○バス停
桜の花びらが舞うバス停のベンチに、和馬(26)と遥(24)が座っている。遥の前にはスーツケース。
遥 「次会うのは……二ヶ月くらい先、かなあ」
和 馬「……んー」
遥 「なんか、変な感じだね。今までずっと一緒にいたのに」
和 馬「……あー」
遥 「あ、ねえ、向こうの写真、撮って送ろうか?」
和 馬「いらねーし」
遥 「(楽しそうに)えー、じゃあ勝手に送りつけよっかな」
正面を向いた遥の横顔が、春の光に輝く。
それに見惚れる和馬。無意識に遥の頬に手を伸ばす。
が、それに気づいた遥は驚いてその手を避ける。
遥 「わっ、何?」
和 馬「あ、や……花びら、髪についてたから」
遥 「え? あー。(左手で髪の毛を払って)とれた?」
遥の左手薬指に指輪が光る。
和 馬「……うん」
バス停に近づくバスが見えてくる。
遥 「あ、もう来るね。(立ち上がって)わざわざ見送りありがと。また結婚式でね、お兄ちゃん。お父さんとお母さんにもよろしく」
和 馬「……ん」
遥が到着したバスに乗ろうとすると
和 馬「あ、遥」
遥 「(振り向いて)ん?」
和 馬「あー……信行くんに、よろしく」
遥 「(幸せそうな笑顔で)うんっ。じゃあ、いってきます」
遥を乗せて、バスが発車する。窓から小さく手を振る遥に片手を上げて答える和馬。
バスが見えなくなるまで見送ると、和馬はベンチに座り、遥が座っていた箇所に指で触れる。
ベンチの上の桜の花びらが風にさらわれる。(終)
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