<登場人物>
古江 翼(12)(30)小学生
古江 茂(34)翼の父、フロイデスの選手
元町 風馬(26)翼の担任、サポーター
代田 万里(24)元町の同僚
古江 雅子(34)翼の母
古江 未来(5) 翼の妹
前川 透(39)フロイデスの監督
原田 葵(12)翼の同級生
桜井 一樹(12)翼の友人
浩 (12)同
智史 (26)元町のサポーター仲間
加奈 (26)同
内野 (43)同
保臣 (12)翼の同級生
同級生A
同級生B
下級生A
下級生B
一樹の母(43)
丸山 (50)フロイデスの社長
川口 (61)サッカー協会理事長
教頭
<本編>
○サッカーグラウンド
サッカーボールが1つ転がっている。
大人の翼M「『日本サッカー界三大奇跡』と僕が勝手に呼んでいる出来事がある」
○資料映像
それぞれの出来事の資料映像。
大人の翼M「一つ目は一九九六年、アトランタ五輪で日本代表がブラジル代表に勝利した、通称・マイアミの奇跡。二つ目は二〇一一年、女子サッカー日本代表、なでしこジャパンによるW杯優勝」
○国立霞ヶ丘競技場・外観
青空が広がっている。
大人の翼M「そして、三つ目」
○同・グラウンド
サポーターが歌う『歓喜の歌』を替え歌にしたチャント(「戦え僕らの横浜フロイデス」という感じの歌詞)が響く中、入場する横浜フロイデスと清水エンゼルスの選手達。フロイデスの白いユニフォームの胸部分には「DNA」「SANO」の文字が並ぶ。
大人の翼M「一九九九年一月一日、あるプロのサッカークラブが達成した、最も悲劇的な奇跡」
○同・バックスタンド
チャントを歌いながら選手入場を見守る元町風馬(26)、智史(26)、加奈(26)、内野(43)らフロイデスサポーター達。
大人の翼M「負けたら解散、勝っても解散」
○同・メインスタンド
円陣を組むフロイデスの選手達を見守る古江翼(12)、古江雅子(34)、古江未来(5)、代田万里(24)。
大人の翼M「それでも彼らは……いや」
○同・グラウンド
ベンチ前、前川透(39)の隣でキックオフの様子を見つめる古江茂(34)。
大人の翼M「僕らは、戦い続けた」
○黒味
T「この物語は、事実を基にしたフィクションである。」
○メインタイトル『横浜Fは終わらない』
○横浜各所
横浜駅、中華街等。
大人の翼M「神奈川県横浜市。この時代のこの都市には年2回、サッカーファンにとって特別な日があった」
○横浜国際総合競技場・外観
大歓声が聞こえる。
大人の翼M「それが、横浜クラシコである」
○同・グラウンド
フロイデスと横浜マレオットの試合。マレオットのユニフォームは青色。
T「1998年9月15日 リーグ戦第5節 横浜マレオット戦」
熱狂するスタンドの両サポーター。
大人の翼M「ともに横浜をホームタウンとする両クラブの試合は、この年述べ十万人以上を集客した屈指の注目カードだった」
○同・メインスタンド
声援を送る翼、雅子、未来。
大人の翼M「この試合が最期になるとは、思いもしないまま……」
悲鳴に近い声をあげる翼達や周囲のフロイデスサポーター。
○小学校・外観
登校する生徒達。
○同・教室・外
「6年3組」と書かれた表札。
保臣の声「はい、みんな注目~」
○同・同・中
教壇の前に立つ保臣(12)、同級生A、同級生B。
保臣「昨日、我らが横浜マレオットは見事、横浜フロイデスに勝ちました、拍手~」
まばらな拍手。
尚も保臣が拍手するように催促すると半数近くが拍手する。
教室中央付近にある翼の席に集まっている桜井一樹(12)と浩(12)。そこにやってくる保臣、同級生A、B。
保臣「フロイデスサポーター諸君、残念だったね~」
翼「はいはい、おめでとさん」
浩「おめでとさん」
保臣「まぁ、格が違うんだよ。格が」
翼「今シーズン一勝一敗になっただけのくせに偉そうに」
浩「偉そうに」
保臣「ふん、負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇな」
翼「あー言えばこー言う。(小声で)本当、バカなんじゃねぇの?」
浩「バカなんじゃねぇの?」
一樹「おい、浩」
保臣「んだと、コラ?」
睨みを利かせる保臣。目をそらす一樹と浩。
保臣「そんな弱いチームなのに、試合にも出られねぇヘタクソは誰の親父かな?」
翼「そういうのはプロになってから言って欲しいもんだな」
にらみ合う翼と保臣。
チャイムが鳴る。
教室に入ってくる元町。
元町「チャイム鳴ったよ~。席着いて~」
舌打ちし、教室後方の席に着く保臣と同級生A、B。
× × ×
授業をする元町。
元町「『人間は二度死ぬ』って言葉、聞いた事あるかな?」
同級生A「ドラゴンボールを使えば1回だけ生き返れる、って事~?」
笑う生徒達。
元町「いや~、そういう事じゃなくて」
挙手する原田葵(12)。窓際の席に座るボーイッシュな少女。
元町「はい、原田さん」
葵「一度目は肉体が死ぬ事、二度目は全ての人から忘れ去られる事」
元町「正解、さすがだね。この言葉は……」
授業を聴いている翼。後頭部に消しゴムが当たる。振り返ると保臣が素知らぬ顔。
○同・外
チャイムが鳴っている。
○通学路
並んで歩く翼、一樹、浩。被っている通学帽は白(=全学年共通)と青(=六年生の学年カラー)のリバーシブル。三人は白の状態で被っている。
遠くから「横浜マレオット」コールが聞こえてくる。
翼「何だ?」
振り返ると「横浜マレオット」コールをしている保臣と同級生A、B。その周囲の生徒も含め、通学帽の色は白と青が半々程度。
元町の声「大丈夫かな、ウチのクラス」
○小学校・職員室
隣同士の席に座る元町と万里。
万里「元町先生のクラス、何かあったんですか?」
元町「何か、マレオット派とフロイデス派が色々もめてるみたいで」
万里「あぁ。でも、好きなチームが違うくらい、良くある話じゃないんですか」
元町「いや、そんな代田先生が言うような単純な話じゃないんですよ……」
万里「ふ~ん。じゃあ、教頭にでも相談してみればいいんじゃないですか?」
そこにやってくる教頭。
教頭「何かありましたか? 元町先生」
元町「……いえ、何もありません」
悪戯っぽく笑う万里。
○横浜国際総合競技場・メインスタンド
フロイデスと名古屋の試合。
T「1998年9月23日 リーグ戦第7節 名古屋グラシアス戦」
観戦する元町、智史、加奈、内野。
元町の声「これで三連敗か~」
○喫茶F・中(夜)
数席のテーブル席とカウンター席があり、フロイデスグッズが多数並んでいる店内。
カウンター席に並んで座る元町、智史、加奈。
元町「同点に追いついた時は、イケると思ったんだけどな~」
加奈「すぐ勝ち越されちゃったよね」
智史「もう飲まなきゃやってらんねぇな」
店の奥から出てきて、カウンター内にやってくる内野。
内野「そうくると思って、はい」
カウンターに酒を置く内野。
智史「さすがマスター」
加奈「この店、いつから居酒屋になったんですか?」
元町「まぁ、細かい事は気にしないで。じゃあ、マスター」
内野「次節でのフロイデス勝利を願って」
○同・前(夜)
商店街の一角にある喫茶店。「喫茶F」と書かれた看板がある。
元町&智史&加奈「乾杯」
○同・同
喋りながら並んで歩く翼と一樹。
○商店街
どの店にも横浜フロイデスのポスターが貼ってある商店街。
喋りながら並んで歩く翼と一樹。
一樹「じゃあな」
翼「おう、また明日」
桜井青果店の中に入って行く一樹。店の前には一樹の母(43)。
一樹の母「お帰り、一樹。翼君も」
一樹「ただいま」
翼「おばちゃん。フロイデス三連敗だよ」
一樹の母「ね。どうしようか」
翼「もう、俺落ち込んじゃって」
一樹の母「そりゃあ、大変だ。あ、リンゴ持っていく?」
と言ってリンゴを四つ袋に入れて翼に渡す一樹の母。
翼「やった。いただきます」
手島青果店の斜向い、団子屋がある。
団子屋「おう、翼君」
翼「おじちゃん。フロイデス三連敗だよ」
団子屋「まぁ、そう言うな。ほれ、団子でも食って元気出せ」
と言いみたらし団子を一本差し出す。
翼「(受け取って)ありがとうございます」
さらにその斜向いにある床屋の前に立つ智史。
智史「おう、古江ジュニア~。フロイデス三連敗だよ」
翼「ヤバいよね」
智史「どうする? とりあえず、髪でも切ってく?」
翼「えっと……(前髪をさすり)止めとく」
智史「だよな」
笑って手を振る智史。
○マンション・外観
○同・古江宅・リビング
入ってくる翼。手にはリンゴの袋の他パンや花等もある。
翼「ただいま~」
ソファーでくつろぐ古江。
古江「おう、お帰り」
翼「あれ、父さん。早くね?」
古江「練習早めに終わったからな」
翼「そんなんじゃレギュラー獲れねぇよ?」
古江「やかましい。それより、随分とモテモテだな」
翼「あ~。(花を置いて)コレが花屋で(パンを置いて)コレがパン屋で(リンゴを置いて)コレがカズん所のオバちゃんで(団子の串のみ)コレが、団子屋」
古江「へぇ~、いい串もらったな」
○横浜市三ツ沢公園球技場・バックスタンド
フロイデスと磐田の試合。磐田が一方的に攻めている展開。
T「1998年10月3日 リーグ戦第9節 シフレ磐田戦」
観戦する翼、雅子、未来。
ホイッスルが鳴り、落胆。
翼の声「五連敗か……」
○小学校・教室・中
翼の席に集まり喋る一樹、浩。
翼「いよいよ、ヤバくね?」
浩「ヤバくね?」
一樹「さすがに二部落ちなんて事は……ねぇよな?」
浩「ねぇよな?」
翼「ねぇと思いてぇけどな~」
サッカーボールを手に持つ保臣。
保臣「お~い、サッカーやろうぜ~」
保臣の元に集まる男子生徒達。
翼「まぁ、ここで考えててもアレだし、俺達もアッチ混ざろうぜ」
浩「混ざろうぜ」
一樹「だな」
立ち上がり、保臣の元に向かう翼、一樹、浩。
保臣「(翼達を見て)何しれっと入ろうとしてんだよ」
翼「は?」
保臣「マレオットサポーターじゃねぇ奴はダメだ、って言ってんだよ。教室の隅で仲良く二部での応援でも考えてな」
翼達を手で追い払う仕草をし、教室を出て行く保臣。
翼「何だよ、アイツ偉そうに」
目を見合わせる一樹と浩。
○通学路
並んで歩く翼、一樹、浩。この3人以外のほとんどが通学帽を青にして被っている。心無しか暗い表情の3人。
○横浜市三ツ沢公園球技場・バックスタンド
フロイデスと神戸の試合。
T「1998年10月17日 リーグ戦第11節 ビリーブル神戸戦」
観戦する翼、雅子、未来。
ホイッスルが鳴り、歓喜に沸く。
雅子の声「どうしたの、翼?」
○同・外
並んで歩く翼、雅子、未来。
翼「『どうしたの』って?」
雅子「せっかく、久々に勝ち試合見られたのに、何か浮かない顔して」
翼「そんな事ないけど」
未来「ねぇ、パパ今日試合出た?」
翼「出てねぇよ」
未来「何で出てないの?」
翼「知らねぇよ」
未来「ねぇ、何で? パパ、下手なの?」
翼「下手じゃねぇよ」
雅子「翼……?」
○小学校・外観
下校する生徒達。
○同・教室・中
帰り支度をしている翼。その脇に立つ一樹と浩。
翼「さてと、帰ろうぜ」
一樹「あぁ……うん」
浩「……うん」
翼「?」
顔を上げる翼。通学帽を青にして被っている一樹と浩。
翼「……何で?」
一樹「これは、その……何て言うか……」
浩「翼は……無理だよね」
二人の後ろで笑っている保臣、同級生A、B。
翼「……わかったよ。勝手にしろ」
一人で教室を出て行く翼。
気まずそうに立ち尽くす一樹と浩。
○通学路
一人で歩く翼。翼以外皆、通学帽を青にして被っている。わざと翼に肩をぶつけてくる保臣、同級生A、B。
同級生A「あれ~、今日は一人~?」
無視して歩く翼。
同級生B「無視してんじゃねぇよ」
立ち止まる翼、保臣、同級生A、B。
保臣「なぁ、古江。『マレオットの方が強いです。ごめんなさい』って謝るんなら、許してやってもいいぜ?」
翼「無理」
保臣「は?」
翼「謝るような事はしてねぇし、そもそもフロイデスの方が強ぇから」
同級生B「ナメてんのかよ」
同級生A「この状況、わかってないの~?」
保臣「見てみろよ。全員、マレオットの方が強いって思ってるから、帽子を青に……」
四人の脇、通学帽を白にして被って歩いて行く葵。
翼「原田……」
同級生B「おい、原田。まさかフロイデスサポーターだとか言うんじゃねぇよな?」
葵「……別に」
同級生A「じゃあ、(通学帽を指して)何で白なんだよ~」
葵「……別に」
そのまま去って行く葵。
保臣「何だよ、アイツ」
葵の背中を見送る翼。
○マンション・古江宅・リビング
フロイデスと京都の試合をテレビ観戦している翼、雅子、未来。
T「1998年10月24日 リーグ戦第13節 京都フシミサンガ戦」
ため息をつく翼。
○小学校・外観
チャイムが鳴る。
○同・教室・中
サッカーボールを持って出て行く保臣ら男子生徒達。やや逡巡しながらも、それに続く一樹、浩。
教室に残っているのは数名の女子生徒と翼のみ。
席に座り、ただうつむいている翼。
その様子を見ている葵。
○商店街
一人で歩く翼に桜井青果店の前にいる一樹の母が気付く。
一樹の母「翼君、お帰り。あれ、今日はウチの一樹と一緒じゃないんだ」
翼「あぁ、はい」
一樹の母「そうだ、またリンゴ、持っていくかい?」
翼「いや、今日は寄る所あるんで」
一樹の母「そうかい。気をつけてね」
歩いて行く翼。
○東戸塚トレセン・外観
○同・グラウンド
フロイデスの選手が練習をしている。
その様子を見ている翼。
翼「頼むよ、フロイデス。もう俺、他に味方いねぇんだよ……」
GK練習をしている古江。他の選手が翼の存在を古江に知らせる。翼の元にやってくる古江。
古江「おう、翼。どうした?」
翼「……別に。次の試合、出られそう?」
古江「珍しい事聞いてくるな」
翼「未来は、父さんに試合出て欲しいみたいだから」
古江「翼は?」
翼「勝って欲しい」
古江「じゃあ、父さん出ない方がいいな」
笑う古江。
○黒味
T「1998年10月29日」
○商店街
桜井青果店から出てくる一樹。周囲では一樹の母や団子屋等、商店街の人々が喋っている。皆、困惑の表情。
○マンション・古江宅・リビング
「横浜フロイデス 横浜マレオットに吸収合併」と報じるニュース番組。それを観ている翼。
床に落ちている、丸められた新聞紙を拾う雅子。そこにやってくる未来。
未来「ママ~、『しょーめつ』って何?」
雅子「……」
新聞紙を広げる雅子。「横浜フロイデス 消滅」の見出し。
○東戸塚トレセン・外
大勢のマスコミがいる。「何か一言」等と聞かれながら、ノーコメントでその中を分け入って進む古江。
その様子をさらに遠巻きに見ている加奈の元にやってくる智史。互いに首を横に振る。理髪店の制服のまま来ている智史の手にはPHS。
智史「ダメだ。全然情報入ってこない」
元町の声「そっか~」
○小学校・廊下
隅にてPHSで通話中の元町。
元町「……昼休みにF集合? わかった」
電話を切る元町。職員室に戻ろうとして周囲を見るとざわつく生徒達の姿。
万里の声「生徒達の間でももう話題になってますね」
○同・職員室
隣同士の席に座る元町と万里。
元町「まさか、クラブチーム同士の合併だなんて……」
万里「まぁ、良かったんじゃないですか?」
元町「え?」
万里「マレオット派とフロイデス派に分かれてた生徒達も、チームが一つにまとまっちゃえば、揉める事もない訳ですし」
元町「……代田先生。ソレ、本気でおっしゃってますか?」
万里「え?」
二人の元にやってくる教頭。
教頭「まぁまぁ。元町先生も落ち着いて。今の時代、企業同士の合併なんてよくある事じゃないですか。子供達にも、その辺りを学んで……」
机を叩き立ち上がる元町。
元町「そんなのと一緒にしないで下さい。フロイデスは会社じゃないし、大日空の所有物でもない、横浜市民のものなんです。私達のチームなんです!」
教頭「(驚いて)も、元町先生……?」
万里「(空気を変えるように)元町先生、そろそろホームルームの時間ですよー」
教頭を睨んでいる元町。
○同・教室・中
出席を取る元町。
空席になった翼の席を見つめる一樹、浩、葵。
丸山の声「え~、では」
○東戸塚トレセン・会議室
古江ら選手、スタッフが座っている。
その向かいの席に座る丸山(50)ら親会社役員。
丸山「皆さん、既に新聞やテレビの報道でご存知だと思いますが……」
ざわつく選手達。立ち上がる古江。
古江「あの、その説明の前に『何故、情報が先にマスコミに流れたのか』それを謝るのが筋なんじゃありませんか?」
丸山「そうですね。その件については、申し訳ありませんでした。では、説明に入らせていただきますが……」
呆れ、渋々座る古江。
丸山「先ほどお配りした紙にも書いてある通り、我が横浜フロイデスは、横浜マレオットに吸収合併される、という事になりましたので……」
古江らの手には「合併について」と書かれた一枚の紙。
内野の声「つまり、要約すると」
○同・中
カウンター席に座る元町、智史、加奈とカウンター内に立つ内野。
内野「佐野工業が、本業の経営不振でフロイデスの運営から撤退します、って事がそもそもの原因らしくてね」
新聞記事内のフロイデスのユニフォームの写真の「SANO」の文字に×印を付ける内野。
内野「その結果、大日空単独ではチームを支えられなくなってしまいました、と」
同じ写真の「DNA」の文字に×印を付ける内野。
加奈「だから合併しましょう……って事なんですか?」
元町「何で? 何ヶ月か前まで『日本が初めてW杯に出た!』って、あんなに盛り上がってたじゃん」
智史「そんな大事な話、サポーターに何の説明も……無かったですよね?」
内野「それどころか、選手や佐野工業側の人すらも聞かされてなかったらしいね」
加奈「……どうかしてる」
智史「それも、よりによってダービー相手のマレオットって……。ふざけてやがる。おい、今から大日空乗り込もうぜ」
席を立つ智史の腕を掴む元町。
加奈「智史。乱暴は、ダメ」
智史「けどよ……」
元町「それに今乗り込んでも、トレセン以上に近づけないと思うよ?」
智史「……ちっ」
悔しそうに再び席に着く智史。
内野「そう言う事だね。ところで、元町君。時間大丈夫?」
元町「え? (時計を見て)うわっ。(席を立って)じゃあ、何かわかったら、また電話下さい」
○マンション・外観(夜)
インターフォンの音。
○同・古江宅・翼の部屋・前(夜)
「TSUBASA」と書かれた札。
ドアの前に立つ元町。
元町「古江君。大丈夫?」
○同・同・同・中(夜)
フロイデスグッズに囲まれた室内。
ベッドに寝転がる翼。以下、適宜カットバックで。
元町「タイミングがタイミングだから、ちょっと心配になってね」
翼「……」
元町「でも、先生も同じフロイデスサポーターとして、今回の合併は絶対に……」
翼「父さんに会いにきたんでしょ?」
元町「え?」
翼「こんな状況になったから、フロイデスサポーターとして、選手に話聞きたかったんでしょ? 残念でした。父さん、まだ帰ってきてないから」
元町「そんな事ないよ。……いや、まぁ、そういう期待ゼロじゃなかったけど」
翼「『新しいスポンサーは、探したけど見つかりませんでした』」
元町「え?」
翼「『選手の今後は、まだ何も決まっていません』。父さんが知ってるのは、これだけだから」
元町「そっか、そうなんだ……」
元町のPHSが鳴る。
元町「あっ……ちょっとゴメンね。(電話に出て)もしもし、智史? うん。え、今から? ……ゴメン、後で折り返す」
電話を切る元町。
翼「行けば?」
元町「え?」
翼「サポーター仲間からでしょ? 何かあるならソッチ行ってくれば?」
元町「……ゴメンね。また明日、学校で」
立ち去る元町。遠くで「おじゃましました」という声が聞こえる。
部屋から出ていく翼。
○同・リビング(夜)
ニュース番組を観ている翼。そこにやってくる雅子。
雅子「翼。せっかく先生が心配して来て下さったのに、アレは失礼よ?」
無言でテレビ画面を注視する翼。丸山と川口(61)の記者会見の様子。
丸山「横浜で一つの、地元に完全に根を下ろした形でのチーム作り、というものを今後心がけていきたいと思います」
× × ×
川口「今回の件に関しましては、リーグとしても超法規的処置として承認する事を、臨時総会で決定し……」
加奈の声「お願いします!」
○雑居ビル・リーグ事務局・外
「日本プロサッカーリーグ事務局」と書かれた表札。
加奈の声「私達は断固として、フロイデスとマレオットの合併に反対します」
○同・同・中
元町、智史、加奈、内野ら二〇名ほどのフロイデスサポーターと向かい合う川口。その手には嘆願書。
加奈「コチラ、嘆願書です」
川口「確かに、受け取りました」
内野「理事長さん。何とかならないんですかね?」
川口「わからないけど、もし、何十万人もの横浜市民が動いて、何十万という署名が集まれば、何かが変わるかも……」
元町「本当ですか?」
智史「よっしゃ、やってやろうぜ!」
力強く頷く元町らサポーター達。
○小学校・職員室
恐る恐る入ってくる元町。
元町「遅くなりました~」
席に着く元町。隣の席には万里。
万里「おはようございます」
元町「おはようございます。……教頭、何か言ってました?」
万里「後でネチネチ言われると思いますよ」
元町「やっぱり……」
万里「……聞いたんですけど、サッカーのお偉いさんに会ってきたとか?」
元町「そうですね」
万里「……何でですか?」
元町「何で? それは、フロイデスとマレオットの合併を阻止するために……」
万里「あ~、そうじゃなくて。元町先生ってただのお客さんじゃないですか」
元町「客じゃなくて、サポーターです」
万里「一緒ですよね?」
元町「違います」
万里「……わからない」
元町「じゃあ、明日来ます?」
万里「はい?」
元町「フロイデスの試合です」
万里「……行けたら行きます」
元町「(笑顔で)はい!」
気まずそうな表情の万里。
万里「……あ、そうそう。元町先生に伝言です。『六年三組、今日の欠席者は古江君一人』だそうです」
元町「古江君……今日もか~」
○横浜国際総合競技場・外観
T「1998年10月31日 リーグ戦第14節 大阪セレソン戦」
○同・バックスタンド
「消滅阻止」と書かれたプラカードを掲げるサポーター達。
○同・前
署名活動をする元町、内野らサポーター達。「合併反対」等と書かれた幟。
内野「選手、サポーターを無視した今回の合併に、我々は断固として抗議します!」
元町「皆さんの力で、フロイデスを助けて下さい!」
元町の視線の先、並んで歩く翼、雅子、未来の姿。
元町「あ……コッチは来るんだ」
× × ×
署名活動をする智史と加奈。そこにやってくるの翼、雅子、未来。
智史「お~、古江ファミリー」
翼「こんにちは」
雅子「ここに書けばいいのかしら?」
智史「ありがとうございます!」
署名する翼、雅子。
未来「ママ~、未来も~」
雅子「はいはい、大丈夫。わかってるって」
署名する未来。
加奈「ありがとう。(雅子に)では、コチラをどうぞ」
空色のリボンを三つ渡す加奈。
翼「何コレ?」
加奈「署名していただいた証として、皆様にお渡ししているんです。是非お付けになって下さい」
雅子「じゃあ、いただきますね。署名活動、頑張って下さい」
翼「署名集めれば、合併阻止できるの?」
智史「あぁ、任せとけ」
○オーロラビジョンの映像
どの場面も、場所は横浜市三ツ沢公園球技場。
T「1993年5月16日」
フロイデスと清水の試合。スタンドは清水サポーターのオレンジ色で染まっている。
× × ×
次々と流れるフロイデスの名場面。古い映像には若き日の古江の姿もある。
× × ×
オーロラビジョンに映る「99年、フロイデスはマレオットと合併し、新たな歴史を新クラブで作ります。新クラブにご期待ください」の文字。
あちこちから「ふざけんな」等の罵声が飛んでくる。
○横浜国際総合競技場・バックスタンド
オーロラビジョンを見ている元町らサポーター達。苛立っている。
元町「何か、お別れ試合みたい……」
加奈「は? 冗談じゃない!」
智史「……何が何でも合併するつもりかよ」
○同・メインスタンド
オーロラビジョンを見ている翼、雅子、未来。拳を握りしめる翼。
○同・グラウンド
拳を握りしめるフロイデスの選手達。それを後ろから見ている古江。
ホイッスルの音。
× × ×
フロイデスと大阪セレソンの試合。
フロイデスの選手のオーバーヘッドシュートが決まる。
「3ー0」と表示されるスコア。
盛り上がる観客。
○同・バックスタンド
別のフロイデスの選手がシュートを決める。
抱き合って喜ぶ加奈、智史。その隣で喜ぶ元町。
元町「見たか、大日空!」
○同・メインスタンド
また別のフロイデスの選手がシュートを決める。
喜ぶ翼、雅子、未来。
翼「もっとやれ! もっと見せてやれ!」
○同・グラウンド
またフロイデスに一点入り、盛り上がる古江らフロイデスベンチメンバー。
古江「こんなチーム、無くされてたまるか」
○同・メインスタンド
試合終了のホイッスル。大盛り上がりのフロイデスサポーター達。
その様子を最後列の席から見ている万里。
万里「凄い……凄い、凄い!」
T「横浜フロイデス 7ー0 大阪セレソン」
○横浜駅・西口
元町、智史、加奈、内野らフロイデスサポーター達とフロイデスの選手達が一緒に署名活動をしている。そこには翼や古江の姿も。
翼「横浜フロイデスを助けるために、署名をお願いします!」
その様子に目を細める元町。
○小学校・外観
○同・教室・中
教壇に立つ元町。翼の席は空席。
元町「コッチには来ないんだ……」
○広島ビッグアーチ・グラウンド
T「1998年11月3日 リーグ戦第15節 エストレッチョ広島戦」
フロイデスと広島の試合。
選手達の右袖に付けられた空色のリボンは、この時点ではまだわからない。
○カシマスタジアム・前
T「同日 アトラス鹿島 ー シフレ磐田戦」
署名活動をする元町らフロイデスのサポーター達。鹿島、磐田の両サポーターが続々と署名に訪れる。
元町「首位攻防戦の中、お邪魔しています。(署名に)ありがとうございます。我々は横浜フロイデスのサポーターです。(署名に)ありがとうございます。この度は合併反対の(署名に)ありがとうございます。署名活動に(署名に)ありがとうございます。ご協力を、お、お~!」
殺到する両チームのサポーター。埋もれて行く元町の右腕に空色のリボン。
試合終了のホイッスルの音。
○日本各地のサッカー場
フロイデスのサポーターが署名活動をしている。署名した他クラブのサポーターの右腕にも空色のリボン。
○広島ビッグアーチ・グラウンド
フロイデスサポーターの前に行く選手達。皆、右袖に付けられた空色のリボンをアピールし、喜びを分かち合う。
T「横浜フロイデス 2ー1 エストレッチョ広島」
○マンション・外観
元町の声「ねぇ、古江君」
○同・古江宅・翼の部屋・前
ドアの前に立つ元町。
元町「今度、学校でもフロイデス合併反対の署名活動をやれる事になったんだ」
○同・同・同・中
机に向かっている翼。
元町の声「ねぇ、一緒にやらない?」
○小学校・教室・中
翼の席は空席。
下級生A、Bが教壇の前に立つ。
下級生A&B「せーの、フロイデスの、合併反対の、署名を、お願いします」
誰も動かない生徒達。
元町「ちょっと、みんな……?」
立ち上がる保臣。
保臣「悪ぃな。このクラスにはフロイデスを守ろうって奴、いねぇんだわ」
笑う生徒達。
席を立つ葵。下級生の元へ行き、署名する。
元町「原田さん……」
保臣「原田、お前喧嘩売ってんの?」
葵「……別に」
保臣「女だからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
葵「あのさ、このまままだとアンタらが大好きなマレオットが、大嫌いなフロイデスと一緒になっちゃうけど? 言ってる事とやってる事、めちゃくちゃじゃない?」
保臣「くっ……」
着席する葵と保臣。
浩「じゃあ、俺も署名する」
席を立つ浩の姿に慌てる一樹。
一樹「おい、浩……」
恐る恐る振り返る一樹。睨みつけている保臣と目が合い、目をそらす。
一樹の声「フロイデス合併反対の署名をお願いします」
○商店街
様々な店の前で行われる署名活動。桜井青果店の前でも一樹が署名用紙を持っている。
一樹「フロイデスを助けて……あっ」
何かに気付き、物陰に隠れる一樹。
店の前を通り過ぎて行く保臣、同級生A、B。
通り過ぎたのを確認し、再び店の前に出てくる一樹。そこに立っている葵。
一樹「うわっ。……いらっしゃい」
葵「……ダサっ」
唇を噛む一樹。
○横浜市三ツ沢公園球技場・グラウンド
フロイデスと福岡の試合。
T「1998年11月7日 リーグ戦第16節 アルバ福岡戦」
福岡のPKをフロイデスのGKが止める。
ベンチで喜ぶ古江。
× × ×
(リーグ戦の今季本拠地最終戦の)セレモニーが行われている。
T「横浜フロイデス 2ー1 アルバ福岡」
マイクの前に立つ古江。
古江「誰でもいい。お願いします。このチームを助けて下さい!」
スタンドから歓声。
× × ×
「存続に向けて一緒に頑張ろう!」等と書かれた横断幕を持ってグラウンドを一周する選手達。
× × ×
フロイデスの旗をセンターサークル内に刺すフロイデスの選手。スタンドから歓声。
× × ×
マイクの前に立つ丸山。
丸山「吸収合併は回避できません。しかし、横浜フロイデスは、新チームで生き続けます。今後は、横浜Fマレオットを宜しくお願いします」
○同・バックスタンド
怒号やブーイングを送るサポーター。
いそいそとその場を去る丸山の様子を見ている。元町、智史、加奈。
加奈「ちょっ、言うだけ言って逃げる気?」
智史「野郎、引き戻してやる!」
智史を含む、いきり立ったサポーター達の前に立つ内野。
内野「皆さん、堪えて下さい。ここで暴力に訴えたら、何もかも台無しです」
智史の腕を掴む元町。
元町「智史、マレオットのサポーターがハンドマイクを投げつけて、マレオットの社長がケガした事、忘れたの?」
加奈「同じ事して、世間を敵に回したら、本当にフロイデスが終わっちゃうんだよ?」
智史「くっ……、ちくしょう」
強く握りしめられた元町の拳。
○同・外
裏手から出てくる丸山。頭に何かが当たり、周囲を振り返る。そこに立っている翼。
翼「逃げんなよ」
そのまま車に乗り込む丸山。発進する車。
翼「隠れんなよ。目ぇそらすなよ!」
そこにやってくる雅子。なだめるように翼の肩を抱く。
雅子「翼」
地面に転がる消しゴム。
○マンション・外観
○同・古江宅・翼の部屋・中
ベッドに寝転がる翼。
ノックの音。
雅子「翼? 入るよ」
中に入ってくる雅子。手に持った紙を翼に渡す。
雅子「ポストに入ってた」
翼「?」
受け取る翼。その紙は授業のノートのコピー。綺麗な字。
翼「あ……」
雅子「良かったね。翼の事、心配してくれてる子もいて」
翼「誰だろ? 浩は字汚ぇし……カズか?」
○小学校・職員室
電話で通話中の元町。
元町「そうですか、ノートのコピーが。わざわざご連絡ありがとうございました」
受話器を置く元町。
元町「よし。コッチは一歩前進、と」
○着陸する飛行機
「DNA」と書かれた飛行機。
○新千歳空港・出口
浮かない表情で出ててくる古江らフロイデスの選手、スタッフ達。
○着陸する飛行機
別の航空会社の飛行機。
○新千歳空港・出口
続々と降りてくるフロイデスのサポーター達。その中に翼、雅子、未来の姿もある。
T「1998年11月14日 リーグ最終節 コンドゥクトール札幌戦」
雅子「へぇ~。これは確かに『北海道はデッカいどー』って言いたくなるよね」
翼「ならないけど」
未来「ねぇ、今日でフロイデス最後なの?」
翼「今シーズンのリーグ戦は、最後」
未来「何で最後なの?」
翼「最後だから、最後なの」
未来「何でフロイデスなくなっちゃうの?」
翼「……なくなんねぇよ」
雅子「未来。それ、パパには聞いちゃダメだよ?」
未来「何で?」
雅子「何でも」
ホイッスルが鳴る。
○札幌市厚別公園競技場・グラウンド
喜ぶフロイデスの選手達。
T「横浜フロイデス 4ー1 コンドゥクトール札幌」
○喫茶F・外観
○同・中
席を埋め尽くす元町、智史、加奈らフロイデスサポーター達。署名の集計をする内野の様子を見ている。
内野「出来た」
元町「で、署名は何人集まりました?」
内野「34万6050人です」
喜び、ハイタッチをする元町、智史、加奈らフロイデスサポーター達。
万里の声「署名も集まりましたし」
○小学校・外観
万里の声「フロイデスの試合もないし」
○同・職員室
それぞれの席に座る元町と万里。
万里「何か、する事がないっていうか、出来る事ないんですかね?」
元町「こっちが聞きたいくらいですよ」
万里「合併の調印は、確か一二月四日でしたっけ?」
元町「そう。だからそれまでに……っていうか、代田先生、妙に詳しくないですか?」
万里「いや~、この間試合観たらハマっちゃいまして。元町先生も、もっと早く教えてくれれば良かったのに」
元町「ハハ……。(時計を見て)あ、もうこんな時間。お先です」
万里「あれ、デートですか?」
元町「もっと大事な事です」
部屋から出て行く元町。
万里「さて、と。私も帰ろっかな」
○喫茶F・外観
元町の声「何なんですかね、この記事」
○同・中
カウンター席に座る元町と、カウンター内に立つ内野。他に客はいない。
元町の手にはスポーツ新聞。
元町「『フロイデス選手の移籍先予想』ですって。イタリアだ、東京ウィリディスだ……。まだ合併決まってないよ、って。そう思いません、マスター?」
内野「(ドアを指し)来たみたいだよ?」
元町「え?」
ドアが開き、入ってくる古江。
立ち上がる元町。
元町「はじめまして。翼君の担任の、元町と申します」
古江「古江翼の父です」
頭を下げる両者。
○同・前
ドアに「準備中」の札をかける内野。
そのまま外の掃除を始める。
古江の声「本当は、もっと早く先生とお話ししなければと思っていたんですけど」
○同・中
カウンター席に並んで座る元町と古江。カウンター内に内野もいる。
古江「こんなに遅くなってしまって」
元町「いや、状況が状況でしたからね」
古江「……お恥ずかしい話、実はまだ要領を得ていないんです。翼が、何で学校に行かなくなってしまったのか」
元町「一言で申し上げるのは難しいですね。色々な要素があったと思います。クラスのボス的な生徒と対立したり、仲の良かった生徒に裏切られたり……」
古江「フロイデスの合併報道が出たり」
元町「……ただ、一番最初のキッカケは、私だったのかもしれません」
古江「え?」
○(回想)小学校・教室・中
黒板に書かれた「6年生 進級おめでとう」の文字。
それぞれ(現在とは違う)席に座っている翼、保臣ら生徒達。
出席を取っている元町。
元町「古江翼君」
翼「はい」
元町「古江君って、もしかしてお父さんはサッカー選手?」
翼「まぁ、一応」
元町「(表情を輝かせ)そうなんだ。実は先生、フロイデスのサポーターでね。そっかそっか、古江選手の息子さんか。よろしくね」
その様子を面白くなさそうに見ている保臣。
元町の声「あの日以来、生徒達の間では私と翼君の関係は『教師と生徒』ではなく『サポーターと選手の息子』になってしまったんだと思います」
○同・校門
校舎を眺める翼。そのまま立ち去る。
元町の声「クラスで何か問題が起きて、それがたとえ翼君が悪くなかったとしても、私が擁護すれば『選手の息子だから』と受け取られてしまって。気付いたらお互い、距離をとるようになってしまいました」
○喫茶F・中
カウンター席に並んで座る元町と古江。
元町「本当なら、私が翼君にとって、一番信頼できる大人でいなければいけなかったのに、一番最初に彼の信頼を裏切ってしまいました。本当に、申し訳ありません」
古江に頭を下げる元町。
古江「……何か、似てる気がしますね」
元町「似てる? 何に?」
古江「フロイデスに」
○(回想)小学校・教室・中
翼達を手で追い払う仕草をし、教室を出て行く保臣。
古江の声「会社から切り捨てられて」
× × ×
通学帽を青にして被る一樹と浩。
古江の声「あてにしていた選手会や理事長にも対抗できる力はなくて」
○(回想)通学路
通学帽を青にして被る生徒達。
古江の声「周りの人達は、大きい方の流れにただ乗っかるだけ」
○喫茶F・中
カウンター席に並んで座る元町と古江。古江の手にはスポーツ新聞。
古江「これじゃ、誰を信じたらいいか、わからなくなりますよ」
元町「……でも、一つだけ信じて下さい」
○マンション・入口
郵便受けに手を入れる翼。ノートのコピーが入っている。
元町の声「サポーターがいます」
○喫茶F・中
カウンター席に並んで座る元町と古江。
元町「翼君にも、フロイデスにも(右腕に付いた空色のリボンを指し)」
○通学路
一人で歩く万里。すれ違う人が皆、空色のリボンを付けている。
万里「へぇ、やっぱ皆付けてるんだ」
万里の前方、並んで歩く雅子と未来。
二人とも空色のリボンを付けている。
万里「(未来を見て)あんな小さい子も……あれ?」
うずくまる雅子。
万里「……え? え?」
雅子の元に駆け寄る万里。
未来「ママ~、どうしたの?」
雅子「うん、ちょっとね。大丈夫だから」
万里「あの……どうされました?」
雅子「あ、いや、大丈夫で……(お腹を押さえて苦しそうに)痛……」
万里「きゅ、救急車呼びますね。(カバンを探して)ピッチ、ピッチ……」
未来「ママ~、ママ~」
○マンション・古江宅・リビング
電話が鳴っている。
○同・入口
その場でノートのコピーを読む翼。
○喫茶F・中
カウンター席に並んで座り、話をしている元町と古江。
○病院・外観
雅子の声「本当、すみませんでした」
○同・病室
ベッドで体を起こした状態の雅子と、傍らの椅子に並んで座る万里と未来。未来は万里に寄りかかるように眠っている。
雅子「何から何までしていただいて」
万里「いえ、当然の事で」
雅子「それに、学校の先生だって存じ上げなくて。すみませんね」
万里「いえいえ、受け持ってる学年が違いますから、仕方ないですよ」
雅子「でも、代田先生は翼の事知ってて下さったじゃないですか」
万里「それは、まぁ、翼君は有名ですから」
雅子「父親がサッカー選手だから? それとも、不登校だから?」
万里「あ~、ハハハ……。ところで、お身体は大丈夫なんですか?」
雅子「大丈夫ですよ。ただのストレス性の胃炎でしたから」
万里「原因はやっぱり、フロイデスですか? それとも、翼君が不登校だから?」
雅子「あら、やり返されちゃったわね」
笑い合う万里と雅子。
雅子「そうすると、息子の件なのかな? フロイデスの事を気に病んでるのは、私も代田先生も一緒ですし」
万里「一緒?」
万里の右腕についた空色のリボンを指す雅子。
万里「あ~。でも、全然一緒じゃないんですよ。私はにわかのサポーターで、古江さんは選手のご家族なんですから」
雅子「一緒よ」
万里「え?」
雅子「選手もスタッフも、家族もサポーターも、フロイデスが生活の一部になってる事は一緒。一緒に笑って一緒に泣いて、一緒に戦って一緒に夢を見て」
万里「夢……」
雅子「そうやって地域が一つになる事が、クラブチームの理想の姿、いや、あるべき姿っていうのかな?」
万里「さすが、言う事違いますね」
雅子「まぁ、今のは全部主人からの受け売りだけどね」
万里「あ、やっぱり?」
笑う雅子と万里。
廊下から足音が聞こえる。
雅子「あらあら、噂をすれば」
扉が開き、駆け込んでくる古江。
古江「雅子!」
○マンション・古江宅・リビング(夜)
テーブルの上に置かれた「今日もお母さんの病院に行ってます 留守番よろしく 父」と書かれたメモ。
一人で食事をする翼。部屋のカレンダーには22日まで「オフ」、23日から「練習再開」と書かれている。
○東戸塚トレセン・グラウンド
練習するフロイデスの選手達。重い空気。
見学する翼。周囲を見るとマスコミはほとんどいない。
古江の声「マスコミ、減ってたな」
○通学路
並んで歩く翼と古江。
古江「殺到されてもアレだけど、こうも関心をなくされてもな?」
翼「……」
古江「あ、そうそう。母さん、週明けには退院出来るって」
翼「良かったね」
古江「……なぁ、翼。あんまりこういう事は言いたくないけど、母さんのためにも、学校行かないか?」
翼「行かない。どうせあと三~四ヶ月で卒業して、みんなとはオサラバでしょ? 今更信用を取り戻せるとは思えないし、取り戻そうとも思えないから、行く意味がない」
古江「……じゃあ翼は、もし明日世界が終わるとしても、何もしないのか?」
翼「うん。何もしないだろうね」
チャイムの音。
○小学校・教室・中
教壇に立つ元町。翼以外は全員揃っている生徒達。
元町「皆さんには、何が出来ますか?」
生徒一同「?」
元町「まぁ、いきなり聞かれても困るよね。じゃあ、例えばサッカー。点を獲れる人がいる、パスを出せる人がいる、相手のボールを奪える人がいる。でも、みんながみんな、点を獲れるって訳でもない」
保臣「みんなが点獲れたら、それはそれで強ぇけどな」
元町「でも、そしたら守る人がいなくなって相手にも点を獲られて、試合に負けちゃうよね」
保臣「あ~……」
元町「試合に勝つ為には、極端に言えば攻める人が攻めて、守る人が守る。出来る事はそれぞれ違います。役割が違うからね」
教壇を降り、教室内をぐるぐると歩き始める元町。
元町「役割は他にもあります。控え選手は常に準備をして、監督は采配を振るって、サポーターは声援を送って、親会社はお金を出す。みんな、出来る事は違います。違う人達が集まって、1つのチームになるんです。それは、このクラスにも言える事じゃないかな?」
保臣の席の脇を通る元町。
元町「『サッカーしようぜ』って、仕切る事が出来る人」
同級生A、Bの席の脇を通る元町。
元町「面白い事を言って、空気をなごませてくれる人」
参考書を開き、ノートをとっている葵の席の脇を通る元町。
元町「勉強して、いい成績をとれる人」
一樹、浩の席の脇を通る元町。
元町「お家のお手伝いが出来る人」
翼の席の前に来る元町。
元町「さて、このクラスではもう一ヶ月、一人いない状態が続いています。この事をどう思いますか?」
浩「寂しい」
元町「『寂しい』か。先生は、それだけだとは思いません。この六年三組が、六年三組でなくなってしまうような、そんな事だと思っています」
再び歩き出す元町。
元町「サッカーの話に戻します。もし、ゴールキーパーがいなくなったら、どうなりますか?」
一樹「試合になりません」
元町「そうだね。じゃあ、親会社がいなくなったら? みんなも良く知ってるよね。そのためにサポーターは、署名活動をしました。選手は、全試合に勝ち続けました。どれくらい意味があるかはわからないけど、それぞれの役割で、それぞれの出来る事をやった結果だと、先生は思っています」
教壇に戻る元町。
元町「じゃあ、このクラスが六年三組であるためには、全員が揃う為には、何が出来るのか、考えてみて下さい」
○同・同・外
ドアの前に立ち、元町の話を聞いている万里と教頭。
元町の声「先生は、週に最低一回は家に行っています。まぁ、全然会ってもらえてないけど、それでも行き続ける事が、先生の役割、先生の出来る事だと思ってます」
○同・同・中
教壇に立つ元町。元町の話を聞いている生徒達。
元町「先生は、教師です。大人です。だからこそ、出来る事もあります。でも、みんなは同級生です。クラスメイトです。だからこそ出来る事、あるんじゃないですか?」
それぞれ、元町の話を聞く生徒達(真剣に話を聞く浩、目を伏せる一樹、面倒くさそうな保臣、ノートに向かい続ける葵等)。
元町「みんなにもきっと、それぞれ出来る事があるハズです。例えば、授業のノートをコピーして家に届けてあげている人も居るそうです。その話を聞いて、先生は凄く嬉しかったな」
○マンション・外観
元町の声「みんなには、何が出来ますか?」
○同・古江宅・翼の部屋・中
ノートのコピーを読んでいる翼。「自分に何が出来るかをぜひ、考えてみて下さい」と書かれている。
元町の声「自分の役割を、自分に何が出来るかを是非、考えてみて下さい」
○小学校・校門
下校する生徒達。通学帽は白と青が半々程度。
並んで歩く一樹と浩。
一樹「なぁ、浩。今度、翼の家行く?」
浩「行く」
○同・教室・中
窓から一樹と浩ら生徒達の様子を見ている元町。
元町「コッチはもう一歩前進、かな。さて、次はフロイデスだ」
○ニュース番組
フロイデスの合併調印を伝える報道がされている。
○各地(夜)
各々の場所でそのニュースを見ている元町、智史と加奈、内野、万里、一樹と浩。その表情は驚き、怒り、悲しみ等。
○マンション・古江宅・翼の部屋・中(夜)
机に向かいノートのコピーを読む翼。
何かが割れる音。
驚き、顔を上げる翼。
○同・同・リビング(夜)
テレビでニュース番組を見ている古江と雅子。怒りに手をふるわせる古江。
床に散乱した割れた皿の破片を拾いながら、古江を見つめる雅子。
T「1998年12月2日」
○大日空本社・外観(夜)
「大日本空輸」と書かれた看板。
○同・応接室(夜)
向かい合って座る丸山ら役員と内野らサポーター代表。
内野「約束が違うじゃないですか。はっきり申し上げて、今回のやり方には悪意を感じますよ」
丸山「いや、まぁ、しかしですね……」
○同・エントランスフロア
五〇人近く集まったフロイデスサポーターが警備員や社員と向かい合っている。その中にいる元町、智史、加奈。
異様な雰囲気。
警備員の声「コラ。子供は帰りなさい」
振り返る元町ら。そこには入口の警備員に止められる翼の姿。
智史「古江ジュニア」
「古江の息子?」等とざわつくサポーター達。
翼の元へ行く元町、智史、加奈。
智史「ジュニア、どうしてここに?」
翼「床屋のオジサンに聞いた」
智史「親父の野郎……」
加奈「(警備員に)この子は古江選手の息子さんなんです。誰よりも話を聞く権利があるんじゃないですか?」
警備員「しかし……」
元町「帰りなさい」
加奈「え?」
智史「お前、何言ってんだよ」
元町「ここは子供の来る所じゃない」
翼「……」
元町「コレは、大人の役割だから」
翼「その代わり、子供には子供にしか出来ない事がある、って?」
元町「そこまでわかってるなら、自分で決められるよね?」
翼「……わかったよ。帰るよ」
元町「よし。(智史と加奈に)ごめん、あとはよろしく」
智史「は? お前も帰んの?」
元町「一人で帰す訳にもいかないし、送って行くよ。担任だから」
元町を見つめる翼。
翼の声「何か……ごめんなさい」
○通学路(夜)
並んで歩く翼と元町。
翼「俺のせいで、先生まで帰るハメになっちゃって」
元町「気にしなくていいよ」
翼「……でもさ『子供だから出来る事』って何? そんなのあるの?」
元町「あるよ。きっと、いっぱい」
翼「例えば?」
元町「そうだな……。『100年構想』って話、知ってる?」
翼「日本のサッカーリーグが目標だか何だかにしてるヤツでしょ? 要するに、プロリーグを百年続けるために、みたいな」
元町「さすが。でさ、プロリーグが始まって今年で六年目でしょ? あと九四年。古江君、何歳?」
翼「九四年……一〇六歳。死んでるな」
元町「わからないよ? 日本人の寿命って、延びてるし。でも、いくら延びてても、先生はその頃一二二歳」
翼「厳しいね」
元町「わかった? 今回の事を、百年後まで『生き証人』として語り続けられるのは、先生達じゃない。古江君達なんだよ」
○大日空本社・エントランスフロア(夜)
異様な雰囲気の中、警備員や社員と向かい合っている智史、加奈らフロイデスサポーター達。
元町の声「この、絶対に忘れちゃいけない事件を……」
加奈「遅いなぁ……」
社員の前に歩み出る智史。
智史「俺達もフロイデスのサポーターだ。話し合いに参加させろ」
社員「駄目です。もう少しで代表の方が経過報告に来られるはずですから、それまでコチラでお待ち下さい」
智史「けど、俺達にも参加する権利は……」
社員「参加は四人まで、という約束です」
社員に詰め寄る智史。
智史「ふざけんな。最初に約束破ったのはソッチじゃねぇか」
同調し詰め寄るサポーター達。
加奈「智史、乱暴は……」
智史「いつまでもいい子ぶってんじゃねぇ。このままじゃフロイデスが失くなっちまうんだぞ? いいのか?」
加奈「良くないよ。でも、行っても難しい話には参加できないと思うし。だから、代表の人達に託したんじゃん。皆だってそうでしょ?」
智史「それは、まぁ……」
加奈「だから、とりあえず、待ってみよう? もう少しだけ、ね?」
智史「……わかったよ」
渋々元の位置に戻ろうとする智史、加奈らサポーター達。
社員「そうですよ。はい、戻って」
サポーターの背中を押し、戻るように促す社員。結果、突き飛ばされるような形で転倒する加奈。
加奈「痛っ!」
智史「(加奈を見て)テメェ、何しやがんだこの野郎!」
社員につかみかかる智史。それを見て追随する他のサポーター達。
もみ合いになるサポーター達と社員、警備員。その勢いで近くにあった陶器製の灰皿が割れる。
翼の声「何で、フロイデスだったの?」
○通学路(夜)
並んで歩く翼と元町。
翼「他にもクラブはいっぱいあるじゃん? 何で先生はフロイデスのサポーターになったの?」
元町「え? それは古江君こそ……。あ、お父さんが選手だもんね」
翼「うん。だから、他の人は何でなのかな、って。先生はいつから?」
元町「プロリーグになった年だから、五年前だね。先生が、先生になった年」
翼「ふ~ん。何でまた、そんな年に?」
元町「そんな年だったから、かな? やっぱり、理想と現実のギャップというか……。生徒が全然言う事聞いてくれなかったりして、正直参っちゃっててね」
○(回想)横浜市三ツ沢公園球技場・バックスタンド
フロイデスの試合。
観戦する元町(23)。
元町の声「そんな時、たまたまフロイデスの試合を観に行く機会があってね」
相手の選手のシュートを次々と止める古江(29)。
元町の声「その日のフロイデスは、今だからわかるんだけど、特にディフェンスが全然機能してなくてね。だけど、あちこちから次々と飛んでくるシュートを、全部キーパーが防いでて」
ガッツポーズをする古江を見ている元町。
元町の声「かっこ良かったな~」
○通学路(夜)
並んで歩く翼と元町。
元町「それ見て、思ったんだ。自分も、どんなシュートでも、どんな生徒でも受け止めようって。生徒にとって、最後の砦であろう、って」
翼「……」
元町「あ、ごめん。何か全然答えになってないね。要するに……」
翼「ねぇ。そのキーパーって……?」
○東戸塚トレセン・会議室(夜)
監督を中心に話し合いをするフロイデスの選手達。その中にいる古江。
○マンション・外観
○同・古江宅・翼の部屋・中
向かい合って座る翼と一樹、浩。一樹と浩は頭を下げている。
一樹「翼、ごめん」
浩「ごめん」
翼「いいよ、もう」
一樹「でも、俺らが裏切って、翼が学校来なくなって、気付いたらフロイデスまで無くなって。もう、どうしたらいいか……」
翼「だから、もういいって」
浩「もういいって」
一樹「(浩に)お前が言うな」
翼「とにかく、別に怒ってねぇから」
浩「本当に?」
翼「本当に。ノートのコピーも持ってきてくれてたし」
一樹「あ~、アレか。誰だったの?」
浩「誰だったの?」
翼「え……カズじゃねぇの?」
一樹「俺じゃねぇよ」
浩「俺でもねぇよ」
翼「じゃあ……、え、誰?」
○同・外
出てくる葵。元町と鉢合わせする。
元町「あれ、原田さん。偶然だね。こんな所で何してんの?」
葵「……別に」
元町「……いつもありがとね」
葵「……別に」
葵の後ろ姿を笑顔で見送る元町。
一樹の声「本当に終わりなのかな?」
○同・古江宅・翼の部屋・中
向かい合って座る翼と一樹、浩。
浩「終わりなのかな?」
翼「……終わり、なんだろうな。選手側もこう言ってるんだし」
机の上にあったスポーツ新聞を手に取り、一樹と浩の前に置く翼。フロイデスの選手の声明文が掲載されている。
古江の声「我々、横浜フロイデスの選手及びスタッフは」
○東戸塚トレセン・会議室
声明文に署名をするフロイデスの選手達。泣いている者、怒っている者、堪えている者と様々。
古江の声「今回の合併が企業の論理先行で決定したものであり、これの白紙撤回を求めて行動してきました」
涙のあまりペンが進まない古江。
古江の声「しかし合併調印がなされた今、我々は親会社である大日空に対して」
× × ×
監督を中心に話し合いをするフロイデスの選手達。
古江の声「選手、スタッフの心の痛みを理解してもらい、これに対する謝罪を要求してきました」
○東平尾公園博多の森球技場・外観
T「1998年12月13日 天皇杯3回戦 徳島FC戦」
古江の声「選手、スタッフの前で頭を下げてほしい」
○同・スタンド
フロイデスと徳島の試合。動きが固いフロイデスの選手達。
古江の声「これは最低限の要望であるとともに当然なされるべきものと考えました」
観戦する元町、智史、加奈、内野。
徳島の選手のシュートが決まる。
嘆く智史らフロイデスサポーター達。声援を送る元町。
古江の声「これに対する大日空からの回答はいっさいNOということであり、我々はとうてい納得できるものではありません」
T「横浜フロイデス 4―2 徳島FC」
○小学校・教室
折り鶴を折る生徒達。見守る元町。
古江の声「しかし、誠意ある対応を最後までとれない大日空に対し、これ以上交渉を継続しても無駄であると判断しました」
○マンション・古江宅・翼の部屋・中
折り鶴を折る翼、一樹、浩。
古江の声「このような親会社の下でサッカーを続けていたことが、我々は残念でなりません」
○鳥取市営バードスタジアム・グラウンド
フロイデスと甲府の試合。
T「1998年12月20日 天皇杯4回戦 ヴァンクール甲府戦」
古江の声「本日をもって大日空との交渉を終結します」
フロイデスの選手がシュートを決める。喜ぶ古江ら控え選手達。
ベンチに飾られた二束の千羽鶴。
T「横浜フロイデス 3―0 ヴァンクール甲府」
古江の声「しかし、これは我々の負けでは決してありません」
○神戸ユニバー記念陸上競技場・グラウンド
フロイデスと磐田の試合。
T「1998年12月23日 天皇杯準々決勝 シフレ磐田戦」
ベンチに飾られた三束の千羽鶴。
古江の声「今日まで一丸となって、今回の合併がなんであったかを社会に問い続けた我々のプライドの勝利だと考えています」
○同・スタンド
声援を送る翼、雅子、未来。
古江の声「今日以降、天皇杯を勝ち続けることによって」
T「横浜フロイデス 2ー1 シフレ磐田」
○小学校・教室
「よいお年を」と書かれた黒板。
下校する生徒達(ほとんどが白い通学帽)を見送る元町。
古江の声「チーム合併の不当性を社会にアピールし続けていくつもりです」
元町の手には翼の通知表。
古江の声「平成10年12月11日」
○大阪市長居スタジアム・外観
T「1998年12月27日 天皇杯準決勝 アトラス鹿島戦」
古江の声「横浜フロイデス選手一同」
ホイッスルが鳴る。
○同・グラウンド
ピッチになだれ込む古江らフロイデスの控え選手達。
T「横浜フロイデス 1ー0 アトラス鹿島」
○東戸塚トレセン・外観(夕)
T「1998年12月31日」
古江の声「久しぶりだな」
○同・グラウンド
サッカーボールを蹴り合う翼と古江。
周りには雅子と未来しかいない。翼はそんなに上手くない。
古江「翼とこうやってサッカーするの」
翼「……うん」
古江「元気ないな」
翼「本当に、明日で最後なんだよね、フロイデス。泣いても笑っても。負けても、勝っても」
古江「実感湧かないよな」
翼「……で? その後、父さんはどうするつもりなの? 移籍先、決まったの?」
古江「う~ん、そうだな~……」
翼「引退するの?」
トラップミスをする古江。
未来「(雅子に)引退ってな~に?」
「静かに」と人差し指を口に当てる雅子。
翼「やっぱり」
古江「え、何で?」
翼「だって……いかにも、そういう発表しそうなシチュエーションじゃん」
古江「そりゃ、まぁ、そうだけど……父さんの一世一代の発表だったんだぞ~?」
翼「ごめん」
古江「まぁ、いいや。湿っぽい話は止め。明るい話をしよう。翼は? 中学入ったら、何部に入るんだ?」
翼「サッカー部以外」
古江「え、そうなの?」
翼「だって俺、上手くないし」
古江「サッカー部入ってから上手くなればいいと思うけど……まぁ、いいや。じゃあ、その先は? 将来の夢とか」
翼「別に。普通の会社に入って、普通に家族が出来て、普通に生活できれば」
古江「ダメだぞ、そんなんじゃ。例えば、父さんが『サッカー』って考えてたみたいに何か軸になるようなものがないと」
翼「……一個だけ」
古江「お、何だ?」
翼「どんなに子供が大きくなっても、毎週末家族揃ってフロイデスの応援に行くようなそんな家族にしたかった」
古江「翼……」
翼「……ねぇ、何で? 何でフロイデス無くなっちゃうの?」
古江「……」
翼「俺はサッカーが好きなんだよ。でも自分じゃ上手くプレーできないから、応援するしかねぇんだよ。その応援すら出来なくなったら、じゃあどうすりゃいいんだよ」
泣き出す翼。
古江「……『何で無くなるの』なんて、父さんにはわからない。むしろ、父さんが知りたいくらいだよ。でもな、翼」
顔を上げる翼。
古江「その『何で?』って気持ちだけは、ずっと覚えておけ。起きちゃいけない事が起きた、その事は忘れるな」
頷く翼。
翼を抱きしめる古江。
二人に駆け寄る雅子と未来。
○国立霞ヶ丘競技場・外
続々と客が入ってくる。一樹、浩、一樹の母、団子屋ら商店街の人々、教頭……。
T「1999年1月1日」
○同・バックスタンド
席に着く元町、智史、加奈の元にやってくる内野。
内野「やぁやぁ。おめでとうございます」
元町「あ~。明けましておめでとうございます。今年も……」
内野「その先は、今は言わないでおこうか」
元町「……ですね」
加奈「マスター、満員ですよ」
スタンドを眺める元町ら。
内野「凄いねぇ。そういえば、プロリーグになって最初の相手も清水だったよね」
智史「あの時の夢、叶ったんですね」
内野「うん」
○同・メインスタンド
並んで座る雅子、翼、未来、万里。
雅子「ごめんなさいね、代田先生。無理言っちゃって。誰かいて欲しかったんだけど、私、サポーターの知り合いってあまり居ないんですよ」
万里「いえ。私もなんで、むしろ良かったです」
○同・グラウンド
ホイッスルが鳴り、キックオフ。
T「天皇杯決勝 清水エンゼルス戦」
× × ×
劣勢のフロイデス。
清水の選手にシュートを決められる。
歓喜の声を上げる清水サポーターと対照的なフロイデスサポーター。
声援を送る智史、加奈、内野。
○(回想)横浜市三ツ沢公園球技場・バックスタンド
T「1993年5月16日」
スタンドの客は七対三で清水サポーターの方が多い。
観戦する智史(22)、加奈(22)、内野(41)。
加奈「清水のサポーターの方が多いですね」
内野「うん。三対七って所かな」
智史「俺達のホームゲームなのに……」
内野「焦らないで、智史。今日がスタートなんだから。これからだよ」
加奈「そうだよ。……それで、いつかこの比率を逆転してやろう」
智史「あぁ」
○国立霞ヶ丘競技場・グラウンド
スタンドの客は七対三でフロイデスサポーターの方が多い。
攻め上がるフロイデス。
ラストパスを出すフロイデスの背番号5。
T「山口素弘
当時29歳 MF キャプテン
横浜F消滅後、名古屋に移籍。翌年の天皇杯を制する。
現役晩年には、横浜Fサポーターが作った新クラブ・横浜FCに加入。
引退後は同クラブの監督も務めた。」
× × ×
パスを受け、シュートを放つフロイデスの背番号22。
T「久保山由清
当時22歳 FW
横浜F消滅後、合併先の横浜FMからのオファーを断り清水に移籍。2001年の天皇杯優勝に貢献した。
2016年現在、同クラブのコーチを務めている。」
○同・バックスタンド
フロイデスの選手のシュートが決まる。喜ぶフロイデスサポーター達。
その様子を感慨深く見ている智史、加奈、内野。その隣には元町。
元町「いいぞ~! もう一点!」
○同・メインスタンド
試合は、一進一退の攻防。
その度に歓喜、落胆、安堵の声をあげるフロイデスサポーター達。
その様子を見ている万里。最後に雅子に目を向ける。
雅子の声「一緒に笑って一緒に泣いて、一緒に戦って一緒に夢を見て。そうやって地域が一つになる事が、クラブチームの理想の姿、いや、あるべき姿っていうのかな?」
万里「そっか、これが……」
○(回想)小学校・職員室
机を叩き立ち上がる元町。
元町「フロイデスは会社じゃないし、大日空の所有物でもない」
○国立霞ヶ丘競技場・メインスタンド
周囲を見回す万里。
元町の声「横浜市民のものなんです」
万里「私達のチーム、なんだ……」
一瞬、万里の方を見る翼。すぐにグラウンドに向き直る。
翼「あぁ、守れ、守れ!」
○同・グラウンド
劣勢のフロイデス。
清水の選手のドリブルに対して激しいディフェンスを見せるフロイデスの背番号3。
T「薩川了洋
当時26歳 DF
横浜F消滅後、柏に移籍。
日本代表にこそ縁がなかったが、通算300試合以上に出場。
2016年現在、3部リーグの相模原で監督を務めている。」
× × ×
こぼれ球を大きく蹴り出すフロイデスの背番号4。
T「佐藤尽
当時24歳 DF
横浜F消滅後、京都へ移籍。
現役引退後は札幌の下部組織の監督を歴任し
2016年より、コーチとして京都に復帰した。」
ホイッスルの音。
○同・メインスタンド
ハーフタイムのため、グラウンドに選手はいない
並んで座る一樹の母、一樹、浩。
一樹「あと45分か……」
浩「あと45分だね」
一樹の母「ほら、一樹。あれ、見てご覧」
一樹「あれって、どれ?」
一樹の母「あれ」
一樹「どれ?」
浩「あ、あれ?」
一樹の花「そう、それ」
一樹「だから、どれ?」
○同・グラウンド
ベンチに飾られた五束の千羽鶴。
○(回想)小学校・職員室
大量の折り鶴を持ち寄る元町、万里ら教師達。そこに折り鶴数個を持ってくる教頭。
○(回想)喫茶F・中
大量の折り鶴を持ってくる元町。
それぞれ席で折り鶴を折っている智史、内野、一樹の母、団子屋ら商店街の人々。
○国立霞ヶ丘競技場・グラウンド
ベンチに座る古江ら控え選手達。
古江「行け~! 点獲ってこい!」
× × ×
フリーキックを蹴るフロイデスの背番号6。
T「三浦淳宏
当時24歳 MF
横浜F消滅後、合併先の横浜FMへ加入。
2000年にはオーバーエイジ枠でシドニー五輪代表に選出。
ベスト8入りに貢献した。」
× × ×
ドリブルでサイドを駆け上がるフロイデスの背番号12。
T「波戸康広
当時22歳 MF
横浜F消滅後、合併先の横浜FMへ加入。
2014年に開催された引退試合には、横浜FのOBとサポーターが多数集結した。」
× × ×
ベンチから声をかける古江。
古江の声「もし明日、世界が終わるとしたら何する?」
○(回想)喫茶F・中
カウンター席に並んで座る元町と古江。
古江「翼にそう聞いたら、何て答えると思いますか?」
元町「……多分ですけど『何もしない』って答える気がします」
古江「僕もそう思います。『どうせ明日終わっちゃうんだから』って。でも、それって寂しくないですか?」
元町「じゃあ、古江さんなら、何をされるんですか?」
古江「僕は……わかりません。ただ……」
元町「ただ?」
古江「もし明日、フロイデスが解散するとしたら、僕はチームが勝つために全力を尽くしたい」
○国立霞ヶ丘競技場・グラウンド
ベンチから声をかける古江。
古江の声「その結果、僕自身が試合に出られなくてもいいんです」
○同・メインスタンド
観戦する翼、未来。
古江の声「子供達に、強いフロイデスを見せたいんです」
○同・グラウンド
攻め上がるフロイデスの選手達。
古江の声「勝ち続けた先に、何があるのかはわかりませんけど……」
× × ×
ラストパスを出すフロイデスの背番号10。
T「永井秀樹
当時27歳 MF
横浜F消滅後、合併先の横浜FMへ加入。
45歳となった2016年現在も、2部リーグの東京Vで現役を続けている。」
× × ×
パスを受け、シュートを放つフロイデスの背番号9。シュートが決まる。
T「吉田孝行
当時21歳 FW
横浜F消滅後、合併先の横浜FMへ加入。
2013年、神戸にて引退。
現役ラストゲームの後半45分にゴールを決め、有終の美を飾る。」
歓喜に沸くフロイデスサポーター達。
○同・バックスタンド
観戦する元町、智史、加奈、内野。
加奈「(時計を見て)あ、あと五分切った」
元町「一点差……逃げ切れるかな?」
智史「……追いつかれちまえばいいんだよ」
内野「え?」
加奈「智史、何言ってんの?」
智史「だって、そうだろ? 同点になれば、延長戦だ。まだもう少し、フロイデスの試合が観られるじゃねぇか」
内野「それは、そうだけどねぇ……」
加奈「でも、だからって……」
元町「ダメだよ」
○(回想)通学路(夜)
並んで歩く翼と元町。
翼「そっか。父さんのファンだったんだ」
元町「内緒だよ?」
翼「え、何で?」
元町「だって、ほら。色々とやりづらくなるかもしれないでしょ?」
翼「……あぁ、だね。でも、せっかくだし何か伝言あったら預かるけど?」
元町「そうだね。じゃあ、一つ」
○国立霞ヶ丘競技場・バックスタンド
観戦する元町、智史、加奈、内野。
元町「『もし明日、フロイデスが解散するとしても、フロイデスサポーターは全力で応援する』。そう誓ったんだ。それが、サポーターの役割なんだ。そうでしょ?」
加奈「そうだね。智史、私達も最後の最後まで、フロイデスのサポーターでいよう」
内野「もう、今日しかないんだから」
智史「……ちくしょう!」
大声で「横浜フロイデス」コールを始める智史。徐々に広がって行く。
○同・グラウンド
チームメイトに声をかけるフロイデスの背番号8。
T「セザール・サンパイオ
当時30歳 MF ブラジル代表
横浜F消滅後、ブラジルに帰国。
翌年、所属クラブが南米大陸選手権を制した事で
日本開催のインターコンチネンタルカップ(現クラブワールドカップ)に、
南米王者として凱旋した。」
× × ×
既に涙ぐんでいるフロイデスの背番号13。
T「前田浩二
当時29歳 DF 選手会長
横浜F消滅後、磐田に移籍。
引退後は、各クラブで監督や強化部長を務め、
現在は日本や中国で女子サッカーの指導にあたっている。」
○同・メインスタンド
観戦する元町、雅子、未来、万里。翼以外は「横浜フロイデス」コールをしている。
未来「お兄ちゃん、やらないの?」
翼「……」
雅子「翼?」
翼「『人間は二度死ぬ』って、知ってる?」
雅子「?」
翼「一度目は肉体の死、二度目はみんなが忘れる事なんだって」
未来「お兄ちゃんが変な事言って……」
未来の口を塞ぐ雅子。
翼「俺、絶対に忘れない」
○(フラッシュ)東戸塚トレセン・練習場
見学する翼。周囲にマスコミはほとんどいない。
翼の声「絶対に、忘れさせない」
○国立霞ヶ丘競技場・メインスタンド
観戦する翼、雅子、未来、万里。
翼「この六年間を、この二ヶ月間を、なかった事になんて、させてたまるか!」
○(フラッシュ)大日空本社・エントランス
フロア(夜)
警備員や社員と向かい合っている智史、加奈らフロイデスサポーター達。
翼の声「『俺はこんなに愛されたチームの生き証人なんだ』って百年先まで言い続けてやる」
○国立霞ヶ丘競技場・グラウンド
試合中のフロイデスの選手達。
翼の声「例え明日世界が終わるとしても『俺はこんな格好いいチームのサポーターだったんだ』って伝え続けてやる」
○国立霞ヶ丘競技場・メインスタンド
観戦する翼、雅子、未来、万里。
翼「『俺はこんな強いチームの選手の息子だったんだ』って、学校でクラス中に自慢してやる」
翼の頭を撫でる雅子。
○同・グラウンド
ゴールキック。大きく前に蹴り出すフロイデスの背番号1。
T「楢崎正剛
当時22歳 GK 日本代表
2002年の日韓W杯で全試合ゴールを守るなど、
2010年の南アフリカW杯まで日本代表に選出され続ける。
横浜F消滅後に移籍した名古屋に2016年現在も在籍。
メンバー表にある彼の『前所属チーム』の欄には今も『横浜F』の文字が残っている。」
× × ×
ベンチ前、古江ら控え選手だけでなくベンチ外の選手やスタッフも既に待機している。
古江「(控えの若手選手達に)お前達の選手生活は、まだまだこれからだ。だけど、覚えておけよ。お前達の選手生活は、めちゃめちゃ強いチームで始まったんだって」
頷くフロイデスの若手選手達。その中にいる背番号27。
T「遠藤保仁
当時18歳 MF
横浜F消滅後、京都を経てG大阪へ。
日本代表の常連となり、3度のW杯を経験する。」
× × ×
大きく前線に蹴りだされるボール。
ホイッスルの音。
T「横浜フロイデス 2―1 清水エンゼルス」
ピッチになだれ込むフロイデスの控え選手達やスタッフ達。
抱き合って喜ぶ古江ら選手達。
○同・バックスタンド
喜ぶ元町と内野、智史と加奈。
○同・メインスタンド
喜ぶ一樹、浩、一樹の母、団子屋ら商店街の人々。
× × ×
涙を浮かべる万里。
万里「古江さん……」
隣を見ると泣き崩れている雅子。雅子を抱き起こす万里。
○同・グラウンド
スタンドに手を振りながらグラウンドを一周するフロイデスの選手達。
『歓喜の歌』のチャント。
大人の翼M「その日、最後に歌われたチャントは」
× × ×
バックスタンドでチャントを歌う元町、智史、加奈、内野。
大人の翼M「ベートーヴェン交響曲第九番。『An die Freude(アン・デュー・フロイデ)』」
× × ×
清水サポーターからも『歓喜の歌』のチャント。
大人の翼M「歓喜の歌、フロイデスの歌」
手を振って答える選手達。
大人の翼M「ソレが明日以降、二度と歌われる事はないのだと」
× × ×
メインスタンドでチャントを歌う翼、雅子、未来、万里。
大人の翼M「僕達はまだ、心のどこかで認められずにいた」
○同・メインスタンド
表彰式が行われている。
大人の翼M「この戦いは後に『奇跡の9連勝』と名付けられる」
川口「優勝、横浜フロイデス!」
天皇杯を受け取るフロイデスの背番号5。
大人の翼M「しかし、一番起こしたかった奇跡は、とうとう起きる事のないまま」
天皇杯を高々と掲げるフロイデスの背番号5。
大歓声。
大人の翼M「この天皇杯優勝を最後に」
○出版社・オフィス
印刷された原稿に掲載された、フロイデスの背番号5が天皇杯を掲げている写真。
大人の翼M「横浜フロイデスは消滅した」
T「2016年」
席に座り原稿を見ている翼(30)。
原稿には写真が未定の箇所がある。
大人の翼M「あれから、一八年が経った」
翼も写るフロイデスの天皇杯優勝の祝勝会の写真等から写真を選別する翼。
大人の翼M「あの時の小学六年生が三〇歳となり」
後輩の声「古江先輩、ちょっといいですか」
翼「おう」
写真を置き、席を立つ翼。
大人の翼M「あの日以降に産まれた子供が、間もなくプロに入ってくる」
翼の机の上に置かれた写真。祝勝会の写真にまぎれて、小学校卒業式の翼の写真もある。
大人の翼M「彼らは、僕達のチームを、あの二ヶ月間を知らない」
写真の脇に置かれた原稿。
大人の翼M「それでも、あの時代を生きた僕達が忘れない限り」
原稿の記事のタイトルは『横浜Fは終わらない』。
大人の翼M「横浜フロイデスは終わらない」
原稿内の「文/古江翼」の文字。
大人の翼M「とても強いチームがあった事を僕はここに証言する」
原稿内、胴上げされる監督や古江、フロイデスのゴールシーン等、様々な写真。
大人の翼M「こんなチームは、もう二度と現れない」
天皇杯を囲んだ古江らフロイデス選手、スタッフら集合写真。
大人の翼M「こんなチームは、もう二度と」
○黒味
大人の翼M「現れてはいけない」
(完)
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