○スマホ画面
納戸瑠々香(14)と野原ねる(14)によるTikTok風の動画。様々なパターンが撮られている。
○中学校・教室
ねるとともにスマホで先の動画を見る瑠々香。二人で笑い合う。
瑠々香「あ~~、もう最悪」
○同・校門(夕)
下校する生徒達。
並んで歩く瑠々香とねる。
瑠々香「スマホが無いせいで、私は思い出を共有する事すら出来ないんだよ?」
ねる「まぁ、今どき不便だよね」
瑠々香「これだけ色んな家族がいる中で、何でよりによって『スマホ買ってくれない両親』の元に生まれ落ちちゃったかな~」
ねる「そうかな? 瑠々香の親、料理上手いし優しそうだし、そんなに悪くないと思うけど」
瑠々香「外面が良いだけだって。あ~あ、マジで親ガチャ大ハズレだわ」
ねる「ドンマイ。私は割と良いのいくつか引けたからね」
瑠々香「? どういう事?」
ねるの父の声「お~い、ねる~」
門の外、高級車の運転席から顔を出すねるの父。若くてイケメン。手を振るねるの父に手を振り返すねる。
ねる「迎えに来てくれたんだ。(瑠々香に)じゃあね、また明日」
行こうとするねるを引き留める瑠々香。
瑠々香「ちょっ、ちょっ。え、誰?」
ねる「新しいパパ。じゃあね」
行こうとするねるを引き留める瑠々香。
瑠々香「ちょっ、ちょっ。え、何、ねるの親、離婚して再婚したの?」
ねる「離婚も再婚もしてないよ。じゃあね」
行こうとするねるを引き留める瑠々香。
瑠々香「ちょっ、ちょっ。じゃあ、何、養子に出も出された?」
ねる「そんな訳ないじゃん。じゃあね」
行こうとするねるを引き留める瑠々香。
瑠々香「ちょっ、ちょっ、ちょっ。だったら、何がどうなって……?」
ねる「コレだよ、コレ」
瑠々香にスマホの画面を見せるねる。そこには「リアル親ガチャ」というスマホアプリがある。
瑠々香「リアル……親ガチャ?」
○メインタイトル『リアル親ガチャ』
○アパート・外観(夜)
○同・納戸家・居間(夜)
座卓を囲み食事する瑠々香、納戸凛々香(17)、納戸信子(49)、納戸直樹(51)。信子や納戸を見て、意味深な笑みを浮かべる瑠々香。
信子「? どうかした?」
瑠々香「いや、別に。(席を立ち)ご馳走様」
寝室に入っていく瑠々香。
納戸「何だ? スマホの事、まだ根に持ってんのか?」
信子「そう? 何か、そういうんじゃない雰囲気だったけど」
顔を見合わせる信子と納戸。
瑠々香の声「ダウンロード、出来た?」
○同・同・寝室(夜)
スマホを手に持つ納戸凛々香(17)とその隣でスマホを覗き見る瑠々香。スマホでリアル親ガチャを起動する凛々香。
凛々香「まぁ、一応。でも本当にコレで、親変わるの?」
瑠々香「それが、変わるんだって」
○(回想)中学校・前(夕)
ねるの父に促され、ねるとともに車の後部座席に乗り込む瑠々香。
瑠々香の声「親も」
○(回想)マンション・外観(夕)
高級マンション。
瑠々香の声「家も」
○(回想)同・住吉家・前(夕)
「住吉」の表札。
瑠々香の声「苗字も」
○(回想)同・同・ねるの部屋(夕)
ドア脇に立つねるの母。若くて美人。
ねるの母「瑠々香ちゃん、ゆっくりして行ってね」
そう言って出ていくねるの母。室内に残るのは瑠々香とねるのみ。
瑠々香「凄……本当に、ねるの家なの?」
ねる「だから『そうだ』って言ってるでしょ」
瑠々香「苗字、『住吉』になってたけど?」
ねる「うん、変わった。ただ、学校の中では変えてないだけ。クラスのみんなもほとんどはそうなんじゃない?」
瑠々香「え、何で?」
ねる「だって、またガチャでもっと良い親出るかもしれないでしょ? その度に変えるの面倒だから、高校入学のタイミングくらいまでは、元々の苗字で通してるんだよ」
瑠々香「なるほど」
ねる「(スマホの画面を見ながら)私も、本当はもっとお金持ちの親とか引けたんだけど、芸能事務所のオーディションに受かるには親が美男美女の方が有利で……」
ねるを羨望の眼差しで見つめる瑠々香。
○アパート・納戸家・寝室(夜)
凛々香の持つスマホを覗き見る瑠々香。
瑠々香「で、お姉ちゃんの親が変われば、私の親も変わるハズ。でしょ?」
凛々香「ちなみに瑠々香は、どんな親がいい?」
瑠々香「私は、まずは中学生にスマホ持たせてくれる人でしょ」
凛々香「私は、経済的なゆとりが欲しいな。今のままだと『私立大学行くなら奨学金で』とか言われそうだし」
瑠々香「いいね。あと、顔が良くて頭良くて運動神経良くて」
凛々香「あと、一人部屋が欲しいな」
瑠々香「お~、期待に胸が膨らむね」
凛々香「じゃあ、ガチャるよ」
瑠々香「うん。(ドアの向こうを見て)さようなら、今までのパパ、ママ」
スタートのボタンをタッチする凛々香。
瑠々香「こんにちは、新しいパパ、ママ」
○新しい家A・寝室
ベッドで眠る瑠々香。
新しい母A「瑠々香、朝よ」
瑠々香「(目を覚まし)ん……」
瑠々香の目の前に新しい母A。
瑠々香「!?」
新しい母A「もう、凛々香はとっくに起きてるわよ。早くしなさい」
部屋を出ていく瑠々香。
瑠々香「そうだ、親変えたんだった」
飛び起きる瑠々香。
○同・リビング
ご飯やみそ汁等の朝食の準備がなされた食卓を囲む凛々香、新しい父A、母A。そこにやってくる瑠々香。
瑠々香「おはよう」
新しい父A「おはよう」
目を合わせる瑠々香と凛々香。喜びを隠し切れない様子。
新しい母A「じゃあ、いただきます」
瑠々香&凛々香「いただきます」
味噌汁を口にする瑠々香。
瑠々香「甘っ……」
ご飯を一口食べる瑠々香。
瑠々香「(不味い)」
手を止め、凛々香を見る瑠々香。同じようなリアクションの凛々香。
瑠々香「(小声で)お姉ちゃん。もう一回ガチャらない?」
凛々香「賛成」
○新しい家B・リビング
瑠々香、凛々香とともに食卓を囲む新しい父B、母B。両者とも外国人。
新しい父B「(英語で何か言う)」
新しい母B「(英語で何か言う)」
笑い合う新しい父B、母B。
瑠々香「何て言ってるの?」
凛々香「わかる訳ないでしょ」
瑠々香「じゃあ、次!」
○新しい家C・居間
六畳一間の狭い室内に身を寄せる瑠々香、凛々香、新しい父C、母C。電灯は付いておらず、ろうそくの明かりのみ。
新しい父C「すまんな。苦労をかけて」
新しい母C「いいのよ。愛があればお金なんて」
瑠々香「いや、お金だから。電気も水道もガスも止まってたら、生きていけないから」
新しい父C「すまんな」
瑠々香「お姉ちゃん、次!」
瑠々香の声「……って感じで、ハズレばっか」
○中学校・廊下
並んで歩く瑠々香とねる。
ねる「そんなもんだよ。ガチャなんて、一部の当たり以外は全部ハズレなんだから」
瑠々香「どうしたら当たりの親引けるの?」
ねる「そりゃあ、課金だよね」
瑠々香「課金か……そんなお小遣いが貰えてたら、親ガチャなんてやってないっての」
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