⼈物
⼭野蘭⼦(26)OL
鳶⼭⼀斎(28)洋菓⼦屋店⻑
⻑⾕海渡(26)アイドル
希(26)蘭⼦の同僚
司会
鳶⼭の⺟(写真のみ)
○マンション・蘭⼦の部屋(夜)
ふくよかな体型の⼭野蘭⼦(26)が
ケーキを頬張りソファに座っている。
壁には⻑⾕海渡(26)のポスターが
たくさん貼られている。
笑顔でテレビを⾒ている蘭⼦。
× × ×
テレビの画⾯。
妖艶な雰囲気の⻑⾕と司会が向かい合
わせに座っている。
司会「次も際どい質問だねー」
⻑⾕は⾜を組み替え、微笑み、
⻑⾕「⼤丈夫ですよ。何でも答えます」
司会「じゃあ、いくよ。ズバリ、スレンダーな
⼦とむっちりな⼦、どっちが好き?」
⻑⾕「えーっと… …」
× × ×
蘭⼦「海渡はむっちりでしょー」
× × ×
テレビの画⾯。
⻑⾕はウィンクをして、
⻑⾕「スレンダーの子」
× × ×
蘭⼦の⼿から落ちるケーキ。
蘭⼦は驚きの表情。
蘭⼦「ス、スレンダー?」
蘭⼦は⾃分の体をじっくり⾒る。
カレンダーに【17⽇握⼿会】の⽂
字。
蘭⼦はカレンダーを⾒て、息を飲む。
○光商事・休憩室
蘭⼦が弁当箱を開ける。
蘭⼦「いただきます」
弁当には、ささみとブロッコリーのみ。
蘭⼦の隣に座る希。
希はサラダチキンを⾷べながら、
希「蘭⼦、それだけ?」
蘭⼦が頷き、ブロッコリーを⾷べる。
希「何?体調悪いの?」
蘭⼦「ノー、ダイエット」
希「え? でもこの前、海渡はむっちりが好
きだから、私はいいんだって」
蘭⼦は⼈差し指を振り、
蘭⼦「男⼼は秋の空ってことだよ」
希は呆れ笑いをし、
希「はーん」
蘭⼦「私、頑張るんだよ」
○同・出⼊り⼝(⼣)
蘭⼦と希が私服で出てくる。
蘭⼦「じゃ、私歩くから」
希「え? まじ?」
蘭⼦「じゃ!」
蘭⼦が颯爽と歩いて⾏く。
○商店街(⼣)
蘭⼦が肩を⼤振りして歩いてくる。
ピタりと⽴ち⽌まる蘭⼦。
蘭⼦は⿐をひくつかせ、匂いを嗅ぐ。
蘭⼦がその匂いをたどる。
○同・マシェリ―洋菓⼦店・外(⼣)
蘭⼦が匂いを嗅ぎながらやって来て、
こっそりと窓から中を覗く。
中のショーケースにケーキが宝⽯の
様に輝いているのが⾒える。
蘭⼦「うわあ… … 」
蘭⼦は笑顔で、⽬を輝かせる。
○同・同・中(⼣)
レジでお札を数えている端正な顔⽴ち
の鳶⼭⼀斎(28)。
鳶⼭が顔を上げると、窓から覗く蘭⼦。
鳶⼭はハッと驚いた表情。
○同・同・外(⼣)
窓から中をこっそり覗く蘭⼦。
蘭⼦「え」
蘭⼦は鳶⼭と⽬が合い、すぐ逸らす。
鳶⼭が颯爽と出てくる。
鳶⼭「あの」
蘭⼦はハッとし、顔を⾚らめ、
蘭⼦「す、すみません!」
頭を下げ、去ろうとする蘭⼦。
鳶⼭「ちょっと!」
鳶⼭が蘭⼦の腕を掴む。
蘭⼦は驚き、⽬を丸くする。
蘭⼦「は?」
鳶⼭は慌てて、⼿を離し、苦笑い。
鳶⼭「えっと、ケーキ、味⾒だけでも、ど
うですか?」
鳶⼭は蘭⼦を⾒つめる。
蘭⼦は顔を⾚らめるが、⾸を振り、
蘭⼦「すみません、結構です!」
鳶⼭「そ、そうですか」
鳶⼭の切なげで⼦⽝のような表情。
蘭⼦は鳶⼭を⾒て、胸を抑える。
蘭⼦「うぅ」
鳶⼭「ど、どうしました?」
蘭⼦「な、何でもないです」
鳶⼭は蘭⼦を⾒つめる。
蘭⼦は鳶⼭から⽬を逸らし、
蘭⼦「(⼩声で)あ、あの、ちょっとだけなら」
鳶⼭「ほんとですか! やったー」
蘭⼦は笑いながら、ため息をつく。
○同・同・イートイン(⼣)
テーブルにショートケーキがある。
鳶⼭「オススメのショートケーキです」
鳶⼭は満⾯の笑み。
蘭⼦は椅⼦に座り、ショートケーキを
眺める。
蘭⼦はフォークを取り、息を飲む。
蘭⼦「いただきます… … 」
蘭⼦はケーキをすくい、⼝に運ぼうと
する。
スマホの通知⾳が鳴る。
蘭⼦「は! もしかして」
蘭⼦はフォークを置き、慌てて、スマ
ホを⾒る。
鳶⼭の不思議そうな表情。
蘭⼦「やっぱり、海渡だ」
× × ×
スマホ画⾯。
⻑⾕が⽣配信を行っている。
× × ×
蘭⼦は笑顔でスマホを⾒ている。
鳶⼭「海渡……」
蘭⼦がスマホに向け、⼿を振る。
蘭⼦「バイバイ、海渡」
蘭⼦はスマホを⽚付け、真剣な表情。
蘭⼦「すみません」
鳶⼭「いえ! じゃあ、どうぞ⾷べて− − 」
蘭⼦は⽴ち上がり、
蘭⼦「⾷べられません!」
鳶⼭「え?」
蘭⼦「本当にすみません、お⾦は払います」
鳶⼭「え、いや、ちょっと!」
蘭⼦「やっぱり推しには勝てません」
鳶⼭「へ? 推し?」
蘭⼦は財布から千円札を出し、置く。
蘭⼦「すみませんでした!」
蘭⼦は店を⾶び出す。
鳶⼭「ちょっと!」
○マンション・蘭⼦の部屋
汗だくで腕⽴て伏せをする蘭⼦。
○道路(夜)
汗だくで⾛る蘭⼦。
○マンション・蘭⼦の部屋
カレンダーの⽇にちに× が付いていく。
⻑⾕の曲を聴きながら、踊る蘭⼦。
× × ×
カレンダーの16の⽇にちに× を書く、
蘭⼦。
蘭⼦「よし」
蘭⼦は薄着で⽬をつぶりながら、体重
計にゆっくりと乗る。
体重計を⾒て、愕然とする蘭⼦。
蘭⼦「え? 1キロ、だけ」
蘭⼦は膝から崩れ落ち、俯く。
蘭⼦が顔を上げると、ポスターの⻑⾕
の⽬線が蘭⼦に向けられている。
蘭⼦は泣き出す。
⽴ち上がり、部屋を⾶び出す蘭⼦。
○商店街・マシェリ―洋菓⼦店・中(夜)
鳶⼭がイチゴのジャムを作っている。
鳶⼭「⺟さん、今⽇も来なかった」
レジ横にある鳶⼭の⺟の写真、花とケ
ーキが添えられている。
鳶⼭「あの⼦、⺟さんに似てるんだよね」
鳶⼭は微笑みながら、
鳶⼭「窓から⾒えた幸せそうな顔。そっくり
だった」
○同・同・外(夜)
看板に営業終了の⽂字。
蘭⼦はおぼつかない⾜で店に近づく。
窓からこっそりと鳶⼭を⾒ている。
蘭⼦「リアルな癒し… … 」
○同・同・中(夜)
鳶⼭が顔を上げると、窓の端でこっそ
りと、覗く蘭⼦の姿。
鳶⼭「え、うそ」
鳶⼭は笑顔で、店を⾶び出る。
○同・同・外(夜)
蘭⼦が鳶⼭に気づき、髪と服を正す。
鳶⼭が笑顔で出てくる。
鳶⼭「お客さん」
蘭⼦は切ない表情で、
蘭⼦「……ケーキ、まだありますか?」
鳶⼭「は、はい! ありますよ!」
鳶⼭の満⾯の笑顔。
蘭⼦は鳶⼭を⾒て、微笑む。
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