アナベル「町に着いたのは良いけど、静かね……でも、何か聞こえる。町の中心の方?」
ヨシュア「あああああああああ……ハンナ、ハンナ…」
アナベル「男の子?女の子を抱きしめてる?ねえ君?ちょっといい?」
ヨシュア「あああああ……」
アナベル「悲しんでるとこ悪いんだけど、何があったの?話してくれない?」
ヨシュア「野郎がまた来たと思ったら、なんかを首に打って、そしたら変なことになって、ハンナが襲われた」
アナベル「その人、ハンナさん、て言うの?」
ヨシュア「(コク)」
アナベル「そう。ちょっとだけ、見せてくれない?」
ヨシュア「何を……」
アナベル「ハンナさんに何があったのかをね。あたしが追いかけてる事件に関係あるかもしれないから」
ヨシュア「事件?」
アナベル「ええ。あ、あった。首筋に特徴的な歯型」
ヨシュア「そういえばあいつ、ハンナの首に噛みついてた」
アナベル「間違いないわね。ところで襲ってきた人、知り合い?野郎とかあいつって…」
ヨシュア「ああ。ダスティン=ウォードって言って、ハンナに言い寄ってたストーカーだ」
アナベル「そうだったのね。あなたは?聞いても良い?」
ヨシュア「俺は、……ハンナの恋人だ」
アナベル「あらまあ、そうだったのね。カワイイ彼女じゃない」
ヨシュア「うるせえババア」
アナベル「ば!?」
ヨシュア「俺にとってはキレイなお姉さんなんだよ。カワイイとかってバカにすんな」
アナベル「あ、そういうこと?それは悪かったわ。君とハンナさん、いくつなの?」
ヨシュア「は?」
アナベル「いや、カワイイがバカにするってなんだろうなと」
ヨシュア「俺は18、ハンナが25だ」
アナベル「あ、ハンナさんが上なのね」
ヨシュア「あんたはいくつなんだよ?」
アナベル「う……29よ」
ヨシュア「あ、悪い」
アナベル「え?」
ヨシュア「アンタも、十分キレイなお姉さんなんだな」
アナベル「(顔が赤くなっていく)な、な、な…この流れでそれ言うの?」
ヨシュア「自分が間違った時には素直に謝れ。ハンナに日ごろから言われてたことだ」
アナベル「あ、そうなの」
ヨシュア「ところで、この歯形が何なんだ?」
アナベル「ああ、それね。君、バンパイア症候群て知ってる?」
ヨシュア「バンパイア?いや?」
アナベル「私の所属するハンター協会が追ってる事件でね。何らかの薬を打たれた人間が変異した状態のことよ。主な症状として身体強化や理性の減衰。そして吸血衝動」
ヨシュア「それで!」
アナベル「ええ。私は各地を回ってバンパイア症候群を発症と言うより、バンパイアにされた人間を殺して回ってるハンター、アナベルよ。あなたの名前も聞いていいかしら?」
ヨシュア「ヨシュア」
アナベル「ヨシュア。バンパイアがどの方向に行ったか見た?」
ヨシュア「あ、ああ。ここからなら北の方だ。」
アナベル「ありがとう。あなたは町を出て逃げなさい。私はバンパイアを殺すから」
ヨシュア「殺す?バンパイアを?」
アナベル「ええ。現状元に戻す方法は無いらしくてね。私はバンパイア化した人間を殺してまわってるの。だから……」
ヨシュア「ダメだ!!!」
アナベル「(ビクッ)なら他に方法が……」
ヨシュア「奴を殺すなら俺が殺す!!あんたは手を出すな!」
アナベル「あのね、素人に出来る訳が……。あなた、何それ?何を握ってるの?」
ヨシュア「え??何って、あ?なんだこれ?妙に柔らかくなってる。こんなんあったっけ?」
アナベル「……違うわ。それ石よ。その辺に転がってる」
ヨシュア「へ?石が何で?」
アナベル「ヨシュア君。あなたまさか、魔術の才能があるの?」
ヨシュア「魔術?」
アナベル「周りに術者がいなければ知らないかもね。簡単に言えば常人では扱えない力を持った人のことよ」
ヨシュア「俺が?」
アナベル「今は石が柔らかくなったのよね。固くしてみてくれる?」
ヨシュア「あ、ああ。フン!」
アナベル「反応なしね……さっきは、そうか。バンパイアへの怒りを込めてみて?」
ヨシュア「バンパイアへの……。うう、あああああああああ!」
アナベル「今度はどう?」
ヨシュア「確かに、固くなった」
アナベル「……イケるかもしれないわ」
ヨシュア「え?」
アナベル「あなたの敵討ち。共闘ってことなら良いわよ?」
ヨシュア「ほんとか!?」
アナベル「ええ。あなたの力なら何とか対抗できるわ」
ヨシュア「でも、やるっつといて何だけど、どうしたらいいんだ?」
アナベル「バンパイアを殺す方法は極めて単純でね。心臓を止めればいいの」
ヨシュア「普通の人間と同じってことか?」
アナベル「その通り。でも厄介な点が1つ。心臓を含めた体細胞の異常な再生能力よ」
ヨシュア「再生」
アナベル「仮に私が普通の弾丸で何十発バンパイアの心臓に打ち込もうが、殺せないわ。だからこそ必要になるのが鉄の杭よ。再生力を阻害する大きさをパンバイアの心臓に打ち込み、細胞が復元できないようにする。いくらバンパイアと言っても所詮は人間の体。生命活動が止まるまで細胞の復元を阻害することが出来れば殺せるわ」
ヨシュア「なるほどな(手に持ってる石を見つめる)」
アナベル「どう?やってみる?」
ヨシュア「ああ。ハンナの敵を討てるなら、なんだってやってやる!」
アナベル「聞くけど、あなた戦闘経験は?」
ヨシュア「ない」
アナベル「……まあそうよね。ならいい?あなたがやるべきはあなたの魔術で硬化したその石をバンパイアの心臓に突き刺して、心臓の再生を止めること。逆に言えば、それ以外は私に任せなさい」
ヨシュア「……わかった」
アナベル「じゃあ、行くわよ、バンパイアを殺しに」
アナベル「どう?あの背中で間違いない?」
ヨシュア「ああ、間違いない。あのストーカーだ」
アナベル「いい?奇襲は上手くいかなくて構わない。とにかく失敗したら大急ぎで離れること。そうすれば私が牽制出来るわ。その後は私が作るバンパイアの隙を見逃さずに仕留める。いいわね?」
ヨシュア「ああ」
アナベル「よし。スー、ハー。攻撃開始!」
ヨシュア「このっ、くうううう(持ってる石を魔術で尖らせる)、おらあああああ!!」
ダスティン「フン、バレバレダ」
ヨシュア「ちぃ、くそっ!」
アナベル「あのバンパイア、今言葉を?ヨシュア!下がりなさい!弾丸の嵐をくらいなさい!!」
ダスティン「ぐっ、チィ。オ、オンナ、……オンナァ!」
アナベル「ふふ!当たらないわよ!銃弾の第2弾!!」
ダスティン「オンナ、オンナ、オンナ!!」
アナベル「モテる女は辛いわね。銃弾の雨よ!欲しいならもっとあげるわ!」
ダスティン「ウ、ウ、ウ、ウッ、ガアゥ」
アナベル「ヨシュア君は……」
ヨシュア「(いつでもいける)」
アナベル「オーケー。だらあ!!」
ダスティン「チ、カ、ヅ、ケ、ナ、イ……」
アナベル「ヨシュア!!」
ヨシュア「今度は決める!!」
ダスティン「グ、ア、」
ヨシュア「こいつで、いけぇえええええええ!!」
アナベル「魔力が上がった。これなら石の固さも十分、あとは、刺せえええええええ!」
ダスティン「フン、ムダダァアアア」
ヨシュア「ぐっ、野郎のっ皮膚が……固い、だけど、てめぇはハンナを……絶対許さねええええ!」
ダスティン「ハンナハ、オレノガフサワシイ!」
ヨシュア「ざけたこと、言ってんじゃねえええええ!貫けええええええ!!!」
ブスッ!ズブズブズブ
ダスティン「ゴフォア!」
アナベル「貫いた!でも、まだよ!油断しないで!!」
ヨシュア「もっと深く、もっと、もっとだ。再生なんか、させるかあああああ!!」
ダスティン「ヨケイナコトヲ……グフゥ!!」
ヨシュア「折らせてなんかやるか、固く、なれえええええ!!!」
ダスティン「グ、グ、ゴフゥッ……」
ヨシュア「うあ!?ってて、はーっはーっはーっ」
アナベル「お疲れ様。立てる?手、貸そうか?」
ヨシュア「はー、はー、頼む」
アナベル「ん、よっと。どう?気分は」
ヨシュア「……何にも感じない」
アナベル「そう」
アナベル「お墓って、町の中には作らないのね……」
ヨシュア「ハンナが好きだった場所なんだ。花がいっぱいで、小動物もいる、この場所は」
アナベル「そうなのね」
ヨシュア「なんだろうな。やつを自分の手で殺せたってのに、何も感じないのは」
アナベル「私は正義を語るつもりはないわ。あなたがバンパイアを殺した動機についてもね。でも……この聞き方ならどうかしら?……無駄だった?あなたにとって」
ヨシュア「っ、いや。おかげで穏やかにハンナの墓の前にいられる。バンパイアを自分で殺してなかったら、多分泣いてただけだった。何も出来ずに」
アナベル「なら、少なくとも良かったんじゃない?その気持ちでいられることは」
ヨシュア「そうだな。確かにそうだ。ありがとな……いろいろと」
アナベル「あなたがそうやって笑えるなら、手伝った甲斐もあったわ」
ヨシュア「え?今、笑ってたか?」
アナベル「ええ。良い表情だったわよ?」
ヨシュア「そっか」
アナベル「ねえ、あなたにその気があれば私と一緒に行かない?」
ヨシュア「あんたと?旅に?」
アナベル「ええ。あなたに戦う力があることが分かった。これは私たちにとっても収穫でね。戦力としても多いに越したことは無いのよ。それに、あなたはあなたで身を守る術を身に着ける事が出来る。悪い話じゃないと思うのだけど」
ヨシュア「……しゃあねえな、そんな風に泣きつかれちゃ一緒に行ってやってもいいぜ。連れてってくれよ」
アナベル「オーケーよ。これからよろしく、ね!」
ギュム(ヨシュアの鼻を思いっきりつまむ)
ヨシュア「いででででででで!!あにふんだ!?(なにすんだ)」
アナベル「だーれが泣きついたですってー!?」
ヨシュア「スルーしたんじゃないのかよ!」
アナベル「ほっほっほ。あいにくそこまで人間出来てないのよ!」
ヨシュア「い、いいけど手を離せ!」
アナベル「このまま連れてっちゃおうかなー!!」
ヨシュア「い!?やめ、やめ、鼻がもげるー!」
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