<登場人物>
甲本 紅蓮/レッドビートル(26)
秋津 蒼真(30)
蝶野 桃香(21)
GRE―04(20)
YEL―05(20)
子
園児A~D
SENT―AI AI
脚本家 声のみ
<本編>
○幼稚園・園庭
一人、たたずむ甲本紅蓮(26)。神妙な表情。赤基調のジャケットを着用し、腕にはブレスレット型の変身アイテム(=バグチェンジャー)を身につけている。
甲本「(バグチェンジャーに向け)OK、SENT。バトルスーツを転送してくれ」
SENTの声「(バグチェンジャーから)承知でありんす」
甲本の前に現れる、カブトムシをモチーフとした赤いバトルスーツの戦士=レッドビートルのスーツの立体映像。それが徐々に甲本の体に重なる。
甲本「バグチェンジ!」
スーツの立体映像が完全に重なると、レッドに変身する甲本。
レッド「報国尽虫、レッドビートル」
決めポーズをとるレッド。
ここでようやく周囲の人々が映り、レッドに歩み寄る秋津蒼真(30)、蝶野桃香(21)、GREー04(20)、YELー05(20)と、その周囲で見学する幼稚園児や幼稚園教諭ら。皆が拍手。
尚、GREとYELはそれぞれ男性型、女性型のアンドロイドであり、秋津ら四人はそれぞれ甲本と色違いの青、桃、緑、黄色のジャケットとバグチェンジャーを身につけている。
桃香「はい、みんな。こ~んに~ちは~!」
園児達「こ~んに~ちは~」
桃香「あれれ、声が小さいぞ~? もう一回。こ~んに~ちは~」
園児達「こ~んに~ちは~!」
脚本家N「説明しよう」
○(イメージ)市街地
並んで決めポーズをとるレッド、ブルードラゴンフライ、ピンクバタフライ、グリーンホッパー、イエロースティンガー。
脚本家N「彼らこそ、悪の組織・チルドレンと戦う人類のヒーロー、昆蟲戦隊バグレンジャーなのだ」
○幼稚園・外観
「せんと幼稚園」と書かれた看板。
桃香の声「じゃあ、私達に質問がある人~」
園児達の「はい、はい」という声。
○同・教室
黒板に色とりどりのチョークで描かれた「ようこそ 昆蟲戦隊バグレンジャーのみなさん」の文字。
集まる大勢の園児達の前に立つ甲本、秋津、桃香、GRE、YEL。
以下、園児達との質疑応答のやり取りをテンポよく。
園児A「どうやったら強くなれますか?」
秋津「(棒読みで)好き嫌いしないでたくさん食べる事だよ」
× × ×
園児B「どうやったら戦隊に入れるの?」
桃香「まずは、パパやママや先生の言う事をちゃんと聞こうね」
× × ×
園児C「(YELの腕の刻印を指して)何か付いてるよ?」
YEL「御質問にお答えしますと、コチラは私達アンドロイドの識別機能も兼ねた刻印であって……」
頭に「?」を浮かべる園児達。
YEL「一言で申し上げますと……(と言いながらGREに目を向ける)」
GRE「名札だよん」
× × ×
園児D「戦隊って、何?」
甲本「たとえ一人ひとりの力は小さく弱くても、力を合わせて強い敵を倒す。それが戦隊だ」
秋津「マジメ……」
桃香「他に質問ある子~?」
我先にと挙手する園児達。
○同・園庭
園児達と戯れる甲本達(例=ドッジボールに参加する甲本、追いかけっこをするも途中からバテる秋津、遊具で遊ぶ桃香、体をアチコチ触られいじられるGRE、砂場の砂で彫刻のような作品を作るYEL、といった具合)。
× × ×
それぞれカブトムシ型、トンボ型、チョウチョ型、バッタ型、ハチ型の巨大ロボットに乗り込む甲本、秋津、桃香、GRE、YEL。それを見送る子供達。
園児達「ありがとう、バグレンジャー!」
手を振り、乗り込む甲本ら。発進する巨大ロボット達。
甲本の声「やっぱり、こうやって直接触れ合って改めて思うね」
○戦隊本部・外観
官公庁のような建物。周囲を武装した人やアンドロイドが警備している。
甲本の声「あの笑顔、あの無邪気さ」
○同・司令室
大型モニターや機器類、大きな作戦机がある室内。
甲本の声「そしてあの、好奇心旺盛さ」
作戦机を囲む甲本、秋津、桃香と、三人にコーヒーを配るYEL、奥の席で機器類を操作するGRE。
甲本「俺、やっぱりガキ嫌いだわ」
YEL「御苦労様でした」
桃香「全然、隠せてなかったもんね」
甲本「何で俺がこんな事しなくちゃいけないんだか。もうやらないからな」
SENTの声「そんな事言わないでおくんなんし」
大型モニターに表示されるCGキャラクター、SENTーAI。
SENT「『子供のなりたい職業ランキング』でバグレンジャーがユーチューバーより下なんて、良くないでありんすよ」
桃香「確かに。笑えないよね」
秋津「予算削減を回避する為には、出来る事は何でもやらないと」
甲本「……と興梠博士に言われました」
秋津「そういう事」
甲本「だったら、俺抜きで行ってくれ」
桃香「いやいやいや、何その『ボーカル居ないバンド』状態」
秋津「僕は楽しかったですけどね。子供達と触れ合って改めて、ヒーローになって良かったな、って思えましたし」
秋津を見つめる桃香。
秋津「どうしたの、桃香ちゃん?」
桃香「だって蒼真、全部棒読みだったじゃん。新人俳優じゃあるまいし」
秋津「それは、だって難しいじゃん。子供の質問にその場で答えるとか」
甲本「質問と言えば、妙な質問するガキが居たよな」
SENT「どんな質問でありんすか?」
○(回想)幼稚園・教室
園児達の前に立つ甲本達。園児の中にいる子が立ち上がる。
子「チルドレンって、本当に悪い奴らなんですか?」
甲本「え……?」
園児A「悪い奴らに決まってるじゃん」
園児B「そうだそうだ」
子「でも、僕とパパの事助けてくれたもん」
園児C「嘘付くんじゃねぇよ~」
園児D「嘘つき、嘘つき~」
子「嘘じゃないもん!」
半泣きで着席する子。
秋津の声「チルドレンに助けられた、か」
○戦隊本部・司令室
作戦机を囲む甲本、秋津、桃香。奥の席で機器類を操作するGRE、YEL。大型モニターに映るSENT。
秋津「『遊園地で』って言ってたから、この間の戦いの事ですよね」
桃香「もしかして、例の動画の? (GREに)モニターに出せる?」
GRE「もちろんだよん」
YEL「御覧ください」
大型モニターに映し出されるユーチューブ動画。
遊園地内で戦闘員・セージに襲われそうになる父子。
子「ひっ」
父「危ない!」
その子供を庇う父親。
父子を襲おうとしたセージの拳を受け止め、返り討ちにする戦闘員・オーボ。
動画を一時停止し、子の部分を拡大する。
桃香「やっぱり、あの子だね」
甲本「doだか。俺には全く区別がつかん。とりあえず、動画を削除しとけ」
秋津「でも、いくら消しても、完全には消えないよ? それに、あの子の心の中には永遠に残る訳だし……」
甲本「だったら、上書きすればいい」
秋津&桃香「上書き?」
甲本「(GREに)ヤツらに繋げ」
GRE「了解だよん」
桃香「え、ちょっと待って。まさか……」
秋津「あの幼稚園、襲わせる気?」
甲本「他に良い案はあんのか?」
YEL「御座いません」
秋津「だからって、今さっき触れ合ったばかりの子供達を……」
桃香「……子供嫌いにも程がある」
甲本「さて、と。あとは上手くやってくれよ。チルドレン」
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