教室
席に座る高木。周囲に視線を向ける。
高木と目が合うと、おびえるように慌てて視線をそらす生徒達。
やってくる石田。
石田「理央、何か凄い事になってるし」
高木「凄い事? つーか、何の話だよ」
石田「理央が昨日、この学校の番長やっつけたって、学校中の噂になってるし」
高木「番長? 番長って確か……」
教室の隅に立つ竜二を見る高木。
○(フラッシュ)同・体育館裏
対峙する高木と豪毅。
よく見れば、竜二と顔の似てる豪毅。
○同・教室。
高木と目が合うと、おびえるように慌てて目をそらす竜二。
高木「昨日のあれ、番長だったのかよ。つーか、弱っ」
石田「番長に勝つなんて理央、凄ぇし」
高木「何だよテル、いきなり。つーか、昨日は怒ってたじゃねぇかよ」
石田「そういう事なら話は別だし。番長に勝ったって事は、理央が今一番強いって事になるんだし。凄くね? 番長だよ? 頭だよ? やっぱり、一番が一番だし」
高木「……つーか、興味ねぇよ」
石田「そんな~」
髪をいじりはじめる高木。
(完)
コメント
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。