病めるときも健やかなるときも ドラマ

人を信じられない男の10年後の結婚式。唯一の賓客である親友との心の交流を通し、孤独と信頼、結婚の本質を切なく温かく描く。
石原 大己 65 0 0 09/12
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第一稿

課題 結婚式









   病めるときも健やかるときも






           石原 大己


登場人物

伊達 誠 ...続きを読む
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課題 結婚式









   病めるときも健やかるときも






           石原 大己


登場人物

伊達 誠(25) 主人公
峰  正幸(25)伊達の友人
峰貴美子(24)正幸の妻
牧師
〇大学キャンパス(夜)
   広いキャンパス。
   深夜で誰もいない。
   伊達誠(25)が辺りを見回しながら、歩いてくる。
   峰正幸(25)がベンチで待っている。
正幸「おーい」
   伊達、笑顔で近づく。
   正幸、ベンチを指さす。
   伊達、ベンチの隣に座る。
伊達「どうした?うかない顔して」
正幸「折り入って相談があって」
伊達「なんだよ」
正幸「結婚を申し込まれた」
   伊達、驚く。
伊達「誰に?」
正幸「お前の知らない人だ」
伊達「そうか」
正幸「……断ろうと思う」
伊達「……」
正幸「俺は人を信じられない」
伊達「今もか?」
正幸「お前以外は」
伊達「今もなんだな」
正幸「正直にその人には話した」
伊達「そうか」
正幸「それでも良いって言うんだ」
伊達「ずいぶん、惚れられたもんだな」
正幸「俺も残酷な人間だよな」
伊達「そう思うよ」
正幸「そういうと思った。だからお前を信じら
れる」
伊達「俺はな、結婚してみても良いと思う」
正幸「なぜ?」
伊達「そんな深く考えるな」
正幸「なぜ?」
伊達「恋愛、結婚は人を信じることだよ」
正幸「だから出来ないって言ってるんだ」
伊達「お前は良い人すぎる。それをお前の彼女
は分かってるんだよ」
正幸「俺は良い人間じゃない」
伊達「良いか。結婚するんだ。お前はこのチャ
ンスを逃すわけにはいかないんだよ」
正幸「俺は人を信じれない」
伊達「それでも良いんだ。その人がお前を信じ
れば」
    正幸、伊達を見る。
正幸「良いのかな?」
伊達「良いんだよ。お前は自分のことだけ考え
ろ」
正幸「そんな酷いこと出来ない」
伊達「結婚式呼べよ」
正幸「結婚式は出来ない」
伊達「なんで?」
正幸「そんな覚悟が無いからさ」

〇テロップ「10年後」

〇会社(夜)
   伊達、残業をしている。
   携帯電話が鳴る。
   正幸の文字。
   携帯を取る伊達。
伊達「どうした?」
正幸の声「元気か?」
伊達「だいぶ久しぶりだな」
正幸の声「言いにくいんだが」
伊達「どうした?」
正幸の声「結婚式に出てくれないか?」
伊達「なんだよ急に」
正幸の声「俺、結婚して10年になるんだ」
伊達「結婚しなかったんじゃ」
正幸の声「したんだよ。籍は入れた」
伊達「なんだよそれ」
正幸の声「俺やっと人間を信じられるようにな
ったんだよ」
伊達「……」
正幸の声「お前だけだよ。参列者は」
伊達「分かった。絶対行く」
正幸の声「ありがとう」
伊達「でも3万円だからな。祝義は」
   正幸の笑い声。
正幸の声「それでいいよ」
伊達「分かった」
   伊達、電話を切る。
   寂しそうな伊達の顔。

〇教会
   教会のドアを開く伊達。
   峰正幸(35)と峰貴美子(34)がウ
ウェディングドレスを来て待っている。
伊達、ゆっくり歩く。
正幸と貴美子が丁寧に深々とお辞儀を
する。
貴美子「やっとお会いできましたね」
   伊達、頭をかく。
貴美子「あなたのおかげです」
伊達「なにがですか?」
貴美子「あなたのおかげで幸せになれました」
伊達「そんな大げさな」
正幸「そんな大げさじゃない」
貴美子「この人を説得してくれた」
伊達「ああ」
正幸「お前のおかげだよ」
   正幸と貴美子、幸せそうにお互いを見つ
める。
伊達「本当に参列者は俺だけなんですか?」
貴美子「そうです」
正幸「お前しかいないよ」
伊達「ずいぶん、買いかぶられたもんだな」
正幸「お前のおかげだ。最大限の敬意を込めた
かった」
貴美子「失礼ですが、ご結婚は?」
正幸「おい。失礼だろ」
伊達「良いんだ」
貴美子「すいません」
伊達「実は結婚も彼女もいません」
貴美子「すいません」
正幸「……」
伊達「俺、人を信じられなくて」
正幸「……」
貴美子「……」
正幸「その気持ちか」
伊達「その気持ちだ」
正幸「そうか」
伊達「たぶん俺と正幸が分かり合えたのはそれ
があったからだと思う」
正幸「もうなにも言うな」
伊達「言わせてくれ」
正幸「今日はすまないことした」
伊達「いや、お前の幸せを見たかったんだ」
正幸「俺はとんでもないことをした」
伊達「そんなことないよ」
正幸「本当にすまない」
伊達「謝らないでくれ」
   正幸、頭を下げる。
伊達「俺だって本当は信じたいから」
正幸「……」
伊達「だから来たんだよ」
   貴美子、うっすら涙を見せる。
伊達「お前、幸せになったんだな」
正幸「ああ」
貴美子「すいません」
伊達「良いんです」
正幸「ありがとう」
伊達「絶対幸せにするんだぞ」
正幸「そうする」
   伊達、正幸と抱き合う。
   伊達、正幸をゆっくり引きはがす。
伊達「これじゃ、お前と俺が結婚するみたいじ
ゃないか」
    正幸と伊達が二人、笑う。
    貴美子、涙が頬を伝う。
正幸「神父さんを待たせると悪いから」
伊達「そうだな」

〇教会・祭壇前
   神父が厳かに立っている。
神父「病めるときも健やかなるときも」
   正幸と貴美子、それを聞いている。
   伊達、少し離れたところでぽつんと立っ
ている。
          おわり

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