クロスロード∞ 学園

「僕らの推しメンが卒業発表をした」 高校3年生の岳、剣、一樹はアイドルグループ・クロスロード∞ の絶対的エース・美国みくのファン。 だが突如、グループからの卒業を発表した美国みく。そして卒業ライブは6月の平日。 会場は学校を休まなければ行くことは出来ない山梨県。とんでもないチケットの倍率。 最後の夏の大会直前。受験勉強第一主義の親の説得。将来が全く決まらない現状。 「卒業ライブか、学校か?」 高3の夏。彼らにとって、人生最大の決断を迫られている…
古堅元貴 5 0 0 05/21
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第一稿

『クロスロード∞』

■登場人物
真鍋岳(17)葉明学園生徒
宮田剣(17)葉明学園生徒
佐久間一樹(17)葉明学園生徒

吉野圭(22)帝明大学4年。教育実習生
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『クロスロード∞』

■登場人物
真鍋岳(17)葉明学園生徒
宮田剣(17)葉明学園生徒
佐久間一樹(17)葉明学園生徒

吉野圭(22)帝明大学4年。教育実習生

進藤佳純(17)岳らの同級生

真鍋薫(43)岳の母
真鍋夕(14)岳の妹
佐久間敦子(52)一樹の母親
塚本正二朗(47)葉明学園教員
 
美国みく(23)クロスロード∞・メンバー


○千葉県流山市・葉明学園・2年C組(午前)
3月下旬。通知表を担任が渡している。友達と喋っている真鍋岳(17)。
友達1「余裕だな~」
岳「高校の通知表って何の意味もないから」
友達1「岳は大学行かないからね~」
岳「それ進学校の嫌味だぞ」
友達1は担任に呼ばれ通知表を取りに行く。こっそりスマホを出し、いじる岳。
岳「はあぁ!?」
一斉に岳を見る教室の面々。

○同・2年A組(午前)
通知表が渡されている。友達と喋っている宮田剣(17)。
剣「成績悪かったら部活出れない。補習だよ」
友達2「あと死神サーキットだな」
剣「死神サーキット・・・」
スマホのバイブ音。こっそりスマホを見る剣。
剣「ええっ!?」
一斉に剣を見る教室の面々。

○同・2年B組(午前)
通知表が渡されている。誰とも話さず静かに自分の番を待つ佐久間一樹(17)。バッグに入れているスマホに通知。岳と剣からのLINEだが、気づかず呼ばれるのを待つ一樹。
岳「一樹!」
廊下からダッシュで岳と剣が一樹の教室にやってくる。
一樹の担任「何してんだ!?」
岳と剣の担任もやってくる。
岳の担任「授業中だぞ!」
剣の担任「教室戻れ!」
岳「見ろ!」
一樹「え?」
剣「ブログ!」
一樹はスマホでアイドルグループ『クロスロード∞(インフィニティ)』の公式サイトからメンバー・美国みくのブログを見る。
一樹「んっ?」
『報告』というタイトルのブログが更新されている。ブログを読む一樹。岳と剣はそれぞれの担任に注意され、自分の教室に戻る。
一樹「・・・嘘だ」
教室を飛び出す一樹。
一樹「おい!?」
その声に立ち止まる岳と剣。
一樹「・・・みくみく、卒業するのかよ」
見つめる3人。教師達は再び彼らを注意する。
タイトル『クロスロード∞』

○流山市・ファストフード店(夜)
席に座っている岳、剣、一樹。誰も目の前のバーガーセットに手を付けていない。
岳「なんで卒業なんだよ!」
3人を見る店内の客ら。
一樹「うるさいよ」
岳「うるさいのはおまえだ!」
一樹「おれ?」
剣「みくみくとしてもクロスロード∞としても今が全盛期なのに」
一樹「全盛期だからだよ。今、卒業するからこそアイドルとして、最高の姿で卒業をファンに観て貰える。それに女優業に挑戦したいってインタビューで言ってたし、今後のグループ活性化の為に、後輩にポジションを渡す意味でも、そろそろ卒業を決断するとは・・」
岳「なに冷静に分析語ってんの?知った時、一番驚いてただろ」
否めない一樹。
剣「坂道ダッシュの時も千本ノックの時も死神サーキットの時もみくみくがいたから頑張れたのに」
岳「分かるわ~」
一樹「死神サーキットって何?」
剣「もう生きていけね~よ」
一樹「ねえ?死神サーキットって?」
メディア初登場時のみくみくの自己紹介動画を見る岳。
みく(動画内)「山梨県出身・美国みくです!クロスロード∞を最高のアイドルグループにしたいです!」
岳「みくみく!これからおれらどう生きていけばいいんだよ!」
3人を見る店内の客ら。
一樹「(岳に)だから・・・」
岳「うるさくねえよ!心の叫びはいくら大きくたっていいんだよ」
一樹「いや、心の叫びが漏れてるから」
剣「卒業ライブの詳細は後日発表か」
岳「・・・卒業と言う事実はもう変わらない。みくみくが笑顔で卒業出来るようにおれらは残りの時間、全力で応援する。それが推しメンへの、ファンが出来る最大のコール&レスポンスだよな」
剣「そうだ」
一樹「・・・たしかに」
ようやくバーガーセットを食べ始める岳ら。

○岳の自宅・岳の部屋(夜)
数日後。スマホを見ている岳。画面には「美国みく卒業ライブ・6月15日(金)山梨アリーナ開催決定」の文字。
岳「!?」

○流山市・スイーツバイキング店(昼)
店の外にも列が出来るほどの大混雑の店内。岳、剣、一樹はケーキを食べている。
岳「なんで平日!しかも山梨!?」
剣「山梨出身だから、最後のライブは生まれ育った山梨でアイドル人生を終えたい」
一樹「みくみくらしいよね・・・」
岳「分かるけど。けどせめて神奈川だろ!」
一樹「ん?どういう事?」
岳「神奈川だったらまだなんとか電車でもいける。横浜はおれらもみくみく生誕祭で行っただろ。でも山梨だと変わってくる。山梨、電車で行ける感覚ある?高校生のおれらが?しかも千葉県民で?」
剣はスマホを見ながら、
剣「ここからだと山梨は4時間かかる」
岳「うわっ」
一樹「千葉県民はどっちも遠いけどね」
岳「まあ本物のファンは平日でも山梨でも関係なく参戦するけどな」
剣「でも実際。学校休める?」
岳「休むに決まってんだろ」
顔が曇る剣と一樹。
岳「は?行かないの!?」
剣「その日、大会前。最後の夏」
一樹「僕も予備校あるし。そもそも母さんにバレたら絶対止められる」
岳「じゃあどうすんだよ?みくみくの最後」
一樹「だから悩んでるんだよ」
岳「あああぁあ~~~、くそっ!」
一樹「・・・あのさ、場所変えない?」
岳「まだケーキ2つしか食べてないだろ」
一樹「いや、だから。・・・周り」
周囲はカップルや女子同士の客ばかり。
岳「スイーツバイキングに男子3人でいるからか?周りはカップルや女子同士で来てるのに男3人で来て・・・」
一樹「はっきり言わなくていい!そうだよ!」
岳「情けねえ。そんな事気にして」
店員が焼きたてのクロワッサンを各テーブルに配っている。
剣「え?クロワッサンあるの?」
岳「あるよ。それにカレーやパスタも」
剣「スイーツバンキングなのにパンもカレーもパスタもあるのかよ」
岳「最高だろ」
剣「もうただのバイキングじゃん!」
手を挙げてパンを配っている店員を呼ぶ剣。
岳「一樹、剣を見ろ。何も気にしてない。楽しんでいる。周りもおれらの事なんて見てもいない。勝手にそういう気持ちを抱いてるおまえの方が恥ずかしいとは思わないか?」
一樹「・・・」
店員は3人のテーブルにクロワッサンを配る。その後、岳と剣は立ち上がる。
一樹「どこいくの?」
岳「ケーキ取りに。元取らなくちゃ」
剣「おれ、パスタ何あるか見てみたい」
一樹「まず卒業ライブどうするか決めようよ」
岳「どうする?」
剣「先にケーキとパスタの種類、確認させて」
岳「だな」
バイキングエリアへ行く岳と剣。
一樹「・・・パスタ」
付いていく一樹。

○葉明学園・掲示板(朝)
4月。クラス替えの掲示が貼られている。岳、剣、一樹は同じ3年C組に掲載されている。

○同・3年C組教室(朝)
新クラスに荷物を移動している岳、剣、一樹。
岳「うおぉー!」
剣「1年の時以来だな」
岳「また一緒のクラスになれるとは」
浮いてない様子の一樹。
剣「どうした?」
一樹「いや。受験の年に3人一緒は・・」
岳「嫌なの?」
一樹「そうじゃないけど。勉強捗るかなって」
岳「悲し」
一樹「岳は大学行かないからね」
岳「出た!あのさ、進学校に入ったら進学しなくちゃいけないの?」
一樹「そんな事言ってないよ」
岳「どいつも進学前提に進路の聞き方しやがって。日本のそういう所嫌い」
一樹「今、国は関係ないだろ」
剣「いや、元をたどれば国が原因だろ」
一樹「たどればそうかもだけど。友達との会話で国までたどる?」
岳「悲し」
剣「悲し」
一樹「ごめん、嬉しい。でも勉強の時は静かにしてね」
岳、一樹の肩を組む。
岳「これでみくみくの卒業ライブまでの事もより考えられる」
剣「あと二か月」
一樹「まずチケット取らないと」
進藤佳純(17)が友達と喋りながら、教室へ入ってくる。
剣「おお~」
岳「ん?」
一樹「進藤さん、やっぱり綺麗だな」
岳「誰?」
剣「進藤佳純。学年一可愛いって言われてる」
一樹「知らないの?」
岳「みくみくに比べたら全然だろ」
一樹「アイドルと比べるのはさ。でもアイドルって言われても進藤さんはおかしくない」
岳「え?一樹、好きなの?」
一樹「そ、そういう事ではなくてさ。だから・・・」
岳、友達と楽しそうに話している佳純を見る。

○同・昇降口(夕)
放課後。岳、剣、一樹が歩いている。
剣「じゃ明日」
岳/一樹「おう/明日」
剣はグラウンドへ向かい、2人は校門へ歩く。
一樹「おれも予備校だから」
岳「じゃ」
校門で一樹と別れる。岳、駅までひとり歩く。

○流山市・ファストフード店(夜)
スマホでみくみくの動画を見ながら、バーガーセットを食べている岳。周りのテーブルの
学生達は参考書を出して勉強している。その光景に後ろめたさを感じている岳。

○葉明学園・3年C組教室(午後)
社会の授業中。グループに分かれて話し合いをしている。
黒板には「議題・明治維新後の政府について」と書いてある。
一樹「取れなかった・・・」
剣「おれも。卒業ライブとなるとさらにチケット取れないな」
岳「まだ一次申し込み。二次、三次がある」
一樹「でも今回倍率半端ないみたいだよ」
剣「入部希望の1年でみくみくの卒業ライブ行きたいって言ってる奴がいてさ。怪しいなと思って問い詰めたら、ただ興味本位で行こうとしただけ。クロスロード∞の曲もほとんど知らない。そいつには二度とそんな考え起こすなって言っといた」
一樹「剣、怖いよ」
岳「最後だからって、にわかな奴がそういう事するから本当のファンにチケットが届かないんだよ」
剣「それな」
一樹「でも誰にでも、行く権利はあるから」
岳「だとしても卒業ライブだぞ。普通はファンの事考えて、遠慮するだろ」
一樹「でも試しにって気持ちも分かるけどね」
岳「じゃあもし自分の晴れの舞台、例えば結婚式に満員になるくらい人が来ても、それが全員見知らぬ人だったら嬉しくないだろ」
一樹「その場合はね。でも結婚式じゃないし、みくみくに取ってはおれらも見知らぬ・・」
岳「確かにおれらも見知らぬ人だよ。でもおれらって見知らぬ人か?」
一樹「ん?んん?」
岳「こんなにも追いかけて、ライブにも、握手会にも参戦して、たとえみくみくに覚えて貰えてなかったとしても、おれは自分を見知らぬ人だとは思えない。みくみくもきっとおれらの事をそうは思わない」
岳の熱弁に圧倒されている一樹。
岳「顔を知ってる、知らないじゃない。想い。想いってそれくらい大事なものじゃないか?」
社会科教師「グループごとに発表。まず真鍋達」
岳「はい。それは・・・」
一樹「僕がいく」
完璧に明治維新後の政府について話す一樹。それに感心する岳と剣。

○岳の自宅・リビング(夜)
岳と妹の真鍋夕(14)、母の真鍋薫(43)が夕食を食べている。テレビを録画していたクロスロード∞が出てる番組に変える岳。
夕「ねえー」
岳「観てなかっただろ」
夕「興味ないから、つまんないんだけど」
薫「皆が観れるものにしてよ」
岳「観てないくせにチャンネル変えるとぐちぐち言いやがって」
そう言いながらも岳は見続ける。
薫「岳、進路どうすんの?」
岳「まだ決まってない」
薫「決まってないって、決めなさいよ」
岳「決まるわけないだろ。将来なんだから」
薫「だったらせめて勉強しなさい。他の子はしてるわよ」
夕「アイドル見てる場合じゃない」
岳「決まってないんだから無理にする必要ない。学校の授業をちゃんと聞いてればそれで充分」
夕「絶対ちゃんと聞いてない」
薫「それじゃ遅いんだから」
岳「うっせえな」
薫「6月15日」
岳「!?」
薫は画面に映ってるみくみくを指さす。
薫「卒業ライブ、行くつもりでしょ?」
岳「いやあ~」
薫「だめよ。平日は学校あるんだから」
岳「行くも休むもおれの選択だろ!」
薫「誰が学費払ってると思ってんのよ」
何も言い返せなくなる岳。
夕「さよならみくみく。こんにちは進路選択」
夕はテレビのチャンネルを変える。

○一樹の自宅・一樹の部屋(夜)
黙々と受験勉強をする一樹
×     ×     ×
リビングに降りてくる一樹。母の佐久間敦子
(52)が夕食を準備している。
敦子「一樹、行かないわよね?」
一樹「何?」
敦子「美国みくの卒業ライブ!学校あるんだから。それにあなた受験生よ」
一樹「・・・分かってるよ」

○葉明学園・3年C組教室(朝)
朝のホームルーム前。
岳「まずいな」
一樹「僕も。母さん、ライブの正式タイトルまで把握してた。完全にマークしてるよ。あれ、剣は?」
剣は席にいない。

○葉明学園・野球グラウンド(夕)
剣がタイヤを引きながら野球グラウンドを駆けずり回っている。それをグラウンド外から見ている岳と一樹。
一樹「あれが死神サーキット・・・」
岳「死神に追われてる・・・」
必死でグラウンドを駈けずり回っている剣。

○同・階段踊り場(昼)
翌日、昼休み。昼食を食べている岳、剣、一樹。筋肉痛でもだえている剣。
剣「あの野郎」
一樹「この前言ってた入部希望の子?」
剣「部活入ろうとしたら、先輩に脅されたって。先輩に同じアイドルを好きになるなって、脅されたからもう野球は出来ませんって」
一樹「大げさな部分もあるけど、脅してはいたかも」
岳「今時の若いのは怖いな」
剣「最初のコミュニケーションだよ?」
一樹「でも向こうがそう感じてしまったら、それはもう、そうだからね」
悶える剣。
一樹「見たよ、死神サーキット。やばいね」
剣「昨日の?あれは地獄のサーキット」
一樹「え、違うの!?」
剣「それよりもどうする?」
岳「より休みづらくなったな・・・」
一樹「親にも知られてるし。それにまだチケットも取れてない」
途方に暮れる3人。

○通学路(朝)
1か月後。5月下旬。一人歩いている岳。イヤホンからはみくみくがセンターの卒業曲『さよならの日にだべる』が流れている。

○葉明学園・3年C組(朝)
朝のホームルーム。担任の塚本正二朗(47)が話している。横には吉野圭(22)。
塚本「今日から約3週間、このクラスを見て下さる教育実習生の。あ、どうぞ」
吉野「え・・あ、吉野圭です。お願いします」
小さな声で話している岳、剣、一樹。
剣「5時間目の古文の宿題終わった?」
岳「あ、忘れてた。一樹、あとで見せて」
一樹「えー。この前も・・・」
塚本「真鍋、宮田、佐久間。喋るな~。アイドルの話はあとにしろ~」
笑う周囲の生徒達。気まずそうな岳、剣、一樹。その様子を見ている吉野。

○同・階段踊り場(昼)
昼飯を食べている岳、剣、一樹。
岳「アイドルの話してねえよ」
剣「おれのせいだ。ごめん」
一樹「3人で当日休んだら絶対バレるよ・・・」
途方に暮れる3人。

○同・廊下(昼)
昼休み終了のチャイムが鳴る。
廊下を走っている岳、剣、一樹。向かいから吉野が歩いている。吉野は声をかけようと
吉野「こんにち・・・」
3人は吉野に気づかず、教室に急ぐ。

○同・3年C組教室(午後)
日本史の授業をしている吉野。教科書や自作のメモを見ながら、話しているがたどたどし
い。生徒達は寝ていたり、別の授業の宿題をやっている人がほとんど。
さらに委縮する吉野。

○同・校門前(夕)
下校時間。生徒に帰りの挨拶している教師達。吉野も挨拶をしているが、誰も吉野に気づい
ていない。

○同・職員室(夜)
21時過ぎ。翌日の授業準備をしている吉野。
塚本「吉野くん、まだ残る?」
吉野「え?」
塚本「帰ってもいいし、残ってやっていってもいいし。私も若い頃は学校残って教材準備してたらあっという間に日付け超えてて。駆け出しの教師あるある」
吉野「はあ。・・・僕も残ってやっていきます」
塚本「分かった。無理はするなよー」
吉野「・・・ありがとうございます」
帰っていく塚本。ため息をつく吉野。

○同・階段踊り場(昼)
数日後。スマホ画面を勢いよく剣と一樹の前に出す、岳。そこには「美国みく卒業コンサート落選」の文字。
岳「ああぁ・・・」
剣「気にするな。その為に3人いる」
岳「うん。剣、頼む」
剣「任せろ」
剣は勢いよくスマホを出す。落選の文字。
剣「うわぁ」
岳「まじか・・・」
剣「すまない!」
岳「終わった」
一樹「待て。まだおれいるから」
岳「一樹、いつも外すだろ」
一樹「全てはこの日の為に外してきた。神よ、仏よ、みくみくよ。全ての力をこのおれに」
一樹は思いっきりスマホの画面を差し出す。
一樹「ああぁぁ!・・・ん!?」
当選の文字。
一樹「あ、当たった?」
岳・一樹「おおぉおおーーー」
サッカー日本代表がW杯決勝トーナメント進出した時のように盛り上がる3人。
岳「一樹ぃいい!よくやった!」
一樹「言っただろ。この日の為に外してきたって!」
剣「まずはスタートラインだな」
一樹「うん。ここからどう行くかだよね」
岳「よし!考えるぞ」
煙草をくわえ、階段から降りてくる吉野。ライターが点かない。
吉野「なんだよっ(と舌打ち)」
その瞬間、3人と目が合う。
吉野「うわっ!?」
岳「ここ禁煙ですよ。ってか校内禁煙ですよ」
吉野「あ、すいません」
岳「大人がルールを守らないと、子供もルールを守らなくなりますから」
吉野「・・・申し訳ないです」
岳「吸いたくなるほど、ストレス溜まってるんで
すか?」
一樹「やめろって」
剣「職員室とか気まずそうですよね」
一樹「深追いしなくていいから」
吉野「・・・まあ」
岳「ねえ?」
吉野「はい?」
何かを企んでいる顔つきの岳。

○同場所(昼休み)
翌日。岳、剣、一樹が昼飯を食べている。おそるおそる吉野が来る。
岳/剣/一樹「おおー」
吉野「・・・来ました」
×     ×     ×
昼飯を食べている4人。
吉野「その日は平日。学校を休まないと行けない?」
岳「ただ親にも学校にも知られてて、休めそうにもない」
吉野「そんなに行きたいんですか?」
剣「知らないですか?クロスロード∞の絶対的エース、美国みく。みくみく」
吉野「知らないです」
剣「まじすか」
岳「そこだよ、生徒から評判悪い所」
吉野「僕、生徒から評判悪いんですか?」
凍る空気。口火を切って、
岳「・・・悪いよ!授業下手だし、暗いし、話しづらいし、話しかけてもこないし」
吉野「・・・ですよね」
剣「なんか教師になりたいって感じがしないんすよね」
吉野「・・・ああ」
一樹「一応教員免許取っておこう系ですか?」
吉野「・・・まあ」
一樹「やっぱり」
吉野「教師になりたくない訳ではないんです。ただ絶対に教師になるんだとも思えなくて」
岳「このままだと思い出せない教育実習生ランキング1位だよ」
剣「思い出しても、いい思い出見当たらない教育実習生ランキングも1位だね」
岳「だな」
一樹「そんなランキングないですから。気にしないでください」
吉野「はい・・・」
岳「じぁあさ」
吉野「え?」

○同・3年C組教室(午後)
吉野が授業をしている。
吉野「この問題、分かる人・・・いますか?」
手を挙げる岳。
吉野「あ、真鍋君」
岳「(答えを言う)」
吉野「惜しいけど・・違います」
手を挙げる剣。
吉野「宮田君」
剣「(答えを言う)」
吉野「残念・・。他にいますか?」
一樹が手を挙げる。すると金子も手を挙げる。
吉野「!・・・じゃあ、金子君」
金子「(答えを言う)」
吉野「正解です」
作戦通りの岳ら。
吉野「次の問題、分かる人いますか?」
再び手を挙げる岳、剣、一樹。
すると他の生徒2,3人も手を上げる。嬉しい吉野。

○同・校門前(夕)
放課後、16時過ぎ。
主に部活に入っていない生徒が下校している。吉野が下校する生徒に挨拶している。横
では岳と一樹が喋っている。同じクラスの小杉とその友人らがやってくる。
岳「小杉いけそうだな」
一樹「確かに」
岳「いくぞ」
吉野「・・・はい」
小杉とその友人達が通りかかる。
岳「小杉!」
小杉「おお」
岳「あ。小杉、帝明大志望じゃなかった?」
小杉「そうだけど」
岳「吉野さん、帝明大だよ」
小杉「え、そうなの?受験対策教えてよ~」
小杉と友人達が吉野の所にやってくる。彼らと話す吉野。
×     ×     ×
数時間後。部活終わりの生徒達に挨拶をしている吉野。剣がやってくる。吉野に話しかけ
る剣。すると剣をきっかけに他の野球部員もやってくる。彼らと話す吉野。

○同・階段踊り場(昼)
昼飯を食べている岳、剣、一樹、吉野。
岳「どう?」
吉野「有難いことに少しずつ」
岳/剣/一樹「うぃーー」
岳「では~~」
吉野「?」
岳「先生、おれらはどうしてもみくみくの卒業ライブに行きたい!頼む!手伝ってくれ!」
吉野「え?」
岳「先生が協力してくれれば、きっとライブに行ける」
吉野「つまり僕が皆さんの学校を休む手伝いをするって事ですか?」
岳「そう」
吉野「教育実習生が学校休むのを手助けするって、どうなんですかね・・・」
一樹「正論だ・・・」
岳「等価交換だよ、先生」
吉野「等価交換?」
岳「今、先生は生徒達に受け入れられつつある。おれらの協力のおかげで。だから先生も今こそおれらの気持ちを汲み取って欲しい」
吉野「でもそれはさすがに・・・」
一樹「矛盾してますよね・・・」
剣「(一樹に)うるさいよ」
岳「大人だって休むだろ。有給とか使って。でも学生は休みたい時に休めない。その上給料も出ない。学生は偉いよ。こんながんじがらめなのに休まず、規則守って毎日通ってるんだから。大人には出来ない。だからこそ学生にもたまにはそういう機会があってもいいんじゃないかな」
言い返せない吉野。
岳「吉野先生、頼む!」
たじたじの吉野。

○同・野球グラウンド(夕)
6月5日(火)。卒業ライブまであと10日。
練習をしている剣。だがどこか集中できていない様子。

○流山市・予備校・西走ハイスクール(夕)
講義を受けている一樹。だがどこか集中できていない様子。

○流山市・ファストフード店(夕)
バーガーセットを食べながら、みくみくの動画を見ている岳。すると「真鍋君」と声をか
けられる。振り返ると佳純がいる。
岳「あ!?え、お疲れ」
佳純「お疲れ。何してるの?」
岳「あ、えっと、スマホで授業の動画見てた」
佳純「スタディアプリ?」
岳「うん、そうそうっ」
佳純「スタアプいいよね。私もやってるよ。じゃあ、また」
岳「また」
佳純は友達と奥のスペースへ行き、勉強を始める。佳純の姿が気になっている岳。

○同・理科実験室(昼休み)
机には、様々な路線の乗り換え案内のサイト画面と、3年C組の時間割表が置かれている。
岳「山梨の会場まではここからだと約4時間。ライブ開始は18時」
一樹「遅くとも5時間目までには学校を出ないと間に合わない」
剣「だからと言って1日休むとその時点で学校や親に気づかれ、終わり」
岳「やっぱ早退がベストだな」
剣・一樹「・・うん/だね」
岳「そこで先生!」
吉野「・・はい」
岳「この計画には先生の力がどうしても必要だ」
吉野「気持ちは分かります。でも僕の立場が休むことを容認してしまったら・・・」
岳「おれら、みくみくに助けられたんだ。つまんなくて、苦しい毎日、救ってくれた。みくみ
くがいたから今日まで生きてこれた」
岳の想いも分かる吉野。
岳「もう二度と会えないかもしれない。会えるかもしれないけど、アイドルしてるみくみくは
もう会えない。行かなかったら一生後悔する。・・先生、頼む。協力してくれ」
吉野を見つめる剣と一樹。
吉野「・・・なら」
岳「え?」
吉野「・・・僕は何をすればいいのか教えてくれませんか?」
岳「はい!」
話し始める岳達。だがどこか乗り切れない様子の剣。

○同・野球グラウンド(夕)
練習している剣。ノックを何度も取りこぼす。
顧問「宮田、集中しろ!」
剣「すいません」
×     ×     ×
グラウンド整備中の剣含む部員達。同じ部員であり、同級生でもある将司が話しかける。
将司「剣」
剣「ん?」
将司「調子どう?」
剣「まあ。でも大会までには何とかするよ」
将司「・・・卒業ライブ?」
剣「え?・・ああ。推しメンが卒業するのは悲しいけど、それは関係ない」
将司「ライブ、行くか悩んでるの?」
剣「え?いやいや。それはさ・・・」
将司「剣、ずっと好きだったからね。大会前も死神サーキットある日も曲聞いて、力貰ってたでしょ」
剣「まあ」
将司「・・・でもそんな気持ちならレギュラーから外されるし、それなら今すぐ辞めてくれ」
剣「え?」
将司「皆、最後の大会に全てをかけてる。出れない奴だっている。おまえ一人でやってるんじゃないんだ」
将司は別の場所のグラウンド整備に向かう。刺さっている剣。

○流山市・外観
6月11日(月)。卒業ライブまであと4日。

○葉明学園・理科実験室(昼)
岳、剣、一樹、吉野の4人。重い空気。
剣「・・・やめようと思う」
岳・一樹「!?」
一樹「・・・部活?」
剣「うん・・」
岳「1日休むくらい~。その方が最後の大会のエネルギーにだって・・・」
剣「だめなんだよ!おれ一人なら構わないけど、おれがそういう理由で休むことによって、部活の奴らが迷惑する。3年間やってきた事が全部崩れてしまうかもしれない。おれ一人の勝手のせいで」
岳「いいのかよ、みくみく見れなくて」
剣「・・・うん」
岳「それにさ、3人で一緒にライブ観れるのも、これが最後かもしれないんだよ・・・」
剣「・・・それでもおれは部活を選ぶ。おれの行動で他の部員達の3年間を潰したくない」
堪える岳。
吉野「・・・うん。そうだね」
一樹「剣がそう決めたのなら」
剣「みくみくも部活を選んだおれを望んでくるはずだ。・・・現地での応援、任せた!」
何も言葉を出さない岳。

○流山市・通学路(夕)
下校中。駅に向かって歩いている岳と一樹。
一樹「・・・3人で行きたかった?」
岳「別に。おれが行く事には変わりないから」
一樹「・・・そう」
岳「おまえは大丈夫なのかよ、母さん?」
一樹「え?まあ・・・。けど僕は行くよ」
岳「無理しなくていいよ。おれは一人でも行くから」
一樹「寂しいの?」
岳「は!?」
立ち止まる一樹。
一樹「僕予備校だからここで」
予備校へ入っていく一樹。立ち尽くしている岳。

○岳の自宅・岳の部屋(夜)
窓の外を見ながらふけっている岳。スマホの画面には3人でクロスロード∞のライブや
イベントへ行った時の写真。

○葉明学園・3年C組教室(午前)
授業をしている吉野。多くの生徒が手を挙げている。机に伏している岳。その姿が目に入る剣と一樹。そして吉野。
吉野「では次の問題分かる人・・・」
岳達は手を挙げない。
吉野「・・・じゃ、進藤さん」
佳純「はい」
立ち上がり答える佳純。

○同・階段踊り場(夕)
6月14日(木)。卒業ライブ前日。一樹が口火を切って。
一樹「岳、寂しいんだって。最後に剣と行けなくて」
岳「は!?」
一樹に下手な関節技をかける岳。
一樹「分かった!すいませんでした!」
剣「おれの分までみくみくに想い、伝えてくれ」
岳「・・・過去一のコールしてやるよ」
抱き合う岳と剣。ほほえましく見ている吉野。
一樹「先生?」
吉野「あ、いよいよ明日ですね」
岳「先生も頼むな」
吉野「はい。僕も明日で最後ですが、本当にお世
話になりました」
岳「え、明日で最後なの?」
一樹「そうだよ」
吉野「皆のおかげで楽しく過ごせる事が出来ました」
岳「おれらのおかげだな」
一樹「謙虚さないね」
剣「円陣でもする?明日への気合入れと先生に向けて」
一樹「いいね」
3人は円陣を組む。恐る恐る入る吉野。リズムに合わせて
岳/剣/一樹「せーの、己を信じて曲げずに進め。でも!仲間の為なら自分を変えろ!クロス
ロード∞!」
吉野「これは?」
一樹「クロスロード∞がライブ前にする円陣です」
吉野「へえ~」
岳「覚えとけよ!」
吉野「すいません」
一樹「(吉野に)謝らなくて大丈夫ですよ」
楽しそうに話している4人。

○岳の自宅・岳の部屋(朝)
6月15日(金)。卒業ライブ当日。起きる岳。気合注入。
×     ×     ×
リビング。朝食を食べている岳と夕。家事をしている薫。岳の父が「いってきます」と言い、家を出る。
薫「お父さんいってらっしゃい。(岳に)学校行くのね?」
岳「当たり前だろ。高校生なんだから」
朝食を食べ終え、家を出る岳。
夕「あれは行くね~」
薫「まったく・・・」

○一樹の自宅・玄関(夜)
靴を履いている一樹。そこに敦子が来る。
敦子「学校に確認したらすぐ分かるわよ。一日を無駄にすると必ず後に降りかかってくる。受験やその後の生活に全部現れるんだから」
一樹「・・・行ってきます」
玄関を出る一樹。

○同・3年C組教室(朝)
ホームルーム前。座っている岳。クラスメート・金子がやってくる。
金子「岳、メッセージ出した?」
岳「何の?」
金子「吉野先生へのお礼メッセージ。昨日までに書いて出してって」
岳「ああっ、忘れてた。昼までには書いて渡す」
金子「よろしく。出してないの岳だけだから」
席へ戻っていく金子。頭の中で卒業ライブへのシミュレーションしている岳。
×     ×     ×
朝のホームルーム。塚本が話している。横には吉野。
塚本「連絡は以上。そして今日で吉野先生は最後です。無事に終えられるよう協力しろよ」
×     ×     ×
1時間目。授業を受けている岳、剣、一樹。だが卒業ライブの事で全く集中出来ていない。

○同・階段踊り場(昼休み)
食べ終わった昼飯が階段に置いてある。気合に燃え滾っている岳、剣、一樹。剣が岳にチケットを渡す。
剣「おれのチケットは現地の根っからのファンに渡してくれ」
岳「分かった」
一樹「剣の意思を引き継いでくれそうな生粋のみくっ子に渡す」
剣「頼んだ」
走ってやってくる吉野。
岳「何してたんだよ!」
吉野「ごめん!最終日だからバタバタしてて!」
一樹「先生、今日までありがとうございました」
吉野「こちらこそ」
一樹「岳も」
岳「おう。サンキュ~」
一樹「ちゃんと言いなよ」
岳「うるせ~な~」
時計を見る剣
剣「(岳に)そろそろ」
岳「・・・行くか」

○同・3年C組教室(昼)
昼休み終了のチャイムが鳴る。
吉野「移動教室だから急いでね」
次の授業の教室へ移動する生徒達。教室は岳、剣、一樹、吉野の4人になる。
吉野「あとは任せて」
岳「頼む」
岳と一樹にグータッチをする剣。岳と一樹、バッグを持って教室を出る。

○同・廊下(昼)
岳と一樹、周囲に見られないように校門まで移動する。
×     ×     ×
別廊下。佳純、友人と教室へ向かって歩いている。
佳純「あ、ノート忘れた。先行ってて」
佳純、自分の教室の方へ戻る。
×     ×     ×
走っている岳と剣。階段を降りようとした時、忘れ物を取りに向かった佳純と鉢合い、目が合う。
立ち止まる岳。だがすぐに階段を降り、校門へ向かう。

○同・昇降口(午後)
下駄箱から出てくる岳と一樹。
一樹「誰もいない」
岳「行こう」
目の前の校門へ向かう。

○同・美術室(午後)
5時間目開始のチャイム音。教室後ろで吉野は実習生として授業見学をしている。
美術教師「授業始めます。ん?真鍋と佐久間は?」
吉野「2人は保健室に行くといってました」
美術教師「そうですか」
同級生1「まじでライブ行ったんじゃね?」
同級生2「でも宮田いるよ」
堂々と座っている剣。

○同・校門前(午後)
校門を抜けようとする岳と一樹。校門前の警備員が2人に声をかける。
警備員「早退?」
一樹「え、はい」
警備員「2人とも?」
岳「こいつに風邪うつされました」
一樹「!?」
警備員「サボって遊びに行くんじゃないだろうね?」
一樹「いやいやいやいや」
岳「そんなわけないじゃないですか~」
2人を見つめる警備員。
吉野「おい!」
岳・一樹「!?」
走ってやってくる吉野。
吉野「あ!マスク。保健室の先生が着けて行きなさいって!」
一樹「あ、ありがとうございます」
岳「ありがとうございます」
吉野「気を付けて」
警備員「お大事に」
校門を出る岳と一樹。それを見つめる吉野。

○流山市・通学路(午後)
駅に向かって走っている岳と一樹。

○流山市・流山駅前(午後)
流山駅が見えてくる。
一樹「待って!」
突如立ち止まる一樹。
岳「何!?」
見ると駅前に一樹の母・敦子が立っている。
岳「まさか一樹の?」
一樹「なんで・・・」
岳「どうすんだよ?」
敦子は周囲を見渡している。見つからないように隠れる岳と一樹。
岳「一樹?」
岳にライブチケットを渡す一樹。
岳「え?」
一樹「僕が見つかれば岳も引き留められる」
岳「でもさ・・・」
一樹「僕のせいで今日までの!剣と吉野先生の協力を無駄にするわけにはいかない。必ず追いつくから」
岳「・・・分かった」
一樹は敦子の元へ向かう。それに気づく敦子。
敦子「あなたはこうでもして行くと思った!」
一樹と敦子が話している間に改札内に入る 岳。

○電車内(午後)
新宿方面の電車に乗っている岳。みくみくの卒業が発表された日から今日までを回顧している。

○新宿・バスターミナル(夕)
グループLINEで剣が流した会場までの手順を見て、バスの切符や乗り場を確認し、
バスに乗り込む岳。

○八王子付近・高速バス内(夕)
バスに乗っている岳。一樹からの連絡を確認するが、返信はない。バスは山梨へ向かう。

○葉明学園・野球グラウンド(夕)
練習前のストレッチをしている剣。将司がやってくる。
将司「・・いいんだ?」
剣「当たり前だろ」
岳と一樹の成功を祈っている剣。

○山梨県・山梨ホール(夕)
17時半過ぎ。会場に着く岳。会場前には多くの人。中には「チケット譲っ
て下さい!」と段ボールで書いたものを掲げているファンもいる。
×     ×     ×
「まもなく開演になります!」のアナウンス。一樹を待っている岳。LINEの通知音。
見ると一樹から「おれの分まで楽しんできて」のメッセージ。
岳、列に並び会場内に入ろうとする。

○流山市・予備校・西走ハイスクール(夕)
勉強している一樹。泣いている。

○山梨県・山梨ホール(夕)
岳のチケット確認の番になる。
係員「チケット拝見します」
岳はバッグからチケットを出そうとするが、見つからない。探してるとあるモノに気づく。
それは出し忘れた吉野へのお礼メッセージ。
係員「あります?」
岳「あ、すいません」
列から抜ける岳。3枚のチケットと吉野へのお礼のメッセージを見ている岳。
多くの人の中に「チケット譲って下さい!」と掲げる母と子供2人が目に入る。

○葉明学園・職員室(夜)
片づけをしている吉野。PC画面には「美国みく卒業ライブ大成功」のネット記事。
×     ×     ×
吉野「お世話になりました」
室内の教師にお礼を言い、職員室を出る吉野。

○同・校門前(夜)
下駄箱から出てくる吉野。
校門を出ようとすると走って入ってくる岳。
吉野「真鍋君!?」
岳「(息切れしながら)どうも・・・」
吉野「どうしたの?あれ、ライブ終わったのさっきだよね?なんで・・・」
岳はバッグから1枚の紙を出す。吉野へのお礼メッセージ。吉野に渡す岳。
吉野「あ!真鍋君だけ無いと思ってたけど。もしかして渡す為に?」
岳「その為じゃないんだけど、まあ色々あったんだよ」
吉野「・・・そうなんだ」
岳「色々無かったら、渡してないからな」
吉野「ありがとう」
岳「お世話になりました。じゃあ」
校門を出ていく岳。
吉野、岳のメッセージを見る。

○流山駅(夜)
22時過ぎ。電車を待っている岳。
後ろから「お疲れ」との声がする。振り返ると佳純がいる。
岳「うわっ!?」
佳純「(その声量に)びっくりした~」
岳「ごめん。いきなり声かけられたから」
佳純「何終わり?」
岳「いや。ちょっと・・・」
佳純「今日、途中からいなかったよね?」
岳「まあ」
佳純「観れたの、ライブ?」
岳「え?ああ、結局観なかったんだけど」
佳純「そうなんだ」
岳「・・・予備校終わり?」
佳純「うん」
岳「だよね」
佳純「真鍋君は予備校行ってるの?」
岳「行ってない」
佳純「卒業後は?」
岳「え?」
佳純「進学か、就職か、あとはまだ考え中とか」
岳「・・・まだ考え中。どうしようかなって」
佳純「じゃあ受験するってなって、予備校通う時は是非。私の行ってる予備校、安くて分かりやすいよ」
岳「そうなんだ」
電車が到着する。
佳純「こっち?」
岳「うん」
佳純「私も」
電車に乗り込む2人。

○流山市・外観
7月半ば。夏休み。

○千葉県・野球場(午後)
夏の県予選の表彰式。
葉明学園は3位入賞。将司と笑っている剣。

○流山市・予備校・西走ハイスクール(午後)
勉強している一樹。
横の掲示板に7月期の模試やテストの結果が掲載されている。1位は一樹の名前ばかり。

○千葉県内・教員採用試験・会場
試験前の吉野。実習最終日に貰った生徒達からのメッセージを見ている。
そこには『ありがとう。先生になれよ』との岳の文字。

○流山市・予備校・千駄木ゼミナール(昼)
入り口の扉を開ける岳。
講師「こんにちは。・・入会希望?」
岳「あ、はい」
講師「こちらどうぞ」
岳は講師に案内されて進む。すると横の自習室から佳純が出てくる。鉢合わせる2人。
佳純「あ!」
岳「あ。どうも・・・」

おわり

「クロスロード∞」(PDFファイル:550.93 KB)
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