田中君のバレンタイン 学園

同じバスケ部の山田(12)から「バレンタインに貰ったチョコの数」勝負を一方的に持ち掛けられ困っていた田中(12)は、同じクラスの釜田(12)、伴場巧(12)、吉高嵐(12)ら「イケてない」仲間達に相談する。
マヤマ 山本 22 0 0 10/11
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第一稿

<登場人物>
田中(12)バスケ部員
釜田(12)田中の友人
伴場 巧(12)同
吉高 嵐(12)同

山田(12)田中のチームメイト
中松 日登美(12)田中のクラ ...続きを読む
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<登場人物>
田中(12)バスケ部員
釜田(12)田中の友人
伴場 巧(12)同
吉高 嵐(12)同

山田(12)田中のチームメイト
中松 日登美(12)田中のクラスメイト
木下 菜々(12)同
片岡 真澄(13)伴場の先輩



<本編>
○メインタイトル『田中君のバレンタイン』

○田中家・外観
   「田中」と書かれた表札。
田中M「前略、ご無沙汰しています」

○同・田中の部屋
   学ランに着替えている田中(12)。
田中M「僕は田中。浦野宮第二中学校バスケットボール部の一年生です」
   室内の日めくりカレンダーが「2月14日」を示している。
田中M「今日は、バレンタインデー」
田中「よし」
   部屋を出ていく田中。
田中M「僕みたいなイケてない男子には、本来全く関係ないイベントですが……」

○中学校・体育館・外観(夕)
   以下、時間が数日遡る。
田中M「そうも言っていられない事情があるのです」

○同・同・中(夕)
   田中と対峙する長身の男子生徒・山田(12)。
山田「田中、俺と勝負だ」
田中M「彼は山田君。ミニバス時代から、何かと僕をライバル視している選手です」
田中「勝負……? あ、1on1?」
山田「違う。チョコレートの数だ」
田中「あ、バレンタイン?」
山田「調子に乗っていられるのも今の内だ。今度こそ、お前に勝つ!」
   と言って去っていく山田。
田中「いや、まだ勝負に乗るとは言ってないんだけど……」

○同・一年二組・前
釜田の声「勝負ねぇ……」

○同・同・中
   教室の端に集まる田中、釜田(12)、伴場巧(12)、吉高嵐(12)。
釜田「負けそうだな」
田中「はっきり言うね」
伴場「山田君って、あの背の高い人でしょ?」
釜田「多分、クマと理央の間くらいだな」
吉高「モテそう」
田中「うん、僕より遥かにモテてると思う」
吉高「でも、だからって簡単に諦めちゃダメだよ。勝ちに行こう」
伴場「じゃあ、まずは身長伸ばそう」
田中「どうやって?」
伴場「身長を伸ばすといえば……」
   田中、釜田、伴場の視線が吉高に向く。
吉高「いや、でも……」
田中「ヨッシー(=吉高のあだ名)には聞いたよ。毎晩、寝る前に牛乳一リットル飲むんだって」
釜田「力技だな」
伴場「で、やったの?」
田中「やったよ」
吉高「どうだった?」
田中「髪伸びるのが早くなった」
釜田「カルシウム、全部取られてんじゃん」
   笑う一同。
伴場「確かに『来るの早いな』って思った」
吉高「そうだ、伴場君家でかっこいい髪型にしてもらえば?」
田中「まぁ『バレンタインデーまでに身長を伸ばす』よりは現実的だけど……」
釜田「じゃあ、理央みたいにすっか」
田中「いや、それは無理無理。睨まれちゃうよ」
釜田「大丈夫だろ。『伴場君にやってもらいました』『高木君の髪型かっこいいから』とか言えば、案外ちょろいから」
田中「そうなの?」
釜田「何より、伴場は理央の師匠だからな」
伴場「だから、その呼び方止めてよ」
吉高「え、師匠なの?」
伴場「だから~」
田中「でも、高木君が良くても他の……例えばバスケ部の先輩とかに何て言われるか……」
吉高「それはあるかもね」
伴場「じゃあ、どうする?」
   考え込む田中、伴場、吉高。
釜田「まったく、黙って聞いていれば」
田中「? そんなに黙ってたっけ?」
釜田「お前らの案は全部『どうしたら田中がモテるようになるか』でしかないよな」
吉高「え、だって……?」
伴場「そういう話じゃなかったっけ?」
釜田「大事なのは『モテるかどうか』じゃなくて『チョコをもらえるかどうか』だろ?」
伴場「まぁ」
吉高「確かに」
田中「でも正直、チョコの数で負けたからって……」
吉高「元々、俺達に関係あるイベントでもないし」
伴場「気にならないよね」
釜田「そんな事言ってるけど、実際二月一四日の朝になったら『あ、今日バレンタインだな』って頭にはよぎるだろ?」
伴場「まぁ」
吉高「確かに」
釜田「それって、無茶苦茶ダサくないか?」
田中「だったら、どうすればいいの?」
釜田「一つ、妙案がある」
田中&伴場&吉高「妙案?」
釜田「コレをすれば、俺らイケてない男子も確実にバレンタインに参加できるし、あわよくばチョコもゲットできる」
田中「その方法って……?」
   ニヤリと笑い、三人に耳打ちする釜田。
田中&伴場&吉高「おぉ~」

○同・外観
   T「2月14日」

○同・一年二組・中
   席に着く中松日登美(12)。そこにやってくる田中。
田中「中松さん、おはようございます」
日登美「えっと……田中、君?」
田中「はい、逆チョコです」
   と言って日登美にチョコ(一袋二〇個入りのチョコを一個、くらいのイメージ)を渡す田中。
日登美「え、私に?」
田中「まぁ、皆さんに」
日登美「?」
   そう言って立ち去る田中。また別の女子生徒にチョコを渡す。
日登美「これは一体……?」
   そこにやってくる釜田。
釜田「おう、中松。はい、逆チョコ」
日登美「え、あ、どうも」
   釜田と入れ替わりにやってくる伴場。
伴場「どうぞ、逆チョコです」
日登美「あ、あぁ……」
   伴場と入れ替わりにやってくる吉高。
吉高「あ、ヒット。はい、逆チョコ」
日登美「ねぇ、ラン。これ、どういう状況?」
吉高「みんなで、逆チョコ配って回ってるんだよ」
日登美「何で?」
吉高「まぁ、色々とね」
釜田M「いいか? 俺達はひたすら逆チョコを配って回るんだ」
    ×     ×     ×
   木下菜々(12)にチョコを渡す釜田。
釜田「ほれ、ナナ。逆チョコ」
菜々「え、マジで? ありがとう」
釜田M「すると、どうなると思う?」
菜々「じゃあ、私からも。はい、ハッピーバレンタイン」
釜田「お、サンキュー」
釜田M「その場でお返しのチョコをもらえるハズだ」

○同・音楽室
   チョコを交換し合う片岡真澄(13)ら吹奏楽部の女子部員達。
釜田M「『友チョコ』を貰った時のために、多めにチョコを持ってきている女子は少なくない。そこがねらい目だ」
   そこにチョコを持って行く伴場。
伴場「あの……逆チョコです」
真澄「へぇ、伴場やるじゃん。はい、じゃあお返し」
   と言って次から次へとチョコを貰う伴場。
伴場「あ、ありがとうございます~」

○同・体育館・外観(夕)

○同・同・中(夕)
   大量のチョコレートを手にした田中の前で、崩れ落ちる山田。その背後には同じく大量のチョコレートを手にした釜田、伴場、吉高もいる。
山田「そんな……チョコですら、田中に勝てないなんて……」
田中「ま、まぁ、全部義理というか、お返しというか……」
山田「……まぁ、いい。せいぜいホワイトデーで苦しむがいいさ!」
   と言って走り去る山田。
釜田M「あと、地味なメリットがもう一つ」

○(回想)同・一年二組・中
   教室の端に集まる田中、釜田、伴場、吉高。
釜田「こっちが先にあげてるから、ホワイトデーのお返しを考えなくて済む」
田中&伴場&吉高「おぉ~」
                  (完)

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