とある、愛のカタチのおはなし(前編) 恋愛

前回のとある、恋のカタチのおはなしから二年後の話。 バスケット選手への夢を持って海外へ行った自由と帰りを待つハル。 しかしハルはその淋しさに耐えられず新しい恋人が出来、自由も夢に挫折して ハルに内緒で自由をサポートし、そのまま恋人になった来夢(らいむ)と帰国していた。 そして二人は再会し二人の物語がまた動き出します。
あゆむ。 42 0 0 09/28
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第一稿

☆とある、愛のカタチのおはなし 前編

キャラクタープロフィール

楠木ハル(20)
主人公。宅配所で働くフリーター。自由の彼氏だったがアメリカに行った淋しさから桐島隼人 ...続きを読む
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☆とある、愛のカタチのおはなし 前編

キャラクタープロフィール

楠木ハル(20)
主人公。宅配所で働くフリーター。自由の彼氏だったがアメリカに行った淋しさから桐島隼人と付き合うようになる。優しい性格。

久賀自由(21)
ハルの彼氏。プロバスケット選手になる夢を叶える為渡米するが挫折をしその時に支えてくれていた鈴木来夢と共にハルには内緒で日本に帰ってくる。そしてハルと突然再開して気持ちがまた揺らぎ始める。

砂原飛鳥(21)
ハルと自由の親友。二人を温かく見守っている一人。

尾形あかね(21)
高校時代の飛鳥が入部していたバスケ部のマネージャー。さばさばとした性格。ハルと自由には厳しい事を言いながらも優しく見守っている。

久賀聡美(40)
自由の母。夫とは離婚。天真爛漫で明るい性格
自由がゲイだという事は知っていて、早く恋人を紹介しなさいと自由に言っている。

楠木由子(42)
ハルの母親。夫とは死別。
フルで弁当屋のパートと週末スナックで働いている。なかなかハルと過ごす時間はないものの優しくハルを見守っている。
ハルがゲイだと感づいてはいるがあえて自分の口からは聞かないようにしている。

桐島隼人(26)
高校教師。担当は国語。
黒縁眼鏡を愛用でいかにも教師らしい雰囲気。背も高く女性からもモテる。ハルとの出会いは、ハルがバイトに行く途中に道の片隅で具合悪くしていた隼人をハルが助けた事からの付き合いで今は半同棲をしている。普段は冷静だが、その分怒るとかなり怖い。

鈴木来夢(22)
アメリカでクラブのバスケットをやっているフリーター。思い込みが強く猪突猛進タイプ。髪の毛が金髪で父の仕事の関係でアメリカに住んでいる。アメリカで自由と会い来夢から告白する。流れで付き合うようになり日本に戻る自由を無理やり一緒に日本にやってくる。嫉妬のあまりハルをあからさまに敵視する。





※とある、愛のカタチのおはなし(上)

〇マンション・桐島隼人の部屋・中
   ベッドの中で抱き合っている楠木ハル(20)と桐島隼人(26)。
   シーツから顔を出してくる隼人。
隼人「ハル。気持ちいい?」
ハル「う、うん…」
   にやりと笑いシーツの中にまた潜り込みハルを愛撫する隼人。
ハル「あ…隼人」
天井を見ているハル。
ハルN「今、抱かれているのは久賀自由ではなく…」

〇フラッシュ
   高校の時の久賀自由(18)の笑顔。

〇ハルの回想
   ハルと一緒に歩いている自由の横顔。
   × × ×
   自由がバスケの試合でシュートを何度も決めガッツポーズを作っている。
   × × ×
   ハルと自由がキスをしている。
ハルN「僕の初恋の人…愛し合った人…二人で一緒に歩いて行こうと思った人…でも、みゅうは自分の夢を追うためにアメリカに旅立った」
   自由が笑顔で手を振っているが急に暗転。
   
〇回想戻り
   隼人に抱かれているハル。
ハルN「みゅうと別れた訳じゃないけど、寂しくて…苦しくて…桐島隼人をつい…頼ってしまった」
   ボーッと天井を見てるハル。
隼人「ハル…ハル?」
ハル「(我に返り)え?」
隼人「俺、もうイキそう…一緒にいこう」
ハル「う、うん」
   隼人が喘いで果て、ハルも果てる。
   シーツの中から手だけ出して、ティッシを探している隼人。

   ハルがティッシュボックスを隼人に渡す。
隼人「ありがとう」
  ティッシュで拭いてシーツの中から出てくる隼人。
  ハルの横になり腕枕をする。
隼人「ハル。気持ちよかった?」
ハル「う、うん…」
隼人「今度ゆっくり時間作って、一泊でもいいから旅行でも行かない?」
ハル「旅行?」
隼人「近場でもいいからさ。たまにはいいだろ?バイト休めそう?」
ハル「一応バイト先で休めそうな日、確認してみる」
隼人「初めてだよな。二人で旅行だなんて。楽しみだな」
ハル「…」
ハルM「自己嫌悪だ…」

〇楠木家・ハルの部屋・中
   ハルが帰ってくる。
   机の上には、ハルと自由が写った卒業式の写真と友達の砂原飛鳥(18)と尾形あかね   
 (18)四人で写った写真が写真立てに飾られている。
ハルM「みゅうは元気にしてるかな…」
   二人が写った写真を見るハル。
   自由がハルの肩に手を回しはしゃいでいる写真。
   スマホのメールの着信音が鳴る。
   ハルがバッグからスマホを出しメールを確認する。相手は隼人から
隼人の声「ハル。もう、家に着いたか?今度の旅行だけど箱根でいいかな?ネットでいい所見つけたんだ」
   ハルがメールの返信をする。
   『さっき帰ってきたよ。箱根でいいよ楽しみにしてる』と返信をする。
   ベッドに座り肩を落とすハル。
ハルN「卒業してから、僕の恋人久賀自由は、アメリカに旅立った。バスケの夢を追って…それからは何度も手紙のやり取りをした。電話で何度も話した…でも半年位前から急に手紙は途絶え、電話にも出なくなった…そんな時出会ったのが隼人だった」

〇回想・街
   ハルが歩いていると、道の隅で苦しそうにうずくまっている隼人が居る。
ハル「?」
   ゆっくりと隼人の所へ行くハル。
ハル「大丈夫ですか?」
   口にハンカチを当て、苦しそうに頷く隼人。
   優しく背中を撫でるハル。
ハル「救急車呼びましょうか?」
隼人「だ、大丈夫ですから」
   口からハンカチを離しゆっくりと深呼吸をする隼人。
隼人「すみません。ご心配かけました。少し楽になりました」
ハル「それなら、よかったです。じゃあ」
   ハルが行こうとすると、隼人がハルの手首を掴む。
ハル「!」
隼人「助けてくれたお礼をさせて下さい」
ハル「だ、大丈夫ですから」
隼人「そんな事、言わずに…」
   × × ×
   ファミレスで食事をしているハルと隼人。
ハルN「そこから何となく、お互いの事を話し、連絡先を交換して、付き合うようになってしまった」    

〇回想戻り・楠木家・ハルの部屋・中
   ハルがスマホで自由と撮った写真をスワイプしながら見ている。
   急に着信が鳴り驚くハル。
ハル「あっ…」
   着信は自由の母の久賀聡美(42)
ハル「もしもし…あっご無沙汰してます」
聡美の声「ハル君。こんにちは。ねぇハル君最近、自由と連絡取ったりした?」
ハル「いえ、最近は取ってないんですが…」
聡美の声「そう…ちょっと用があって自由に連絡してるんだけど全然繋がらないのよ…」
ハル「え…」
聡美の声「アメリカの方で何かあったのかしら…」
ハル「…」
聡美の声「ハル君。もし自由と連絡取れたら知らせてくれるかな?私もまた連絡してみるから」
ハル「はい…それじゃ」
   電話を切るハル。
ハル「連絡取れないって…何かあったのかな…」

〇カフェ・店内
   ハルがコーヒーを飲んでいる。
男の声「よぉ、楠木」
   ハルが振り返ると、親友の砂原飛鳥(21)と尾形あかね(21)が手を上げて来る。
ハル「久しぶり。ごめんね急に呼び出して」
あかね「気にしないの。ちょうど飛鳥とデートだったし、外に出てたから」
ハル「相変わらず、仲いいんだね」
飛鳥「まぁ、なんとか上手くやってるよー」
あかね「そっちはどうよ?遠距離恋愛上手く行ってる?」
ハル「う…」
ハルN「飛鳥君にも、尾形さんにも隼人と付き合ってる事は言ってない」
あかね「どうしたの?」
ハル「それが、みゅうと連絡が取れなくなって…」
飛鳥「は?」
ハル「僕はバスケの練習が忙しいのかなって思って連絡控えてたんだけどみゅうのお母さんも連絡取れないのを知ったみたいで、心配してたから、もしかしたら二人には何か連絡来てるかなって思って」
あかね「ちょっと、いつから連絡取れてないの?」
ハル「僕は、半年位から…手紙も来なくなったし、電話も出なくなった」
あかね「そんなに?」
飛鳥「何で、そんなに放って置いたんだ?」
ハル「うん…」
あかね「ハルや、お母さんに連絡がないのにこっちに連絡あるわけないでしょ…」
ハル「うん…」
飛鳥「何やってんだよ。みゅうは…楠木にもお袋さんにも連絡しないで」

〇××宅配所・中(夕)
   ハルが荷物の仕分けの仕事をしている

〇同・前(夜)
   バイト終わりのハルが出てくる。
   スマホが鳴る。相手は隼人から。
ハル「もしもし…?うん、今仕事終わった。え?迎えに来てるの?」
   ハルが先を見ると隼人が運転する車が止まっている。
ハル「ありがとう」
   電話を切り、隼人の車へ行くハル。

〇隼人の車・中(夜)
   運転をしている隼人。
   ハルは助手首席で浮かない顔をしている。
隼人「ハル。仕事で何かあった?」
ハル「いや、何でもないけど…どうして?」
隼人「何か元気無い感じがしたから」
ハル「そうかな…何でもないよ」
   ハルの横顔を見る隼人。
隼人「そっか」
ハル「ちょっと仕事が忙しかったから疲れちゃったのかな。ごめんね心配かけて」
隼人「ハルが大丈夫だったらいいんだ。でも何かあったらちゃんと話してくれよ」
ハル「うん」

〇楠木家・前(夜)
   隼人の車が止まり、ハルが出てくる。
ハル「送ってくれてありがとう。隼人も仕事大変なのに、疲れてない?」
隼人「俺は全然大丈夫。こうやってハルが居てくれるから、辛い教師の仕事も全然頑張れるから。俺の事は気にするな」
ハル「うん」
隼人「じゃあな。おやすみ」
ハル「おやすみなさい」
   隼人が車を出す。

〇同・居間(夜)
   ハルが来る。
   お風呂上がりの母楠木由子(44)が来る。
由子「あっ、ハル。帰ってたの」
ハル「うん、今帰ってきた」
由子「お疲れ様。あっねぇみゅう君から連絡来た?」
ハル「え?来てないけど…」
由子「聡美さんが店に来てくれた時に、言ってたのよ。連絡が取れないって…おばあちゃんの体調が良くないみたいで。もう長くないかもって言ってたから。今のうちに会わせときたいんだって」
ハル「そうなんだ…」
由子「恋人のハルにも連絡ないって、本当に心配ね…」
ハル「…」
由子「夜遊びしてる場合じゃないんじゃないの?」
ハル「え?」
由子「最近。たまに家に帰ってこないじゃない。今日は帰ってきてるけど」
ハル「…」
由子「変な人達と付き合ってるんじゃないでしょうね?」
ハル「そんなわけないでしょ。バイト先の先輩が色々連れてってくれるんだよ」
由子「だったらいいけど…二人ともどうしちゃったのよ…やっぱり離れ離れになるのが良くなかったのかしらね」
ハル「…」

〇同・ハルの部屋(夜)
   ベッドで眠っているハル。
   額に汗がにじみ、眉間に皺を寄せている。

〇ハルの夢
   暗闇の中で自由の名前を叫びながら走っている。
ハル「みゅう!みゅうー!」
   ふと目の前に、自由が現れる。
ハル「みゅう…会いたかったよ」
   自由に抱き着くハル。
   自由は無表情のまま立ち尽くしている
ハル「みゅう、どしたの?」
自由「…」
ハル「ねぇ。みゅう」
   自由の体を揺さぶるハル。
ハル「なんとか言ってよ!ずっと会えなくて寂しかったんだよ!ねぇ、みゅう!」
   自由が涙を流している。
ハル「え…何で泣いてるの?」

〇同・ハルの部屋・中(夜)
   ハルが夢から覚め勢いよく起き上がる。
汗を沢山かき、肩で息をしているハル。
ハル「夢か…」 
 
〇××駅・前(朝)
   改札口から体を引きずるようにハルが出てくる。
ハルM「夢から覚めて、一睡も出来なかった…」
   駅前の歩道を歩き横断歩道の前で止まるハル。
   向かいの横断歩道を見ると自由らしき男が見える。
   ハルは眠たい目を擦りながら男を見る
ハル「え…」
   視界がぼやけているが段々、男の顔がはっきり見えるようになる。
ハル「みゅう…」
   向かいに立っている男は久賀自由(21)である。
ハルM「目を疑った。アメリカにいるはずの…音信不通になっている…みゅうがそこに居る」
   信号が青に変わり人々が歩きだすがハルは動けないでいる。
   ハルの横を自由が通り過ぎていく。
ハル「(振り返り)みゅう」
   自由が立ち止まり振り返る。
自由「!」
ハル「みゅう、みゅうだよね…?」
自由「あっ、あぁ…」
ハル「何で?何で日本に戻ってきてるの?ってか、戻って来てるなら何で連絡してくれなかったの?」
自由「…」
   二人の背後から男が走ってくる。
男「みゅうー!遅れてごめん」
   二人が振り返ると笑顔で立っている鈴木来夢(22)。 
ハル「え?」
来夢「ごめん。時間通り着くと思ったんだけど」
自由「あぁ」
   ハルと自由を交互に見ている来夢。
自由「(来夢に)あっ、こっち楠木ハル高校の時学校が一緒だったんだ。久しぶり会って…(ハルに)鈴木来夢」
来夢「どうも」
ハル「ど、どうも…あの、お二人って」
来夢「付き合ってますよ!」
ハル「!」
自由「おい、来夢」
来夢「だってハル、アメリカでもゲイである事は別に隠してないって言ってたじゃん」
ハル「…」
自由「だからって、今それを…」
来夢「ねぇ、早く行こう。映画始まっちゃう」
自由「おぉ…(ハルに)じゃあな」
ハル「ちょっと待って」
自由「何?」
ハル「家にも連絡してないんでしょ?お母さん凄く心配してたよ」
自由「…」
ハル「連絡してあげて。お願い」
自由「分かった」
来夢「みゅう!」
   自由と来夢が行く、後姿を見ているハル。
ハルM「もう、何が何だか…」
   気分が悪くなり、鞄からハンカチを出し口を押えるハル。
   
〇公衆トイレ・個室・中
   ハルがハンカチを口に当て声が漏れないようにむせび泣いている。
ハルN「さっき、見たみゅうは、もう僕が知ってるみゅうじゃない気がした…。バイト先に電話して急遽休みを貰った」
   暗転。

〇マンション・隼人の部屋・玄関・中(夜)
   インターホンが鳴る。
隼人「はーい」
   隼人が来る。
ハルの声「僕です」
隼人「ハル?」
   隼人がドアを開け、ハルが入ってくる
隼人「おぅ。どした?今日バイトで朝から夜まで通しだったんだろ?」
ハル「休んだ…」
隼人「そうか…まぁ入れよ」

〇同・中(夜)
   ハルと隼人が来る。
隼人「仕事が終わる頃になったらまた迎えに行こうと思ってたんだ。休んだって、どした?体調でも悪いのか?」
ハル「いや、そういう訳じゃ…」
隼人「え?もしかしてずる休み?(笑って)真面目なハルが珍しい事するんだな」
   ソファーに座る隼人、ハルは立ち尽くしている。
隼人「どしたんだよ。こっち座れよ」
ハル「うん…」
   隼人の隣に座り、隼人と一緒にテレビを見るハル。
   さり気なくハルの肩に手を回す隼人だが、その前にハルが隼人に覆いかぶさり激しくキス        
   をする。
隼人「ん!!」
   尚も、キスを続けてくるハル。
   ハルの唇から離れる隼人。
隼人「おい、ハルどうしたんだよ」
ハル「いいじゃない。いつもっやってるんだから」
隼人「ちょっと待て。んなのハルらしくないぞ。何かあったのか?」
ハル「…」
   肩を落としソファーに座るハル。
ハル「ごめん…」
隼人「顔、疲れてる…今日は泊まって行けよ。でも、エッチは無し。キスだけ」
   隼人が優しくハルにキスをする。
ハルM「みゅうの事忘れたいがために、自棄になってしまった自分が嫌になった」
   隼人のキスを受け止めるハル。
ハルM「隼人は無条件でいつも僕の事を受け止めてくれる…もう、みゅうの事…忘れてしまおう…と思った」

〇マンション・来夢の部屋・リビング(夜)
   広々とした部屋にバスケットボールやグッズ等が並んでいる。

〇同・部屋・中(夜)
   事が終わり、二人で天井を見ている自由と来夢。
来夢「ねぇ。映画見に行く時に会った同級生居たじゃん?」
自由「うん」
来夢「あれって、みゅうの元恋人だった人?」
自由「え?」
来夢「アメリカに居た時、よく話してくれてたじゃん。写真も見せてもらったし顔が同じだった」
自由「…」
来夢「あの時みゅうが、日本に帰るって言ったのに俺が引き止めちゃって…」
自由「来夢」
来夢「俺がみゅうの事好きになって、どうしても一人で日本に帰るって言った時に、恋人になってくれなきゃ死んでやるーって脅迫しちゃったから」
自由「止めろ。その話は」
来夢「俺のみゅうへの気持ちはずっと変わってないから。アメリカでバスケット選手になる夢は諦めちゃったけど、また日本でやり直したらいいよ」
自由「あぁ」
来夢「ここの家、うちの親が用意してくれてるものだから好きに使ってくれていいから」
自由「ありがとうな」
来夢「ねぇ…もう一回する?」
自由「今日はもう寝よう。明日、実家にもいかなきゃいけねぇし」
来夢「そっか、親にまだ言ってないんだよね…。ねぇどうして急に実家に知らせる気になったの?三ヶ月もそのままにしてたのに。ハル君に言われたから」
自由「そんなんじゃねぇよ。寝るよ。おやすみ」
   来夢に背を向けて寝る自由。
   来夢の少し寂しそうな顔。

〇繁華街(夕)
   仕事終わりのハル。
   ビル前で、隼人を待っている。
   向かいから、左頬を赤く腫らした自由が来る。
   ハルが自由に気づく。
ハル「あ…」
自由「あ…」
   自由が気まずい顔をする。
ハル「どうしたの?こんな所で」
自由「実家行って来た帰り」
ハル「そう…そ、その顔」
自由「母ちゃんに殴られた」
ハル「え?何で?」
自由「勝手にアメリカから帰ってきて、何の連絡もしないままで居たから」
ハル「そうなんだ」
自由「ばあちゃんの病院にも行って来た。母ちゃん大袈裟な事言ってたけど、まだ元気そうだった」
ハル「それは、よかった」
自由「でも母ちゃんとは喧嘩になって、そのまま家出てきた」
ハル「喧嘩って…家出たって、今何処に…」
自由「彼の家に居る。親がアメリカで仕事してるんだけど、日本にもたまに帰って来た時に使ってるマンションらしいんだが」
ハル「そう…」
自由「ハルはここで何してるんだ」
ハル「あ、そ、それは…」
隼人の声「ハルー!お待たせ!」
   手を上げながら隼人が走ってくる。
隼人「ごめん、もうちょっと早く終わるつもりだったんだけど、職員会議長引いちゃって…(自由に気づいて)ハル?こちらは?」
ハル「あっ、久賀自由君…高校の時の同級生で…」
隼人「そうなんだ。どうも、桐島隼人です」
自由「どうも…あの、ハルとは、どういうご関係なんですか…?」
ハル「え?」
隼人「あっ。あぁ…前に僕が街中で急に体調悪くなった時に助けてもらったんですよ。その時からの付き合いで」
自由「付き合い?」
隼人「あっ、付き合いって変な意味ではないですよ。時々飯でも食いに行こうって、誘ってるんですよ。一人で飯食っても味気ないんで」
   ハルの額に汗が滲み、自由が見る。
隼人「ハル君優しいからいつも付き合ってもらって、助かってます」
ハル「…」
隼人「どうする、もうちょっとお友達と話する?あれだったら俺少し外すけど」
自由「大丈夫です。俺もう帰りますんで」
ハル「みゅう」
自由「じゃあな、ハル」
   自由、行く。
   自由の後姿を目で追うハル。
隼人「ハル?」
ハル「あっ、ごめんなさい…」
隼人「行こうか」
ハルN「きっと、みゅうは僕と隼人が付き合ってるのを悟ったと思う…みゅうの後姿が寂しそうだった」

〇マンション・隼人の部屋・中(夜)
   ベッドで寝ている隼人。
   隣のハルは眠れずに、天井を見ている
   そっとベッドから抜け出し自由にメールをするハル。
   その様子を見ている隼人。

〇公園
   バスケットコートがあり、若者達がバスケットの練習をしている。
   近くにあるベンチに座っているハル。
ハルN「やっぱり、一度みゅうとちゃんと話した方がいいと思ってメールを送った。話し合った上で真剣に隼人と向き合おうと思った」
   自由が来る。
自由「わりぃ。待たせたな」
ハル「いや」
自由「どうしたんだよ。話って」
ハル「うん、本題から話すね。いつ、帰って来たの?日本に」
自由「三ヶ月くらい前かな」
ハル「…」
自由「もう質問は終わりか?」
ハル「どうして知らせてくれなかったの?僕ずっと待ってたんだよ?」
   ハルの目から涙が零れる。
ハル「みゅうがバスケをやってる姿、とても好きだったし、その夢をアメリカで叶えたいって話した時の目が本当に素敵で」
   自由が握り拳を作る。
ハル「みゅうを好きになってよかったって…心から思ってたのに。黙って帰ってきて、しかも新しい恋人と一緒に…」
自由「俺からも一つ質問いいか?」
ハル「え?」
自由「前にハルと一緒にいた男。ハルの彼氏だろ?」
ハル「それは…」
自由「俺の事言えた義理じゃないよな」
ハル「…」
自由「いいじゃないか。お互いに新しい恋人が出来た。それだけだ。話はもういいよな…じゃあ」
   自由が行こうとするのをハルが自由の手首を掴む。
ハル「良くない」
自由「(強い口調)離せよ!」
   すくんで、手を離すハル。
自由「俺がどんな思いで…どんな思いで」
ハル「みゅう?」
自由「(ハルには聞こえないように)辛かった…」
ハル「え?」
自由「悪い。帰る」
   自由が行き、ハルは立ち尽くす。
   自由は泣いている。

〇マンション・来夢の部屋・中(夕)
   自由と来夢がテレビを見ている。
来夢「みゅう…何か元気ない」
自由「そうか?気のせいだろ」
来夢「ねぇ。明日ご飯食べに行かない?」
自由「あぁ。でも、そろそろ仕事探さないといけないし…ずっとこのままじゃな…来夢にばかり負担させるわけにはいかない」
来夢「そんな事気にしないで。俺は好きでやってるんだし、みゅうにはゆっくりと元気になってもらいたいから…ねぇもう心の傷は癒えたの?」
自由「まぁ…」
来夢「そっか…。明日はさ、奢るから行こうよ!あっハル君も誘わない?」
自由「え?何で…」
来夢「何でって…いいじゃない別に。みゅうが昔どんな人だったか聞いてみたいし。でも三人じゃハル君居心地悪いか…」
自由「あぁ、そう言えばハル、恋人出来たら しい」
   寂しい顔をする自由。
来夢「そうなんだ!ってか、何で知ってるの?どこかで会ったの?」
自由「あぁ、実家の帰りにちょっと…」
来夢「そっか…じゃあ都合いいじゃん四人でご飯食べたら」
自由「そうだな」
   
〇居酒屋・店内(夜)
   ハル、自由、隼人、来夢が集まって食事をしている。
来夢「ハル君今日は来てくれてありがとう。しかも彼氏と一緒に来てくれるなんて。二人お似合いですね」
隼人「どうも。そちらもお似合いですよ」
来夢「ありがとうございます(自由に)お似合いだって!嬉しいね」
自由「あぁ」
隼人「(自由に)この間は、ごめんね。まさか自由君も僕達と同じゲイだとは思わなかったからあんな紹介になって」
自由「いえ。僕も思います。お二人はお似合いだって」
隼人「本当に?ありがとう」
   ハルの顔が冴えない。
来夢「ハル君、食べてる?」
ハル「は、はい」
隼人「何か、顔色悪いけど大丈夫か?」
ハル「うん、大丈夫」
来夢「ねぇ、ハル君。自由と昔付き合ってたんでしょ?」
隼人「え?そうなの?」
自由「おい、来夢」
来夢「いいじゃん。本当の話なんだし。みゅうって昔どんな感じだった?」 
ハル「昔…」

〇フラッシュ
   自由の笑顔や二人で楽しそうに学校から帰る姿を思い出すハル。

〇フラッシュ戻り・居酒屋
ハル「笑顔が素敵で。バスケをしてる時のみゅうは本当にかっこよくて魅力的でした」
自由「…」
ハル「なのに…何で?今はそんな欠片も見えない。ねぇみゅう。もうバスケ止めちゃったの?」
隼人「ちょっとハル?」
ハル「あの時、胸張ってアメリカで頑張ってバスケの選手になるって夢は嘘だったの?答えてよ!みゅう!」
   テーブルを叩きつけるハル。
隼人「おい、ハル何興奮してんだよ。落ち着けって」
来夢「ハル君。みゅうがアメリカでどう過ごしてたか知ってる?」
ハル「え…」
来夢「色々あってね…みゅうは日本に帰りたがってたんだ。でも俺が帰らないでって言ったの。帰ったら死ぬって言ったの」
自由「その話は止めろって」
来夢「みゅうを脅迫したの。もし、脅さなかったらみゅうは日本に帰ってハル君のとこに行ったと思う」
自由「止めろって言ってるだろ!帰るぞ」
   自由が席を立ち店を出る。
来夢「ちょっと、みゅう!(ハルに)それ位みゅうの事好きなの…ごめんね」
   来夢も席を立ち、レジで精算して店を出る。
ハル「…」
隼人「え?帰っちゃっうの?」
   溜息をつくハル。
隼人「ハル、大丈夫か?」
ハル「うん」
   ハルの肩に手をまわす隼人。
隼人「もう、あいつらの事忘れろよ…俺じゃまだ不安かな?」
ハル「隼人…もう一度だけみゅうに会ってみてもいい?」
隼人「え?」
ハル「アメリカで何があったのかちゃんと聞いておきたい。そしてお別れしたいか
ら」
隼人「(考えて)分かった」

〇カフェ・店内・中
    ハルが自由を待っている。
    自由がコーヒーをトレーに乗せ来る
自由「待たせたな」
ハル「うん…」
   席に着く自由。
自由「この前は急に帰って悪かったな…隼人さん、大丈夫だったか」
ハル「まぁ…」
自由「そっか、じゃあ上手く行ってるんだな…だったらいいじゃないか。もう俺の事なんか忘れて、これから隼人さんと歩いていけば」
ハル「そんな事出来ない。みゅうがアメリカで何があったのかちゃんと聞いてからでないと先に進めない」
自由「あれは来夢が勝手に言ってるだけだ」
ハル「話して!」
   真剣な眼差しで自由を見るハル。
自由「じゃあ話すよ」

〇自由の回想・アメリカ・バスケットコート
   自由が笑顔でバスケットの練習に励んでいる。
   チームの仲間が来て、一人がバスケットボールを自由に投げつける。
自由「イテッ!何すんだよ」
   チームメンバー達がにやにやと笑っている。
メンバーA「チームにホモが居ると気持ち悪くて、やってられないんだよな」
メンバーB「チームの輪を乱してるっていうか…」
   他のメンバー達が笑っている。

〇更衣室
   自由が入ってくると、一斉に他のメンバー達が更衣室から出ていく。
   ロッカーを開けると『クソホモ!』『オカマ』『気持ちわりぃ』等の貼り紙   が貼ってあり、ユニフォームは落書きされたり、シューズも傷が沢山入って   いる。
   膝が崩れ落ち涙を流す自由。
   来夢が入ってくる。
来夢「みゅう?どしたんだよみゅう!」
   自由が来夢を見て、抱き着き激しく泣く。

〇回想戻り
   ハルと自由。
ハル「そんな事が…どうして?どうして僕に言ってくれなかったの?」
自由「ハルには心配かけたくなかったからな…ってその時は思った。かっこつけてたんだな。でも、もうバスケの練習も全くできない状態になって…ここに居ても仕方なかったから日本に帰ろうって思った。でもハルとの約束がこれじゃ守れなくなる…」
ハル「…」
自由「同じチームメイトの来夢にその時色々と助けてもらって…自分の心の弱さからハルの気持ち裏切って来夢と付き合う事になった。ハルの事は話してたし、日本に戻る為に一人で帰ると別れ話したけど…どうしても別れたくないって言ってしまいには一緒に日本に帰ってきた」
ハル「みゅうは、誰とでも隔てなく仲良く出来るし、そして優しい。罪な位に…だから来夢さんがあんな事言った時、みゅうは一人で帰って来れなかったんでしょ?」
自由「俺は優しくなんかない。最低な奴だ…ずっと待っててくれてたハルを傷つけて日本に戻ったらどこかで会うって思ったけど…色々と辛かった。会う前もこうやって会ってからも…」
ハル「みゅう」
自由「もうこれで本当に最後にしよう。お互いに今は大切な人が居る。それを大切にして行こう…本当にハルには許してもらえない事してしまった。ごめん…」
   自由、泣きそうになるのをハルに隠し立ち上がる。
自由「それじゃ。ハル…幸せになれよ」
   店を出る自由。
ハルM「このままでいいのか…このままだと後悔する…」
   ハルが立ち上がり店を出る。

〇道
   自由が泣きながら歩いている。
   ハルが後ろから追いかけて来る。
ハル「みゅう」
   自由は気づかず歩いている。
ハル「(叫ぶように)みゅう!」
   自由が振り返り、ハルを見る。
自由「ハル…」
   走って来て、自由に抱き着くハル。
ハル「このままじゃダメ…」
自由「え?」
ハル「このまま、さよならなんて…出来ない !」
自由「…」
ハル「出来ない」
自由「出来ないって…もうどうにもならないだろ…」
   ハルが目に涙を浮かべる。
   ハルを見て、ゆっくりと自由もハルを抱きしめる。
自由「ハル。今日は取り合えず帰ろう。もう一回お互い考えよう。もう俺達だけの問題じゃない」
ハル「うん」


後編へ続く。

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