○公園・中
ベンチに座ってコンビニのパンを開ける迫ほのか(21)。
あきらの声「日本人は古来より米を愛してきた」
顔を上げるほのか。
目の前のベンチに座っているみすぼらしい姿のあきら(25)。
ほのか「…(顔をしかめる)」
あきら「お前は小麦を食うのか。米を食うのか。日本人なのか」
ほのか「…(無視をしてパンを食べようとする)」
あきら「無視をするな!そこの女!」
ほのか「私?」
あきら「お前以外に誰がいる?」
ほのか「いきなり話しかけられると思わないじゃん!頭のおかしい変人の戯言かと思うでしょ」
あきら「見ず知らずの人間にズケズケとものを言う女だな」
ほのか「見ず知らずの人間にいきなり米か小麦か聞きます?」
あきら「…覚えてないのか」
ほのか「は?」
あきら「最初に米かパンか聞いてきたのはお前だぞ」
ほのか「…えっと…?」
あきら「だからあのコンビニの前で」
小首を傾げるほのか。
ほのか「あ!ゴミ箱漁ってた人!」
あきら「違う!ホームレスか俺は」
ほのか「その格好はどう見てもホームレスですが…」
ボロボロの洋服を腕で隠すあきら。
改めて考え込むほのか。
ほのか「あ!」
あきら「思い出したか」
ほのか「この間、うちのコンビニのゴミ箱に火をつけようとして通報された人?」
コケるあきら。
あきら「お前のコンビニのゴミ箱はクズがよってたかるようにでもなってるのか。改良しろバカ!」
ほのか「ゴミ箱に罪はないでしょ!じゃあなんだってのよ」
あきら「傘とおにぎりコンビニの前でくれたじゃんか雨の日に」
×××
コンビニの前。
雨が降っていて立ち往生しているあきら。
傘を差し出すほのか。
ほのか「米と小麦どっちが好き?」
×××
ほのか「いやいやいや嘘でしょ…」
あきらを見つめるほのか。
あきら「嘘じゃないんだって」
ほのか「ストーカー?」
あきら「じゃなくて。恩を返しにきた」
おにぎりを差し出すあきら。
ほのか、おにぎりを受け取りフリーズする。
ほのか「夢…(顔を引っ叩き)じゃない…」
あきら「だから現実だって!」
ほのか「最悪だ…ご飯増えた…」
ほのか、自分のパンを見つめる。
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